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16 石橋町の醤油屋

ドキュメント内 島根大学審査学位論文(1/2)(k595) (ページ 46-51)

屋根については、無彩色の明度 2〜4 のものが多数を占めている。黒色の瓦の建物がそれに該当 しており、屋根に関しては一定度統一が保たれていることがわかる。

門・扉・塀に関しては、色相、彩度、明度ともに広く分布しており、特に特徴が見出せない。

無彩色においても同様である。石橋町、内濠地区では、新建材の門・扉・塀が多く使われ、統一 感のない色彩となっていることがうかがえる。

多様度指数は、石橋町では非常に高い数値を示したため多様性が高いといえる。通り⑨につい ては、明度において 0.45 と比較的低い数値を示したため、統一性が高いといえるだろう。

おわりに

本章では、松江の伝統的な町並みを取り上げ、(1)沿道の建築物、(2)建築物以外の景観構成 要素、(3)色彩の観点から調査、分析を行い、より多角的に街路景観の特徴を明らかにしてきた。

その結果をふまえ、松江の景観施策の問題点を抽出し、今後に向けた提案としたい。

まず伝統美観保存区域の指定されている塩見縄手地区は、武家屋敷の町並みとして知られてい るように、長い年月をかけて景観が整備されてきている。現在でも、武家屋敷の保存に適した景 観形成基準が設けられ、個別の建物についても適切な修理等が施されている。また電線の地中化 や屋外広告物の撤廃などによって良好な景観が保全されていることがあらためて確認された。色 彩についても、屋根については黒の和瓦を基調とし、門・扉・塀については茶系統のもので統一 感のある景観が形成されていることが明らかとなった。

一方で、北堀町では、景観形成区域に指定されているものの、伝統的建築物の割合が低く、し かも点在していたことが明らかとなった。また北堀町には既存不適格の 5 階建ての建物がいくつ か見られたほか、その周辺にも中層の建物が存在しており、松江城の眺望を阻害している要因と なっていた。また駐車場をみてみても、セットバック型や全面の月極駐車場が点在しており、連 続した町並みを形成することが困難だと想定される。一方、色彩についても、松江市では比較的

・写真は、平成 28(2016)年 4 月に撮影し たものである。

写真 2-16 石橋町の醤油屋

37 緩い色彩基準になっているにもかかわらず、基準外もしくは基準境界のぎりぎりのものが点在し ており、統一性のないことがあきらかとなった。今後、景観形成区域の見直しに迫られるだろう が、松江市は北堀町景観形成区域の景観形成の方針として「城下町らしさを残す歴史と伝統を感 じさせる景観を、次世代を担う子どもたちへ継承していくもの」としているが、とりわけ北堀町 景観形成区域は広範に設定されており、伝統的建築物が一部分に限定されているため、実態を反 映していないことが問題視される。特に旧武家地で屋敷型の建物が建ち並ぶ地区と、旧町人地で 町家型の建物の立地する地区とが、同一の基準で規制されている現状は看過できない課題である。

区域内の伝統的建築物の特徴にあわせて景観形成区域の範囲を再設定し、例えば、旧武家地に関 しては伝統的建築物の多く立地する通り⑥に限定することや、旧町人地の通り④⑦に関しては後 述する石橋町との連携も視野に入れていく必要があろう。また通り②は連続していないため別の 区域にするのが妥当であろう。景観計画区域として取り上げた石橋町(通り⑧)では、北堀町の 景観形成区域と比べても、伝統的建築物が多数残されており、今後の景観整備において高いポテ ンシャルを持っていることが明らかとなった。とはいえ、石橋町では、面被り・補修された建物 が多数存在しており、色彩においてもあまり統一性のないことも明らかとなった。さらに空き家 がすべての通りの中で最も多く分布しており注19)、その理由として木造の古い町家型の店舗が多く、

商業の衰退にともなう店舗の閉鎖や住民の高齢化などが原因と推測される。今後、石橋町の現状 に照らし合わせた景観形成区域をあらたに設定し、良好な町並みを整備していくことが期待され る。特に、石橋町では面被り・補修の施された老朽化した町家が多く、それらを修景していくに あたって、外壁・建具・庇の形態や色彩の基準となり得る景観形成基準を用意する必要があろう。

注19)空き家については、ゼンリン住宅地図を用い、居住者等の記載がない建物を集計し、全ての通りで 352 件 のうち、石橋町では 12 件存在していた。

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第三章

切妻妻入造りの残るまちなみ再生

‐平田町木綿街道の街路空間‐

はじめに

第三章では、松江市につづいて伝統的町並みの保存活動に力を入れている平田町についての景 観政策の取り組みと景観特性について明らかにする。具体的には、商家町として知られる木綿街 道(島根県出雲市)について取り上げる。近年、景観法や歴史まちづくり法の制定にともない、

歴史的景観を生かしたまちづくりが本格化している。そうしたなか、重要伝統的建造物群保存地 区だけでなく、さまざまな行政支援による修理・修景事業が行われており、伝統的町並みが形成 されつつある。こうした修理・修景事業により景観整備を実施し、町並み再生を果たした地域を 対象とすることで、今後、重要伝統的建造物群保存地区以外の地域における景観整備や町並み再 生の一助となることが期待される。

本論に入る前に、分析の枠組みとして以下の二点を提示しておく。第一に、出雲市及び平田町 の景観政策における問題点についてである。出雲市は、現在景観法における景観計画を出雲市全 域に設定している。そのなかで、平田町が現在景観計画のなかでどのような位置づけにあるのか について検討する必要がある。また、平田町では、修理・修景事業が行われており、その事業の 特徴や制度について把握していく。

第二は、平田町の景観特性である。平田町は、伝統的建造物と修理・修景物件をあわせた割合 が非常に高く、伝統的な町並みを維持している。また、妻入造りの建物や出雲格子、海鼠壁、左 桟瓦など特徴的な形態意匠をしているため、これらの分布状況について把握する必要がある。ま

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た、出雲市景観計画では、色彩について定量的な基準が設けられているため、色彩の分析も行う 必要がある。これらを総合的に分析することで、平田町木綿街道の現状と課題について明らかに する。

3-1 出雲市平田町木綿街道における景観政策の課題

平田町木綿街道注1)では平成 19(2007)年から行政支援による修理・修景事業が実施されてい る。なかでも平田町の木綿街道振興会による町並み形成に関する取り組みは、平成 22(2010)年

注1)「木綿街道」という名称は、元来からのものではなく、近年になって地域住民の間に定着した愛称である。

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主要な施設 29.加藤醤油店 34.石橋酒造 36.本石橋邸 37.木綿街道交流館 51.Cafeことん 58.持田醤油店 63.來間屋生姜糖本舗 69.momen‐ya 宇美神社

極楽寺

平田船川

新町 対象物件

事業による修景物件

片原町 宮の町 P 駐車場

協定範囲

図 3-1 木綿街道の概要

41 度の「地域づくり総務大臣表彰」、平成 23(2011)年度の

「あしたのまち・くらしづくり活動賞・内閣官房長官賞」、

平成 24(2012)年度の「しまね景観賞 景観づくり貢献 賞」を受賞するなど先進的事例として評価されており、

対象として取り上げることには一定の意義があると考え られる。けれども既存の町並みに適した修理・修景が行 われていない事例が散見されるなど今後に向けた課題も 多い。こうした事業がはじめられた現時点だからこそ、

修理・修景のあり方を見直すことが容易であり、その適 切な方法を見出すためにも、いま一度、現況の町並みを 精査した上で、これまでの事例を再検証することに意味 があると考えられる注2)

3-1-1 木綿街道の概要と歴史

①木綿街道の概要

出雲市平田町の特産品「平田木綿」は、江戸時代末期 から明治初期にかけて、大阪や京都で好評を博した。こ のため、いつしか「木綿街道」注3)と呼ばれるようになっ た。平田町は新町、片原町、宮ノ町の 3 つに分かれてお り、かつては船川の水運で栄えていた(図 3-1)。現在は 宍道湖の埋め立てとともに衰退し、かつての商家町の面 影は失われている。木綿街道の一部では道路拡幅が行わ れ、いくつかの歴史的建造物も取り壊されたが、登録有 形文化財である本石橋邸注4)(写真 3-1)をはじめ、切妻 妻入塗壁造りの商家が残る町並みとして知られている

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