(1 )「売上の停滞・減少」を問題とする企業 が66.5%
これまでみてきたように、現局面は「ヒト・
モノ・カネ」のすべての面において厳しい状 況 に あ る。 直 近09年1-3月 期 調 査 に お け る、
「経営上の問題点(複数回答可)」としては、
「売上の停滞・減少」(66.5%)や「同業者間の 競争の激化」(37.3%)、「利幅の縮小」(32.6%)、
「大手企業との競争の激化」(10.8%)、「原材料 高」(10.8%)、「販売納入先値下げ要請」(8.5%)
などの回答割合が相対的に高く、現下の中小 企業の切迫した状況を裏付けるものとなって いる。
(2 )業況の「良い」中小企業ほど前向きな 経営施策を重視
しかし、このような厳しい局面において も、業況が「良い」と答える企業が一定数存 在していることも事実である。直近09年1-3 月期調査でも、業況が「良い」(「良い」と
「やや良い」の合計)と回答した企業は850 社(有効回答数13,769社のうち約6.2%)にも 及んでいる(図表19)。こうした業況の「良 い」中小企業では、外部環境の悪化に影響を 受けにくい、あるいは、外部環境に依存しな い経営を実現できているケースも少なくない ものと推察される。
なお、直近の09年1-3月期調査結果において
「業況」と「当面の重点経営施策」についてク ロス集計を実施してみると、業況が「良い」
中小企業と「悪い」中小企業で、それぞれが
「当面の重点経営施策」として掲げている施策 に、方向性の違いがあることが確認できる
(図表20)。すなわち、業況が「悪い」中小企 業ほど、「経費を節減する」「販路を広げる」
「提携先を見つける」などの回答割合が相対的 に高い。一方、業況が「良い」中小企業ほど、
(備考)信金中金総合研究所「全国中小企業景気動向調査」より作成
図表18 地域別の資金繰りD.I.の推移(02年1-3月期〜09年1-3月期調査)
0
△10
△20
△30
△40
△50
全国 北海道
(D.I.)
09年4−6月期見通し 09年1−3月期実績
東北 関東 首都圏 北陸 東海 近畿 中国 四国 九州北部 南九州
「情報力を強化する」「人材を確保する」「教育 訓練を強化する」「機械化を推進する」などの 前向きな経営施策に対する回答割合が高い。
全体としては、「経費を節減する」(65.1%)、
「販路を広げる」(49.4%)、「情報力を強化する」
(18.7%)、「宣伝・広告を強化する」(9.6%)な どに回答が集中する結果となっているが、業況 の「良い」中小企業ほど、人材の確保や育成、
あるいは設備投資に前向きであることがわか る。大企業を中心に雇用調整の動きが強まって いる昨今の経済情勢を鑑みれば、業況が上向い
ている中小企業にとっては、現在、優れた人材 の獲得や事業基盤の強化へ向けた的確な設備投 資のチャンスであるという見方もできそうだ。
なお、直近の「第135回全国中小企業景気 動向調査」の個々の調査表における「調査員 のコメント」欄をみると、厳しい経済情勢の なかでも積極的な施策に取り組み続けている 中小企業経営者の姿を少なからずうかがい知 ることができる(図表21)。高い技術力が競 争力の源泉であったり、特定の商品販売に特 化するなどして独自性を打ち出したり、ある 図表19 業況が「良い」と回答した850社の内訳(実数と割合)
業種別
製造業 279 5.8%
卸売業 102 5.5%
小売業 148 5.8%
サービス業 102 6.1%
建設業 151 7.8%
不動産業 68 6.9%
地域別
北海道 93 8.1%
東北 40 4.6%
関東 54 6.0%
首都圏 224 5.2%
北陸 38 6.1%
東海 60 4.0%
近畿 150 7.0%
中国 52 8.6%
四国 36 8.5%
九州北部 51 8.6%
南九州 52 7.9%
(備考)1 .信金中金総合研究所「第135回全国中小企業景気動向調査」より作成 2 .業種別・地域別に示した割合はそれぞれのサンプル全体を母数として算出
回答企業合計 13,769 社
良い 137 やや良い 713 普通 4,448 やや悪い 5,646 悪い 2,825
850 社
図表20 「当面の重点経営施策」の回答企業の割合
(備考)信金中金総合研究所「第135回全国中小企業景気動向調査」より作成
【業況が「悪い」企業ほど回答割合が高い施策】
①経費を節減する ②販路を広げる ③提携先を見つける
【業況が「良い」企業ほど回答割合が高い施策】
①情報力を強化する ②人材を確保する ③教育訓練を強化する ④機械化を推進する 良い
(%)
普通 悪い
0 20 26.4
33.0 36.6 40
良い
(%)
普通 悪い
0 5
8.9 5.1 2.8
10 良い
(%)
普通 悪い
良い
(%)
普通 悪い
0 2
2.1 2.9 2.9 4
良い
(%)
普通 悪い
0 5
6.9 4.4 3.9
10 0 10 20
22.9 25.3
27.4 30
良い
(%)
普通 悪い
0 5 10 11.9 10.5 9.6
15
良い
(%)
普通 悪い
0 1 2 2.7 1.4 1.0
3
【製造業】
◆ 国内産需要の高まりを受け、首都圏での販路拡大、売上 増加傾向。販売価格を5%程度上げ、粗利改善。経費削減 にも本格着手し収益改善図っている。
(あん類製造 北海道)
◆ 地場の中小企業を主要先としながらも希少な工作機械と 技術力があることから本州企業からも製作依頼あり。
(機械器具 北海道)
◆ 冷凍加工食品を製造し、大手商社へ販売し、売上安定 している。昨年末に運転資金を借入し資金繰りも円滑 である。
(業務用食品製造 東北)
◆ 今期は、安定した受注先を確保し売上高、収益も増加。
技術力が評価され、安定した売上を確保。
(通信機部品、信号器部品コネクタ 首都圏)
◆ 同社は長引く景気低迷の影響で売上減少が続き業績悪化 傾向であったが、高い技術力を保持しているため、今後 は安定受注による売上増加が見込める。
(伸縮装置 四国)
◆ 不採算店舗を閉鎖し、新しい店舗をオープンさせてい る。コストの削減、合理化を図りながら、売れ筋商品を 開発中。
(各種パン、和洋菓子 四国)
◆ 畳表生産・卸売から、アグリ(農業関連、肥料、農薬他)
分野に業種転換を行っている。無害の有機肥料(竹酢液 等)が食の安全を求める農家、消費者ニーズにマッチし ており、関東、九州方面中心に売上を増加しつつある。
(農業用商品 中国)
◆ 原油高騰の影響はほぼなく、前期より売上増加見込み。
今後、受注増加に向けて、人材確保や販路の拡大、新製 品の開発に注力することでさらなる売上増加を図る。
(羊羹、ケーキ 中国)
【卸売業】
◆ 新規先開拓により増収増益を見込む。不動産収入あり、
地場不況ながら業績は堅調。今後も粗利重視の営業で黒 字確保を見込んでいる。
(建築材料卸売 北海道)
◆ 卸売部門は減少続いているが、ネット部門好調であり、
海外進出展開も視野。
(紳士服卸売 北海道)
◆ 当社の強みである取扱商品の優位性が活かされ、公共工 事減少の中でも販売は落ちなかった。今後継続分につい てはある程度売上の目途が立つが、新規案件については 不透明で楽観はできない見通しである。
(畑かん及び水道資材 北海道)
◆ 軍事関連の特需が売上を下支えしている。他、インター ネットを通じた販路の多様化、官公庁への納入額増加等 が業況拡大の要因となった。官公庁等、取引先の構成か ら景況面が与えた影響は比較的小さいといえる。
(産業機器 首都圏)
◆ オゾン発生装置の受注が好調。豚舎の悪臭対策による。
インフルエンザ対策スプレーの受注も好調。昨年より売 上回復。
(環境、衛生商品 東海)
◆ 業況良好であり、今後も太陽電池部門の売上が順調に推 移する見通しで不況のあおりをあまり受けていない。
(電設資材、制御機器 近畿)
図表21 09年1-3月期調査において業況が「良い」と回答した中小企業に関する調査員のコメント
(備考)「第135回全国中小企業景気動向調査」の調査表をもとに信金中金総合研究所作成
【小売業】
◆ 楽器販売は低調であるが、音楽教室を開くことで売上を カバーしている。
(楽器販売 首都圏)
◆ 暖冬の影響もあり、ビール等の売上は昨年に比べやや増 加となった。売筋商品の見極めは難しく、在庫に注意し ながら固定客増加を図っていく。
(酒類 首都圏)
◆ アウトレットモールや大型ショッピングセンターへの出店 によって来店客数は増加しており、売上げは増加傾向にあ る利益は減少が見込まれているが、他社に比べ業況は良好。
(衣料品小売 首都圏)
◆ ロードレース用の自転車小売に特化している為、業況は 順調に推移している。
(自転車小売 東海)
【サービス業】
◆ 地元の温泉の中でも同社が一番設備が整っており、目玉 である大浴場も2年程前にリニューアルした。積極的に改 装をし集客力のUPを図っている。
(観光旅館 東海)
◆ 同業者間の競争が激しい中、売上高、粗利とも順調に増 加しているが、人材確保のため人件費が上昇傾向にあり、
資金繰りを圧迫している。作業の効率化、仕入単価の削 減が必要。
(歯科医療 近畿)
◆ 原油価格が安定しているので売上も増加している。不況 のため値下げなどの要請がある。また販路を増やすため に正社員を増やすことも考えている。
(運送業 近畿)
【建設業】
◆ 現状、大型の公共工事により売上が増加しているが今後 の受注状況厳しく不安を感じている。
(工事、建設 関東)
◆ 安定した受注を確保できており、増収増益となった。し かし、景気悪化による受注減の不安はあり、今後は受注 をいかに確保するかが問題である。
(一般木造建築 東海)
◆ 公共工事は減少したが、地場の企業からの受注増により 売上は増加。収益面においても、利幅の増加と経費節減 に努めたことにより改善された。
(土木建設業 中国)
【不動産業】
◆ 販売の利幅確保厳しく人的リストラ、経費削減を実施。
毎期小額だった利益を改善するため、社長が本腰を入れ た。適正な減価償却、まとまった利益確保へ財務改善途 上である。
(不動産売買、賃貸 北海道)
◆ 従来、住宅販売において、販売戸数を重視した営業を 行った結果、営業担当者が低価格住宅販売に走り、大手 メーカーと競合し、値引き販売となり、収益率悪化要因 となった。現在は、収益率を重視した営業に切替え、低 価格のハウスメーカーと競合しない層への販売を主体と し、収益力向上と資金繰りの安定を図っている。
(建設、不動産業 関東)
◆ 景気低迷、消費意欲の低下、同業者間の競争の激化等によ り、積極的に分譲開発、販売等しているが、売上・収益は ほぼ横ばい状態。経営施策として今後も販路の拡大を図る。
(宅建業 近畿)