バンクーバー事務所
Ⅰ.鉱業関連一般概要
1.NU 準州におけるイヌイット土地所有権の概要
図1-1.QC 州鉱業の GDP
(出典:Statistics Canada)
図1-1 カナダ NU 準州略図
出典:Natural Resources Canada, Reference Maps, Nunavut
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レポート
ヌナブト準州の投資環境調査2015年2016.1 金属資源レポート 70
カナダのヌナブト準州1(NU 準州)は、カナダ全体 の5分の1を占めるカナダ最大の面積を有しながらも 人口は36,919人2と最も少なく、先住民族であるイヌ イット族がその居住者の約80% を占める、カナダで 最も新しく設立された準州である。1970年代に北西 準州(NW 準州)の北部に居住しているイヌイット族 による土地に対する権利の主張を契機に、20年にわ たるイヌイット族と連邦政府、NW 準州政府との協議 の 結 果、1993年6月 に「ヌ ナ ブ ト 土 地 請 求 協 定
(Nunavut Land Claims Agreement)」が成立し、こ れに基づきイヌイット族を代表するヌナブト・タンガ ヴィク連盟 (Tungavik Federation of Nunavut)と連 邦政府及び NW 準州政府が、1999年4月1日をもって 新しい自治体である NU 準州を成立することに合意 し、当日をもって NU 準州が設立された。
NU 準州は前記のとおり、1999年4月に「ヌナブト
土地請求協定(Nunavut Land Claims Agreement ‒ NLCA)」に よ り 新 し く 設 立 さ れ た 準 州 で あ る。
NLCA により、イヌイット族には準州全体の約18%
に あ た る356,000km2の 土 地 に 対 す る 権 利(fee simple)が付与されたが、このうち地表権とともに地 下資源に対する権利もイヌイット族に与えられた土地 は、イヌイット族に付与された土地全体の約11%、
NU 州全体の2% 程度に過ぎない。残りのイヌイット 所有地においてイヌイット族が有するのは地表権のみ で、地下資源への権利はカナダ連邦政府が留保してい る。また、NLCA は各市町村内で連邦所有地又はイ ヌ イット 所 有 地 で な い 土 地 を 市 町 村 所 有 地
(municipal land 又は commissionerʼs land と呼ばれる)
とし3、各市町村がこれらの土地の所有権を有し、そ の処分、管理を行っている。NU 準州の土地所有権区 分は表1-1及び図1-2、1-3に示すとおりである。
表1-1 NU 準州の土地所有区分
土地区分 面積
(km2)
IOL に 占める割合
NU 準州全体に 占める割合
イヌイット所有地 Inuit Owned Land (IOL)
地表権イヌイット所有地4 Surface IOL
318,000
(944土地区画)
89% 16%
地下資源権イヌイット所有地5 Subsurface IOL
38,000
(144土地区画)
11% 2%
合計 356,000 100% 18%
市町村所有地 Municipal Land (Commissionerʼs Land) (不明) (不明) (不明)
連邦所有地 Federal Land 1,583,000* - 82%*
NU 準州全体 1,994,000 - 100%
* 注:市町村所有地の面積は不明かつ微小であるため、連邦所有地の面積はこれをゼロとした値である。
1 カナダには3つの準州(ユーコン準州(YK 準州)、NU 準州及び NW 準州)があり、いずれの準州もほぼ北緯60度 以北に存在し、カナダの土地面積の40%、人口の3% を占める。準州は憲法上、連邦から独立した権限を有する 州とは異なり、連邦政府より委託された権限の行使を行うこととなっており、原則的には連邦政府の直接支配を 受ける。
2 Nunavut Bureau of Statistics, 2015年7月1日現在。
3 Part 2
4 S.19.2.1(b)
5 S.19.2.1(a)
図1-2 土地及び地下資源の所有権割合
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レポート
ヌナブト準州の投資環境調査2015年2016.1 金属資源レポート 71 土地及び地下資源の所有権者により、NU準州におけ
る探鉱や鉱山操業活動に関する管轄も異なり、連邦政 府、イヌイットを代表する組織であるヌナブト・トゥ ンガヴィク会社(Nunavut Tunngavik Incorporated:
NTI)、NTIの下位組織である3つの地域イヌイット協 会(Regional Inuit Associations:RIA)、NU準州政府、
及 び、5つ の 公 共 政 府 機 関(Institutions of Public
Government:IPG)が個別又は連携して管理を行って いる。各機関の役割については、2.鉱業行政機関にお いて説明するが、その権限や責任は、主に「ヌナブト 土地請求協定」で定められている。
しかし、2014年10月には、連邦政府組織であるカ ナダ先住民関係・北方省(Indigenous and Northern Affairs Canada:INAC)6 が、NU 準州における土地、
6 2015年10月の連邦選挙前は先住民問題・北方開発省(Aboriginal Affairs and Northern Development Canada)と 称されていたが、今回の選挙で与党となった自由党により名称が変更された。
図1-3 NU 準州の土地所有権区分
出典:Inuit Owned Land in Nunavut (Online interactive map)
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レポート
ヌナブト準州の投資環境調査2015年2016.1 金属資源レポート 72
地下資源管理を将来的に準州に委譲するために、連邦 交渉責任者(Chief Federal Negotiator)を指名して原 則合意書(Agreement-in-Principle)を締結すべく準 州政府との交渉を始め、最終契約の締結に向けた準備 を開始した。後述するとおり、最終委譲合意成立の明 確な見通しは未だに立っていないが、これが成立され ると、NU 準州政府が連邦政府に代わり、準州内の連 邦所有地及び連邦所有天然資源に対する管理を行うこ ととなり、準州政府に州政府類似の権限が与えられる こととなる。権限移譲については、「土地・資源管理 権限の委譲」の項で詳細を記載する。
2.鉱業行政機関
準州は憲法上、連邦政府より独立した権限を有す る州と異なり、連邦政府がこれを管轄し、準州政府は 連邦政府より委譲された範囲内で権限を行使する。
よって、NU 準州についても、原則的には連邦政府が 行政管理機関であるが、1999年4月に当準州設立の基 礎となった「ヌナブト土地請求協定(NLCA)」が締結 され、土地、地下資源に対する権利の一部がイヌイッ ト族に譲渡されたことにより、所轄当局は該当地が連 邦所有地であるか、地表権のみをイヌイット族が所有 する地表権イヌイット所有地であるか、地表権、地下 資源権の両方をイヌイット族が所有する地下資源権イ ヌイット所有地であるかによって異なる。しかしなが ら、前述のとおり、地下資源権イヌイット所有地は NU 準州全体の約2%程度に過ぎないため、現時点で は殆どの場合は連邦政府が地下資源については管轄権 を有すると言える。ただし、将来、連邦政府と準州政 府の間での委譲契約(devolution agreement)が成立 した場合(「土地・資源管理権限の委譲」の項を参照)
は、天然資源の管理は準州政府が行うこととなる。
連邦政府、準州政府及びイヌイット代表機関の鉱 業活動に対する管轄、役割は以下に記載するとおりで ある。
(1) カナダ連邦政府
① カナダ先住民関係・北方省(Indigenous and Northern Affairs Canada:INAC)7
連邦所有地及び地表権イヌイット所有地内の天然 資源の管理を行う。2014年3月に NW 準州及び NU 準
州の鉱業活動に適用されていた NW 準州・NU 準州鉱 業規則が分割され、新しく NW 準州鉱業規則(NW 準 州 Mining Regulations) 及 び NU 鉱 業 規 則
(Nunavut Mining Regulation)が制定され、NU 準州 では NU 準州鉱業規則が適用されることとなり、NU 準州内の連邦所有地及び地表権イヌイット所有地内 の天然資源の管理は主にこの規則に基づき INAC が 行う。
② カナダ天然資源省(Natural Resources of Canada:
NRCan)8
天然資源、エネルギー、鉱物、林業、地球化学、
有害物、爆発物、北部環境に関する事項を管轄する。
Department of Natural Resources Act(S.C. 1994, c.41)に基づき、前記の管轄分野に関するプログラム や政策を調整、推進、実施し、天然資源に関する規則 や基準の開発に参画する等の役割を果たす。
③カナダ水産海洋省(Fisheries and Ocean Canada)9 連邦法である漁業法(Fisheries Act(R.S.C., 1985, c. F-14))10に基づき、漁業、遊魚、先住民族による漁 獲に関わる魚類に極めて有害な影響を与えるような行 為につき規制を行う。漁業法は2013年に抜本的な改 正がなされ、それまでカナダ全域の魚類の生息する水 域における魚類に有害な行為が禁止されていたのが、
漁業、遊魚、先住民族による漁獲に関わる魚類に極め て有害な影響を与えるような行為のみを禁止11するこ ととなった12。この改正は、一方で魚類の保護レベル を大幅に狭めるものであるとの批判がある反面、違反 行為に対する罰金は改正前に比べ大幅に増額され13、 違反者が個人、中小企業、大企業であるかにより区別 されることとなった。
また、漁業法の下位規程である金属鉱業排水規則
(Metal Mining Effluent Regulations(SOR/2002-222))14は、鉱山操業における排水中の特定の有害物 質の含有率を制限し、魚類を死に至らしめる尾鉱排出 を禁止している。一方で、この規則は別紙2で一定の 条件の下に鉱山操業者が鉱業廃棄物を廃棄できる水域 を特定しており、カナダ水産海洋省はこの別紙2に新 しい水域を追加することにより、魚類が生息する一定 の水域に鉱業廃棄物を廃棄するのを実質的に許可する
7 8 9 10
11 Fisheries Act, Section 35
12 Changes to the Fisheries Act (Fisheries and Oceans Canada)
13 Fisheries Act, Section 40
14
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レポート
ヌナブト準州の投資環境調査2015年2016.1 金属資源レポート 73 権限が与えられている15。
④カナダ環境省(Environment Canada)16
カナダにおける自然環境保護を管轄し、環境に関 する法令の作成、改正、管理を担当する。また、カナ ダ環境保護法(Canada Environmental Protection Act 1999)に基づき、オゾン減少物質許可、海中廃棄 許可、有害物質のカナダよりの搬出又はカナダへ搬入 許可等を発行する。環境評価 (EA) は、後に説明す るとおり、連邦政府先住民関係・北方省(INAC)、
準州政府、イヌイット代表の三者で構成されるナヌブ ト影響評価委員会(Nunavut Impact Review Board:
NIRB)が担当し、環境省は審査に当たり、アドバイ ス等を提供する。
⑤ カナダ原子力安全委員会(Canadian Nuclear Safety Commission)
ウラン鉱山のライセンス取得は、原子力安全管理法
(Nuclear Safety and Control Act) に基づきカナダ原子 力安全委員会(Canadian Nuclear Safety Commission)
が管理する。現在カナダにおけるウラン鉱山はサスカ チュワン州北部においてのみ操業されているが、NU 準州、特に Kivlliq 地域には多くのウラン鉱床が存在 し、現在30を超える地域でウランの探査が行われ17、9 つのウラン探鉱プロジェクトが進行している。
(2) NU 準州政府
鉱業活動に対する管轄権を有さないため直接関与 することはないが、連邦政府、イヌイット機関と連携 して政策策定などを行う。
①法務省 (Department of Justice) 18
NU 準州で会社操業を行うためには、同準州におい て会社法(Business Corporations Act19)に基づき会
社登録を行う必要があり、法務省がこれを管轄する。
② 経済開発・交通局 鉱物石油資源部(Department of Economic Development and Transportation, Minerals and Petroleum Resource Division)
資源開発会社が資源の開発に際し、NU 準州の住民 の利益を保護するために自主的に準州政府と開発連携 合意(Resource Partnership Agreement)を締結する ことを推奨する政策20、先住民との協議に関するガイ ドライン21、ウランに関する政策などを制定し、準州 の政策に適った鉱業活動を促進する。
③ 地域・政府サービス省(Department of Community and Government Services)
コ ミッショナー所 有 地 法(Commissionerʼs Land Act)、地方自治体所有地管理政策(Municipal Land Administration Policy)等を策定する。
④環境省(Department of Environment)22
準州環境保護法(Environmental Protection Act)23 の所管省として、有害廃棄物に関する管理24、環境影 響評価に関し、ヌナブト影響審査委員会(NIRB)と 連携し、また、土地利用に関しヌナブト計画委員会
(Nunavut Planning Commission:NPC)と連携し、
政策の策定等を行う。
(3) 連邦・準州・先住民連携組織その他の組織
① 公共政府機関(Institutions of Public Government:
IPG)
ヌナブト土地請求協定(NLCA)に基づき、NLCA の 対 象 と な る ヌ ナ ブ ト 先 住 民 定 住 地 域(Nunavut Settlement Area)、即ち新しく設立された NU 準州内 の土地及び天然資源を管理する機関として次の5つの 公共政府機関(IPG)が設立され、各機関は独自に環境
15 2015年2月19日には新しく4水域が追加されている。
16
17 Uranium in Nunavul Review, February 2011
18 Department of Justice, Corporate Registries
19 SNWT (Nu) 1996, c 19v
20 Development Partnership Agreement Policy
21 Consulting with Communities in Nunavut
22 Department of Environment HP:
23 RSMWT (NU) 1988, c E-7
24 Department of Environment, Environmental Protection, Hazardous Waste Registration Forms
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