(1)地域力連携拠点事業とは
地域力連携拠点事業は、新連携(中小企業 新事業活動促進法(注)2)や農商工連携(注)3(農 商工等連携促進法)とともに、「連携」をキー ワードとした中小企業支援施策である。新連 携や農商工連携は、事業者が有機的に連携し、
新たな事業の創出を支援することで地域活性 化を図るものであるが、地域力連携拠点事業 は、支援機関自体が連携し、中小企業を支援
する。中小企業の経営課題が複雑化・高度化 している現在において、支援機関自体が連携 し、日本の強みである「つながり力」をさら に強化することで、中小企業が長期的に発展 するための経営基盤の強化を図り、地域を活 性化することを目的としている事業である。
当該事業では、地域における経営力の向上 や創業・再チャレンジ支援、事業承継等と いった中小企業が直面する課題に対して、他 の支援機関等と連携して先進的な経営支援を 実施する中小企業支援機関を「地域力連携拠 点」として選定する。連携拠点は、優秀な支 援者を「応援コーディネーター」として配置 し、他の支援機関と連携するとともに、国な どの支援施策の活用や専門家派遣などを通 じ、経営課題の解決や新規事業創出などに悩 む中小企業に対する支援をワンストップで実 施する(図表1)。
連携拠点が手掛ける支援課題は、大きく分 けると①経営力の向上支援事業、②創業・再 チャレンジ支援事業(注)4、③事業承継支援の 3つである。このうち、①は新たな経営方法 の導入として、「ITを活用した経営管理」と
「見 え な い 資 産 の 把 握・ 活 用(知 的 資 産 経 営)」、新事業展開として「経営革新」「地域 資源活用」「農商工等連携」にそれぞれ分け られている(図表2)。連携拠点は、これら の支援課題のうち、特に地域のニーズに応 じ、他の支援機関と比較して強みを有する事
(注)1 .09年度の地域力連携拠点事業の詳細は、http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/renkei/2009/090331ChikiKyotenSaitaku.htm 2 .創業及び新たに設立された企業の事業活動の支援並びに中小企業の経営革新及び異分野の中小企業の連携による新事業分
野開拓の支援を行うことを目的としている。詳細は、http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/shinpou/tool/chusyoS.html 3 .農商工連携については、産業企業情報20-9「地域活性化のキーワードとして脚光を浴びる「農商工連携」」を参照願いた
い。http://www.scbri.jp/PDFsangyoukigyou/scb79h20F09.pdf 4.2009年度の公募要領には、新たに事業再生支援が追加されている。
業分野を選択し、重点的に支援を実施する。
ま た、 事 業 承 継 支 援 に つ い て、08年 度 は、
316の連携拠点のうち、102拠点を「事業承 継支援センター」と位置づけ、近年の企業経 営者の高齢化や後継者不足等への対応とし て、あらゆる事業承継支援のニーズに対応し たワンストップサービスを実施した(注)5。 連携拠点は、これらの課題に対する支援と して、相談事業、専門家派遣事業、情報提供 を実施するとともに、中小企業のニーズに応 じて調査・研究やマッチング事業を実施する。
(注)5 .09年度は327の連携拠点のうち、103拠点が事業承継支援センターとなっている。
図表2 支援課題一覧(08年度)
支援課題 経営力の向上支援
新たな経営方法の導入 ITを活用した経営管理 知的資産経営
新事業展開 経営革新 地域資源活用 農商工等連携 その他
創業・再チャレンジ支援* 創業支援
再チャレンジ支援 事業承継支援
*09年度は事業再生支援が追加
(備考 )地域力連携拠点事業公募要領より 信金中金総合研究所作成
(備考 )地域力連携拠点ネットHPより信金中金総合研究所作成。連携拠点数、応援コーディネーター数、事業承継セ ンター数は08年度
図表1 地域力連携拠点事業の支援フローおよび連携イメージ図
拠点に相談 経営診断による 状況把握
経営支援情報
システム 等 パートナー機関
他支援機関 専門人材 国等の支援施策 経営戦略の
立案
フォロー アップ システムの導入
販路開拓 ビジネスマッチング
事業転換・廃業 悩む中小企業
・課題が見えない
・何か新しいことをしたい
・事業継続が不安
連携パートナー等 支援機関
その他支援機関 自治体
金融機関 農協
大学 公設試験研究機関 他の連携拠点
各分野専門家
地域力連携拠点 全国 316 か所 事業承継センター 102 か所
地域力連携拠点(316 か所)
(商工会、商工会議所、信用金庫、地方銀行、都道府県支援センター等)
応援コーディネーター(830 名)
(中小企業診断士、税理士、企業 OB、優秀な経営指導員等)
「小規模企業等」を 様々なつながりで支援
データ 活用
データ 入力
連携 派遣 活用
○応援コーディネーターによる掘り起こし
○他機関との連携による案件発掘
・パートナー機関
・業界団体
・商工会、商工会議所
・自治体 等
(2)地域力連携拠点事業の特徴
連携拠点事業の特徴としては、①伝統的な 公的支援機関である商工会や商工会議所以外 にも、金融機関や農協、NPO、民間企業な どが連携拠点となることができること、②複 数の支援機関等が共同で事業を行うことで、
中小企業の課題に対しワンストップで支援す るとともに支援機関同士のつながり力も強化 すること、③支援事業の企画立案とともに、
他の支援機関と協力・連携して中小企業を支 援する「応援コーディネーター」を各連携拠 点に配置していること、④毎年度顧客満足度 調査等による実績評価を実施すること、など である。
①連携拠点の業態別内訳
08年度の連携拠点は、401件の申請の中か ら316拠点が採択され、地域力連携拠点とし て事業を展開している。商工会や商工会議所 などの伝統的な支援機関に加え、金融機関や 農協、NPO法人なども連携拠点として採択さ れている。業態別の連携拠点数は図表3のと
おりであり、商工会議所が119件と最も多く、
次いで商工会が78件となっている。金融機 関では、信用金庫が12件、地方銀行が7件、
信用組合が4件採択されている。09年度は11 拠点増加した327拠点が採択されている。
②地域力連携拠点パートナーとのネットワーク パートナー機関とは、連携拠点と協力して中 小企業支援を実施する機関であり、具体的な協 力内容を設定したうえで連携拠点が指定する。
パートナー機関には、連携拠点同様、金融機 関や大学、公設試験研究機関、農協などがな ることができる。このパートナー機関制度に より、中小企業に対しては、連携拠点が中核 となりワンストップでのサービス提供が可能 となる。また、連携拠点には、支援機関同士 のネットワークを構築し、連携拠点の支援能 力をさらに高めることが期待されている。
08年度はパートナーとして、延べ2,000を 超える機関が当該事業に参加している。業態 別には、金融機関が約500機関、大学や公設 試験研究機関が約250機関、農協などが約100 機関となっている。連携拠点は、金融機関と
「資金的なつながり」、大学・公設試験研究機 関と「技術的なつながり」、農協等と「異分 野とのつながり」をそれぞれ構築し、より幅 広い支援を実現することが求められる。
③応援コーディネーターによる支援
連携拠点では、優秀な支援者を「応援コー ディネーター」として選定している。
応援コーディネーターに求められる要件は、
図表3 業態別地域力連携拠点
拠点(中核機関名) 08年度 09年度
商工会等 78 76
商工会議所 119 122
中小企業中央会 37 38
地方銀行 7 13
信用金庫 12 14
信用組合 4 4
中小企業支援センター 41 43
株式会社・NPO 4 3
大学 1 1
農協 5 3
その他 8 10
合計 316 327
(備考 )中小企業庁HPより信金中金総合研究所作成
図表4にあるように、中小企業等の経営支援 に関する知識および能力・経験、関連機関等 との連携に係る能力・経験とされている。そ のため、応援コーディネーターには、連携拠 点における中小企業支援の中核となって活動 するだけでなく、他の支援機関とも積極的に 連携し、中小企業の課題を発掘し、解決する ことが求められる。
④顧客満足度調査等による実績評価
連携拠点事業では、顧客満足度調査(利用 者によるアンケート調査および覆面調査)や 相談実績などによる評価制度を導入している。
連携拠点利用者の評価を導入することで、支 援機関の競争意識をかき立てるとともに、利 用者の評価を還元し、連携拠点の質を維持す ることを目的としている。また、将来的には、
連携拠点を中小企業支援の窓口としてブラン ド化するという意図もあるようである。
そのため、今回の顧客満足度調査結果をも とに上位先を表彰するとともに、評価が芳し くなかった連携拠点に対しては改善を求め、
年度ごとの公募に合わせて、連携拠点の入替 えも検討されている。加えて、優秀な連携拠 点のノウハウを表彰・公表し、各連携拠点お よび応援コーディネーターに還元し共有を 図っている。