同感しない20.2
34. 0 31. 9 43. 2総理府『女性に関する世論調査』(1989)
*1 M字型就労については, 『労働白書』(1991)でも子育て後の再 就労の問題として専門的・技術的職業従事者の割合が低くなる一 方で,販売従事者や生産工程作業者の割合が多くなり,また,一 般労働者ではなくパートタイム労働者として働く割合が多くなる などの就労条件の切り下げをあげている。
*2 子どもをもだない女性のおかれている現状については,大日向 雅美(1992)『母性は女の勲章ですか?』産経新聞社に詳しい。
*3われわれが抱いている一般的な概念を知るうえでは日常よく使 一38一
治している辞書的な意味を調べることは有効である。 「母性」,
「母性愛」についていくつかの辞書を調べてみると次のような記
述がある。
「母性』:女性が母としてもっている性質。また,母たるもの。
「母性愛」 :母親が持つ,子に対する先天的・本能的愛情。
、『広辞苑 第4版』
「母性」:女性がもっている,母親としての本能や性質。また,
母親として子どもを生み育てる機能。
「母性愛」:子どもを守り育てようとする,母親の本能的な 愛情。
『大辞林』
また, 「母性」に関して一般にどう受けとめられているかはそ の時々に話題となった言葉を解説した『現代用語の基礎知識』の
「母性拒否症候群」という言葉を解説した次のような記述からも 窺える。少し長くなるが引用する。
「妊娠,出産したにもかかわらず,愛児を育てることを拒否し て,実家の母や姑に預けたり,乳児院に送る。手元にいると,様 々な虐待を加える。愛児と一緒にいると不安になり,自信を失い,
時には抑欝状態に陥る,等々の乳児を抱えた母親の症状を『母性 拒否症候群』と呼ぶ。その社会的背景として現代の女性が母親で あることをかつてのように自己ゐ入生の究極的な姿とみなすこと ができなくなり,入生のある一定の段階でのいくつかの自己のあ り方の一つにすぎないものと考えるようになった,精神状況があ る。母性神話が崩壊し,女性の申にも,母性の濃厚な女性もいれ ば,母性愛を子どもに抱けない女性もいるという,科学的な観察 が普及したことも 因かも知れない」
『現代用語の基礎知識1992年版』
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児童虐待の発生要因を「母性神話」の崩壊という社会的背景に 求めるかのような論調で,筆者には賛同しかねるものがあるが,
このような論調の裏にこそ「母性」を絶対視する「母性神話」の 存在を見ることができる。
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第3節 基本的対人態度⑫基礎としての内的ワーキングモデル 1.ボウルビィの言う内的ワーキングモデル
Bowlby,J.(ユ973)は, 「おとなのパーソナリティは未成熟な時期 を通じての重要な人物たちとの相互作用,中でも愛着人物たちと の相互作用の所産とみなされる」 (pp.230)といい,人はその入 の愛着対象となる人物との相互作用を通して自己及び他者につい ての表象を形成するといわれ,その内在化された自己及び他者に 関する表象*1を内的ワーキングモデルとよんだ。
また,Bowlby,J.(1980)は「われわれが人生で出会う状況はすべ て,われわれのまわりの世界,およびわれわれ自身について持っ ている代表的モデルによって解釈される。感覚器官を通して到達 する情報は,それらのモデルによって選択し解釈され,われわれ にとって,そしてわれわれが愛する人にとって,その情報が重要 であるか否かはそのモデルによって評価され,そして行為の計画 はそのモデルを用いて考えられ実施される。さらにそれぞれの状 況をいかに解釈し評価するかは,われわれがどう感じるかという
ことにも関連する」 (pp.248−249)とも述べている。彼の見解に よれば,入は日常の現実的な多種の事態に遭遇したとき,自らの この表象を通して環境からの情報を選択的に入力し,この表象に とって「安全感」を得られるように判断し,行動するという。即 ち外界からの同様な刺激に対しても内的ワーキングモデルの違い に応じて個人の刺激に対する認知は異なり,反応のあり方も違っ てくるということになる。
この表象についての研究は乳幼児の愛着のスタイルの研究とし
てAinsworth,M.D.S.,et al.(1978)を中心に主に1才6カ月までの 乳幼児を対象に実験室で構成された「ストレンジシチュエーショ ン法」という研究法によって行われてきた。そこでは8場面から なる母親との「分離一再会」場面において,子どもがどのような
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行動をとるかで愛着スタイルを表12のような3つのタイプ(A
タイプ:Avoidant type, Bタイプ:Secure type,Cタイプ:Anxious/Ambivalenしtype)に分類している。
Ainsworth等は「ストレンジシチュエーション法」の実験場面に おいて,幼児とその母親,そして女性の見知らぬ入(ストレンジ ヤ、)を用いて,母子の「分離一再会」場面を構成しているが,
特にAinsworth等は幼児が一人で探索(expユore)するときや不安 を感じるときに母親を「安全基地」 (Secure Base)として利用で きることを健康な愛着の指標と考えている。
表12.Ainsworth等の分類した幼児の愛着行動の3タイプ
1.Aタイプ(Avoidant type):分一時にほとんど泣かない。母親との再会時には母親をはっきりと避けようとする。母親 との再会を喜ぶ気持ちがあっても,目をそらしたり,顔をそ むけたりして自分の気持ちを隠そうとする。また抱かれても 抱きつくことはなく,おろされても抵抗しない。またストレ ンジャーに対しても同様な行動をする。
2.Bタイプ(Secureむype):分離時に不安を示すが, C群ほ どは泣かない。母親との再会時には積極的に身体接触を求め る。母親に対して肯定的であり,母親を「安全基地」として 利用できる。またストレンジャーから慰められることができ
る。
3.Cタイプ(Ambivalent type):分離時に強い不安を示す。
母親との再会時には身体接触を強く求めるが,同時に母親を 叩くなどの怒りの反抗を見せ,母親に対してアンビバレント な感情を示す。母親を「安全基地」として利用することはで きない。ストレンジャーにも慰められな い。
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また,Hazan,C.&Shaver,P.(1987)はBowlby,J.の内的ワーキン グモデルの仮説から,Ainsworth等の言う子どもの愛着スタイルに 類似した成人の愛着スタイルが存在することを仮定し,ストレン ジシチュエーション法で得られた特徴を成人向きに記述的にまと め,それを尺度として,成人においても子どもの愛着スタイルに 対応したスタイルがあることを示している。
これらのことから考えて,個人の内的ワーキングモデル仮定す れば,現実の育児の場面においても個人の持つ内的ワーキングモ デルのタイプの違いにより,当然,その個人が認知する育児上の ストレスの強度や内容にも違いがでてくることが考えられる。特 に,ストレス状況下のような情動を喚起される場面においては内 的ワーキングモデルの違いは人の行動に与える影響も大きいと考
えられる。
そこで,本研究においては,次章に示す仮説について検討しな がら,育児ストレスの認知の違いを明らかにすることで,個人の 持つ内的ワーキングモデルの認知機能に及ぼす影響について検討
したい。
2.発達的視点から見た内的ワーキングモデル
内的ワーキングモデルの仮説にそって育児ストレスに関して言 うと,子どもから母親に向かってなされる愛着行動を拒絶された り軽視され続けると,子どもは愛着対象に対して「拒否する存在」
としての心的表象を形成し,愛着対象に有効性を期待できないこ とを学習する。また自己に対しては「愛着対象から受容され,保 護されるに値しない入物」という心的表象を形成するに至る。こ
の関係は愛着対象以外の対入関係にも適用されることにより,長 ずるに及んで友入関係,夫婦関係,自分の子どもとの関係に齪灘
をきたし,ひいては児童虐待の要因に波及する可能性がある。
愛着関係の発達,特に乳幼児期以降ついてはまだ充分な研究が 一43一
なされていないが,筆者は早期の母子関係の重要さは認めるもの の,その後の全てを拘束するものとは考えていない。前節で引用 した児童虐待の要因に関するBelsky(1978)の整理にあるように,
個人の初期経験と資質的な要因を重視すると,虐待の世代間伝達 が問題となる。直接世代間伝達を問題としているのではないが,
児童虐待の加害者となった養育者についての臨床的立場からの報 告によると,川井等(1990)は子どもに生理的嫌悪感をもつ母親に 被虐待経験をもつ者がいることを具体的症例をあげて報告してい る。また,池田(1984),福島・金原(1979)も虐待者自身が養育者 から愛されたり支持されたことのない生育歴に虐待を起因させて
いる。
虐待の世代間伝達については,Kaufman等(1987)はこれまでの文 献や関係機関の報告,臨床研究などから親に虐待されて育った場 合,自分も子どもを虐待する親となる世代間伝達(intergenera−
tional transmission)率を30±5%と推定している。先のBel
−skyも言うように世代間伝達に関してはKaufman等の報告から考え ても決定的な要因とば言えないだろう(逆に言えば70±5%の 子どもは虐待者とはならないことになる)。しかし,臨床的立場 からの報告にもある通り人生の初期に養育者に十分愛されず,受 け入れられなかった解合,Bowlbyの内的ワーキングモデルの仮説 から考えれば,周囲の入際や自分自身に対する信頼感を構築する ことが困難であり,その後の対入関係に関する個人の基本的態度 を歪められることが考えられる。児童の心理臨床の領域ではこの 生育史と入生の初期経験を虐待の要因として重要視する立場は共 通している。
Bowlbyの愛着の発達に関する理論についても,これまで人生の 初期における母親との愛着関係が一般に強調されて語られてきた。
筆者自身も学校に在職しているときに外部の講師から狭い意味で の母子関係に限定して愛着の発達について話を聞いた覚えがある。
特にAinsworthの愛着パターンを重要視するSroufe,LA.(1977,
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