純輸出 公的需要 民間需要 実質GDP
純輸出 公的需要 民間需要 実質GDP
数年のリストラで労働分配率が大きく低下す るなど、企業の過剰雇用の調整はほぼ一巡し た。06年度には雇用者への還元が本格化し よう。一方、06年1月から定率減税の減税幅 が半分に縮小された。平年度ベースで国税 1兆2,500億円、地方税4,000億円の負担増と なり、年金などを含めた06年度の家計の税・
社会保障負担は、前年度比2.5兆円程度(可 処分所得の0.9%程度)増加すると試算され る。ただ、雇用者所得の伸びが高まることで、
税・社会保障負担の増加は、ほぼ吸収できる とみられる。06年度の実質個人消費は前年 比2.1%増と05年度に続き2%台の伸びを維持 すると予測した。
07年度は、デジタル関連投資の一巡で設 備投資の拡大が一服すると予想される。た だ、国内外の需要が底堅く推移すると想定し ており、設備投資が大幅に落ち込む可能性は 小さい。実質設備投資は前年比3.1%増と予 測した。
一方、家計部門は引き続き堅調に推移しよ う。07年度も税・社会保障負担の増加が下 押し要因ではあるが、企業から雇用者への収 益還元が続くと予想される。個人消費は05 年度に続き06年度も高めの伸びを見込んで おり、07年度前半は増勢がやや鈍化すると みられる。ただ、08年4月から消費税率が現 行の5%から7%へ引き上げられるとの前提 を置いており、07年度後半にかけて駆込み 需要が盛り上がると想定した。07年度の実 質個人消費は前年比2.2%増と予測した。
(1)前提条件
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為替相場、原油価格、財政 政策、海外経済(為替相場)
円ドル相場は、4月21日のG7(7か国財務相・
中央銀行総裁会議)の共同声明が、中国の人 民元に一段の柔軟性を求めたことから、円買 い・ドル売りの動きが強まり、24日の東京 市場では約3か月ぶりに1ドル=114円台を付 けた。バーナンキFRB議長が27日の議会証 言で、利上げを休止する可能性に言及したこ ともドル売り材料になった。一方、日本では、
日銀当座預金残高の削減が順調に進んでいる ことなどから、「ゼロ金利政策は早ければ6 月にも解除される」との見方が浮上、日米金 利差が縮小するとの観測から連休明けの5月 8日の東京市場で1ドル=111円台、ロンドン 市場では一時1ドル=110円台まで円が買い 進まれた。5月10日に開催されたFOMC(米 連邦公開市場委員会)では、6月以降も追加 利上げの可能性が残るとの判断が示されたこ とで、ドルを買い戻す動きもみられたが、そ の後は再び円買いの勢いが強まり、12日に は05年9月以来、8か月ぶりに1ドル=110円 を突破した。当面は、ゼロ金利政策の早期解 除観測や中国人民元の先高観などから円買い 優勢の相場展開が続こう。
ただ、ゼロ金利政策解除後の利上げテンポ は緩やかにとどまるとみられ、ドルが一本調 子で下落することは考えにくい。また、米国 経済は先行き減速が見込まれるとはいえ、米 国の成長率は日本を上回る可能性が高い。日 米の金利差が依然として大きいこともあっ
て、ドルの下落テンポは緩やかなものにとど まると予想される。年度平均の為替レートは、
06年度が1ドル110.0円、07年度が108.0円と 想定した。
(原油価格)
原油価格(WTI)は、2月中旬に1バレル 60ドルを割り込んだものの、夏場のガソリ ン需要期を前にした在庫積増しなどをきっか けに再び上昇基調に転じた。さらに、4月17 日には、イランのラフサンジャニ最高評議会 議長が「ウラン濃縮を停止する考えはない」
と発言したとの報道が伝わり、中東情勢の緊 迫化から終値で初めて1バレル70ドル台へ達 し、21日には一時1バレル75ドルを突破した。
こうした原油高に対して、米政府は25日に 戦略石油備蓄の積増しを一時的に停止すると の考えを表明したことで、原油価格の急騰に は一応の歯止めがかかったが、5月前半も70 ドルを挟んだ高値圏でのもみ合いとなってい る。今後も中東を中心とした地政学的リスク が強く意識されるうえ、世界の原油需給も緩 和に向かう兆しはなく、原油価格は高値圏で の推移が続く可能性が大きい。経済見通しの 前提となる原油価格(通関ベース)は、06年度 1バレル68.0ドル、07年度70.0ドルと想定した。
(財政政策)
06年度予算は、公共投資関係費(公共事 業関係費+その他施設費)が7兆8,784億円、
前 年 度 当 初 予 算 比4.8 % 減 と、05年 度( 同 4.0%減)に比べて削減率が拡大した。政府
は、2011年度に基礎的財政収支(注)1(プライ マリー・バランス)の黒字化を目標としてい るだけに、今後も緊縮型の財政運営が継続さ れる公算が大きい。なお、実質GDPベース の公共投資は、05年度に新潟県中越地震(04 年10月)などの災害復旧事業が進捗したこ とが下支え要因となったが、06年度にはそ の反動などもあって、減少幅は拡大すると予 想される。
(海外経済)
<米国>…米景気は1〜3月も高めの成長と なるなど底堅い動きを示したが、先行きは 徐々に減速する公算が大きい。足元の個人 消費は、堅調な雇用情勢を反映して増加傾 向を維持しているものの増勢は鈍化して いる。このところのガソリン価格の高騰 が、今後の消費支出を抑制する要因となろ う。また、長期金利の上昇で、個人消費を 支えてきた住宅投資も緩やかに減少すると 予想される。ただ、企業収益の好調を背景 に、設備投資は引き続き堅調に推移すると みられ、米景気が失速する可能性は小さい。
シリコンサイクルが上向きに転じたことで、
IT関連を中心とした設備投資は高水準を維 持する可能性が高い。住宅ブームの調整が 一巡する07年には、米景気は再び成長テ ンポを高めると予想される。実質成長率は 06年3.3%、07年3.3%と予測した。
<欧州>…ドイツ経済は、堅調な世界経済を 背景に輸出がけん引役となり、回復傾向で
(注) 1.国債発行を除いた歳入から、国債の元利払いを除いた歳出を差し引いた収支。単年度の歳出を税収で賄えるかどうかの 指標である。
推移している。輸出増による企業収益の回 復で、今後も企業部門を中心に回復基調で 推移しよう。ただ、企業収益の回復が家計 部門に波及するには、なお時間を要すると みられ、GDPの6割近くを占める個人消費 の本格回復までは期待できない。さらに、
07年には、財政赤字削減に向けて、付加 価値税率(現行16%)が3%引き上げられ る予定で、民需主導の本格的な景気回復は 当面望めそうにない。ドイツの実質成長率 は06年1.8%、07年1.3%、ユーロ圏の実質 成長率は06年2.0%、07年1.7%と予測した。
<アジア>…中国経済は高水準の固定資産投 資と輸出の好調を背景に、高成長を続けて いる。欧米との貿易摩擦や人民元レートの 上昇が輸出環境の悪化要因になるおそれ もあるが、08年の北京オリンピック関連 投資や西部大開発に伴うインフラ投資が引 き続き高い伸びを維持するとみられる。内 需拡大を目的とした消費刺激策の実施によ って、都市部の中低所得者層や農民の消費 拡大も見込まれる。中国の実質成長率は、
06年9.5%、07年9.2%と高めの成長が続く と予想される。
(2)雇用・所得環境の改善を背景に、個人 消費は今後も堅調な推移が見込まれる 家計の雇用・所得環境は回復傾向を維持し ている。総務省の労働力調査によると、06 年1〜3月の雇用者数の前年比は2.1%増と92
年10〜12月(2.3%増)以来、約13年ぶりに2%
台の伸びを記録した。「団塊の世代(注)2」の大 量定年退職が始まる07年を前に、企業が正 社員を中心に採用を増やし始めていることが 背景にある。賃金もプラス基調で推移してい る。1人当たり平均の現金給与総額は、05年 4〜6月から06年1〜3月まで4期連続で前年水 準を上回った。この結果、賃金に雇用者数を 乗じて算出される家計全体の所得(GDPベ ースの雇用者報酬)は、06年1〜3月に前年 比1.9%増と10〜12月(2.6%増)に続いて高 めの伸びを記録した(図表8)。
こうした雇用・所得環境の改善の背景に は、ここ数年のリストラで企業の過剰雇用の 調整が大きく進展したことが挙げられる。一 定期間に生み出された付加価値のうちどの程 度を人件費として労働者に配分したかを示 す労働分配率(注)3は、人員削減などのリスト ラ等で03年から04年にかけて大幅に低下し た(図表9)。足元の労働分配率も、適正レベ
(注) 2.1947年から1949年(昭和22年から昭和24年)生まれが「団塊の世代」と呼ばれている。
3.労働分配率=雇用者報酬÷帰属家賃を除く名目GDP
図表8 雇用者報酬の前年比
(備考)内閣府『四半期別GDP速報』より作成
(%)
(年)
-5.0 -4.0 -3.0 -2.0 -1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0
93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06
ルと考えられる80年代の平均水準付近で推 移している。過剰雇用の調整はほぼ一巡した と考えられ、今後は大幅に増加した企業収益 を、家計部門に還元する動きが強まると予想 される。
一方、家計の税・社会保障負担増が可処分 所得の下押し要因となる(図表10)。06年1
月からは、定率減税の減税幅が半分に縮小さ れ、平年度ベースでは国税1兆2,500億円、地 方税4,000億円の税負担が増加する。年金保 険料などを含めた06年度の家計の税・社会 保障負担は、05年度に比べて2.5兆円程度(可 処分所得の0.9%程度)増加すると試算され る。さらに、07年1月には定率減税が廃止さ れる見通しで、07年度の税・社会保障負担 も2兆円を上回る増加となろう。
ただ、雇用者所得の伸びが高まることで、
2兆円台の税・社会保障負担増は吸収できる と考えられる。また、ボーナスの増加や雇用 情勢の改善が、家計の消費マインドを下支え よう。06年度の実質個人消費は、前年比2.1%
増と高めの伸びが続くと予想される。個人消 費は05年度に続き06年度も高めの伸びを見 込んでおり、07年度前半には増勢はやや鈍
図表10 05年度以降の税・社会保障制度の変更に伴う家計の負担増減額
実施年月 ポイント 負担額 (※)年度計
05年4月 国民年金保険料の引上げ(月280円)
月1万3,300円→2017年度・月1万6,900円 700億円
〃 雇用保険料引上げ(1.4%→1.6%労使折半) 1,500億円 6月 配偶者特別控除・上乗せ分控除廃止(住民税) 1,700億円 9月 厚生年金保険料の引上げ(毎年0.354%労使折半) 4,000億円 06年1月 定率減税の縮小(半減)
全廃で国税2兆5,000億円、住民税8,000億円の負担増 1,800億円 05年度計 1.2兆円
06年4月 国民年金保険料の引上げ(月280円) 700億円
〃 介護保険料の引上げ 2,600億円
〃 児童手当の支給対象拡大(小学3年→小学6年)と所得制限の緩和 2,600億円
(受取り増)
6月 住民税の定率減税縮小 3,300億円
〃 高齢者への所得課税強化(住民税) 1,200億円
7月 たばこ税の増税(年間1,800億円) 1,400億円
9月 厚生年金保険料の引上げ(毎年0.354%労使折半) 4,000億円
10月 70歳以上の高所得者の医療費窓口負担引上げ 800億円 06年度計 2.5兆円
07年1月 定率減税の廃止 1,800億円
07年度 国民年金、厚生年金保険料の引上げ定率減税廃止に伴う07年度負担増 分など
07年度計 2.1兆円
(備考)1.(※)年度計には、制度変更の平年度化に伴う負担増を含むため、内訳の合計とは一致しない。
2.定率減税は07年に全廃されると想定した。
3.信金中金総合研究所作成
図表9 労働分配率の推移
(備考)内閣府『四半期別GDP速報』より作成
(%)
(年)
80年代の平均