以下では、連携拠点事業に取り組んでいる 信用金庫の事例(08年度)を紹介する。
(1)青森県内信用金庫の事例
①取組体制の概要について
青森県内の全信用金庫(あおもり、東奥、
八戸、下北信用金庫)では、青森県信用金庫 協会(以下「県協会」という。)が中心とな
り、「しんきん地域力連携拠点」という統一 の名称で連携拠点事業に取り組んでいる。県 協会が連携拠点事業の事務局になることがで きないため、県協会の会長金庫である八戸信 用金庫が連携拠点の申請をし、他の3金庫は パートナー機関となっている(図表8)。連 携拠点事業の体制としては、県協会が事務局 となり、各金庫に複数名の担当者を配置して いる。応援コーディネーターは外部人材を1 名配置している。
08年度、「お客様本位の支援体制」が評価 され、東北経済産業局長賞を受賞した。
②営業店の役割および連携事業のPRについて 県内101の全店舗に連携拠点に関するパン フレットを設置するとともに、営業担当者が 取引先にパンフレットを配布しPRしている。
取引先からの相談は、各金庫の担当者経由も しくは直接事務局へ依頼し、応援コーディ ネーターとの連絡は、基本的には事務局を通 じて行う。ただし、これでは対応が遅くなっ てしまうこともあるので、応援コーディネー ターと各営業店長等との勉強会を実施し、営 業店が応援コーディネーターに直接連絡する ことも始めている。相談先へは原則営業店長 が同行し、特に最初の訪問は、営業店長が必 ず同行することとしている。なお、相談件数 等は店舗評価や個人の業績目標に組み込んで いない。
③連携拠点事業の効果・実績について 連携拠点事業を通じ、応援コーディネー
ターをはじめとする、ITコーディネーター や中小企業診断士等の専門家との連携を図る と と も に、 青 森 県 や 県 工 業 総 合 研 究 セ ン ター、県知的所有権センター、㈶21あおも り産業総合支援センターなどの公的機関およ び県内大学等との強力なネットワークを構築 し、企業の技術力の的確な評価を行える体制 としている。全県にわたる協力支援体制の構 築は、1信用金庫では成しえなかった画期的 なことと評価できよう。
08年度の実績の多くはマッチングや販路 開 拓 支 援 で あ る。 特 徴 的 な 活 動 と し て は、
青森県内での連携だけでなく、遠方の信用 金庫と連携した取組みが挙げられる。埼玉 縣信用金庫から同金庫の「旅の生きがい大 学」ツアー客(08年9月から11月上旬まで、
29班、約3,200名)向けの土産準備を依頼さ れたことをきっかけに、連携拠点の事業と し て 研 修 会 を 実 施 し、 新 し い お 土 産 作 り
(新 商 品 開 発 ) と 販 路 開 拓 支 援 を 実 施 し た
(備考 )しんきん地域力連携拠点資料より信金中金総合研 究所作成
図表8 連携拠点の体制概要
しんきん地域力連携拠点 八戸信用金庫
(青森県信用金庫協会)
パートナー機関 あおもり信用金庫 東奥信用金庫 下北信用金庫
(行政)
連携
(企業)
産 学
官
連携
連携 連携
連携
連携
(大学等)
・弘前大学
・八戸工業大学、等
・取引先企業、等
・青森県
・県工業総合研究センター
・㈶ 21 あおもり産業総合支援センター 等
(図表9)。その他、青森県における霜・降雹 被害に対し、被害果(スチューベンぶどう)
の購入協力などの支援も行っている。
④連携拠点事業の課題について
青森県下の4金庫は、産学官連携活動におけ る課題解決機能と信用金庫の金融支援機能、
face to faceの地域密着の活動を融合する、つ なげる仕組みとして連携拠点事業のビジネス モデルが最適であるという考えのもと、しん きん地域力連携拠点事業に取り組んでいる。
しんきん地域力連携拠点事業の定着のために は、支店長がコーディネーターとしての役割 を果たすためのノウハウ習得と技術移転を具 体的に実施することが課題である。現状、職 員の意識としては、連携拠点事業と本業は並 列の関係にあるが、新しい信用金庫のビジネ スモデルとして確立していくには、連携拠点 事業イコール本業につながる業務としていく 必要がある。そのため、県内全店舗の支店長 を集めた研修会などを実施している。
しんきん地域力連携拠点では、顧客から参 加してよかったと思われるような、開かれた 組織として活動することで、顧客に「この人 たちなら、自分の事業に力を貸してくれる」
と思っていただくことを目標としている。そ のためには、事務局が参加企業を巻き込んで いくことが重要であり、事務局全員による情 報発信と参加企業との情報共有が不可欠であ ると考えている。
⑤ 信用金庫が連携拠点事業に取り組む意義に ついて
青森県下4金庫は、「しんきん地域力連携 拠点」事業はこれからの信用金庫の新ビジネ スモデルであると考え、その具体像を以下の とおりと捉えている。
① 信用金庫は「中小企業の支援と育成」およ び「地域経済の活性化と地域振興」を図ら なければならない。
② そして、そのためには支援機関の持つ強み と弱みを知り、互いに補完し合っていかな ければならない。
③ 信用金庫が持つface to faceと連携拠点事 業を推進するなかで得た産学官連携のノウ ハウを結びつけ、従来の金融機能を中心と した関係から相談機能の充実した金融機関 へと転換していく必要がある。
(2)東京東信用金庫の事例
①取組体制の概要について
東京東信用金庫は、預金、貸出金、為替の本 業以外にも、地域経済・地域社会の活性化が重 要であるという考えのもと、より強い地域共生 を目指している。これを実現するには、行政や 図表9 新製品のテストマーケティング
(備考)しんきん地域力連携拠点資料
大学等との連携が必要であるとの認識から、
05年10月から東京海洋大学と、さらに08年12 月には芝浦工業大学と産学連携協定を締結し、
大学の先端技術と地域の産業とを結びつける 活動を行っている。当金庫は、このような大 学等、外部とのつながりをベースとして連携 拠点事業に取り組んでいる(図表10)。
当金庫では、事務局を地域支援部に設置 し、相談を専門的に受け付けるハロープラザ を相談窓口としている(図表11)。事務局は 金庫職員3名で運営し、また外部の応援コー ディネーター10名を配置している。加えて、
本部の企業支援担当者や全営業店の営業担当
責任者も「金庫内コーディネーター」として 任命しており、金庫全体で86名がコーディ ネーターとして活動している。
②営業店の役割および連携事業のPRについて 08年度、営業店には3件(四半期に1件)の 相談案件を挙げるよう目標を設定し、その結 果を営業店の業績評価に反映している。その 案件が大学との共同研究や中小企業新事業活 動促進法の経営革新計画の承認につながれ ば、さらにプラス評価としている。
また、営業店全店にポスターを掲示するとと もに、顧客向け情報誌「Good Smile」(季刊、
首都圏東部地区地域力連携拠点 東京東信用金庫
技術相談・
知財相談 ローテクとハイテクの
融合・特許取得
専門家派遣 事業 中小企業の技術
発掘と伝承
経営革新支援 新事業促進法
地域資源活用 地域の特徴的な 素材や技術発掘
マッチング 支援事業 ビジネスフェア
異業種交流会 IT を活用した
経営管理 IT 財務会計 コミュニケーションツール
事業承継支援 後継者問題の解決
と事業伝承 健康サポート事業
健康増進管理 医療費抑制
東京東海大学 ICT イースト東京
筑波大学 TWR ひがしんビジネスクラブオーロラ
商工会議所 ひがしんビジネスクラブオーロラ
しんきんキャピタル 墨田区役所・江東区役所
中小企業基盤整備機構
(備考)東京東信用金庫資料より信金中金総合研究所作成
図表10 連携拠点の体制概要
図表11 ハロープラザの外観と内部
(備考)信金中金総合研究所撮影
︵外観︶ ︵内部︶
発行部数20万部)で特集を組み、PRしてい る。金庫内部向けには、庫内報「業務トピッ クス」において、複数回情報発信している。
③連携拠点事業の効果・実績について 当金庫の連携拠点事業の特徴は、地域の技 術や知財等に関する相談受付である。そのた め、 相 談 実 績 も 技 術 に 係 る 相 談 等 が 多 い。
09年度以降については、技術相談以外にも、
経営全般に係る相談に対応できるよう体制を 整備する方針である。
当金庫では、連携拠点事業を実施し外部の 機関と新たに提携できたことは、大きなメ リットであると考えている。事業承継に関す る相談では、事業承継支援センターとなって いる東京商工会議所と、販路開拓に関する相 談では中小企業診断協会と新たに連携するこ とができた。
また、連携拠点事業の認定を受けること で、国の事業を行っているという公共性を メッセージとして発信でき、地域の中小企業 を支援するという姿勢を示すことができると 考えている。
なお、当金庫は2月に財務省関東財務局長 から地域密着型金融の取組みにおいて、大学と の産学連携や商店街の活性化などで先進的な活 動を行っていることに対して顕彰されている。
④連携拠点事業の課題ついて
各種連携業務に係る事務局の人員について、
不足感がある。大学との連携などの従来の仕 事に加え、連携拠点事業が始まったことで、
連携に係る事務局の人員が不足していた。連 携拠点事業のスタート時に、専担で副部長を 1名配置したが、2月に女性職員を1名、さら に3月には連携拠点事業を担当する部付部長 を配置した。09年4月には中小企業基盤整備 機構に出向していた男性職員1名を配置する 予定で、連携拠点の戦力をさらに強化する。
また、当初は各部店のコーディネーターか ら挙げられた相談受付票を事務局で書類審査 した上で専門家派遣等を行っていた。しか し、紙ベースの審査ではなく、直接現場に 行って聞いてくることが重要であるとの考え から、08年12月にナビゲーター(相談案件 の前捌き訪問を行う応援コーディネーター)
を設置し、課題解決をワンストップで対応で きるようにした。
今後は、この「相談受付→ナビゲーター派 遣→事務局会議→専門家派遣→問題解決」の 業務フローで、さらに機敏に対応できる体制 を構築していくこととしている。現状、専門 家派遣の前段階であるナビゲーター派遣まで 4、5日かかっている。相談受付票の内容に不 備がある場合もあることから、営業店から挙 がってくる情報の質の向上を図り、レスポン スを早めることが課題であると考えている。
⑤ 信用金庫が連携拠点事業に取り組む意義に ついて
当金庫の目指す信用金庫像は「ホーム・オ ウンド・バンク(地域・生活との密着)」で ある。地域の発展なくして信用金庫の発展は なく、地域との共存共栄が原点であるという