2018年8月17日
小児がんの生存率
急性リンパ 性白血病の 生存率は、
90%以上
小児がん全体の生存率は約70%
➡約30%は亡くなってしまう
過去5年間の当科での小児がん終末期医療
≪当科で原病死した小児がん患者12例のまとめ≫
疾患: 脳腫瘍5例、血液腫瘍6例、腹部固形腫瘍1例
死亡時年齢: 中央値 9.5歳(1~15歳)
訪問看護・診療の介入: 脳腫瘍3例*最近2年間の症例はすべて介入あり
終末期在宅医療の妨げ自宅が遠方、高カロリー輸液、疼痛緩和不良、
家族の疾患受容の困難さ
緩和的な化学療法や放射線照射、輸血
脳腫瘍・血液腫瘍における終末期医療の比較
脳腫瘍患者⇒在宅期間が長い(中央値120日)・終末期の期間が比較的長い(中央値7か月)
・医療的ケアは必要であるが、輸血や点滴での 緩和的化学療法の必要性は低い
➡症例により在宅医療が可能
血液腫瘍患者⇒在宅期間が短い(中央値10日)・終末期の期間が短い(中央値3.5か月)
・輸血や緩和的化学療法の必要性が高い
・疼痛の頻度が高く、コントロール困難なことがある
➡在宅医療の更なる充実がなければ、困難な傾向 特に脳腫瘍患者では、訪問看護ステーションや訪問診
療の介入により終末期に自宅で過ごすことが可能。
訪問看護や訪問診療の利点
① 自宅に早期に帰ることができる。
② 自宅で医療を受けることができる。
③ 入浴や食事など、日常生活を送ることができる。
④ すぐに相談できる医療者が近くにいるため、家族や児の不安 が軽減される。
⑤ 緊急時にすぐに対応し、主治医と連携をとることができる。
⑥ 家族の介護負担が軽減される。
⑦ 児がなくなった後も、家族を気にかけてもらえる。
ご家族からは・・・
『訪問看護師さんにきてもらって、よかった!』
目的 小児がん患者終末期訪問看護における 現状と課題の把握
方法 質問紙票による実態調査
調査期間 2017年6月から2017年9月
対象 北九州・筑豊医療圏、福岡医療圏の一部地域 の訪問看護ステーション 89施設
回答 訪問看護ステーション54施設より回答。
回収率は60.7%
小児がんの終末期訪問看護に関するアンケート調査
ご協力いただき ありがとうございます
①18歳未満の訪問看護経験(n=54)
②小児がん患者の終末期訪問看護の受け入れの可否(n=53)
★受け入れると回答した全施設が 自宅での看取りが可能と回答
★受け入れる、場合によって受け入れる と回答した施設⇒各地区2施設以上
★4割の施設が病名が告知された時点 での介入が望ましいと回答 条件が整えば受け入れ可能な施設が多い 32施設
(59%) 22施設
(41%)
あり なし
17施設 (32%) 15施設
(28%) 21施設
(40%)
受け入れる 場合により受け入れる 受け入れられない
★これまでに訪問した小児患者数
➡約半数が11名以上
★小児の全年齢に対応可能な施設数
➡23施設
★小児血液腫瘍の患者経験のある施設数
➡12施設
小児がん対応可能な訪問看護 ステーションが増加傾向
2018年8月17日
③終末期小児がん患者対応可能な訪問看護ステーションに おける医療処置(n=31)
27 28 19 18 21 9 6
0 2 6 6
2 1
3
4 6 7 8 21 22
高カロリー輸液 オピオイド鎮痛薬の経口投与 PCAポンプの管理(持続静注) PCAポンプの管理(持続皮下注) 抗がん剤以外の薬剤の静注 抗がん剤の静注 輸血
できる 場合によってできる できない 実施可能
④小児がん患者の終末期訪問看護を実施する際に障壁となる事柄 (n=50)
2 5
9 9 11
16 20
22 24 24
35
0 5 10 15 20 25 30 35 採算が取れない
24時間対応できない 緊急時の体制が整っていない 医療機関からの情報がとりにくい 利用できる社会資源が乏しい 医療処置が難しい 病状の判断が難しい 子供や親への関り方が難しい 往診医がいない スタッフ不足 小児看護に慣れていない、知識不足
3 2 2 2 3 3 4
6 6
12
20
0 5 10 15 20
その他 退院支援 家族との信頼関係 定期入院の受け入れ先 24時間サポート体制 家族の受容 往診医 家族の精神支援 福祉サービスの充実 訪問看護師の教育研修 病院との連携
⑤小児がん患者の終末期訪問看護を実施する際に必要な事柄
(n=35、自由回答) ある脳腫瘍患児の終末期の経過
初診時 13か月
脳 腫 瘍 と 診 断
悪 性 転 化
5か月 6か月 病 状 悪 化
複視
外来
放射線照射 10か月 再 度 病 状 悪 化
初回医療 連携介入
~在宅医療介入までの経過~
注射 薬剤
ステロイド 水 頭 症 発 症
入院
頭痛 嘔吐
外来 入院
ステロイド ステロイド
顔面神経麻痺・四肢麻痺
~在宅医療介入後の経過~
14か月 15か月
放射線照射 ステロイド
四肢麻痺・顔面神経麻痺 嚥下障害・構音障害 膀胱直腸障害
注射薬剤
外来 外泊
・多職種との関わり:医師、メディカルソーシャルワーカー、理学療法士、
作業療法士、言語聴覚士、病棟兼外来看護師、訪問看護師、院内保育士
・訪問看護回数:6回
・在宅療養期間(外泊を含む):18日 訪問看護
呼吸苦 永 眠 カ
ン フ ァ レ ン ス
カ ン フ ァ レ ン ス 医
療 連 携 再 介 入
車 い す
間 欠 導 尿
介 護 用 ベ ッ ド
吸 引 器
中 心 静 脈 栄 養 在
宅 酸 素 入院
導入した福祉 用具・手技
小児がん患児の終末期在宅医療の特徴
①高度な医療的処置が必要
採血、点滴(末梢、中心静脈)、高カロリー輸液、経管栄養、
導尿、尿バルーン管理、吸入・吸引、酸素投与、抗がん剤の 内服・静注、オピオイドの内服、PCAポンプによるオピオイド投 与、輸血など
➡訪問看護ステーションでできないことは、主病院で行っている。
②疾患の増悪スピードが速い 必要な処置や装具などが、すぐに変わる。
家族が手技的にも精神的についていけない。
➡今後起きることを予測して、準備をすすめていく必要がある。
また、家族にも予測しうることを、主治医から前もって話して おくことが大事。
2018年8月17日
小児がん患児の終末期在宅医療の特徴
③児の症状把握が困難
小児がんの終末期には、75~90%に疼痛を認める。
自分で症状を訴えることができず、疼痛の評価が難しい。
➡どのような症状が起こり得るか、主治医に前もってきく。
ペインスケールなどのツールを使って、評価する。
家族にも児の変化がないかどうか聞く。
バイタルサインの変化や表情の変化に気づくことが大切。
④家族や児との関わりが難しい
・主治医との結びつきが強く、他者をすぐには受け入れられな い。
・入院中の医療と比較するため、家族の求めてくる医療レベルが 高くなりがち。
・子供の状態が日々悪化していくため、家族の不安が強い。
➡訪問看護や訪問診療を早期に導入し、児や家族の状態を 早めに把握する必要がある。家族の不安要素に対して、
こまめに対応していくことが大切。
在宅移行する家族や児の不安
・患児の苦痛をしっかりとってあげられるかしら?
・主治医とすぐに連絡がとれるかしら?
・家にいるときに急変したらどうしよう?
・子供の介護と家事をこなせるだろうか?
・病状の変化に合わせて、介護できるだろうか?
・新しい看護師さんと仲良くなれるだろうか?
当科では
・訪問看護ステーションを早期に導入
・緊急時や予期される症状への対応について、文書で説明
・当科との連絡を終日可能にする
・病棟・外来での担当看護師を統一する
・家族同席のもと多職種カンファレンスを行い、情報を共有
・救急隊に対し『急変時の方針』に関する情報提供書を作成
当科での訪問看護師・診療医との連携
1.退院前の多職種カンファレンスの実施 家族同席のもと、多職種で、
①児の病状経過、
②今後予想される経過、
③必要となってくる処置や福祉用具、
④緊急時の連絡体制と対応、
⑤ご家族と児の希望
などを皆で共有する。また顔が見える関係づくりを行う。
2.訪問看護ステーションとの密な連絡体制を作る
何か症状で困ったときは、主治医や当直医への電話連絡。
3.緊急時の受け入れ態勢
24時間受け入れ可能であることを明確にしている。
4.訪問看護ステーションの早期の導入 家族や児との信頼関係構築のため
5.家族が疲弊した場合など、定期入院の受け入れ
まとめ
小児がん全体で約30%が亡くなる。患児やご家族のほとんどが、在宅での療養を希望
される。小児がん特有の処置や問題点はある。
主病院をはじめとして、多職種の連携が大切であ る。
訪問看護ステーションの介入のあったご家族からは、『訪問看護師さんが来てくれて、よかった』との声も。
小児がんのお子さんたち、ご家族の在宅療養の 希望を叶えるためにも、皆様の協力が必要です!!
どうぞよろしくお願いします。
ご清聴ありがとうございました
謝辞
本アンケート調査にご協力いただきました 訪問看護ステーションの皆様に、
心より感謝いたします。