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1 明度または彩度の多様度指数が 0.50 以下のまちなみ

ドキュメント内 島根大学審査学位論文(1/2)(k595) (ページ 161-167)

③門・塀

写真 8- 1 明度または彩度の多様度指数が 0.50 以下のまちなみ

【第五章】総社市商店街通りの本町 地区北側(彩度 0.39)

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【形態の統一性】

形態意匠についても色彩と同様に伝統的なまちなみでは、一般的に切妻平入りで二階建ての建 物が多く、統一されたまちなみとなっている。芦原氏は、「イタリアのカンポ広場をとりまく建築 群はよく見ると、軒高、階数、窓割等はまちまちであるが、組積造の外壁は時代の経過とともに 渾然一体化し、「多様の統一」を果たした壁面は、境界線として外部空間を強く規定している。」

としている注4)。このように、どれか一部が統一されることで、「多様の統一」が果たされまちな みとして評価されると考えられる。日本の伝統的なまちなみを細かくみていくと異なる形態をし ているが、原則として一部分を統一性のあるものにすることで美しい景観として評価されている。

市街地でも同様に「高さのみを統一させること」や「2 階以上の部分を統一させること」が必要 だろう。特に、第六章で取り上げた岡山市ではセットバック方式という独自の手法により街路空 間を形成しているため、セットバック方式の形状のみを統一させることも有効な景観整備だとい える。第七章で取り上げた鳥取市の防火建築帯の例をみても、1 階部分は多様な形態意匠となっ ているが、2 階以上の部分はある程度統一された形態意匠となっているため、「日本の道 100 選」

としても選ばれ、評価されている。このように市街地の街路空間も多様性のなかに統一性を織り 交ぜていくことで、まちなみとして評価することが期待できる。

③壁面後退によって生まれた空間の利用方法

街路空間のなかには、建築物が後退することで生まれる後退空間がある。本研究では、後退す ることで生まれた空間についても言及してきた。本研究で明らかになった問題点をふまえて後退 した空間の利用方法について提案していく。

伝統的なまちなみの多くは、駐車場がまちのなかにほとんどないことから空いた空間を駐車場 として活用している。これらは、壁面後退した空間にもあてはまり、後退することで生まれた建 築物の前面空間のほとんどを駐車場として利用している。町家が多く分布する伝統的なまちなみ では、壁面線がそろっており、まちなみの連続性があるが、第二章、第三章、第四章、第五章で 取り上げた地域では後退した空間に対する景観整備の方針が定められていないために、連続性が 失われているところがいくつかみられた。こうしたことから、敷地の奥に空き地を計画すること で建物のファサードの連続性を維持することが求められる。第四章で取り上げた街路空間では、

大規模な駐車場を通りの奥に計画することで、連続性を乱さないようにしていた。また、町家以 外の地区では、塀や植栽等によりゆるやかにファサードをつなぐことも必要になってくる。第二 章で取り上げた塩見縄手地区では、塀の高さや材料を統一することでまちなみとして評価されて いた。そのため、建物が統一されていなくても、外構空間をゆるやかに統一することが期待され る。

修景事業によって新たに再生していく街路空間では、建て替え等により個別の建物に対しては 計画しやすいが、まちなみ全体で連続性をもたせることは困難であるため、街づくり協定や景観 基準を定める際に、まちなみ全体の計画を定めた上で、事業期間終了後も継続して行っていくこ とが重要だと考えられる。

注4)芦原義信『街並みの美学』(岩波書店、pp.84-85、2001.4)。

153 一方で、市街地の多くは、歩行空間にゆとりをもたせることや、まちなみに潤いをもたせるた めに緑化を行っているところが多数みられた。しかしながら、後退距離や後退した空間の形状が まちなみ全体で統一されていないことで、新たな市街地景観として取り入れられた後退空間が評 価されていない。そのため、今後は後退距離に対して上限値を定め、壁面後退に対して統一性を 組み込んだ計画にしていく必要があろう。その際には、後退した空間の利用方法について緑化率 なども検討することが期待される。本研究で取り上げた第六章の岡山市では、総合設計制度とは 異なる方法の壁面後退だったが、一般的な総合設計制度による公開空地についても同様のことが いえるだろう。それぞれの建物が個別に考えた公開空地を設けるのではなく、まちなみの連続性 を断ち切らないような空間をつくっていくことが求められる。

8-3 今後の課題と展望

今後の課題について簡単にふれておく。本論文では、3 つの都市類型をもとに街路空間の景観 特性について分析を行ってきたが、次の点において不足していた。まず一つ目は、大都市との比 較である。大都市に関しては、数多くの研究があるが、本論文のような地方都市を対象とした街 路空間と大都市の街路空間の比較についても検討することで、より詳細な日本の街路空間の景観 特性が把握できたと考えられる。もうひとつは、形態意匠、色彩といった街路空間に存在する景 観構成要素以外も含めたより詳細な分析である。本論文では、外壁の色彩において最も大きい面 積について測色したが、材料ごとに測色することや、開口部、屋外広告物、格子といったファサ ードを構成する要素ごとの測色をすることでより詳細に街路空間が理解できた考えられる。

最後に展望について述べていく。本論文では、3 つの地域類型をもとに街路空間を明らかにし てきた。なかでも戦災復興や火災復興によってできた街路空間は、都市計画としては価値がある ものの建築物や景観については統一性がとれておらず、評価されてこなかった。このような街路 空間・都市空間の景観特性をいかにして評価していくかが今後の景観施策において重要になって くると考えられる。そのためには、戦災復興や火災復興といった計画によってつくりだされた都 市空間の形成過程を明らかにし、その結果を踏まえて、景観特性を明らかにする方法を提示して いく必要がある。これにより戦後の都市計画や建築行為によって創出された都市空間の景観特性 が把握でき、あらたな景観施策の方向性が的確に提案できるだろう。

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謝辞

本研究を進めるにあたり、6 年間という長い月日のなか終始御指導および御鞭撻をいただいた 総合理工学研究科総合理工学専攻 中野茂夫教授に、心より感謝を申し上げます。特に、日本建 築学会優秀卒業論文賞・優秀修士論文賞や日本学術振興会特別研究員 DC への応募の際には、多大 なるご指導をいただきました。

博士前期課程の頃からお世話になり、本研究でも副査として御指導頂いた田中直人特任教授、

小林久高講師に感謝申し上げます。さらに、本論文を御精読いただきました大庭卓也教授に心よ り感謝申し上げます。

なお、本研究の一部は、JSPS 科研費(課題番号 15J12478)の助成を受けたもです。感謝申し上 げます。

そして、本研究における各都市の景観施策等において、次の方々へのヒアリング調査や資料提 供により御支援をいただきました。心より感謝申し上げます(順不同)。

木綿街道振興会の皆様

神門 香菜氏(出雲市 都市建設部 建築住宅課 景観係)

藤井 武 氏(出雲市 都市建設部 まちづくり推進課 管理係)

前原夕美子氏(総社市 建設部 都市計画課)

谷 義仁 氏(元岡山県 建築課、元岡山市 建設局 建築指導課)

守屋 正義氏(岡山県 土木部 都市局 都市計画課)

中島勤四郎氏(一般社団法人 岡山県建築士会)

上田 恭嗣氏(ノートルダム清心女子大学 人間生活学部 人間生活学科)

石田 尚昭氏(岡山市 都市整備局 庭園都市推進課)

宮本 健 氏(鳥取市 経済観光部 経済・雇用戦略課 商業振興係)

有元 薫治氏(鳥取市 都市整備部 中心市街地整備課)

所蔵資料の閲覧ならびに複写に際して、次の機関に御支援をいただきました。心より感謝申し 上げます(順不同)。

島根県立図書館、島根大学付属図書館(本館・松江キャンパス)、平田図書館、出雲中央図書館、

大社図書館、総社市図書館、岡山県立図書館、鳥取県立図書館、青谷町中央公民館図書室、鳥取 市立図書館、鳥取県立公文書館

最後に、6 年間の研究室生活のなかで、支え続けてくれた中野研究室の皆様に感謝申し上げま す。ありがとうございました。今後も島根大学で培った経験を活かして研究に取り組んでいきた いと思います。

平成 29 年 1 月 井上 亮

ドキュメント内 島根大学審査学位論文(1/2)(k595) (ページ 161-167)