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500 400 300 200 100 0

年齢(歳)

症例数︵例︶

<10 10〜19 20〜29 30〜39 40〜49 50〜59 60〜69 70〜79 80 男女

図 1 J—RBR 2007~2010 に登録されている IgA 腎症の年齢分布(n=2,515)

れた.1995 年には対象機関に泌尿器科が含まれてい なかったことが,この 2 つの全国調査で推定された 有病患者数の差異の大きな要因と考えられている.

しかしこれらの数字は,腎生検にて診断され,医療 機関に通院している全国の患者数を推計しているも のである.したがって無症状で緩徐に進行すること も多い本疾患の全貌を表しているとは言い難いであ ろう.

文献検索

 PubMed で“glomerulonephritis,iga”, “epidemi-ology”,“incidence”,“prevalence”のキーワードを 用いて~2012 年 7 月の期間で検索した.

参考にした二次資料

a. 横山 仁.厚生労働省科学研究費助成金「進行性腎障害に関 する調査研究」腎臓病レジストリー分科会報告.2011 b. 渡辺 毅,他.厚生労働省科学研究費補助金(難治性疾患克

服研究事業)分担研究報告書 疫学・疾患登録分科会「全国 疫学アンケート調査と DPC データベースの対象疾患患者数 調査への応用」

c. 清原康介,他.進行性腎障害 4 疾患の患者数の推計.特定疾 患の疫学に関する研究 平成 16 年度総括・分担研究報告書 d. 千田雅代,他.IgA 腎症の全国疫学調査成績.厚生省特定疾

患難病の疫学調査研究班平成 7 年度研究事業集

引用文献

1. Donadio JV, et al. N Engl J Med 2002;347:738—48.

2. Utsunomiya Y, et al. Pediatr Nephrol 2003;18:511—5.

3. McGrogan A, et al. Nephrol Dial Transplant 2011;26:414—

30.

エビデンスに基づく IgA 腎症診療ガイドライン 2014

 1995 年の全国疫学調査によると,わが国における IgA腎症の約70%は健康診断などの機会に偶然蛋白 尿や血尿を指摘されたことをきっかけとして発見さ れている.Shen らは,血尿のみで腎機能障害や蛋白 尿を認めない IgA 腎症患者 135 例を後方視的に 92±

28 カ月間追跡した結果,12%は血尿が消失し,29%

は蛋白尿が出現,20%は GFR が 60 mL/ 分/1.73 m2 未満になったと報告している1).血尿のみの症例で も一概に予後が良好とはいえないため,注意深い経 過観察が必要であることが示唆される.

 Chauveau らは,1968~1972 年の間に診断された 74 例の IgA 腎症患者の経過を長期間観察(20 例は 10~20 年,18 例は 20 年超)した結果を 1993 年に報 告している2).これらの患者は必要に応じて降圧薬 の投与やたんぱく質の摂取制限は行われたが,ステ ロイドやそのほかの免疫抑制薬による治療は行われ ていない.結果,28 例(37.8%)が血清クレアチニン 値120μmol/L(1.36 mg/dL)以上(うち18例は末期腎 不全)に進行した.一方 24 例(32.4%)は蛋白尿や血 尿などの尿所見は持続しているが腎機能は正常を 保っており,さらに 22 例(29.7%)は検尿所見正常で 腎機能も正常を保っていた.当初 IgA 腎症の予後は 比較的良好と考えられていたが,この報告により相 当数が進行性であることが示された.またわが国に おいても Koyama らが,502 例を 1993 年まで平均 11.8±6.3 年間追跡した結果を報告している3).論文 中に治療に関する言及はないが,時代背景から,ス

テロイド療法を含む免疫抑制療法などの積極的な治 療は行われていないものと推測される.生存時間解 析の結果,5,10,15,20 年後の腎生存率はそれぞ れ 96%,85%,75%,61%だった.

 D’AmicoはIgA腎症の自然経過に関するシステマ ティックレビューを 2004 年に報告している4).成人 期発症 IgA 腎症に関しては 21 編の論文が抽出され ている.このレビューによると,多くの研究で 10 年 間の腎生存率は 81~87%の間に収まっている.北米 から報告された 4 つの研究は,ほかと比較して予後 が不良であった(10年腎生存率57~78%).これらの 研究は,追跡開始時点ですでに腎機能が低下してい る症例や,高血圧を合併している症例,尿蛋白の量 が多い症例が多く含まれており,比較的重篤な症例 を対象としていることが,予後不良となった原因で はないかと推測されている.

 小児については10編の論文が検討されており,う ち 3 編は成人期発症例を対照群として,小児期発症 例の予後を比較している.例えば Kusumoto らは 98 例の小児期発症例と 86 例の成人期発症例をそれぞ れ 12±6 年間,10±5 年間追跡した結果を 1987 年に 報告している.対象患者の半数以上は降圧薬治療が 行われていた.10年腎生存率は成人期発症例の80%

に対して 15 歳以下の症例では 95%であり,小児期 発症例で有意に予後が良好であった5).これらの一 次論文から,小児期発症例は蛋白尿の程度が軽く,

高血圧や腎機能低下例の割合が少ないことや,病理  成人期発症 IgA 腎症の 10 年腎生存率は 80~85%と考えられている.小児期発症例の 10 年腎生存 率は 90%以上と考えられている.

要 約

2 自然経過

Ⅲ 疫学・予後

像における慢性病変の程度が軽いなどの傾向が指摘 されている.

 小児期発症例と成人期発症例の予後の比較につい ては大規模な研究が少なく,さらなる検討を要す る.いずれにしても成人期発症例と同様,進行性で ある可能性を念頭に置く必要がある.

文献検索

 PubMed で“glomerulonephritis,iga”,“natural history”,“cohort studies”のキーワードを用いて~

2012 年 7 月の期間で検索した.システマティック・

レビューの文献を引用した.

参考にした二次資料

a. 千田雅代,他.IgA 腎症の全国疫学調査成績.厚生省特定疾 患難病の疫学調査研究班平成 7 年度研究事業集

引用文献

1. Shen P, et al. Nephron Clin Pract 2007;106:c157—61.

2. Chauveau D, et al. Contrib Nephrol 1993;104:1—5.

3. Koyama A, et al. Am J Kidney Dis 1997;29:526—32.

4. D’Amico G. Semin Nephrol 2004;24:179—96.

5. Kusumoto Y, et al. Clin Nephrol 1987;28:118—24.

エビデンスに基づく IgA 腎症診療ガイドライン 2014

 1990 年代以降,RA 系阻害薬の投与やステロイド 療法がそれまでより積極的に行われるようになっ た.また 1990 年代半ばから,高血圧が末期腎不全の 独立したリスク因子であることが,前向きコホート 研究にて相次いで示されたことにより,慢性腎臓病 の診療ガイドラインにおける血圧管理の記述が増大 した.これらの治療指針の変化に伴い,IgA 腎症の 予後はどのように変化したのか検討した.

 Komatsu らは,腎生検時の血清クレアチニン値が 2.0 mg/dL 未満の IgA 腎症患者 304 例を,1981~

1995 年の間に診断がついた群(E 群)と,1996~2006 年に診断がついた群(L 群)の 2 群に分けて治療法や 予後を比較している1).結果,ステロイド療法,RA 系阻害薬の使用は L 群で有意に多く,また 10 年腎 生存率は E 群,L 群でそれぞれ 75.2%と 95.7%であ り,L 群で有意に予後が改善していることが示され た.

 小児期発症例に対しても Yata らが 500 例を対象 に同様の検討を行っている2).1976~1989 年に診断 がついた群と 1990~2004 年に診断がついた群のそ れぞれの 10 年腎生存率は 94.0% vs. 98.8%,15 年腎 生存率は 80.1% vs. 98.8%であり,後者で予後が有 意に良好であった.1990 年以降に診断がついた群で は,巣状メサンギウム増殖を認める症例において RA 系阻害薬の使用が,びまん性メサンギウム増殖 を認める症例においてステロイドを含めた免疫抑制

薬の使用が著明に増加していた.

 また Asaba らは,自らの施設で診断がついた 114 例を対象とした後ろ向きコホート研究を行い,年代 による治療法の変化を利用して,一般的とされる治 療法による予後の違いを検討している3).結果,無 治療群(N=36),抗血小板薬群(N=12),RA 系阻害 薬群(N=30),ステロイド療法群(N=36)の各群で,

平均追跡期間はそれぞれ 6.3±0.8 年,9.4±1.6 年,

9.4±1.2 年,5.1±0.7 年であり,追跡期間中の透析導 入割合はそれぞれ 31%,42%,3%,8%だった.

ベースライン・データは,ステロイド療法群でほか の 3 群に比較して有意に高度の蛋白尿を呈している 以外は大きな差はなかった.生存時間解析の結果,

RA 系阻害薬群は,無治療群と抗血小板薬群に比較 し予後が有意に良好であった.

 これら 3 つの研究はいずれも診断された時期の違 いによる長期予後の違いを検討しているものであ り,古い時代に診断された症例よりも,最近診断さ れた症例のほうが良好な予後を示すという結果だっ た.

文献検索

 PubMed で“glomerulonephritis,iga”,“cohort studies”のキーワードを用いて~2012 年 7 月の期間 で検索した.

 1990 年代を境に,それ以前に診断された症例よりも,それ以後に診断された症例のほうが予後良好 であることを示すいくつかのエビデンスがある.IgA 腎症に対する治療指針の変化が奏効している可能 性がある.

要 約