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14 色彩基準外の建物(B)

ドキュメント内 島根大学審査学位論文(1/2)(k595) (ページ 66-72)

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のなかには、色彩に関する修景事項が全く書かれていない。

そのため、木綿街道における色彩の現状を知ることは一定 の意義があると考えられる。

①測定方法

天候(晴れ)ならびに時間(午後 13 時~15 時)を一定 にし、マンセルのカラーチャートを使った視感測色調査を 行った。出雲市色彩基準を参考に必要な色彩を検討した結 果、JIS 標準色票(2163 色)の中から色相 R、YR、Y、GY、

G、BG、B、PB、P、RP の 10 色相を 2.5、5、7.5、10 の 4 段階と無彩色の N を 0.5 刻みに分類したものを使用するこ とにした。明度・彩度については 1.0 刻み又は 0.5 刻みと した。原則として、直接カラーチャートと比較し測定を行 ったが、高い位置にある部位は、間接の方法で測定した。

外壁の調査において、複数以上の色彩が使われている場合 には、面積の広い部位の色を測色することにした。

②外壁の色彩分布

色相-明度、色相-彩度の分布図をまとめたのが、図 3-8

である。色彩分布をみると、無彩色の N9 の色彩がもっとも多いことが分かった。これは、木綿街 道の町並みが漆喰塗り壁で統一されているためだと考えられる。有彩色については、ほぼすべて の建物が暖色系の R、YR、Y 系統の色彩の範囲におさまっている。彩度は 4 以下の割合が多いこと がわかる。しかしながら、R、YR の基準の上限である彩度 6 のものや Y の上限値である彩度 4 の ものも一定数確認できた。出雲市の色彩基準が非常に甘く設定されていることに鑑みると、その なかで基準の上限いっぱいというのは、景観を阻害する要因になっているとみてよい。これらの 建物のなかには、伝統的建築物も含まれる(写真 3-13)。また、暖色系の色以外に B の色彩がみ られた。出雲市色彩基準において暖色系以外の色彩においては、上限値が彩度 2 以下となってい るが、彩度 4 という建物が 1 件あった(写真 3-14)。これは、新建材の建物となっており、非伝 統的建築物に該当する。明度については、4 以上のものが多く、特に明度 8~9 が多い。分布をみ てみると、高明度のものが多数あるが、分布は多岐にわたっている。Y 系統の色において高明度 であり、R や YR 系統の色においては、Y 系統と比較して低明度であることがわかる。

③多様度指数(表 3-6)

通り沿いにおける色彩の統一性を数値により示すために、多様度指数 D を検討する。Simpson の多様度指数は最も代表的な多様度指数の一つであり、下記の式で表すことができる注16)

注16)S は色彩の種数、Pi はある色彩の数が全体のなかで占める割合(相対優占度)を示す。

・平成 28(2016)年 8 月に筆者が撮影した ものである。

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S

i

Pi D

1

1 2

D は、0~1 の範囲にあり、多様性が高いほど 1 に近づ き、多様性が低いつまり統一性が高いほど 0 に近い値と なる。なお、色相については、2.5、5、7.5、10 の 4 段 階しかないため、多様度指数が低くなると予想される。

そのため、色相の多様度指数は除外した。多様度指数に ついては、町の通りごとと全体の 2 つにわけて算出した。

まず、新町についてみていく。東側と西側の通りともに明度は 0.5 程度となっており、非常に 統一性が高いといえる。彩度については、西側の通りにおいて高い統一性を示したが、東側の通 りで 0.71 という結果になり、多様性が高いことがわかった。これは、新建材の建物が東側に多い ことが要因として考えられる。伝統的建築物とは異なり、新建材の建物の多くは、漆喰塗り壁の 建物よりもタイル張りやサイディング、タイルといった外壁仕上げ材料を使用していることから、

色彩が多様になっていると考えられる。次いで、片原町である。片原町の北側の通りにおける明 度と彩度は非常に高い統一性を示した。これは、漆喰塗り壁の建物が多数を占めていることと、

西の端において漆喰仕上げの蔵が建ち並んでいるためだと考えられる。南側の通りにおいては、

0.6 を超える数値を示しており、多様性が非常に高い。東側の建物は、新建材の建物がいくつか あり、漆喰塗り壁の建物が少なく、老朽化した建物が多いため統一性がなくなったと考えられる。

宮ノ町については、北側、南側ともに多様性が高いことがわかった。これは、非伝統的建築物の 割合が高いためだと考えられる。タイル張りやサイディングといった新建材の外壁仕上げにより、

多様性が高くなっている。また、宮ノ町は木綿街道のなかでも、交差点を挟んでいるため、木綿 街道全体で考えると、つながりが薄い。特に妻入りの伝統的建築物も少ないため、今後統一性を 確保していくことが困難であるといえる。

おわりに

近年、平田町では、伝統的町並みの整備に向けて、行政支援による修理・修景事業を行ってい る。そこで特徴的な手法としてみられたのは、単なる補助金の交付にとどまらず、まちづくり団 体を中核とした住民協定による修景基準の策定であり、町並み形成に向けた住民の「自主性の醸 成」であった注17)。平田町の町並み形成の課題については、修景基準および事業内容が現況の町並 みに適合しているのかどうかという観点から検討し、今後に向けた提言としたい。

平田町の修景基準をみてみると、現況の町並みでは平入りの建物が一定の割合で存在している にもかかわらず、妻入り造りを原則としていることが問題視される(表 3-3)。今後、大規模な妻 入り塗込造の商家と一般的な平入りの町家の特性にあわせた二段階の修景基準を定める必要があ ろう。平田町では「木綿街道沿線建物修景事業」や木綿街道振興会、学生によってすでに 25 棟以

注17)出雲市へのヒアリングでも「住民同士で街並み景観への意識を高めてほしい(まちづくり団体を中心に)」

との解答が得られた。

表 3-6 外壁の多様度指数

明度 彩度 明度 彩度 東 0.54 0.71

西 0.56 0.42 北 0.38 0.49 南 0.66 0.78 北 0.53 0.78 南 0.62 0.71

通り 全体

新町 片原町

宮ノ町 0.60 0.75

0.69 0.57

0.66 0.56

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上の修理・修景事業が行われている。表 3-4 に示すように、出雲格子や海鼠壁の設置など現況の 町並みの特性を取り入れた修景が行われていると評価される。しかし、海鼠壁にタイルを用いた 修景事例のように、細部の意匠に関する基準にあいまいな部分があるといった問題も確認された。

また、色彩については、修景事業の内容に盛り込まれていないことが課題として指摘できる。

さらに、出雲市景観計画において平田町の木綿街道は、重点的に景観整備を行う景観形成区域に 現在指定されておらず、今後町並みを保存していく上で、区域の見直しをする必要がある。現状 の色彩における景観特性は、新町や片原町の北側の通りで高い統一性を示した。これは、伝統的 建築物が多く、その建物の多くが切妻妻入りの漆喰塗り壁だったためだと考えられる。今後は、

妻入り造りの建物以外の伝統的建築物においても統一性の高い色彩を確保するために、色彩基準 をきめ細かに定める必要があると考える。特に、明度は白系の高明度の建物が多く見られたが、

彩度においてばらつきがかなりあったため、彩度の色彩基準の上限値を見直すことで、木綿街道 の町並み全体の統一性を維持していくことが重要伝統的建造物群保存地区への選定につながると 考えられる。そのため、今後、重要伝統的建造物群保存地区への選定を視野に入れたよりきめ細 やかな修景基準を設定することが求められよう。

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第二部

既存のまちなみとは異なる新しいまちなみの形成を図った都市

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第四章

行政支援による観光地再生

‐大社町神門通りの街路空間‐

はじめに

第四章では、既存の街なみとは異なり、新しい街なみを形成した大社町についての景観政策の 取り組みと景観特性について明らかにする。具体的には、出雲大社の平成の大遷宮と連携して整 備された神門通り地区(島根県出雲市)について取り上げる。

近年、市町村合併によって急遽、伝統的町並みの形成に迫られることになった都市は多いと考 えられるが、その典型例が出雲市である。出雲市では平成 17(2005)年に旧大社町と旧平田町町 が合併し、伝統的町並みを中心としたまちづくりが開始された。大社町門前町では平成 23(2011)

年から行政支援による修理・修景事業が実施されている。現在この事業は途中の段階ではあるが、

おおよそ建物の修理・修景が終わっているため、現況の町並みを精査した上で、これまでの事例 を検証していく。

本論に入る前に、分析の枠組みとして以下の二点を提示しておく。第一に、出雲市景観計画及 び修景事業等の景観政策における問題点についてである。特に近年は、多くの自治体でまちづく り交付金(現都市再生整備計画事業)や社会資本総合整備交付金を活用した町並み形成に関する 取り組みが行われているが、その実態についてはいまだ明らかにされていない注1)。そのため、行 政支援による修理・修景事業の特徴や制度の問題点とともに出雲市の景観政策についても把握す

注1)まちづくり交付金事業については、谷口守ほか「まちづくり交付金活用自治体による評価指標設定と自己評 価の傾向分析」(『都市計画論文集』46、pp.1003-1008、2011)等があるが、修景に関する研究はいまだない。

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