1.LME 価格と在庫
< 価格 >
LME 鉛価格は、2015年は資源価格下落の影響から 2,000US$/t を下回る安値で推移している。5月上旬に は一時2,140US$/t まで回復したものの、中国需要減 退懸念や米国景気回復によるドル高ユーロ安を背景に 軟調な値動きが続き、6月以降は中国経済指標の低迷 により一段安となっており足元1,600US$/t 前後で推 移している。
図3-1に2015年10〜11月の LME 鉛現物価格と同在 庫の推移を示す。当該期間の価格は1,663US$/t でス タートし、翌10月2日には1,619US$/t と2010年6月以 来の安値となった。その後も1,600US$/t 台で推移し ていたところ、10月9日の Glencore 亜鉛減産発表を受 け、亜鉛鉱山の副産物として産出される鉛も生産減に 向かうことが意識され鉛価格は急騰、10月15日には 1,816.5US$/t と3カ月ぶりの高値となった。
しかし、その後は再び下落に転じ、1,600US$/t 台 のレンジに収束。10月26日から29日にかけて開催さ れた中国共産党中央委員会第5回全体会議において、
2016年以降の5カ年計画について協議された。その中 で、経済成長率目標が引き下げられたとの見方が市場 で広まったことや、米 FRB が年内利上げに踏み切る との観測が強まりドル高が進んだこと等が鉛価格を圧 迫した。11月11日には1,600US$/t を下回る安値とな り、中国経済減速やドル高基調に下押しされ、鉛価格 は下げ止まらず、11月23日には2009年5月以来とな る1,555US$/t の当該期間最安値を記録した。その後、
11月末にかけては、底値拾いやドル高が一服したこ とを受けて買い戻されたことから小幅な上昇が続き、
1,630US$/t で越月した。
なお、10月15日より、鉛価格は亜鉛価格を上回っ た値動きが続いている。鉛が亜鉛より高値となるのは 2014年6月以来。
●当該期間最高値:1,816.5US$/t(10月15日)
●当該期間最安値:1,555US$/t(11月23日)
< 在庫 >
表3-1に主な LME 倉庫における鉛在庫量の変化を 示す。2015年6月から7月末にかけて60万 t が積み増 されたものの、7月下旬以降は減少傾向。当該期間に おいても搬出が続き、およそ33千 t 減となった。
鉛在庫については、2015年3月に在庫全体の46%と 大量のキャンセルワラントが発生していたが、6月中 に概ねキャンセル分の搬出が終わったと見られ、7月
初旬にはキャンセルワラント比率は全体量のおよそ 8%まで低下した。その後、Busan(韓国)倉庫に50 千 t を超える鉛が搬入されたものの、同時にその半分 がすぐにキャンセルワラントとなっており、9月末ま でキャンセルワラント比率は25%前後で推移した。
10月以降は、大きな在庫積み増しの動きは無く、
キャンセルされた在庫が搬出される動きが続いた。10 月下旬には Busan 倉庫で5千 t、Rotterdam(オラン ダ)倉庫等で3千 t ほどのキャンセルワラントが発生 し、鉛在庫の減少に一層の拍車がかかった。
● 10月初 LME 在庫:161,600t(キャンセルワラント 比率25.6%)
● 11月末 LME 在庫:128,325t(キャンセルワラント 比率22.8%)
< 月間平均値(US$/t)>
2013 年 2014 年 2015 年
1 月 2,340 2,149 1,829
2 月 2,376 2,110 1,892
3 月 2,183 2,056 1,790
4 月 2,030 2,088 1,994
5 月 2,028 2,097 2,004
6 月 2,104 2,103 1,836
7 月 2,048 2,189 1,762
8 月 2,173 2,237 1,693
9 月 2,088 2,146 1,682
10 月 2,111 2,038 1,725
11 月 2,090 2,024 1,616
12 月 2,133 1,936 ―
1 〜 12 月 2,141 2,098 ―
図3-1.鉛:LME 価格と在庫の推移(2015年10〜11月)
(出典:LME)
(683)
需給動向
ベースメタル国際需給動向︱鉛︱2016.1 金属資源レポート 137
2.需給
国際鉛亜鉛研究会(ILZSG)による2012年10月〜
2015年10月までの世界鉛需給推移を図3-2に、中国の 需給推移を図3-3に示す。世界の鉛鉱山生産および地 金生産は、中国の減産の影響により低迷しているもの の、ペルーやボリビアにおける鉱山生産量の増加、北 米における地金生産の増加が見られた。
世界の鉱山生産量は、2015年9月単月では327千 t
(対前年同期比21%減)、10月単月では329千 t(対前 年同期比27%減)となった。地金生産量については、
9月単月が839千 t(対前年同期比12%減)、10月単月 が847千 t(対前年同期比12%減)と10カ月連続で前 年を下回り、消費についても9月単月が823千 t(対前 年同期比13%減)、10月単月が843千 t(対前年同期比 14%減)と低調に推移した。
中国について見ると、需給の低迷はさらに深刻で ある。9〜10月期の鉱山生産量は、対前年同期比で 50%減、地金生産量および消費量は対前年同期比で 30%減となっており、中国需要の低迷は一層顕著な ものとなっている。
表3-1. 鉛:主な LME 倉庫におけるクローズ量(t)とキャンセルワラント比率(%)
倉庫 2015/10/1 2015/11/2 2015/12/1
Vlissingen 66,675 29.4% 60,305 25.3% 58,250 23.5%
Busan 28,625 6.8% 26,975 25.3% 20,150 24.7%
Rotterdam 23,800 16.0% 21,850 25.4% 18,150 10.2%
Bilbao 12,925 60.3% 11,000 68.9% 6,825 49.8%
Port Klang 13,950 0.4% 13,950 0.4% 13,950 0.5%
Johor 8,475 48.1% 7,375 50.8% 6,600 52.7%
計 161,600 25.6% 146,850 28.8% 128,225 22.8%
(出典:LME)
図3-2.世界鉛需給推移(2012年10月〜 2015年10月)
(出典:ILZSG データを基に作成)
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需給動向
ベースメタル国際需給動向︱鉛︱2016.1 金属資源レポート 138
< 世界の需給動向 >
2015年10〜11月の鉛需給をめぐる主な動向は以下 のとおりである。
・ 2015年10月13日 付 地 元 紙 に よ る と、 メ キ シ コ・
Peñoles社はNaica多金属鉱山の無期限操業停止を発 表した。同鉱山は、2015年1月に坑内浸水が発生して 以降、操業停止となっていたものの、当該問題を解 決する見通しが立たないことから、本発表に至った。
なお、同鉱山の2014年における鉛生産量は19,694t。
・ 2015年11月11日付地元紙によると、ペルー・Milpo 社は、2016年に Cerro Lindo 銅・鉛・亜鉛鉱山の粗 鉱処理量を20,000t へ拡張する。同鉱山は、2015年1 月にも、粗鉱処理量を15,000t から18,000t へと拡張 するプロジェクトを完了したばかり。
・ 中国工業情報化部・国家エネルギー局は、2014年 は電力、石炭、製鉄、製鋼等18業種について立ち 遅れた生産能力と過剰生産能力の淘汰目標を達成し た。銅製錬については76万 t、鉛製錬は36万 t、鉛 蓄 電 池 は3,020万 kVA、 レ ア アース は11.4万 t が 淘 汰された。
< 鉱山生産動向 >
ILZSG の最新の月次発表によると、2014年の鉱山 生産量は4,944千 t、2015年1〜10月までの累計生産量 は3,756千 t(対前年同期比7.1%減)となった。
地域別鉛鉱山生産量を表3-2に示す。中国では減産 傾向にあり、中国国家統計局の統計によると、9月の 鉛 精 鉱 生 産 量 は29.3万 t(対 前 年 同 期 比6.7% 減)、
2015年1月〜9月の累計生産量は224.7万 t(対前年同 期比6.5%減)となった(注:ILZSG 発表の統計は中国 政府発表の数値を実態に合わせて修正しているため、
中国国家統計局発表の数値との間に矛盾が生じてい る)。また、中国税関の統計によると、2015年1〜9月 の 鉛 精 鉱 の 輸 入 量 は130.6万 t(金 属 量65.3万 t 相 当、
対前年同期比23.9%増)となり、9月単月では20.3万 t
(対前年同期比53.9%増)に達した。中国で進められ ている環境安全検査により、中小規模鉱山が操業停止 に追い込まれている関係で、国内鉛精鉱の流通量が減 少していることから輸入により賄っているものと見ら れる。
中南米地域では、ペルー・Antamina鉱山、Alpamarca 鉱山等で生産量が増加した他、Nyrster社100%所有のホ ンデュラス・El Mochito鉱山でも増産傾向にある。
豪州については、世界3位の亜鉛産出量を誇ってい た Century 鉱山(2014年鉛純分生産量:約65千 t)が8 月をもって閉山したことから鉱山生産量は減少してい 図3-3.中国鉛需給推移(2012年10月〜 2015年10月)
(出典:ILZSG データを基に作成)
表3-2.鉛鉱山生産量推移(千 t)
2014 年 2014 年 1-10 月
2015 年 1-10 月
アジア 2,626 2,129 1,864
中国 2,301 1,861 1,555
北米 383 314 315
中南米 688 570 587
欧州 435 361 359
アフリカ 84 71 70
豪州 728 597 561
世界計 4,944 4,042 3,756
(出典:ILZSG WORLD LEAD AND ZINC STATISTICS Monthly Bulletin , December 2015)
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需給動向
ベースメタル国際需給動向︱鉛︱2016.1 金属資源レポート 139 る。なお、同鉱山では、8月以降も採掘を終えた鉱石
を処理するために選鉱設備が稼働していたが、12月 14日に最終の出荷を終えた。
そ の 他、2015年8月 に 操 業 開 始 し た カ ナ ダ・
Caribou 鉱山で生産能力が拡張されており、世界最大 の亜鉛鉱山であるインド・Rmpura-Agucha 鉱山でも 生産量が拡大している。
< 地金生産・消費動向 >
表3-3に示す通り、2015年1〜10月の累計鉛地金生 産量は、対前年同期比で欧州を除く全地域で減産して おり、消費についても表3-4に示す通り、世界的に減 少した。
地域別に見ると、北米では季節的な鉛バッテリー 需要減少が消費を縮小させたが、欧州では自動車販売 が好調であることを背景に概ね安定した生産を維持し ている。アジア圏では中国を除けば生産、消費共に概 ね横ばい。亜鉛製錬大手の韓国・KOREA ZINC は 製錬能力拡張中で、2016年には鉛の製錬能力が年間 300千 t から430千 t に拡大される予定である。日本は 国内製錬所の定修や鉛スクラップの国外流出等を要因 に生産減となっている。
安泰科資料によると、中国における2015年1〜9月 の一次鉛生産量は235.5万 t(対前年同期比4.0%減)、
二 次 鉛 生 産 量 は81.6万 t(対 前 年 同 期 比9.9% 減)と なった。中国国内における鉛精鉱の供給不足や鉛蓄電 池需要の低迷、環境安全検査による製錬設備の操業停 止等が影響している。また、中国税関の統計による と、鉛地金輸入量は163.7t(対前年同期比76.0%減)
である一方、鉛地金輸出量は25,122.6t(対前年同期比 75.7%増)と大幅に増加した。中国国内の鉛地金生産 は縮小していながらも、依然として生産能力過剰の状 況にある様子が浮き彫りとなっている。一方需要につ いては、鉛の主要用途である鉛蓄電池需要は低迷して いる。2015年は生産能力淘汰目標に組み込まれてお り、既に鉛製錬36万 t、鉛蓄電池は3,020万 kVA の淘 汰を達成したと発表されている。2015年の中国にお
ける e-bike(電動自転車)向け鉛バッテリー需要は低 迷しており、新規自動車販売台数は対前年比で増加し ているものの、環境規制強化から次世代自動車の人気 が高まっているため、鉛蓄電池全体の需要が減少傾向 にあることは変わりない模様である。
表3-3.鉛地金生産量推移(千 t)
2014 年 2014 年 1-10 月
2015 年 1-10 月
アジア 6,631 5,424 4,812
中国 4,704 3,820 3,216
北米 1,409 1,178 1,144
中南米 704 594 542
欧州 1,850 1,544 1,606
アフリカ 102 85 85
豪州 226 199 182
世界計 10,921 9,023 8,372
(出典:ILZSG WORLD LEAD AND ZINC STATISTICS Monthly Bulletin , December 2015)
表3-4.鉛地金消費量推移(千 t)
2014 年 2014 年 1-10 月
2015 年 1-10 月
アジア 6,848 5,598 5,018
中国 4,709 3,828 3,230
北米 1,687 1,418 1,342
中南米 544 462 449
欧州 1,719 1,445 1,438
アフリカ 96 79 88
豪州 17 15 14
世界計 10,911 9,017 8,350
(出典:ILZSG WORLD LEAD AND ZINC STATISTICS Monthly Bulletin , December 2015)
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