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8 地区施設等の整備

ドキュメント内 島根大学審査学位論文(1/2)(k595) (ページ 102-111)

③門・塀

写真 5- 8 地区施設等の整備

❶六枚橋小公園 ❷田町小公園(入口)

❷田町小公園(小公園内の水路) ❸本町ふれあい公園

Ⅰ.地区内南北動線 Ⅱ.道路の美装化

93 写真 5-8-❷)。この水路は、岡山の三大河川の一つである高梁川をイメージしてつくられている。

また、奥には湛井合同堰、手前には高瀬舟をモチーフにしたものが設けられている。しかし、公 園北側には塀を設けていない住宅もあり、プライバシーの面では課題があるといえる。3 つ目に 整備された小公園は、集会所の前のスペースにつくられ、以前商店街通りの側溝に使われていた 石蓋を再利用している(図 5-5-❸、写真 5-8-❸)。

しかし、街なみ環境整備事業実施後の地区内の公園面積の割合は、0.7%となっており、3%未 満のままとなっている。また、栄町地区には小公園が整備されず、適正な配置とはなっていない ことが指摘できる。

(3)コミュニティ施設

本町地区の中央にある集会所(カルチャーセンター)を改修する計画がたてられた。この集会 所は、昭和 59(1984)年 8 月に郵便局だった建物を、市へ譲渡し、集会所として昭和 60(1985)

年に転用した。郵便局をそのまま転用したことにより、集会所として利用しにくい点や施設その ものの老朽化が課題としてあげられ、住民から整備が望まれたため、改修することになった。ま た、本町地区の東端に公共施設が計画された。その他には、コミュニティ活動の拠点や来街者と の交流を深める場として田町地区の中央にコミュニティ施設が計画された。

しかしながら、実際に行われた整備として、集会所は外壁の塗り直しが行われた程度で、室内 の壁の位置を変更するなどの大規模な改修には至らなかった。そのため、現在も郵便局の間取り のまま使用されており、集会所としては使いにくい状態となっている。また、構造も鉄筋コンク リート造 2 階建てとなっており、木造が多く建ち並ぶ商店街通りにおける街なみの調和や景観へ の配慮も課題として指摘できる。このように現在の集会所は、景観に対して配慮した点はみられ ない。一方で、本町地区の公共施設の整備は、実現されず現在は墓地となっている(図 5-2、図 5-5)。田町地区のコミュニティ施設も実現されず、現在は駐車場となっている。

P P

P

P

P

P

P

P

P P

P P P

P P

P

50m N 修景物件

対象区域

彩度 2 以下 彩度 2 超

無彩色

月極駐車場 空き地 P

・通りに面する外壁で最も面積の大きい色を計測した。道路に接する面が 2 面以上の場合は、幅員の広い道路側 の外壁の色を測定した。塀等により通り沿いから目視できない外壁は計測対象外とする。

図 5-7 空き地・駐車場の分布と外壁の色彩

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5-2-2 色彩分布と多様度指数

「街づくり協定」における色彩の 面については、建物の外壁は無彩色 を基本とし、有彩色の場合でも彩度 を 2 以下とする。また、広告物の色 彩についてもベース色を含め 3 色以 内とするなど具体的な数値や配色が 定められた。ここでは、通り沿いの 景観で最も目につきやすい外壁の色 について「街づくり協定」をもとに 検討していく。

①測定方法

天候(晴れ)ならびに時間(午後 13 時~15 時)を一定にし、マンセル のカラーチャートを使った視感測色

調査を行った。「街づくり協定」を参考に必要な色彩を検討した結果、JIS 標準色票(2163 色)の 中から色相 R、YR、Y、GY、G、BG、B、PB、P、RP の 10 色相を 2.5、5、7.5、10 の 4 段階と無彩色 の N を 0.5 刻みに分類したものを使用することにした。明度・彩度については 1.0 刻み又は 0.5 刻みとした。原則として、直接カラーチャートと比較し測定を行ったが、高い位置にある部位は、

間接の方法で測定した。外壁の調査において、複数以上の色彩が使われている場合には、面積の 広い部位の色を測色することにした。

②色彩分布(図 5-8)

修景された物件の外壁の多くは、N9~N9.5 の無彩色で塗られており、特に白色の漆喰が多くみ られた(写真 5-6-⑧⑩)。これは、「街づくり協定」において、外壁面積の 25%以上を漆喰又はこ れに類する仕上げとすることが求められているためである。無彩色の建物のほかには、有彩色の 建物があるが、なかには彩度 2 を超える建物も修景物件のなかに 1 件あり、課題としてあげられ る。彩度 2 を超える㉒番の建物は、外構のみの修景となっており、建築物の修景を行っていない ことが原因として考えられる(写真 5-6-㉒)。

修景を行っていない建物についてみてみると、彩度 2 以下の基準を満たしていない建物が点在 している。特に商店街通りに面して立地している傾向にあるため、景観の課題の一つとしてあげ られる(写真 5-6)。漆喰等の材料が推奨されるなかで、有彩色の色彩で塗られた外壁も数多く点 在しており、修景物件以外の建物についても、基準を適用する必要があると考えられる。修景物 件が限られているなかで、いかに景観を整備するかを考える必要がある。

・点の大きさは分布している色彩の数と比例している。赤枠は「街 づくり協定」における色彩基準である。

図 5-8 色彩分布

色相 色相

彩 度 明度

5R 5YR 5Y 5GY 5G 5BG 5B 5PB 5P 5RP 0 N

2 4 6 8 10

5R 5YR 5Y 5GY 5G 5BG 5B 5PB 5P 5RP 0

2 4 6 8 10 12 14

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③多様度指数

通り沿いにおける色彩の統一性を数値により示すために、

多様度指数 D を検討する。Simpson の多様度指数は最も代 表的な多様度指数の一つであり、下記の式で表すことがで きる注13)



S

i

Pi D

1

1 2

D は、0~1 の範囲にあり、多様性が高いほど 1 に近づき、多様性が低いつまり統一性が高いほ ど 0 に近い値となる。なお、色相については、2.5、5、7.5、10 の 4 段階しかないため、多様度 指数が低くなると予想される。そのため、色相の多様度指数は除外した。

表 5-6 のように、本町地区の北側(彩度)と田町地区の南側(彩度)において、多様度指数が 低い値を示した。本町地区の北側と田町地区の南側では、修景された物件が多く、特に修景物件 の多くが漆喰塗り壁だったことが一因として考えられる。その他の通りでは、多様性が高いこと がわかった。これは、街なみ環境整備事業による修景物件の例が少なく、点在していたことが要 因として考えられる。既存の建物のなかには、漆喰塗り壁の建物もいくつかあるが、色あせてお り老朽化している建物もあり、今後色彩の面で整備していくことが求められる。

おわりに

本稿では、総社市商店街地区を事例に取り上げ、街環事業によって創出された空間の整備状況 について「街づくり協定」に則して調査、分析を行った。その結果をふまえて商店街地区の街な みにおける問題点を抽出し、「街づくり協定」における整備方針の達成度と妥当性について検証し た上で、今後に向けた提案について考察する。

「街づくり協定」では、全国の街環事業のなかでも数少ない道路拡幅手法である壁面後退が導 入された。建物を壁面後退することで創出された空間は、通常の道路拡幅手法とは異なり、建物 を壁面後退させ、後退した空間を道路ではなく敷地として利用することにより建物前面に半公共 的空間をつくりだした。これにより、半公共的空間を緑化することで、潤いとゆとりのある街な み形成が可能となった。しかしながら、ほとんどの修景物件で「街づくり協定」において定めら れた 2m の基準を確保しているものの、多くは後退した空間を駐車場として利用しているため、緑 化した部分がみえないことが実情である。そのため、当初の目的であった「昔の風情を残した街 なみの保全」という点では課題が残っている。特に、区域の東側には歴史的に価値の高い伝統的 建造物が多く残っているため、街なみの保存に留意した景観整備が求められる。また、当地区は 総社宮の門前町として栄え、伝統的建造物と建て替えられた建物が混在していたことから色彩や 材料といった部分で街なみとしての統一性を持たせる計画だった注14)。色彩と材料に関する「街づ

注13)S は色彩の種数、Pi はある色彩の数が全体のなかで占める割合(相対優占度)を示す。

注14)総社市「総社商店街地区街なみ環境整備事業 街なみ環境整備方針報告書」(p.71、1995.3)では、建築デ ザインの誘導として材料・色彩の統一を重要視した計画だったことが記されている。

明度 彩度 明度 彩度 田町地区 0.74 0.69 0.71 0.50 本町地区 0.74 0.39 0.74 0.67 栄町地区 0.78 0.59 0.82 0.66 全体 0.77 0.57 0.78 0.63

北側 南側

商店街通り

表 5-6 多様度指数

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くり協定」の整備方針は具体的な数値を用いた定量的な基準だったため、街なみを統一化してい く上では適正な設定だったといえる。しかしながら、修景物件のなかでも「街づくり協定」を満 たしていない建物も一定数あったことから、「街づくり協定」の整備方針について今後再検討する 必要があると考えられる。

憩いの空間として小公園が 6 箇所整備される計画となっていたが、実際に計画された小公園は 3 箇所のみで、区域の 0.7%しか確保できていないことがわかった。特に、2 箇所の小公園につい ては、かなり小規模なものになっていた。そのため、子どもの遊び場や地域住民の憩いの場とし て使いにくいことが確認された。

本章では、壁面後退によって創出された半公共的空間を使った景観整備について明らかにして きた。この手法の最大の特徴は、建物の修景と道路拡幅を同時に行い、半公共的空間を緑化する ことで、街なみ全体の住環境・景観整備が図れる点にある。しかしながら、後退した空間を駐車 場にするといった半公共的空間の使い方に課題があるため、今後「街づくり協定」の整備方針の 見直しを含めて再考していく必要がある。この手法は、伝統的建造物が多く分布する地区や接道 不良住宅が多く分布する地区に応用できる可能性があり、半公共的空間の一部を緑化することで 街なみ全体の住環境・景観整備につながることが期待される。事業全体の特徴として、最初の 3 年間に全修景物件のうち約半数が実施された。その多くは、隣同士もしくは近接した建物におい て修景が連続的に行われ、近くの建物同士で連続して実施されたことから相乗効果により一部の 地区において街なみが改善された。さらに、初期の修景事例は後退した空間を緑化し駐車場を設 けていなかったことから一定の成果があったと考えられる。しかしながら、その後の修景物件は 駐車場を設けることが前提となっている建物が多いことから、今後他の地区で応用していく際に は注意が必要である。色彩・材料の統一においては、一定の成果が確認された。本事業は、修景 が実施された建築物において一定の成果がみられたものの建築物以外の空間利用に関して課題が みられたため、今後は修景整備後の空間利用についても検討する必要がある。具体的には、後退 した空間の緑化率等を定めることで街なみの改善に対応していくことが必要となるだろう。

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