2 主要な調査手法
(1)葉いもちの全般発生開始期調査(葉いもち発生初期の密度把握)
全般発生の病斑が出現した3~4日後(6月下 旬~7月中旬)に水田に入り、右図に示した調査 株上を条に沿ってうつむき加減に1ほ場当たり1 単位(100m)歩行し、発生状況を観察する。調 査は1地点2単位(2筆×100m)を行い、病斑 が発見できない場合は更に2単位を追加する。
病斑を発見したら、散生病斑数又は坪状発生か 所数をほ場単位に記録し、1調査単位当たりの発 生密度を計算する。病斑型と長径及びその病斑数
(比)や病斑の親子関係(世代数)がわかれば、それを記録する。
散生病斑を発見したら周辺株を詳細に観察し、他の病斑や伝染源の有無を確かめ る。調査対象株外に発見したら別記する。
1人1単位の調査に10~15分かけ、特定の株に注目しないで一度に全体を視野に 入れるソフトフォーカス(軟焦点)で観察する。
葉上に露がある時、風の強い日、快晴の日、夕方は病斑を発見しにくい。露のあ る時は棒で露を払いながら、快晴の日は傘で足元に日陰を作ると調査しやすい。
なお、散生病斑や坪状発生か所数は、通常1調査単位当たり多くとも4個(か 所)程度である。
(2)ウンカ類発生密度調査(粘着板法)
系統的に抽出した10株分について、粘着板 法四株叩き式(右図参照)によって生息密度 を調査する。
経時的に調査する場合、同じ株を連続して 調査することのないよう調査日ごとに開始点 を任意に変更する。
幼虫盛期頃には調査間隔を短くして盛期を 把握する。
なお、粘着板は縦18㎝、横25㎝として、上面に粘着剤を塗布して用いる。イネ株 元に置いて、4株の株元を内側へ強く3回叩いて、落下した虫を粘着面で捕らえ、
これを1株分として10株分(10か所)調査し、株当たり虫数を調査する。
捕捉効率は幼虫で97%前後、長翅型成虫で25%前後である。成虫は逃げやすいの で、叩き落とした直後に調査することが望ましい。
図 葉いもち全般発生調査株のとりかた
(小林 1986より)
50m
実線と矢印は視野の中心の軌跡とその移動方向 丸印(稲株)の黒ぬりの部分が観察される
凡例
→○ ○← ○
イネ株→←
叩く方向→○ ○←
板の大きさ 縦18cm
横25cm
(3)すくい取りの調査法(カメムシ類、イナゴ類発生密度調査)
ア すくい取り用捕虫網の規格
|← 150㎝ →|
|←36㎝→|← 110~120㎝ →|
イ 網の振り方
(ア)水田内や牧草地などの調査
柄の元の部分をあまり動かさずへその部分で固定するようにして、捕虫網 ..
を180°ずつ振りながら前へ進む。振る回数は通常10往復20回とする。
1往復
※すくい取り1回当たり面積=約1.5㎡
(イ)農道、畦畔など180°振ることができない場所の場合
50㎝幅で40回平行に網を振りながら前へ進む。畦畔など幅50㎝ないところ では、斜めに振って50㎝幅を確保する。
ウ すくい取る場所
すくい取る害虫によるが、通常はすくい取る作物の上端と捕虫網を合わせる ようにして振る。カメムシ類は、出穂期以降は穂をすくい取るようにして振る。
2回
1回
畦畔幅50cm以上 畦畔幅50cm以下
50cm幅
1回 2回
50cm幅
1回 2回
エ 時間や天候
降雨時や早朝及び夕方の露のある時間は、虫の生育場所が植物の下になるの で効率が悪い。また、風の強い時もよくない。できるだけ、降雨や強風のない 日中に調査する。
3 主要病害虫別調査項目
全般的な調査については、前記の方法で調査する。その場合、以下の項目に注目 して調査を行うのが望ましい。
病害虫名 調査項目 調査株の決
め方 無 少 中 多 甚 備 考
葉いもち 発病株率 BorC 0 1~85 86~100 100 100 上位葉の発病を加味 穂いもち 発病穂率 BorC 0 1~10 11~30 31~60 61以上
紋枯病・紋枯類似症 被害株率 B 0 1~20 21~53 54~99 100 白葉枯病 発病株率 B 0 1~50 51~80 81~100 100 白葉枯病 発病度 B 0 1~ 5 6~20 21~ 50 51~100
ごま葉枯病(葉) 発病株率 B 0 1~85 86~100 100 100 葉いもちに準じる ごま葉枯病(穂) 発病穂率 B 0 1~10 11~30 31~60 61以上 穂いもちに準じる
稲こうじ病 発病株率 B 0 1~ 5 6~15 16~30 31以上 ばか苗病 発病株率 B 0 1~ 5 6~15 16~30 31以上 ニカメイガ 被害株率 B 0 1~30 31~60 61~90 91以上 セジロウンカ 株当り虫数 0 1~10 11~50 51~100 101以上 トビイロウンカ 株当り虫数 0 1~ 5 6~20 21~50 51以上 ヒメトビウンカ 株当り虫数 0 1~ 2 3~ 5 6~10 11以上 ツマグロヨコバイ 株当り虫数 0 1~ 5 6~15 16~30 31以上 イネミギワバエ 被害度 A 0 1~20 21~40 41~70 71以上 イネキモグリバエ 傷穂率 B 0 1~ 5 6~10 11~20 21以上
イネクビボソハムシ 卵塊数 A 0 1~20 21~70 71~100 101以上 25株卵塊数 イネクビボソハムシ 被害度 A 0 1~20 21~40 41~70 71以上
イネミズゾウムシ 被害度 A 0 1~20 21~40 41~70 71以上
イネミズゾウムシ 成虫数 A 0 1~ 5 6~20 21~40 41以上 25株成虫数 斑点米カメムシ類 すくい取り虫数すくい取り法 0 1~ 3 4~10 11~30 31以上 20回振り 斑点米カメムシ類 斑点米混入率 穂を採取 0 0.1~1.0 1.1~7.0 7.1~50 51以上 精玄米1000粒当たり粒数
フタオビコヤガ 被害度 A 0 1~20 21~40 41~70 71以上 1世代 フタオビコヤガ 株当り虫数 A 0 1以下 2~ 4 5~10 11以上 2~3世代すくい取りより推定
コブノメイガ 被害葉率 B 0 1~ 5 6~15 16~45 46以上 上位2葉の被害葉率 コバネイナゴ すくい取り虫数すくい取り法 0 1~30 31~100 101~200 201以上 20回振り
アワヨトウ 25株虫数 B 0 1~10 11~30 31~100 101以上 見取りによる25株虫数 粘着板法
四株叩き式
水稲病害虫の発生程度別基準
(1)平成29年産水稲収穫量
対前年比 対前年比
(ha) (%) (kg) (t) (%)
86,900 100 574 498,800 97 99
県 北 地 帯 18,100 99 556 100,700 96 99
県 中 央 地 帯 31,900 100 581 185,400 98 101
県 南 地 帯 36,900 100 576 212,700 96 97
※資料:東北農政局秋田県拠点
※計と内訳は、ラウンドのため一致しない場合がある。
※作況指数は、平成27年から、全国農業地域の農家等が使用している篩い目幅の分布において、大きいものから 数えて9割を占めるまでの篩い目幅(東北1.85mm)以上に選別された玄米をもとに算出。
(参考:作柄の表示区分)
作柄 良 やや良 平年並み やや不良 不良
作況指数 106以上 105~102 101~99 98~95 94以下
(2)平成29年産水稲の被害面積及び被害量
被害面積率 被害率
(ha) (t) (%) (%) (ポイント) (ポイント)
総 数 - - - - - -
気象被害 - - - - - -
うち風水害 - - - - - -
うち冷害 5,350 1,110 6 0.2 5.7 0.2
うち日照不足 86,900 22,700 100 4.6 0.0 0.4
病 害 - - - - - -
うちいもち病 20,000 4,720 23 0.9 13.0 0.6
虫 害 - - - - - -
※東北農政局秋田県拠点
被害面積率は(被害面積/作付面積)×100、被害率は(被害量/平年収量(作付面積×10a当たり平年収量)×100である。
「△」は減少を示す。
前年との差
区分 被害面積 被害量 被害面積率 被害率
秋 田 県
10a当たり収量 収穫量
Ⅲ 収量状況
作付面積
(子実用)
1 平成29年産の水稲作柄状況
作況指数 区分
(3)平成29年産水稲地帯別収量構成要素(作況標本筆調査成績)
※資料:東北農政局秋田県拠点
※千籾当たりの収量とは、千粒の籾から得られる玄米の重さ(収量)をいい、登熟状況を総合的に表すものである。
(4)平成29年産水稲玄米のふるい目幅別重量の分布状況及び10a当たり収量内訳
※資料:東北農政局秋田県拠点
注:1 対平均差に用いた平均値は、直近5カ年の重量割合の平均値である。
2 選別ふるい目幅別10a当たり収量とは、ふるい目幅を使用した際に得られる10a当たりの収量のことである。
3 未熟粒・被害粒等の混入が多く農産物規格三等の品位に達しない場合は、再選別を行っており、その再選別後の値である。
14.8 1.90mm
14.0 2.4 (536)
1.75mm
0.5
2.0 1.80mm
(552) (564) (539)
1.4 0.6
14.5 (519)
2.0
(選別ふるい目幅当たり収量)
-
(463) (572)0.6 (577) 1.1
(541) (568)
重量割合
(576)
13.2 2.3 2.0 1.4
0.6
0.1 1.0 0.3