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禁煙は推奨されるか?

4)生活・食事指導の注意

CQ 14 禁煙は推奨されるか?

 国内外で IgA 腎症患者のコホート研究において,腎生検時の喫煙と喫煙本数は腎機能低下に関連する との報告がある1,2).また国内外の一般住民を対象としたコホート研究において,現在喫煙は腎不全や腎 機能低下3),尿蛋白の陽性化4)やアルブミン尿5)に関連すると報告されている.このため IgA 腎症患者で は腎機能低下や尿蛋白量増加を抑制するため,禁煙することが推奨される.過去喫煙も腎不全3)やアル ブミン尿5)のリスクであるとの報告があるが,現在喫煙よりはリスクが低いことから,喫煙者が禁煙す ることで,その後の腎機能低下や尿蛋白量の増加を抑制することが期待される.また喫煙本数1)や累積 喫煙(箱・年)2,3)は腎機能低下のリスクであり,禁煙できない場合にも喫煙本数を減らすことでリスクを 低下できる可能性が示唆される.

 IgA 腎症患者で,禁煙や減煙による腎機能低下や尿蛋白量増加の抑制に関する直接的なエビデンスは 存在しないが,喫煙は腎予後のみならず,肺癌,閉塞性肺疾患,CVD などの重大な危険因子であり,医 療関係者として禁煙指導に取り組むことが重要である.

要 約

エビデンスに基づく IgA 腎症診療ガイドライン 2014

2 治療に関するCQ  喫煙は肺癌や慢性閉塞性肺疾患ならびに心血管疾

患などの重大な危険因子である.さらに CKD 患者 において,喫煙は尿蛋白の発症や腎機能障害進行に 関連するとの多数の報告がある.そこで,IgA 腎症 患者において,喫煙が腎機能障害進行や尿蛋白増加 に関連するかについて検討した.

 Yamamoto ら1)は,IgA 腎症患者 971 例を対象と した平均観察期間 5.8 年のコホート研究において,

sCr 値の 50%以上増加に対し,腎生検時の喫煙(ハ ザード比 2.03,95%CI,1.33‒3.10)と 1 日当たりの喫 煙本数(ハザード比 1.21,95%CI,1.06‒1.39)が有意 なリスクであることを報告した.この結果は 220 例 の喫煙者と同数の非喫煙・過去喫煙者による pro-pensity 解析でも確認された.さらに多因子で補正 した腎アウトカムに対するハザード比は,非喫煙・

過去喫煙群では CKD ステージ G3a~G5 において高 いが,喫煙群ではステージ G2 においてハザード比 2.57(95%CI,1.31‒5.03)と有意に高く,GFR が正常 または軽度低下の段階においても,喫煙は腎機能低 下のリスク因子であったと報告された.また Orth ら2)は,IgA 腎症と常染色体優性多発性囊胞腎患者 における症例対照研究において,男性における喫煙 は sCr 値が 3 mg/dL を超えるリスクとなることを報 告した.さらに喫煙本数と喫煙期間は腎機能障害の リスクに関連しており,喫煙 0‒5 箱・年群(73 例中 70 例は非喫煙者)に比して,5‒15 箱・年群ではオッ ズ比が 3.5(95%CI,1.3‒9.6),15 箱・年を超える群 ではオッズ比が 5.8(95%CI,2.0‒17)と高かった.喫 煙の腎障害進行に対するリスクは原疾患がIgA腎症 でも多発性囊胞腎でもほぼ同様であった.本研究に おいて女性の喫煙は有意なリスクではなかったが,

解析症例数が各群で 10 例と少なかったことが影響 している可能性がある.これらの結果より IgA 腎症 患者において,喫煙は腎障害進行のリスクとなるこ とが示唆される.一方で IgA 腎症患者が禁煙するこ とにより腎機能障害が抑制されるかについてはエビ

デンスを見出せなかった.

 一般住民において,過去喫煙も腎機能障害のリス クとなることが報告されている.Hallan ら3)は,ノ ルウェーの一般住民 65,589 例,平均観察期間 10.3 年 のコホート研究において,腎不全(腎代替療法を要 するか CKD ステージ G5)に至る多因子補正後のリ スクは,70 歳未満において,非喫煙者に対し過去喫 煙者でハザード比 3.32(95%CI,1.23‒8.85),現在喫 煙者では 4.01(95%CI,1.43‒11.25)であった.さらに 男性では,累積喫煙(箱・年)が多いほど腎不全のリ スクが高くなる傾向にあり,禁煙後の年数が長くな るとリスクが低下すると報告された.この結果よ り,喫煙者が禁煙することで腎不全のリスクを低下 させることが期待される.

 喫煙が蛋白尿やアルブミン尿のリスクとなること が報告されている.Yamagata ら4)は,茨城県の 40 歳以上の住民健診受診者 123,764 例を対象に,10 年 間の観察期間で,新たな CKD G1~G2(eGFR≧60 mL/ 分/1.73 m2かつ尿蛋白 1+以上)の発症に対し,

現在喫煙のハザード比は非喫煙者に対し男性 1.26

(95%CI,1.14‒1.41),女性 1.40(95%CI,1.16‒1.69)

と有意に高いと報告した.本研究では,過去喫煙者 のハザード比は男女ともに有意ではなかった.また Ishizaka ら4)は,日本人一般住民 7,078 例を対象とし たコホート研究で,現在喫煙はアルブミン尿と関連 し,過去喫煙者でも10年以上の喫煙歴はアルブミン 尿のリスクであったと報告した.これらの結果より CKD において現在喫煙は尿蛋白やアルブミン尿陽 性に対するリスクとなることが示唆される.一方で 現在喫煙者が禁煙することで尿蛋白やアルブミン尿 を改善できるかについてはエビデンスを見出せな かった.しかし日本の 2 研究では過去喫煙者のリス クは現在喫煙者より低いことから,尿蛋白やアルブ ミン尿に関しても,現在喫煙者が禁煙することで,

そのリスクを軽減できる可能性が示唆される.

 以上より,本ガイドラインでは,IgA 腎症患者で は禁煙することが推奨される,とした.腎障害進行 についてのエビデンスは十分ではないが,喫煙は肺 癌,慢性閉塞性肺疾患や心血管疾患などの重大な危 険因子であることを踏まえ,推奨グレードを A とし た.

背景・目的

解説

Ⅳ.治 療

文献検索

 PubMed(キーワード:IgA nephropathy,chronic kidney disease,smoking,cigarette)で 2012 年 7 月ま での期間で検索し,本CQに関する論文を選択した.

参考にした二次資料

a. 日本腎臓学会編.エビデンスに基づく CKD 診療ガイドライ ン 2009

b. 日本腎臓学会編.CKD 診療ガイド 2012

引用文献

1. Yamamoto R, et al. Am J Kidney Dis 2010;56:313‒24.(レ ベル 4)

2. Orth SR, et al. Kidney Int 1998;54:926‒31.(レベル 4)

3. Hallan SI, et al. Kidney Int 2011;80:516‒23.(レベル 4)

4. Yamagata K, et al. Kidney Int 2007;71:159‒66.(レベル 4)

5. Ishizaka N, et al. Hypertens Res 2008;31:485‒92.(レベル 4)

エビデンスに基づく IgA 腎症診療ガイドライン 2014

3ステロイド療法および免疫抑制療法の副作用とその対策

 特に 2000 年以降,IgA 腎症に対する副腎皮質ステ ロイド薬や免疫抑制薬の治療効果を検討した研究報 告が,ランダム化比較試験等の質の高い研究デザイ ンで相次いで報告されるようになってきた.その一 方で,これらの薬剤による副作用の発現や副作用対 策の内容など,治療の安全性については十分検討さ れているとは言い難い.本項では,成人および小児 のIgA腎症に対するステロイド療法および免疫抑制 療法の副作用に焦点をあててその安全性を検証し,

今後の検討課題を明らかにすることを目的とする.

また近年,特に日本において,ステロイドパルス療 法との併用で積極的に施行されるようになってきた 口蓋扁桃摘出術についても,手術の安全性や術中・

術後の合併症などを検証する.

1. 成人の IgA 腎症に実施されたステロイド療法 の副作用

 IgA 腎症に対するステロイド療法の副作用や安全 性を主要評価項目としてデザインされた臨床研究 は,検索できる範囲ではみられなかった.このため,

今回はIgA腎症に対するステロイド療法の治療効果 を検討した臨床研究のうち,ステロイド療法群と非 ステロイド療法群それぞれの治療プロトコールが明 確で,かつ副作用発現について記載のある系統的レ ビューあるいはランダム化比較試験のみを検討対象 とした.

 系統的レビューについては,中国から 3 つの報 告1~3)があり,そのうち 2 つではステロイド療法の 副作用について検討されている.Cheng ら1)はステ ロイド療法のランダム化比較試験 7 編について,Lv ら2)は同療法のランダム化比較試験 9 編について,

それぞれメタ解析を行っている.両者のうち 6 編は  これまでの報告からは,成人 IgA 腎症患者に対するステロイド療法が重篤な副作用を引き起こす頻度 は多くないが,十分な情報開示に基づいた副作用報告かどうかは定かでないため,ステロイド療法開始 時には各副作用発現リスク因子の把握と事前対策が必須である.一方,免疫抑制療法では一部に重篤な 副作用がみられており,治療の有益性と副作用のリスクを十分勘案したうえで,治療適応を慎重に決定 する必要がある.小児 IgA 腎症患者に対しては,副腎皮質ステロイド薬と免疫抑制薬によるカクテル療 法が治療効果を示しているが,副作用による治療中断例もみられるため,さらなる安全性の検証が必要 である.IgA 腎症患者に対する扁桃摘出術では,重篤な合併症の発現率は非常に低いが,腎移植後の免 疫抑制療法例における合併症予防や遺残扁桃例のピックアップには,耳鼻咽喉科医と腎臓内科医の連携 が特に重要である.

要 約

背景・目的 解説