③門・塀
写真 6- 8 特徴的な色彩の建物(桃太 郎大通り)
明度 彩度 明度 彩度
東側 0.65 0.78 北側 0.80 0.77 西側 0.64 0.74 南側 0.75 0.72 全体 0.70 0.79 全体 0.78 0.77
明度 彩度 明度 彩度
北側 0.81 0.81 東側 0.73 0.79 南側 0.68 0.68 西側 0.80 0.81 全体 0.77 0.78 全体 0.80 0.83 桃太郎大
通り
西川・枝 川緑道公 園沿い 市役所筋
通り名 通り名
県庁通り
通り名 通り名
表 6-9 多様度指数
125 については、2.5、5、7.5、10 の 4 段階しかないため、多様度指数が低くなると予想される。そ のため、色相の多様度指数は除外した。
表 6-9 をみてみると、どの通りも多様性が高いことがわかる。中心市街地では高層の建物が多 く、外壁仕上げ材料の種類が多いため、色彩も多様になってくると考えられる。そのため、外壁 仕上げ材料ごとの色彩基準を設定していく必要があるだろう。
おわりに
中心市街地の主要な 4 つの街路では、各街路の特性に合わせて基準を設けることで、セットバ ック方式による特徴的な街路空間を実現した。それは、当時の市長である岡崎平夫のゆとりのあ るまちをつくりたいという意向から始まった。当初、セットバック方式は、具体的な基準が定め られていなかったものの、昭和 50 年代後半から各主要な街路の特性に合わせて定められた。売場 面積の縮小が売り上げにつながってくる店舗や店舗を併用した建物、小規模な事務所、専用住宅 など基準を満たすことが現実的に難しい建物も多いなか任意にもかかわらず、全体で半数以上の 建物が誘導指針を満たしており、結果として中心市街地全域に亘ってセットバック方式を導入し た建物が立地していることは、特筆すべき成果といえよう。これは、戦後の都市計画における方 法論として意義のある知見を得ることができたと考えられる。
空間特性については、3 つの形状タイプと各街路の特性を生かした基準を設けることで、多様 な空間を生み出していることが明らかになった。通常は、全体を後退させる A タイプとなる建物 が多いが、岡山市でもその傾向はみられたものの、それ以外に 1 階のみを後退させる B タイプや ピロティ形式の C タイプの建物が多く立地しており、独自性のある街路空間といえる。後退した 部分の形状は、市役所筋では、A、B、C のタイプが混在しており、面積もさまざまで多様な空間 を生み出している。県庁通り、桃太郎大通りでは A タイプに加えて B タイプが多く、数 cm でも後 退してほしいという行政の「お願い」に建築主が応えた結果だと考えられる。西川・枝川緑道公 園沿いでも A タイプが多いが、4 階以上の建物では、B、C タイプも多く、半屋外空間をつくって いた。形状の連続性については、どの街路も統一性がなく、自由度が高いため、それぞれの建物 同士で統一感がなく、建築物群が都市計画の成果として評価しがたいことも課題の一つといえる。
後退した空間の利用状況では、桃太郎大通りを除いて、誘導指針に則して植栽を計画している ところが多くみられた。しかしながら、後退した部分の維持管理はすべて建築主が行うこととな っているため、植栽などの管理や景観への配慮が十分ではない建物も散見される。こうした維持 管理の面については、表彰制度はあるものの、より実行性のある方法を再検討するとともに、今 後は市の支援も必要となってくるだろう。
本稿では戦後岡山中心市街地において官民協働でできた主要街路の全域に亘ってセットバック 方式による壁面後退が進められてきた具体的内容とその空間特性を明らかにしてきた。しかしな がら、維持管理や街並みの統一性という点で課題があり、戦後につくられた建築都市空間は、価 値を見出される前に取り壊されることが懸念される。今後は戦後の中心市街地における都市計画 遺産の保存概念の構築とともに、それをふまえた景観施策の提案なども課題といえる。
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第七章
防火建築帯の再生
‐鳥取市中心市街地の街路空間‐
はじめに
第七章では、戦後の都市改造として知られる火災復興計画によってできた市街地の景観政策の 取り組みと景観特性について明らかにする。具体的には、火災復興計画によってできた市街地が どのような計画手法によって整備されたかについて明らかにする。対象とする都市は、鳥取市街 地(鳥取県鳥取市)である。
鳥取市では、昭和 27(1952)年 4 月 17 日に起きた戦後最大といわれる大火によって市街地面 積の約 70%を焼失した。火災復興にあたって、鳥取市は不燃都市の実現を目指し、焼失地域を中 心に約 54 万坪にわたって「鳥取都市計画火災復興土地区画整理事業」を施行した。同事業では、
街路の拡幅や公園及び公共用地の整備、そして防火建築帯の建設が実施された。『復興計画』注1)
でも指摘されるように、耐火建築促進法(昭和 27(1952)年 5 月 31 日制定)が成立してからは じめての計画であり、その後、普及するようになる防火建築帯の嚆矢となった事例として位置づ けられる。防火建築帯が造成されてから 60 年以上が経過した今、建築物の老朽化や景観への問題 が指摘されつつある。また、防火建築帯である若狭街道商店街は、鳥取駅前に位置しており、近 年衰退化している。このような問題点から、1 階部分のみを改修し、店舗とする事例や外壁の塗 り直しなどが実施されている。
本論に入る前に、分析の枠組みとして以下の二点を提示しておく。第一に、鳥取市による景観
注1)越澤明『復興計画』(中公新書、2005)。
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政策の問題点についてである。特に、鳥取 市景観計画は今後景観整備を行っていく上 で重要な指針となってくるため、景観計画 の内容について把握する。また、防火建築 帯という戦後の都市計画遺産について把握 するために、防火建築帯ができた経緯につ いても明らかにする。
第二は、鳥取市街地の景観特性である。
特に、鳥取駅前通りである防火建築帯を中 心に、鳥取市街地の景観特性については、
鳥取市景観計画をもとに明らかにする。
以上より、防火建築帯造成によってでき た空間がこれまでどのように整備され、現 在どう活用されているのかを明らかにする ことで、鳥取の中心市街地における街路空 間の特徴を見出すことができるとともに、
新たな計画手法の提案にもつながると考え られる。
7-1 官民協働の防火建築帯の再生の取り 組み
防火建築帯が多数現存している鳥取本通 商店街(延長 580m)(図 7-1‐街区番号③~
⑤、⑰~㉑)と若桜街道商店街(延長 830m)(図 7-1‐街区番号⑥~⑩⑮⑯)を事例として取り上 げる注2)。
7-1-1 鳥取都市計画火災復興土地区画整理事業の概要
まず「鳥取市火災復興関係書類」注3)をもとに、事業全体の経緯について整理しておきたい。鳥 取大火は、昭和 27(1952)年 4 月 17 日午後 2 時 30 分頃に発生し、市街地の焼失面積は 48 万 8,900 坪(市街地面積の約 70%)に達した(図 7-1)。鳥取市は、「鳥取火災復興対策要綱」注4)を作成し、
復興計画の基本方針を打ち出すとともに、復興の常套手段である土地区画整理が計画されること
注2)池口凌(鳥取市復興局)「鳥取市火災復興に於ける防火建築帯の造成」(『建築雑誌』Vol.68、No.801、pp41-47、
1953.8)及び鳥取県建築課「鳥取市防火建築帯について」(火災、4 巻、pp100-104、1954.12)、早稲田大学都市・
地域研究所「住宅市街地総合整備事業(街なか居住再生型)整備計画並びに事業計画策定等に関する調査研究(鳥 取市中心市街地北部地区)」(2008.3)、現地調査をもとに街区内に昭和 27 年~昭和 29 年に建てられた建物が複数 戸現存している街区を防火建築帯が現存している街区とした。
注3)鳥取県立公文書館所蔵「鳥取市火災復興関係書類」(建築課、1952.5)。 注4)鳥取県立公文書館所蔵「鳥取市火災復興関係書類」(建築課、1952.5)。
鳥取駅
県庁
焼失区域 区画整理区域 防火建築帯指定街路
300m
鳥取本通 商店街
若桜街道 商店街
数字 街区番号 袋川
①②③④⑤⑥⑦⑧⑨⑩⑪
⑫
⑭⑬
⑯⑮
⑱⑰
⑳⑲
㉑
図 7-1 焼失区域と防火建築帯
129 になった。
まず「鳥取火災復興対策要綱」が作成されており、そこで基本方針が示された。鳥取の火災復 興では、若桜街道に沿って国内最初の防火建築帯を建設して東西を区画する一方、旧袋川を防火 用水として整備することで南北に区画し、市内を四つのブロックに分割するという方針が立てら れた。基本方針は以下の通りである。
一、急速に防火的な地方中心都市として商業・産業・観光の総合的都市計画を樹立する。この為 既定都市計画を再検討する。
二、焼失区域並びにこれと一帯の地域をなす約四二万坪の地積に対して土地区画整理事業を実施 する。
三、袋川を利用した防火帯により、市街地を南北に分割する他袋川は防火用水として利用し得る よう改修する。
四、市街地を東西に分割するため若桜街道を拡巾しその両側を防火建築帯とする他幹線街路を拡 巾するものとするがその巾員は必要最小限にとどめる。
五、在来市街地の建築密度が高く街路面積は僅かに市街地面積の数パーセントに過ぎないので街 路防火帯、公園広場等、公共用地面積を市街地面積の三〇パーセント程度に高め、空地の確保を 図ると共に別途防火地区、準防火地区指定等、建築物の構造的措置と相俟って防火能力を強大に する。
六、住宅復興は公営住宅(一部不燃住宅とす)、金融公庫住宅、単独県営住宅等により、約三千戸 を急速に建設する。
七、焼失区域内の墓地を移転せしめるため、新に土地区画整理区域外に墓地公園を造成する。
八、消防施設を分散配置する。
防火に重要な役割を果たす空地の確保について、「五、在来市街地の建築密度が高く街路面積は 僅かに市街地面積の数パーセントに過ぎないので街路防火帯、公園広場等、公共用地面積を市街 地面積の 30%程度に高め、空地の確保を図ると共に別途防火地区、準防火地区指定等、建築物の 構造的措置と相俟って防火能力を強大にする。」と述べられているように、従前の鳥取市では、建 築密度が高く、街路も市街地面積のわずか数%しかなかったことがわかる。このため土地区画整 理事業によって、街路、公園、広場等の公共用地面積を 30%程度に増加させ、空地を確保する方 針となっている。