Ⅱ.診 断 表 5 a 組織学的重症度分類
組織学的重症度
腎予後と関連する 病変*を有する 糸球体/総糸球体数
急性病変のみ 急性病変
+慢性病変 慢性病変のみ
H—Grade Ⅰ 0~24.9% A A/C C
H—Grade Ⅱ 25~49.9% A A/C C
H—Grade Ⅲ 50~74.9% A A/C C
H—Grade Ⅳ 75%以上 A A/C C
*急性病変(A):細胞性半月体(係蹄壊死を含む),線維細胞性半月体
慢性病変(C):全節性硬化,分節性硬化,線維性半月体
表 5 b 臨床的重症度分類
臨床的重症度 尿蛋白 eGFR
(g/日) (mL/分/1.73 m2)
C—Grade Ⅰ <0.5 ―
C—Grade Ⅱ
0.5≦ 60≦
C—Grade Ⅲ <60
表 5 c IgA 腎症患者の透析導入リスクの層別化 組織学的
重症度 臨床的 重症度
H—Grade
Ⅰ
H—Grade
Ⅱ
H—Grade
Ⅲ+Ⅳ
C—Grade Ⅰ 低リスク 中等リスク 高リスク C—Grade Ⅱ 中等リスク 中等リスク 高リスク C—Grade Ⅲ 高リスク 高リスク 超高リスク 低リスク群:透析療法に至るリスクが少ないもの注 1). 中等リスク群:透析療法に至るリスクが中程度あるもの注 2). 高リスク群:透析療法に至るリスクが高いもの注 3). 超高リスク群:5 年以内に透析療法に至るリスクが高いも の注 4).
(ただし,経過中にほかのリスク群に移行することがある)
後ろ向き多施設共同研究からみた参考データ
注 1)72 例中 1 例(1.4%)のみが生検後 18.6 年で透析に移行.
注 2) 115 例 中 13 例(11.3%)が 生 検 後 3.7~19.3( 平 均 11.5)年で透析に移行.
注 3) 49 例中 12 例(24.5%)が生検後 2.8~19.6(平均 8.9)
年で透析に移行.
注 4) 34 例中 22 例(64.7%)が生検後 0.7~13.1(平均 5.1)
年で,また 14 例(41.2%)が 5 年以内に透析に移行.
知られている間質線維化が組織学的重症度分類に採 用されていない点が批判されている.今回のリスク の層別化および各リスク群に対する治療指針はあく までも後ろ向き多施設共同研究の結果から得られた ものであり,生検後におけるさまざまな治療法の影 響を受けていることも考慮しなければならない.今 後は厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究 事業進行性腎障害に関する調査研究において,現在 全国規模で展開中の「IgA 腎症の腎病理所見と予後 の関連に関する前向き多施設共同研究」により検証 し,修正していく必要がある.
また,1995~2005 年までの厚生労働科学研究費補 助金難治性疾患克服研究事業進行性腎障害に関する 調査研究疫学班で蓄積された貴重なデータから得ら れた多数の臨床パラメーターと,第 2 版の組織分類 からなる scoring system12~14)と,どう整合性を保っ ていくか,疫学班のデータをどのように発展させて いくかについても考慮する必要がある.
Oxford 分類は国際分類として不動の位置を確立 しつつあるが,今後解明されるべき点が残されてい る.第一の問題点は,この分類作成の対象が尿蛋白 1 日 0.5 g 以上,eGFR≧30 mL/ 分/1.73 m2の中等症 に絞られていることである.IgA 腎症の組織分類が 国際的に広く受け入れられるためには,IgA 腎症症 例全体に通用する分類でなければならない.すなわ ち Oxford 分類は追加・改変されるべきものである.
半月体についてはオリジナルの Oxford 分類の論文 においてもほかのコホートで検証する必要があるこ とが指摘されている16).半月体の予後因子としての 意義はいくつかの validation study で強調されてい
る23,25,26).また,主要病変として採択された 4 病変の
うち E 病変は予後と有意な関連を認めたためではな く,ステロイドなどの免疫抑制療法に反応する可能 性があるため採択されている.また,T 病変は IgA 腎症に限らずほとんどすべての腎疾患に共通した予 後不良因子である.さらに M 病変の意義について も,一部の特に小児を対象とした validation study で予後との関連が検証されたのみであり,この点に ついても今後の検討を要する.
Oxford 分類の次の問題点は臨床的に使いにくい ことである.Split system であるため,各症例にみ
られる病変は一目瞭然であるが,ほかの split sys-tem を採用した分類では scoring により予後との関 連や治療法のガイドとして使いやすいように工夫さ れている.Oxford 分類は臨床パラメーターと独立 して予後に影響を及ぼす病変を取り出しただけであ り,今後,臨床応用されやすい形に修正すべきであ る.
また,「IgA 腎症診療指針第 3 版」と Oxford 分類 の使い分けに関しては,前者は組織重症度を総合的 に判断することができるが,重症度だけでは病変の 内容がわかりにくい,後者は病変の内容はわかるが 総合的重症度の判定は容易ではないという,両者と もに長所,短所がある.このため,両方を併記する ことで互いの短所を補い合うことができると思われ る.「IgA 腎症診療指針第 3 版」では透析導入リスク 表およびそれに基づいた診療指針を提案しており,
臨床応用の点から Oxford 分類に先んじていると思 われる.ただし,国際的には Oxford 分類がスタン ダードになりつつあり,これについては問題点や臨 床応用への改変について日本からもエビデンスを発 信していく必要がある.
参考にした二次資料
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Kidney Int Suppl 2012;2:139—274.
b. 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業 進行 性腎障害に関する調査研究班報告 IgA 腎症分科会 IgA 腎 症診療指針―第 2 版―.日腎会誌 2002;44:487—93.
c. 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業 進行 性腎障害に関する調査研究班報告 IgA 腎症分科会 IgA 腎 症診療指針―第 3 版―.日腎会誌 2011;53:123—35.
引用文献
組織重症度分類
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7. Alamartine E, et al. Clin Nephrol 1990;34:45—51.
8. Radford MG Jr, et al. J Am Soc Nephrol 1997;8:199—207.
9. Shigematsu H. Pathol Int 1997;47:194—202.
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エビデンスに基づく IgA 腎症診療ガイドライン 2014
Ⅱ
4重症度分類
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Ⅱ.診 断
1. 背景
IgA 腎症では,ネフローゼレベルの蛋白尿(3.5 g/
日以上)を呈する症例は組織障害も重症で予後不良 である.まれに,臨床的に微小変化型ネフローゼ症 候群に酷似し,腎生検では光学顕微鏡的にて微小変 化か軽度のメサンギウム細胞増多あるいは基質増 加,電子顕微鏡にてびまん性の足突起の消失がみら れ,免疫染色にて糸球体に IgA の沈着が優位にみら れる症例が報告されている1~5).多くの場合,ステ ロイドが奏効し,また再発もみられることから微小 変化型ネフローゼ症候群との合併と考えられてい る.頻度的には IgA 腎症におけるネフローゼ症候群 は 5~25%,微小変化型ネフローゼ症候群の合併は,
このうちの 25~47%(IgA 腎症全体の 1.8~6%)と報 告されている1~5).このような病態は IgA 腎症の特 殊型として通常のIgA腎症とは区別して認識される
べきである.以下に,この病態に関するこれまでの 主な原著報告について概説する.
2. 解説
1983 年,Mustonen らは IgA 腎症でネフローゼ症 候群を呈する症例のなかに組織障害が軽度で,ステ ロイドに反応する症例が存在することを初めて原著 で報告した1).IgA 腎症 170 例中,ネフローゼ症候 群を呈した症例は 8 例(5%)で,うち 3 例(全体の 1.8%,ネフローゼの 38%)は組織が軽く(微小変化 1 例,軽度メサンギウム拡大 2 例),正常血圧,正常腎 機能で,ステロイドによく反応した.残る 5 例は,
光顕では中等度から高度のメサンギウム細胞増多や 基質の増加,分節性硬化などがみられ,高血圧,腎 機能低下(5 例中 4 例)を呈していた.うち 3 例には ステロイド療法が行われたが無効であった.以上よ り,彼らは IgA 腎症におけるネフローゼ症候群には