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R² = 0.7691

300 350 400 450 500

350 450 550 650 750

穂 数 ( 本 /㎡ )

幼穂形成期の茎数(本/㎡)

Ⅲ 「あきたecoらいす」の必要性と取り組みについて

1 背景と成果

(1)背景

米の産地間競争が激化する中、米の品質向上とともに化学農薬及び化学肥料に依 存した栽培技術からの脱却が必要となってきている。

消費者からは、減農薬・減化学肥料で環境に配慮した安全・安心な農産物の供給 が望まれており、生産者からは省力・低コスト、農薬被曝の回避、特別栽培米の有 利販売による所得の向上が求められている。これらを受け、農業試験場では平成16 年に減農薬に関するプロジェクトを立ち上げた。

(2)安全・安心・あきた米プロジェクト(平成16~19年)とその成果

本プロジェクトは病害虫防除のための農薬散布回数、農薬コストの削減、米の有 利販売、有機質資源の有効利用、環境負荷軽減効果の増進等について検討し、総合 的減農薬防除で広域的なプロジェクトであった。

いもち病については、伝染源排除技術導入(育苗期防除の徹底)で本田における 穂いもち防除の削減について実証を行った。

虫害では、斑点米カメムシについて加害種を 明らかにし、ネオニコチノイド系薬 剤の出穂期10日後1回散布による防除で、防除回数を削減できた。

環境保全については、実証ほ場周辺の河川の農薬濃度を調査し、問題のない防除 法であることを確認した。また、米の生産・販売戦略については「コミュニケーシ ョン」活動の重要性が再認識された。

(3)あきたecoらいすプロジェクトの開始(平成20年~24年)

平成20年からは減農薬防除体系を秋田県産米のスタンダードとする「あきた e c o ら い す 」 プ ロ ジ ェ ク ト を 立 ち 上 げ た 。 こ の プ ロ ジ ェ ク ト は 、 産 地 及 び 生 産 者 へ の い も ち 病 や カ メ ム シ に 対 す る 省 力 ・ 低 コ ス ト 防 除 技 術 を 基 礎 と し た 農 薬 の 使 用 成 分 回 数 を 慣 行 の 2 分 の 1 以 下 に ま で 削 減 し た 減 農 薬 防 除 体 系 の 技 術 確 立 と そ の 普 及 拡 大 を 推 進 す る も の で 、 官 民 一 体 と な っ た 米 づ く り 運 動 が 必 要 不 可 欠 で あ る こ と か ら 、 減 農 薬 栽 培 秋 田 米 統 一 ブ ラ ン ド 「 あ き た e c o ら い す 」 の 全 県 的な定着・拡大に向けた運動を展開している。

(4)あきた ecoらいすの推進(平成25年~)

疎植栽培、直播栽培に対応した省力・低コスト減農薬防除体系について検討を行 っている。また、あきたecoらいすの定着・拡大に向け、パンフレットを作成し、

各種講習会等で防除体系の普及を図っている。

2 取り組み内容

(1)省力・低コスト

安 全 ・ 安 心 ・ あ き た 米 プ ロ ジ ェ ク ト で 作 成 し た 省 力 ・ 低 コ ス ト い も ち 病 、 カ メ

ム シ 防 除 体 系 を 基 盤 と し 、 除 草 剤 を 含 め た 省 力 ・ 低 コ ス ト を 目 指 し た 減 農 薬 防 除

体 系 を 確 立 し た 。 あ き た e c o ら い す 防 除 体 系 を 導 入 す る こ と で 慣 行 防 除 体 系 よ

り 防 除 効 果 が高 く ( Ⅳ -5 病 害 虫 ・雑 草 防 除 の 項 参 照)、 農 薬 被 曝の 少 な い省 力 ・

低コストな病害虫防除が可能となる。

ア 省力

本 田 防 除 回 数 は 最 大 5 割 ( 回 数 で 3 回 ) 減 少 し 、 労 働 費 の 削 減 が 可 能 と な り 、 共 同 防 除 組 織 で 作 業 し て い る 場 合 は 実 証 A 地 区 の よ う に 大 幅 な 省 力 化 が 実 現 で き る(表-1)。

イ 低コスト

コ ス ト は 慣 行 栽 培 に 比 べ 農 薬 費 10a当 り 3 ~ 4 割 削 減 が 可 能 と な る ( 表 - 2 )。

ウ 今後の取り組み

慣行防除体系の2分の1以下に使用成分回数を抑えることに加え、農薬の半量施 用等を積極的に導入し、さまざまな現場での条件に応じたリスクの少ない8成分使 用回数を基本とした減農薬防除体系の検討をさらに進める。

表-1 全作業労働費の比較

表-2 農薬費の比較

(2)環境保全

ア ほ場周辺への影響

県内数地域の排水路や河川で、主要農薬であるプロベナゾール(オリゼメート)、

ジノテフラン(スタークル)、プレチラクロール(ソルネット等)の消長を調査し、

推進している減農薬防除法に問題がないことを確認した。

イ 今後の取り組み

農薬と肥料の系外流出を最小限に抑えた積極的な環境負荷軽減をねらった減農薬 防除 体系を推進する。

(3)販売

ア 秋田米を取り巻く環境

全 国 的 な 米 消 費 量 減 少 の 中 、 生 産 調 整 が 廃 止 さ れ る 変 革 期 を 向 か え て い る 。 米 の生産目標数量の都道府県配分に過去の需要実績が反映される仕組みが導入されて 以降、秋田県の生産数量目標は減少が続いて、販売不振が生産量の縮小という生産 基盤の縮小に直結してきた。生産調整は廃止されたものの、販売環境の厳しさは継 続しており、販売活動のさらなる強化が求められる。

ま た 、 ブ ラ ン ド 化 を め ざ し 全 国 で 新 品 種 の デ ビ ュ ー が 相 次 い で お り 「 あ き た こ ま ち 」 の ネ ー ム バ リ ュ ー だ け で は 、 も は や 産 地 間 競 争 を 打 ち 勝 つ こ と は 困 難 に な

慣行体系 (円/10a)

実証体系

(円/10a) 対比(%) A地区 9,650 6,376 66%

B地区 9,650 6,206 64%

慣行体系

(円/10a)

実証体系

(円/10a) 対差(円) 対比(%) 全作業労働費 35,974 30,923 ▲5,051 86

本田防除回数 6 3 - 50

全作業労働費 28,090 26,118 ▲1,972 93

本田防除回数 4 3 - 75

A地区 B地区

注 ) 表 - 1 、2 の 慣 行 体 系 の 金

額は、地区の栽培暦からの試

算による。

ってきている。

生産面では、生産資材の価格高騰や米価の低迷により稲作所得は減少しており、

より一層の低コスト・省力化技術の構築が求められている。

イ 実需者・消費者ニーズ(実需者・消費者アンケート結果から)

米卸の付加価値米取扱状況を実需者ニーズと捉えると、減農薬・減化学肥料米や 減農薬米、無農薬米といった農薬の削減に関連した米の取扱が多く、化学肥料削減 に関連した米の取り扱いは少ない(図-1)。

消費者が購入したい付加価値米を消費者ニーズと捉えると、無農薬>減農薬>有 機栽培>減化学肥料>無化学肥料と農薬を削減する方向のニーズが高い( 図-2)。

ウ 市場の動向(実需者アンケート結果から)

現在の米市場に求められているものについては「食味と価格のバランス」が最も 高 く、 次 いで 「低価 格」「食 味」「安 全性 」と 続き、「 栽培 方法」「 品種」「 産地」 は もはや重要な要素ではなくなっている(図-3)。

米卸が考える今後の付加価値米の 動向予測を見ると、需要動向については横ばい からやや増加傾向と予想されている。価格動向については、横ばいから下落傾向と 予想されており、付加価値米全体としては、安全・安心志向から全体の需要は増加 を見込めるが、価格については流通量の増加と共にやや下落すると予想される。

エ 米主産県の取り組み

米主産県においては特別栽培米や減農薬米の一般化が進展してきており、米の販 売戦略をめぐる動きが活発化している。中でも、環境を意識した戦略を進める産地、

業務用需要への対応を強化する産地など、産地としての明確な戦略を持った取り組 みも見られ、山形県「つや姫」や北海道「ゆめぴりか」をはじめ、食味評価の高い 米が各道県から次々に市場に投入されている状況であり、秋田県としても戦略の構 築が急務である(表-3)。

オ 今後の取り組み

本県が稲作所得を確保していくためには、低コストをさらに追求するとともに、

実 需 者 ・ 消 費者 ニ ー ズ の 高 い 米 を 『 適 切 な 価 格 』 で 『 早 期 に売 り 切 る 』、 結 果 『 市 場シェアを高める』という、産地及び生産者の意識改革・販売行動がさらに求めら れる。

図-1 米卸が取り扱っている付加価値米(2006~2007年調査)

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60%

減農薬・減化学肥料米 減農薬米 無農薬米 無化学肥料米 減化学肥料米 その他

回答割合

付加価値米の種類

4

-図-2 消費者が購入したい付加価値米(2008年調査)

図-3 米卸が考える今後の米市場で重視される事項(2006~2007年調査)

表-3 米主産県における特徴的な取り組み

3 「あきたecoらいす」今後の推進方向

今 後 と も 「 あ き た 米 ブ ラ ン ド 」 を 堅 持 す る ため 、 収 量 ・ 品 質 ・ 食 味の 維 持 向 上 と 病 害 虫 ・ 雑 草 防 除 体 系 の低 コ ス ト 化 を 目 指 し た 新た な 技 術 の 開 発 を 行 い、 秋 田 県 オ リ ジ ナルの秋田米栽培技術体系を確立し、全県で普及を図る。

あ き た 米 の 早 期 売 り 切 り を 実 現 し 、 市 場 優 位性 の 確 保 に 向 け た 秋 田県 米 産 地 の 再 構 築 の た め に 、「 低 コ ス ト 省 力 型 生 産 」「 環 境 に 配 慮 し た 生 産 」「 販 売 を 意 識 し た 生 産 」 の3本柱からなる「あきたecoらいす」の導入促進を図る。

( 農 試 : 生 産 環境 部 病 害 虫 担 当 、 企 画経 営 室 経 営 班 )

0% 10% 20% 30% 40%

無農薬栽培 減農薬栽培 有機栽培 減化学肥料栽培 無化学肥料栽培 その他

回答割合

購入したいコメの栽培方法

0% 5% 10% 15% 20% 25%

食味と価格のバランス 低価格であること 食味が良いこと 安全性が高いこと 品質が良いこと 取引方法 均一性が高いこと 栽培方法 品種 産地 その他

回答割合

重視する事柄

北海道クリーン農業:特別栽培米の他にYES!Clean 米、農薬節減米、高度クリーン米の認証を行い差別化。

環境保全米:特別栽培米基準と同等で ノンプレミアム販売(加算金な し) 。

つや姫の栽培基準を有機栽培米・特別栽培米に限定(一般栽培米はな い)。

化学肥料の窒素成分は合計4.0kg/10a以内、農薬の使用回数(成分)を10回以下に設定。生産者を限定しブランド化を 推進。

高度クリーン米は化学合成農薬は5成分、化学肥料は慣行の半分以下の基準。農薬節減米(ホクレン独自)は化学合 成農薬11回以下の基準で2017年には4,087haの取り組み。YES!Clean米は化学合成農薬11回以下(直播は14回)、

化学・有機物肥料の使用量が独自基準を満たす米で2017年には11,565haの取り組み。

2011年にはJA宮城グループが宮城米の全量を環境保全米にすることを目指すことを表明。2017年には水稲作付面積 の39.9%になっている。

北海道

宮城県

山形県

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