Ⅳ.治 療
るIgA腎症を含むランダム化並行群間比較試験であ るが,検出力の不足が懸念される9,10).
Katafuchiら11)とHoggら12)によるランダム化並行 群間比較試験は,それぞれ経口プレドニゾロン 20 mg と経口プレドニゾン 30 mg/m2を 2 年間で漸減中 止する治療プロトコールの腎保護効果を評価した.
いずれも介入前の尿蛋白の群間差が大きく,ランダ ム化が適切に行われていないため,その結果の解釈 には注意が必要である.
以上より,尿蛋白≧1.0 g/日の IgA 腎症に対する 高用量経口ステロイド療法(プレドニゾロン0.8~1.0 mg/kg を 6 カ月で漸減中止)は,RA 系阻害薬の併用 下においてもIgA腎症の腎機能障害の進行を抑制す ることを,少なくとも 2 つの異なる試験が報告して おり,現時点で最もエビデンスレベルの高い治療法 である.その一方,ステロイドパルス療法の腎機能 障害の進行抑制効果はいまだ複数の試験で確認され ていないため,今後ステロイドパルス療法の有効性 を,特に RA 系阻害薬の併用下において再確認しな ければならない.また,現時点では,高用量経口ス テロイド療法とステロイドパルス療法の腎機能障害 の進行抑制効果に違いがあるかは不明であり,その 優劣を検証する必要がある.
3. 主に尿蛋白 1.0 g/日前後,CKD ステージ G1~2のIgA腎症に対するランダム化並行群 間比較試験
尿蛋白<1.0 g/日かつ CKD ステージ G1~2 の IgA 腎症を研究対象に含むランダム化並行群間比較試験 である Koike ら13),Shoji ら14)の研究では,ステロイ ド療法の明らかな腎機能障害の進行抑制効果は確認 されていない.Koike らの研究は,介入前の血清 Cr の群間差が大きく適切なランダム化が行われていな いため,その結果の解釈には注意が必要である.
Shoji らの研究は,主に尿蛋白 0.5~1.0 g/日の IgA 腎 症に対する高用量経口ステロイド(プレドニゾロン 0.8 mg/kg を 1 年間で漸減中止)の尿蛋白減少効果を 含む腎保護効果を評価したランダム化並行群間比較 試験であるが,解析手法が適切ではなかった.対応 のない t 検定を用いた群間比較を行えば p<0.01 で あり,プレドニゾロンによる尿蛋白減少効果が確認 されていたといえる.
4. 推奨グレードの決定過程と今後の課題
尿蛋白≧1.0 g/日かつ CKD ステージ G1~2 の IgA 腎症に対する短期間高用量経口ステロイド療法とス テロイドパルス療法の腎機能障害の進行抑制効果と 尿蛋白減少効果は,少数のランダム化並行群間比較 試験で確認されているため,それぞれの推奨グレー ドを B と判断した.一方,主に尿蛋白 0.5~1.0 g/日 のIgA腎症に対するステロイド療法の腎機能障害の 進行抑制効果は確認されておらず,一部の小規模な 試験において尿蛋白減少効果が確認されているのみ である.IgA 腎症ガイドライン作成サブグループ委 員会で討論した後,推奨グレードを C1 と判断した.
今後,RA 阻害薬併用時のステロイドパルス療法 の腎機能障害の進行抑制効果を確認するのみなら ず,RA 系阻害薬併用下における高用量ステロイド 療法とステロイドパルス療法の腎機能障害の進行抑 制効果を比較しなければならない.さらに,わが国 においてIgA腎症の治療法として注目されているス テロイドパルス+口蓋扁桃摘出術の併用療法である が,同併用療法と高用量経口ステロイド+口蓋扁桃 摘出術併用療法の有効性を比較する必要もあるだろ う.また,ステロイド療法の介入対象として,ラン ダム化並行群間比較試験によっていまだ十分に評価 されていない尿蛋白 0.5~1.0 g/日の IgA 腎症に対す る有効性を確認する必要もある.
文献検索
文献はPubMed(キーワード:IgA nephropathy or immunoglobulin A nephropathy, steroid or gluco-corticoid, meta‒analysis or randomized)で~2012 年 7 月の期間で検索した.
参考にした二次資料 なし
引用文献
1. Lv J, et al. J Am Soc Nephrol 2012;23:1108‒16.(レベル 1)
2. Zhou YH, et al. PLoS One 2011;6:e18788.(レベル 4)
3. Cheng J. Am J Nephrol 2009;30:315‒22.(レベル 1)
4. Samuels JA, et al. Cochrane Database Syst Rev 2003;4:
CD003965.(レベル 3)
5. Lv J, et al. Am J Kidney Dis 2009;53:26‒32.(レベル 2)
エビデンスに基づく IgA 腎症診療ガイドライン 2014
Ⅳ
2 治療に関するCQ 6. Manno C, et al. Nephrol Dial Transplant 2009;24:3694‒701.
(レベル 2)
7. Pozzi C, et al. Lancet 1999;353:883‒7.(レベル 2)
8. Pozzi C, et al. J Am Soc Nephrol 2004;15:157‒63.(レベル2)
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10. Julian BA, et al. Contrib Nephrol 1993;104:198‒206.(レベ
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11. Katafuchi R, et al. Am J Kidney Dis 2003;41:972‒83.(レベ ル 2)
12. Hogg RJ. Clin J Am Soc Nephrol 2006;1:467‒74.(レベル 2)
13. Koike M, et al. Clin Exp Nephrol 2008;12:250‒5.(レベル 2)
14. Shoji T, et al. Am J Kidney Dis 2000;35:194‒201.(レベル 2)
わが国においては2001年にHottaらが口蓋扁桃摘 出術(扁摘)+ステロイドパルス療法がIgA腎症の尿 所見を改善させることを報告して以来,複数の施設 で実施されている.実際 2009 年に Miura らが報告 した扁摘+ステロイドパルス療法の実施状況に関す るアンケート調査では,質問状を郵送した 848 施設 のうち 317 施設より回答があり(37.4%),そのうち の 128 施設(40.4%)で実施され,2003 年以降急増し 2005 年以降は年間 500~600 例となっている5).しか し,本療法の適応についてはまだ明確なコンセンサ スが形成されていない.本稿では,成人 IgA 腎症に 対する本療法の尿所見改善効果と腎機能障害の進行
抑制効果を検証した.
Hotta らは 1993 年に,ステロイドパルス療法を含 む集約的治療に扁摘を併用すると尿所見の改善率が 高まること6),また 1996 年に扁摘+ステロイドパル ス療法を含む集約的治療は保存的治療に比し腎機能 障害と尿所見の改善を生じ得ること7)を後ろ向きコ ホート研究で報告している.しかし,いずれの報告 も対象患者の選択バイアスやベースラインの背景因 子,治療内容にばらつきがあり評価は困難である.
2000 年代以降,尿蛋白≧0.5 g/ 日1),尿蛋白≦0.5 g/ 日2),血清クレアチニン≧1.5 mg/dL3)の IgA 腎症 推奨グレード C1 口蓋扁桃摘出術+ステロイドパルス療法は IgA 腎症の尿所見を改善し,腎機能障害の 進行を抑制する可能性があり,治療選択肢として検討してもよい.
CQ 2 口蓋扁桃摘出術+ステロイドパルス療法は推奨されるか?
Hotta らは後ろ向きコホート研究で,口蓋扁桃摘出術(扁摘)+ステロイドパルス療法が尿所見の正常 化1,2)および末期腎不全への進行抑制3)の予測因子であることを,また Komatsu らは非ランダム化比較 試験において,ステロイドパルス療法単独に比べ扁摘+ステロイドパルス療法群の尿所見正常化率が高 いことを報告しているが4),ランダム化比較試験の報告は認められずエビデンスレベルとしては不十分 な現状であった.
しかし 2011 年度の日本腎臓学会学術総会において,厚生労働省進行性腎障害調査研究班のランダム 化比較試験の結果,扁摘+ステロイドパルス療法はステロイドパルス単独療法より尿蛋白減少効果に優 位性が認められることが報告され,IgA 腎症に対する治療法の選択肢となり得ることが示唆された.よ り強固なエビデンスを確立するために,今後本療法の優位性をさらに検討する必要がある.
要 約
背景・目的
解説
Ⅳ.治 療
患者 329 例,388 例,70 例を対象とした同一施設で の単施設後ろ向きコホート研究は,扁摘+ステロイ ドパルス療法が尿所見の正常化1,2)および末期腎不 全への進行抑制3)の予測因子であることを報告し た.しかし対照となる治療群との症例数の偏りが大 きいため,扁摘+ステロイドパルス療法とステロイ ドパルス療法の腎保護効果が直接比較されておら ず,ステロイドパルス療法に対する扁摘+ステロイ ドパルス療法の優位性は明確ではなかった.
同施設以外では 2007 年と 2008 年に本療法の有効 性に関する報告を一報ずつ認めるが,いずれも対照 群のない記述研究であり,治療の効果を論ずること はできない.またKomatsuらは小規模な単施設非ラ ンダム化比較試験において,IgA 腎症患者 55 例を対 象として,扁摘+ステロイドパルス療法とステロイ ドパルス療法単独の尿所見改善効果と腎機能障害の 進行抑制効果を比較した.平均 4.5±1.8 年の観察期 間中において,扁摘+ステロイドパルス療法群の尿 所見の正常化率が高いことを報告していた4).血清 クレアチニン値の 2 倍化は 1 例しか観察されておら ず,腎機能障害の進行抑制効果は評価不能であった.
以上より,これまで IgA 腎症に対する扁摘+ステ ロイドパルス療法の尿所見改善効果と腎機能障害の 進行抑制効果を検討したランダム化比較試験の論文 報告は認められず,エビデンスレベルとしては不十 分ながらわが国で広く実施されているという,国際 的には奇異な現状であった.しかし,2011 年度の日 本腎臓学会学術総会で報告されていた厚生労働省進 行性腎障害調査研究班のランダム化比較試験(厚生 労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業,平 成 23 年度総括・分担研究報告書)の詳細が,つい最 近論文として受理された8).治療介入 1 年の時点で,
扁摘+ステロイドパルス療法は,ステロイドパルス 単独療法より尿蛋白減少率に優位性が認められ,
IgA 腎症に対する治療法の選択肢となり得ることが 示唆された一方,尿所見の正常化率は両群間で統計
的有意差を認めないとの結果であった.きわめて長 期の経過を有する本疾患の特性を考慮すると,観察 期間 1 年でその治療効果を断定することは困難であ り,より長期の観察期間での検討が強固なエビデン スを確立するために必須であろう.さらに腎死をア ウトカムとした場合,健診制度が発達し早期・軽症 段階で診断されることの多いわが国の特徴まで考慮 すると,ランダム化比較試験のみならず,慎重に計 画された長期の観察研究での評価を考慮するのも現 実的な方法であると考えられる.
文献検索
PubMed でキーワード“glomerulonephritis, IgA”
[Mesh]AND“tonsillectomy”[Mesh]で検索した
(~2012 年 7 月).
参考にした二次資料
a. 厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)平成 23 年度総括・分担研究報告書,研究代表者 松尾清一,
pp11‒20,2012 年 4 月 [IgA 腎症に対する扁桃摘出術とス テロイドパルス療法の有効性に関するランダム化比較試験]
(本試験の詳細は UMIN 臨床試験登録システムに提供され閲 覧可能である)
引用文献
1. Hotta O, et al. Am J Kidney Dis 2001;38:736‒43.(レベル 4)
2. Kawaguchi T, et al. Nephrology(Carlton)2010;15:116‒
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3. Sato M, et al. Nephron Clin Pract 2003;93:c137‒45.(レベ ル 4)
4. Komatsu H, et al. Clin J Am Soc Nephrol 2008;3:1301‒7.
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5. Miura N, et al. Clin Exp Nephrol 2009;13:460‒6.(レベル4)
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7. Hotta O, et al. Acta Otolaryngol Suppl 1996;523:165‒8.(レ ベル 4)
8. Kawamura T, et al. Nephrol Dial Transplant 2014;29:
1546‒53.
エビデンスに基づく IgA 腎症診療ガイドライン 2014