(1)生保窓販を巡る法制度面の変化
金融庁は、05年12月から、保険窓販に関 するモニタリングを開始したが、それ以前の 経緯は、『金融調査情報No.17-11』(注)2(05年 11月2日)で概観していることから、以下で は、07年12月22日の全面解禁を巡る動きと その後の展開を中心に概説する。
なお、保険窓販全面解禁に至るまでの法制 度等の変遷は、図表1のとおりである。
金 融 庁 に よ る2年 間(05年12月 〜07年12 月)のモニタリングは、「必要かつ十分な弊 害防止措置の構築」と「全面解禁の実施時期 図表1 保険窓販解禁の経緯
年月 経緯 解禁商品
1990年代前半 保険審議会による検討継続
1996年4月 業態別子会社方式の導入を含む保険業法の全面改正 2000年6月 銀行による保険販売を含む保険業法の改正 2001年4月 第1次解禁(保険業法施行規則の改正)
①住宅ローン関連の長期火災保険
②債務返済支援保険
③信用生命保険
④海外傷害保険 2001年12月 総合規制改革会議答申(銀行による保険販売の全面解禁を答申)
2002年3月 金融審議会「銀行等における保険商品の窓口販売について」公表 2002年10月 第2次解禁
①個人年金保険(定額・変額)
②財形保険
③年金払積立傷害保険
④財形傷害保険 2004年3月 金融審議会「銀行等による保険販売規制の見直しについて」公
表(「1年後の段階的解禁、3年後の全面解禁」を提言)
2005年12月22日 第3次解禁(モニタリング期間)
① 第1分野注1:一時払い終身保険、一時払 い養老保険、平準払い養老保険注2、貯 蓄保険注2
② 第2分 野: 自 動 車 保 険(自 賠 責 含 む ) 以外の個人保険(ゴルファー保険等)
③第3分野:積立傷害保険
2007年12月 全面解禁 定期保険、終身保険、医療・介護保険、
自動車保険、団体火災保険等
(注)1.保険契約者1人当りの保険金通算限度1,000万円 2.満期10年以内、個人契約のみ
(出所)信金中央金庫総合研究所『金融調査情報(No.17-11)』
(注)1 .㈳日本損害保険協会の統計資料等によると、損害保険商品の販売(募集)は自動車保険が主流であり、募集形態では個 人・専属代理店が中心である。よって、本稿では、銀行等窓販で主流となっている生保商品の販売に焦点をあてる。
2.http://www.scbri.jp/PDFkinyuchousa/scb79h17s11.pdf
の適切性の検証」の観点から、「当局検査に よる弊害防止措置の遵守状況の検証」、「銀行 等 に よ る 保 険 募 集 の 実 施 状 況 の 監 視・ 把 握」、「金融庁金融サービス利用者相談室、国 民生活センター等で受け付けた苦情の収集・
分析」および「保険会社や銀行等からのアン ケート調査等を通じた実態把握」を主な方法 として実施された(注)3。金融庁は、そのモニ タリング結果を、07年10月3日に「保険の基 本問題に関するワーキンググループ(第37 回)」で公表し、「一部の銀行員による事務疎 漏を除き、おおむね銀行等において遵守する ための体制整備が行われたと考えられ、問題 事例の発生状況にかんがみれば、規制は有効 に機能していたものと考えられる」として、
当初予定(07年12月22日)どおりの全面解 禁は問題ないとの判断を示した(注)4。
一方で、生保業界が消費者保護の観点から 規制強化を主張していた(注)5ことなどを受け て、金融庁、与党関係者を巻き込んで調整が 行われた結果、07年12月21日にさらなる契 約者保護を目的に「保険会社向けの総合的な 監督指針」が改正されるとともに(注)6、保険 業法施行規則等の改正が行われた。
これらを受けて、銀行等が保険窓販に取り 組むにあたっては、現行規制のとおり、融資 先規制(注)7、タイミング規制(注)8、非公開情 報保護規制(注)9、担当者分離規制(注)10などの 弊害防止措置を遵守することが求められるこ ととなった(図表2)。
(注)3 .http://www.fsa.go.jp/singi/singi̲kinyu/dai2/siryou/20070918/03-2.pdf 4.http://www.fsa.go.jp/singi/singi̲kinyu/dai2/siryou/20071003.html 5.http://www.fsa.go.jp/singi/singi̲kinyu/dai2/siryou/20071003/02.pdf 6.http://www.fsa.go.jp/news/19/hoken/20071221-3.html
7 .事業性融資先について「募集制限先」として保険契約の募集を制限する。なお、協同組織金融機関には特例がある(信用 金庫が本特例を採用すると、自金庫会員を募集制限先から除外できる。)。
8.事業性融資または個人ローンの申し込み中であることを知りながら保険契約の募集をすることを制限する。
9 .保険契約の募集(商品説明)にあたり、預金、融資、その他の業務で知り得た個人情報を利用する場合には、事前に顧客 の同意を取得することを必要とする。
10.事業性融資担当者の保険募集を禁止する。
(出所)金融庁(07年10月)「銀行等の保険募集に関するモニタリング結果について」
図表2 取扱い可能な保険商品と各種規制
【第1次解禁商品】
住宅関連信用生命保険 住宅関連長期火災保険 住宅関連債務返済支援保険 海外旅行傷害保険
保険商品
全ての保険募集人に対する規制 銀行等の保険募集人に対する規制
保険業法における規制
【第2次解禁商品】
個人年金保険 財形保険 年金払積立傷害保険 財形傷害保険
【第3次解禁商品】
一時払終身保険 一時払養老保険 短満期平準払養老保険 貯蓄性生存保険 個人向け賠償保険等 積立火災保険等 積立傷害保険等
【上記以外の商品】
定期保険 平準払終身保険 長期平準払養老保険 医療・介護保険 自動車保険 団体火災保険等 事業関連保険 団体傷害保険
1.融資先販売規制 事 業 性 資 金 融 資 先 に 対 し て、手数料を得て行う保険募 集を禁止する措置 2.担当者分離規制 事業性資金の融資業務と保 険募集を行う担当者を分離す る措置
3.タイミング規制 融資の申込者に対する融資 審査期間中の保険募集を禁止 する措置
※融資先販売禁止及びタイミング規 制については特定関係者も対象
1.非公開情報保護措置 顧客の非公開金融情報を保 険募集に係る業務に流用する こと及び顧客の非公開保険情 報を保険募集に係る業務以外に 流用することを制限する措置 2.優越的地位の不当利用禁止 信用供与の条件として保険募 集をする行為等自己の取引上 の優越的な地位を不当に利用 した保険募集を禁止する措置 3.法令遵守責任者の配置 営業単位毎にコンプライア ンス責任者の設置を義務付け る措置
4.募集指針の作成、公表 保険募集の公正を確保する ため、銀行等において保険募 集指針の策定、公表等を義務 付ける措置
1.虚偽説明、重要事項不説明 2.虚偽告知推奨 3.告知妨害、不告知推奨 4.不当な乗換募集 5.特別利益の提供 6.不当な比較募集 7.断定的な判断の禁止 8.構成員契約規制 9.圧力募集の禁止
等
銀行法施行規則における規制 1.顧客情報の安全管理措置等 2.返済能力情報の取扱い 3.特別の非公開情報の取扱い 4.預金等との誤認防止措置 注:1〜3は個人情報保護法関連
独占禁止法における規制 1.不当な利益による顧客勧誘の禁止 2.抱き合わせ販売等の禁止 3.優越的地位の濫用 4.競争者に対する取引妨害 住宅ローン関連信用生命保険
に係る相談窓口の説明義務
変額保険に係る保険料ローン の返済リスクの説明義務
(2 )都市銀行と地方銀行の生保窓販体制と 実績
07年12月 の 保 険 窓 販 全 面 解 禁 を 受 け て、
都市銀行においては、まず三菱東京UFJ銀行 が、保険販売経験者の中途採用者や保険会社 からの派遣などにより、保険プランナー約 350名、 常 駐 店 舗173か 所 の 体 制 を 構 築 し、
み ず ほ 銀 行 は、 約2,500名 い る フ ァ イ ナ ン シャルコンサルタントを活用して個人特化型 相談専用ブース「プレミアムサロン」でのコ ンサルティング営業を積極化した。三井住友 銀行は、コンサルティングプラザに中途採用 者(保険会社・保険代理店経験者)を保険コ ンサルタントとして配置しコンサルティング 営業を展開してきており、09年に入り、保 険取扱い店舗および販売員の数をさらに増強
している(注)11。りそな銀行は、第一生命との
資本・業務提携により保険窓販を強化しつ つ、営業方針では来店型営業ではなく訪問型 営業に注力している。
また、地方銀行においては、十六銀行(岐 阜県)は、それまでに育成した約200名のファ イナンシャルアドバイザー(FA)のなかから 約60名を終身保険販売担当者に選抜して終 身保険の販売に力を入れている。中国銀行
(岡山県)は、医療保険やがん保険は全営業 店(および本部専担者)で対応する一方で、
平準払い終身保険や介護保険等は本部専担者 のみが対応するなど、保険商品に応じた販売 体制を構築している。
総括すると、銀行は保険窓販体制を構築す るにあたって、「中途採用」と「店舗改革」
に注力をしてきたといえる。
しかし、こうした取組みにもかかわらず、
全面解禁後1年を経て、大手4行(三井住友、
三菱東京UFJ、みずほ、りそな)が取り組む 医療保険やがん保険などの保障性商品の販売 件数は、生保全体の新規契約件数の1%未満 にとどまるなど、業績は振るわない。この主 因としては、上述した弊害防止措置を意識し て、各行とも保険商品の販売に対して慎重な 姿勢をとったことや、それゆえに銀行窓口で 保険契約ができることの利用者への周知が徹 底されていなかったことが挙げられる。
また地銀でも、預かり資産業務で先行して いる千葉銀行やスルガ銀行の保険窓販業務の 状況をみる限り(図表3)、個人年金保険等 の貯蓄性が高い保険商品の販売と比較する と、一時払い終身保険等の保障性が高い保険 商品の販売実績は低く、保障性が高い保険商 品の販売体制を確立するまでには、相当の時 間を要するだろう。
(3)生保窓販を巡る3つの課題
生保窓販を巡る諸課題は、「保険商品の特 性に起因する課題」、「外部要因に起因する課 題」、「内部要因に起因する課題」の3つに分 類されよう。
まず「保険商品の特性に起因する課題」と して、以下のことが挙げられる。生保商品
(注)11 .09年2月末を目処に、保険取扱い店舗数を現在の90店舗(全421)から165店舗に、販売員数を現在の約300人から約600 人に増強する方針を示している。