1.LME 価格と在庫
図5-1に2015年10〜11月の LME ニッケル現物価格 と同在庫の推移を示す。
10月は10,390US$/t でスタートしたものの、市場の 事前予想を下回る米国雇用統計から、世界経済の先行 き懸念が圧迫材料となり、2日には10,000US$/t の大 台を割り込んだ。8日までは横ばいに推移していたも のの、国際非鉄研究会において2016年の需給がタイ ト化する見込みと発表されたことや LME 在庫の減 少、ドル安を好感して9日には10,710US$/t まで回復 した。同月中旬は、欧州中央銀行による追加金融緩和 の可能性が示唆されたこと等を好感して一時上昇する 場面があったものの、中国 Q3GDP 成長率の鈍化や同 国株価の下落を受け、10,500US$/t 前後を小幅なレン ジでほぼ横ばいに推移した。23日に10,600US$/t の値 を付けた後は、ドル高基調が圧迫材料となり下落傾向 を辿り、11月3日に9,995US$/t と再び10,000US$/t を 割り込んだ後は、中国経済の鈍化を受けてさらに急速 な下落を見せ、同月23日には8,160US$/t と約12年半 ぶりの安値を付けた。その後は、中国のニッケル生産 者による減産発表やドル高の進行が一服したことを好 感し、一時9,120US$/t まで回復したものの、米年内 利上げ観測に伴う緩やかなドル高進行や中国の経済減 速懸念が下方圧力となり、8,735US$/t まで値を落と して11月を終えた。
●当該期間最高値:10,710US$/t(2015年10月9日)
●当該期間最低値:8,160US$/t(2015年11月23日)
LME ニッケル在庫は、2012年7月以来増加傾向が 続 き、2015年6月4日 に 史 上 最 高 量 の47.4万 t を 更 新 し、その後は減少傾向に転じている。9月中旬に一時 的に増加したが、同月下旬以降再び減少している。
2015年11月末時点で40.8万 t(約88日分、前年同月末 比1% 増)。 う ち44% は マ レーシ ア の ジョホール、
36%はロッテルダム、10% はシンガポールの倉庫に ある。
● 2015年10月 初 LME 在 庫:452,634t(キャン セ ル ワ ラント比率45.9%)
● 2015年11月 末 LME 在 庫:408,360t(キャン セ ル ワ ラント比率43.3%)
< 月間平均値(US$/t)>
2013 年 2014 年 2015 年
1 月 17,465 14,079 14,771
2 月 17,734 14,195 14,535
3 月 16,728 15,660 13,746
4 月 15,635 17,375 12,783
5 月 14,951 19,440 13,509
6 月 14,271 18,574 12,780
7 月 13,705 19,050 11,386
8 月 14,282 18,571 10,342
9 月 13,780 18,079 9,898
10 月 14,070 15,770 10,344
11 月 13,729 15,706 9,232
12 月 13,915 15,919 ―
1 〜 12 月 15,002 16,868 ―
図5-1.ニッケル:LME 価格と在庫の推移(2015年10〜11月)
(出典:LME データを基に作成)
(694)
需給動向
ベースメタル国際需給動向︱ニッケル︱2016.1 金属資源レポート 148
2.需給
国際ニッケル研究会(INSG)による2012年10月〜
2015年10月までの世界ニッケル需給推移を図5-2に、
同期間の中国ニッケル需給推移を図5-3に示す。
世界の鉱山生産量は、2012年後半から20〜24万 t/
月 前後で推移していたが、2014年1月以降はインド ネシアにおける鉱石禁輸の影響で大きく落ち込んだ。
10月に一次ニッケル生産量を下回った後はほぼ横ば い で 推 移 し て い た と こ ろ、2015年 に 入って か ら は
ニューカレドニアやフィリピンの増産に伴い増加傾向 にあったが、4月以降はほぼ横ばいに推移している。
一次ニッケル生産量は、2013年以降15〜17万 t 台を大 きな変化なく推移しているが、2015年4月以降は緩や かな減少傾向にある。一次ニッケル消費量は、2013 年以降はほぼ横ばいで推移していたが、2015年2月に 中国需要の落ち込みに伴い減少した。その後は回復し たが、9月に再び中国需要の縮小を受けて小幅に減少 している。
図5-2.世界ニッケル需給推移(2012年10月〜2015年10月)
(出典:INSG データを基に作成)
図5-3.中国ニッケル需給推移(2012年10月〜2015年10月)
(出典:INSG データを基に作成)
(695)
需給動向
ベースメタル国際需給動向︱ニッケル︱2016.1 金属資源レポート 149 中国においては、この3年では鉱山生産量に急激な
変化は見られない。一次ニッケル生産量は、消費量と ほぼ連動して推移しており、2012年後半から急激に 拡大した後、2013年に入ると増加スピードは減速し、
2014年は概ね6万 t 前後で推移した。2015年2月に入 り5万 t 弱となった後は再び増加傾向にあったが、5月 以降減少しており、8月以降は5万 t を割り込んでい る。
< 供給・鉱山生産 >
表5-1に主要生産国別鉱山生産量を示す。これら12 か国で世界供給の約9割を占めている。2015年1〜10 月累計鉱山生産量は、前年同期比2.5%減の173万 t で あった。マダガスカルやキューバで増産があったもの の、インドネシアをはじめとするその他多くの国での 減少がそれを上回った。特にインドネシアは、2014 年1月より施行された新鉱業法に基づく未加工鉱石輸 出禁止により、2013年は世界鉱石生産の32%を占め て い た が、2014年1〜12月 累 計 で は そ の シェア を 8.4%へ落とし、2015年1-10月累計では6.2%とさらに シェアを落としている。
鉱山生産を巡る主な動向は以下のとおり。
・ ニューカレドニア政府は、10月27日、中国へのラ テライト鉱石輸出禁止措置を部分的に解禁した。政 府は今年8月初め、豪州への長期供給契約を優先す ることや中国の NPI 大量生産がニッケル価格の暴 落要因となっていることを理由に、中国向けのニッ ケル鉱石輸出を禁止していたが、今回 MKM グルー プに対して中国向けに今後18カ月間で30万 t の輸出 を許可した。
・ 豪・Mirabella Nickel は10月30日、ニッケル価格低 迷のため Santa Rita ニッケル鉱山の今年の生産を 1.8万 t/ 年から1.2万 t/ 年へと33% 削減することを発 表した。
・ 11月26日付業界紙等によると、Americano Nickel Limited(ANL)は、2015年8月に Glencore から買 収したドミニカ共和国・Falcondo ニッケル鉱山に 関し、2016年半ばには操業を再開する旨を明らか にした。同鉱山に関しては、Glencore が2013年に 買収以降、ニッケル市況の下落・低迷を理由に一時 閉鎖に踏み切り、現在まで操業停止の状態が続いて いた。ANL によると、2016年半ばの操業再開に向 けて、技術的な活動を着実に進めているほか、直接 雇用の鉱山労働者も8月に買収した時点から増加し ている。また、ドミニカ共和国政府とともに、地域 コミュニティとの関係改善に向けた話し合いも進め ている。
参考として図5-4および図5-5に中国および日本の ニッケル鉱石輸入元推移を示す。
中国の鉱石輸入量は、2014年1月から4月にかけて 減少していたが、5月よりフィリピンからの調達が増 加し、10月まで月400〜500万 t(グロス量)の輸入量 を確保していた。2014年11月から2015年2月にかけ ては、フィリピンでのモンスーンによる鉱石生産減少 により同国からの輸入が大幅に減少、2月には94万 t 台にまで落ち込んだ。このため中国主要港のニッケル 在庫は急激に減少した模様。一方、フェロニッケル輸 入量が急増しており、国内 NPI 生産の減少による代 替輸入が増えているものと見られる。2014年1〜12月 の累計輸入量は、前年比32.9%減の4,772万 t であっ た。2015年は、2〜7月の輸入量は堅調に推移してい たが、その後は減少傾向に転じている。足元11月の 輸入量は278万 t。
日本の鉱石輸入量は、2014年3〜4月に増加したも のの、5月以降は30万 t 台で推移しており、フィリピ ンとニューカレドニアからの調達により前年に近い水 準で輸入していた。10月以降は減少傾向にあったが、
2015年2月に25万 t まで減少した以降は再び増加し、4
〜6月は40万 t 水準で横ばいに推移していたが、7月に は32.6万 t まで減少、その後は増加傾向を見せており、
足元10月は43.2万 t となっている。
表5-1. 主要生産国別鉱山生産量(1-10月累計)
(単位:千 t)
2014年 1-10月計
2015年
1-10月計 増減比
アフリカ 114.4 118.1 3.3%
マダガスカル 33.1 40.9 23.6%
南アフリカ 46.1 45.3 −1.7%
アメリカ 420.3 445.1 5.9%
ブラジル 85.0 79.0 −7.1%
カナダ 192.9 188.0 −2.5%
コロンビア 63.3 62.0 −2.1%
キューバ 42.0 47.0 11.9%
アジア 602.4 555.3 −7.8%
中国 83.4 83.0 −0.5%
インドネシア 163.3 108.0 −33.9%
フィリピン 331.0 328.0 −0.9%
欧州 271.9 260.5 −4.2%
EU27 41.8 30.5 −27.1%
ロシア 220.0 220.0 0.0%
オセアニア 367.4 352.8 −4.0%
豪州 206.5 179.3 −13.2%
ニューカレドニア 143.6 152.5 6.1%
世界計 1,776.3 1,731.8 −2.5%
(出典:INSG データを基に作成)
(696)
需給動向
ベースメタル国際需給動向︱ニッケル︱2016.1 金属資源レポート 150
図5-4.中国のニッケル鉱石輸入元推移(2013年1月〜2015年11月)
(出典:Global Trade Atlas データを基に作成)
図5-5.日本のニッケル鉱石輸入元推移(2013年1月〜2015年10月)
(出典:財務省貿易統計データを基に作成)
(697)
需給動向
ベースメタル国際需給動向︱ニッケル︱2016.1 金属資源レポート 151
< 供給・一次ニッケル生産 >
表5-2に主要生産国別一次ニッケル生産量を示す。
これら14か国で世界供給の約9割を占めている。2015 年1〜10月累計一次ニッケル生産量は、前年同期比 2.0% 減の162.8万 t であった。ニューカレドニアやマ ダガスカル、カナダ等で増産があったものの、中国、
ブラジル等での減産により打ち消される格好となっ た。
一次ニッケル生産を巡る主な動向は以下のとおり。
・ 10月20日付インドネシア地元メディアによると、
Vale は同社がインドネシア南 Sulawesi 州 Sorowako で生産しているニッケルマット生産量が2015年第3 四半期に前年比14.5%増の22,100t(ニッケル量)と なり、生産量が増加したと報告した。第3四半期の 生 産 量 は、 第2四 半 期 よ り15.15% 増 加 し て い る。
2015年前半期において、PT Vale Indonesia は第1、
第2および第4炉がメンテナンスを行っており、第3 四半期にフル操業となった。
・ 10月12日 付 ロ シ ア 地 元 報 道 等 に よ る と、Kola MMC 社(Norilsk Nickel 社の子会社)の第1ニッケ ル電解プラントで、リニューアル後初のニッケルが 生産された。同プラントの生産再開は、Norilsk Nickel 社発展戦略に基づく Kola MMC 社のニッケ ル生産量拡大の一環である。電解工程で発生した塩 素を湿式製錬工程で利用するという技術により、第 1ニッケル電解プラントでは現場での塩素貯蔵が不 要となったため、生産コストが下がり、危険物輸 送・保管によるリスクが低減した。同プラントのフ ル操業化(年産4万5,000t)は2016年半ばを予定し ている。
・ 10月16日、広西華輝新材料は、欽州 NPI 製錬所の 第1期工事を完了したと発表。同製錬所は欽州ニッ ケル製錬および加工プロジェクトの一環で、生産能 力は30万 t/ 年(ニッケル品位10%)。生産ラインの 試験操業を一部11月に開始し、2016年11月までに フル操業に到達する計画。原料は、豪州、マレーシ ア、フィリピン、アフリカ、南米等から調達の予 定。
・ 10月28日付インドネシア地元メディアによると、
エネルギー鉱物資源省鉱物・石炭総局長 Bambang Gatot Ariyono 氏は、2016年に完成見込みの製錬所 は2件のみになる、と述べた。同氏によると、現在 35件の製錬所建設プロジェクトがあり、18件のプ ロジェクトが進捗率30%に至っており、そのほと んどはニッケル製錬所である。インドネシアにおけ る製錬所建設プロジェクトは、土地取得および許認 可プロセスの困難さに起因する資金不足から、様々 な障害に直面しているが、現在のコモディティ価格 の下落は状況をより悪化させている。
・ 11月11日、 中 国 有 色 金 属 集 団/太 原 鋼 鉄 の Tagaunttown フェロ ニッケ ル 製 錬 所 が、 ミャン マー政府によりフェロニッケル輸出を禁止されてい
る。同製錬所の今年1-9月の中国向け輸出は5.9万 t と中国のフェロニッケル輸入の12% を占めていた が、利益配分に関する交渉が決裂し、今年9月から 輸出が禁止されている。
・ 11月19日、カナダ・Winnipeg で開催された鉱業大 会において、Vale は MB 州西部の Thompson に位置 するニッケルの製精錬の操業を2018年に終了する ことを明らかにした。ニッケル価格の急落が主要因 だが、採掘および選鉱は継続するとしている。同社 は当初、製精錬の操業を2015年中に終了する予定 であったが、労働者等との間で遅ければ2019年ま で操業を継続させることに合意していた。価格低迷 により Thompson での操業で損失を出しているかど うかについては明言を避けたが、鉄鉱石生産者でも ある同社は今年第3四半期に21億 US$ の純損失を計 上している。また、現在 Thompson 鉱体の拡張とな る Footwall Deep 鉱床の FS を実施中で、2016年第1 四半期に完了する予定であるが、その後は中断して ニッケル価格の上昇を待つことも明らかにした。
・ 11月24日付インドネシア地元メディアによると、
2015年末までには、PT Macika Mineral Industri お よび PT Aneka Tambang(いずれもフェロニッケ ル)の少なくとも2か所で、中規模製錬所が生産を 表5-2. 主要生産国別一次ニッケル生産量(1-10月累計)
(単位:千 t)
2014年 1-10月計
2015年
1-10月計 増減比
アフリカ 63.2 71.6 13.3%
マダガスカル 31.0 38.9 25.4%
南アフリカ 28.3 32.7 15.6%
アメリカ 246.2 249.2 1.2%
ブラジル 68.2 58.7 −13.9%
カナダ 123.2 133.3 8.2%
コロンビア 34.4 30.8 −10.5%
キューバ 12.5 13.0 4.0%
アジア 783.9 757.5 −3.4%
中国 582.6 519.3 −10.9%
日本 147.0 156.3 6.3%
欧州 403.2 378.0 −6.3%
EU27 89.7 85.7 −4.5%
‐フィンランド 34.1 33.1 −3.0%
‐英国 32.0 31.9 −0.4%
ノルウェー 75.1 75.6 0.7%
ロシア 198.9 184.9 −7.0%
オセアニア 164.4 172.1 4.7%
豪州 113.3 108.7 −4.0%
ニューカレドニア 51.1 63.4 24.0%
世界計 1,661.0 1,628.3 −2.0%
(出典:INSG データを基に作成)
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