1.LME 価格と在庫
< 価格 >
2015年の LME 亜鉛価格は、3月下旬から5月半ば にかけては、ドル安や亜鉛需給逼迫が意識され、一時 2,405US$/t と10カ 月 ぶ り の 高 値 を つ け た も の の、
2015年全体のトレンドとしては中国需要低迷に対す る懸念やドル高を背景に下落傾向にある。特に、2015 年後半以降は、中国経済の減速が顕著となり始め、ま た米国の利上げ観測が高まったことにより亜鉛価格は 一層圧迫された。
図4-1に2015年10〜11月の LME 亜鉛現物価格と同 在庫の推移を示す。当該期間の亜鉛価格は1,690.5US
$/t でスタートし、10月8日までは1,600US$/t 台で推 移していたところ、10月9日に Glencore の亜鉛減産発 表 を 受 け て1,824.5US$/t ま で 急 伸 し た。12日 に は 1,835US$/t まで上昇したものの、その後は、共産党 中央委員会第5回全体会議の開催で中国の2016年以降 の5カ年計画における経済成長率目標が引き下げられ るとの見方が市場で広まり、中国経済減速懸念が高 まったこと、米 FRB が年内利上げを実行するとの見 通しからドル高が進んだことが価格を圧迫し下落基調 に転じ、11月上旬には、10月初めの1,600US$/t を挟 んだレンジにまで値を下げた。その後も亜鉛価格は下 げ止まらず、11月11日には1,568US$/t と6年ぶりの 安値を更新、同月19日には1,487US$/t と1,500US$/t を下回る安値を記録した。11月下旬は、底値拾いや 為替がドル安ユーロ高に動いたことから買戻しの動き が見られ、11月26日には1,600US$/t 台まで回復。そ の後わずかにドル高に振れたことが影響して再び 1,500 US$/t 台となり、1,545US$/t で越月した。
●当該期間最高値 :1,835US$/t(10月12日)
●当該期間最安値 :1,487US$/t(11月19日)
< 在庫 >
LME 亜鉛在庫は、2014年12月に69.1万 t まで積み 増しされて以降減少が続き、2015年4月中旬には在庫 量が50万 t を下回った。その後、9月に大幅な積み増 しがあり、60万 t まで増加したものの、10月以降は再 び減少傾向となっており、2015年1月から11月末まで の在庫平均は532千 t となっている(2014年在庫平均:
744千 t)。
当該期間における LME 亜鉛在庫は漸減が続き、2 カ月でおよそ55千 t 減少した。表4-1に主な LME 倉庫 における在庫量の変化を示す。亜鉛在庫が最も多いの
は、New Orleans(米国)倉庫であり、在庫量全体の 8割を保有しているが、同倉庫で40千 t、Johor(シン ガポール)倉庫で12千 t が搬出された。
また、11月中旬にはキャンセルワラントの増加が 続いた。Johor 倉庫では在庫の6割を超えるキャンセ ルワラントが発生しており、12月以降も在庫減少が 続くと予測される。
● 10月 初 LME 在 庫:594,925t(う ち、 キャン セ ル ワ ラント比率10.4%)
● 11月 末 LME 在 庫:545,375t(う ち、 キャン セ ル ワ ラント比率21.9%)
< 月間平均値(US$/t)>
2013 年 2014 年 2015 年
1 月 2,033 2,036 2,111
2 月 2,129 2,035 2,119
3 月 1,936 2,017 2,029
4 月 1,853 2,031 2,202
5 月 1,829 2,059 2,290
6 月 1,839 2,127 2,087
7 月 1,836 2,311 2,002
8 月 1,896 2,273 1,810
9 月 1,848 2,294 1,719
10 月 1,883 2,273 1,728
11 月 1,869 2,264 1,582
12 月 1,975 2,172 ―
1 〜 12 月 1,909 2,162 ―
図4-1.亜鉛:LME 価格と在庫の推移(2015年10〜11月)
(出典:LME データを基に作成)
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需給動向
ベースメタル国際需給動向︱亜鉛︱2016.1 金属資源レポート 142
2.需給
ILZSG による2012年10月〜2015年10月までの世界 亜鉛需給推移を図4-2に、中国亜鉛需給推移を図4-3に 示す。世界の鉱山生産量は、豪・Century 鉱山の閉山 や中国の中小鉱山操業停止等の影響を受けて2015年9 月単月では1,103千 t(対前年同期比1.5%増)、10月単 月では1,121千 t(対前年同期比3.0%減)と弱い数字に なったものの、世界亜鉛地金生産量および消費量は、
対前年同期比で増加傾向を示した。亜鉛地金の生産お よび消費は、2015年3月以降好調に伸びており、7月
には中国での需給の弱さから一時的に落ち込んだもの の8月には回復し、9〜10月の需給も中国やインドが 牽引して高い水準を維持した。地金生産量は9月単月 が1,186千 t、10月単月が1,185千 t と17カ月連続で前年 同期の生産量を上回った。消費についても、9月単月 が1,146千 t、10月単月が1,120千 t と、ともに対前年同 期比で増加した。なお、日本については住友金属鉱山 株式会社播磨事業所(兵庫県)における蒸留亜鉛の生 産が9月末で終了したことやその他製錬所の定修等を 受けて亜鉛地金生産は減少しており、亜鉛需要につい ても対前年同期比で2割近く減少した。
表4-1. 亜鉛:主な LME 倉庫におけるクローズ量(t)とキャンセルワラント比率(%)
倉庫 2015/10/1 2015/11/2 2015/12/1
New Orleans 472,000 9.8% 458,950 5.5% 430,825 22.2%
Antwerp 47,000 1.0% 47,000 1.0% 47,000 1.0%
Johor 42,550 24.2% 30,250 0.0% 30,250 62.8%
Port Klang 15,250 7.0% 14,750 3.9% 14,750 3.9%
Rotterdam 10,500 8.8% 10,400 12.7% 9,850 7.9%
計 594,925 10.4% 568,850 5.4% 540,000 22.0%
(内、米国内) 472,025 9.8% 458,975 5.5% 430,850 22.2%
(出典:LME)
図4-2.世界亜鉛需給推移(2012年10月〜 2015年10月)
(出典:LME データを基に作成)
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需給動向
ベースメタル国際需給動向︱亜鉛︱2016.1 金属資源レポート 143
< 世界の需給動向 >
2015年10〜11月の亜鉛生産をめぐる主な動向は以 下のとおりである。
・ 2015年10月9日、Glencore は資源価格低迷を理由に 豪州、南米、カザフスタンで亜鉛鉱石生産500千 t を削減すると発表した。これは同社の亜鉛生産量の 4割、世界の亜鉛鉱石生産量の4%を占める量であ り、本発表を受けて需給逼迫が懸念され、一時的に 亜鉛価格は上昇した。
・ 2015年10月13日、メキシコ・Peñoles 社は Naica 多 金属鉱山の無期限操業停止を発表した。同鉱山は、
2015年1月に坑内浸水が発生して以降、操業停止と なっていたものの、当該問題を解決する見通しが立 たないことから本発表に至った。同鉱山の2014年 における亜鉛生産量は15,399t である。
・ 2015年11月9日、 亜 鉛 製 錬 大 手 の ベ ル ギー・
Nyrstar 社は、亜鉛価格低迷を背景に所有する亜鉛 鉱山において400千 t の精鉱減産を検討している旨 を明らかにした。同社は、2015年に入り既にメキ シコおよびカナダの亜鉛鉱山の操業停止を決定して おり、100千 t 減産に踏み切っている。
・ 2015年11月11日付地元紙によると、ペルー・Milpo 社は、2016年に Cerro Lindo 銅・鉛・亜鉛鉱山の粗 鉱処理量を20,000t へ拡張する。同鉱山は、2015年1 月にも、粗鉱処理量を15,000t から18,000t へと拡張 するプロジェクトを完了させたばかり。
・ 2015年11月20日、中国亜鉛製錬大手10社は、2016 年に亜鉛500千 t 減産に協調することを発表した。
中国金属製錬加工業界は、足元生産過剰状況にあ り、亜鉛のみならず、銅やニッケル等でも協調減産 に進む傾向が見られている。
< 鉱山生産動向 >
ILZSG の最新の月次発表によると、2014年の世界鉱 山生産量は下方修正され、13,512千 t となった。2015 年1〜10月までの累計生産量は11,238千 t(対前年同期 比1.4%増)となった。
地域別鉱山生産量を表4-2に示す。中国国家統計局 の統計によると、2015年1〜9月の中国亜鉛精鉱生産 量は415万 t(対前年同期比0.5%減)となった。ILZSG 発表でも、2015年7〜10月の中国鉱山生産量は4カ月 連続で前年割れとなっており、同国の鉱山生産量は足 元減少傾向にある。中国国内亜鉛鉱山は、中小規模の ものが多数を占めており、環境保護検査の影響を受け て操業停止となっている鉱山が多数出ている。今後中 国の亜鉛鉱山生産は大規模鉱山へ集約されていくもの と見られ、鉱山生産量を拡大しづらくなっている。ま た、中国税関の統計によると、2015年9月における中 国の亜鉛精鉱輸入量は21.9万 t (グロス量、対前年同 図4-3.中国亜鉛需給推移(2012年10月〜 2015年10月)
(出典:LME データを基に作成)
表4-2.亜鉛鉱山生産量推移(千 t)
2014 年 2014 年 1-10 月
2015 年 1-10 月
アジア 6,696 5,482 5,522
中国 5,065 4,153 4,069
北米 1,184 983 927
中南米 2,758 2,286 2,347
欧州 983 812 812
アフリカ 325 272 251
豪州 1,566 1,246 1,379
世界計 13,512 11,081 11,238
(出典:ILZSG WORLD LEAD AND ZINC STATISTICS Monthly Bulletin , December 2015)
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需給動向
ベースメタル国際需給動向︱亜鉛︱2016.1 金属資源レポート 144
期 比84.7% 増)、2015年1〜9月 累 計 で197 万 t(グ ロ ス量、対前年同期比0.35%減)となっており、足元の 精鉱輸入が急激に増加していることから、中国産亜鉛 精鉱の需給が逼迫している様子が伺える。
豪州の増産は、Century 亜鉛鉱山において2015年8 月の閉山に向けて採掘量が増加したためと見られ、同 鉱山閉山後の2015年10月単月では、同国の亜鉛鉱山 生産量は125千 t(対前年同期比17%減)となった。亜 鉛生産量世界第6位の豪州・McArthur River 鉱山も 環 境 汚 染 に よ り NT 準 州 当 局 と 協 議 中 で あ る 他、
Glencore の亜鉛減産計画に含まれていることから、
今後のさらなる減産が想定される。同鉱山で135千 t の減産が計画されている他、Mt Isa 地域の George Fisher 鉱山および Lady Loretta 鉱山で245千 t(Lady Loretta 鉱山は操業停止)、また南米、カザフスタン の亜鉛鉱山でも減産される予定である。
北米においては、亜鉛鉱山生産が減少傾向にある。
ILZSG の統計によると、カナダでは2015年2月以降9 カ月連続、前年同期比で2〜3割ほど生産量が減少し ている。これは、2015年1月の Wolverine 鉱山の操業 停止、6月の Myra Falls 鉱山の操業停止の影響による ものである。2015年8月には Caribou 鉱山が生産開始 を迎えたことでカナダにおける亜鉛生産は徐々に増大 するものと見られるが、ベルギー・Nyrstar 社が米国 に保有する亜鉛鉱山の操業を停止すると発表したこと から、北米全体における亜鉛鉱山生産は減少に向かう と予測される。
中南米については、ペルー・Antamina 鉱山での増 産やボリビアにおける亜鉛鉱山生産量が伸びている。
< 地金生産・消費動向 >
世界亜鉛地金生産および消費については、ILZSG の最新の月次発表によると、2015年1〜10月累計生産 量は中国における生産量の伸びを背景に11,678千 t
(対前年同期比5.2%増)、消費量は11,465千 t(対前年 同期比1.1%増)となった。
生産については、中国は前年同期比9.2%増加、そ の他地域においても概ね増産傾向だったが、アフリカ についてはナミビアでの減産が影響し大幅な減少と なった。また、2015年1〜8月累計消費量は9,153千 t
(対前年同期比2.9%増)と中国が牽引する形で拡大し た。中国では、亜鉛地金生産能力過剰の状況にあり、
さらに国内鉱山生産量も低迷しているため、不足分の 亜鉛精鉱を輸入している状況にある。中国の亜鉛地金 生 産 は2015年 上 半 期 は 対 前 年 同 期 比15% 増 程 度 と なっていたものの、下半期に入り増産のペースは対前 年同期比10%を下回っており、10月は5%程度となっ た。中国税関の発表では、2015年1〜9月の亜鉛地金 輸入量は50.9万 t(対前年同期比22.6%増)、9月単月
では2.9万 t(対前年同期比52.4%増)と亜鉛地金の輸 入も増えており、精鉱不足により亜鉛地金生産がタイ ト化している模様である。
消費についても世界的に拡大傾向にある。安泰科 によれば、中国においては、建設、家電製品向け需要 は低迷しているものの、自動車やインフラ需要が強 まっている。また、欧州においても自動車販売が好調 であり、米国では景気回復と共に建設向け需要が高 まっている。反面、世界4位の亜鉛消費国である韓国 では、2015年7月以降需要が急激に落ち込んでおり、
10月単月では対前年同期比で4割の減少となった。中 国鉄鋼業との輸出競争や国内鉄鋼メーカーの競争激化 している背景もある。中国との競争問題は韓国だけで は な く、 日 本 へ の 影 響 も 大 き い も の と 見 ら れ る。
ILZSG の発表によれば日本の亜鉛需要は2015年3月以 降前年割れが続いており、日本鉄鋼連盟の発表でも自 動車向け需要低迷により、2015年11月までに16カ月 連続で亜鉛めっき鋼板生産量が対前年同月比でマイナ スであったと発表されている。
表4-3.亜鉛地金生産量推移(千 t)
2014 年 2014 年 1-10 月
2015 年 1-10 月
アジア 8,660 7,066 7,637
中国 5,807 4,718 5,154
北米 828 681 707
中南米 931 775 782
欧州 2,466 2,053 2,071
アフリカ 137 117 78
豪州 488 406 403
世界計 13,509 11,098 11,678
(出典:ILZSG WORLD LEAD AND ZINC STATISTICS Monthly Bulletin , December 2015)
表4-4.亜鉛地金消費量推移(千 t)
2014 年 2014 年 1-10 月
2015 年 1-10 月
アジア 9,316 7,665 7,749
中国 6,401 5,263 5,360
北米 1,126 940 915
中南米 622 518 535
欧州 2,327 1,931 1,974
アフリカ 158 131 139
豪州 184 155 153
世界計 13,733 11,340 11,465
(出典:ILZSG WORLD LEAD AND ZINC STATISTICS Monthly Bulletin , December 2015)
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