リードしてきた自動車産業に代表される「輸 送用機器」の失速が著しい(図表6)。「輸送 用機器」の業況判断D.I.は、長らくプラスの 水準で推移してきたものの、08年10-12月期 に は 製 造 業 全 体 の 水 準 を 下 回 り(△63.7)、
直近09年1-3月期には△80.4と、そのマイナ ス幅をより一層拡大している。「輸送用機器」
では、人手過不足判断D.I.が前期比28.2ポイ ント大幅上昇の62.4(人手過剰超)、設備投 資実施企業割合が前期比12.0ポイント大幅低 下 の19.1%、 資 金 繰 り 判 断D.I.は 前 期 比14.8 ポイント低下の△46.4と、各種指標とも軒並 み悪化しており、急速に厳しさが増している 状況がうかがえる。
こうした「輸送用機器」の業況の急速な悪 化は、自動車産業を主力とする東海地区など の業況判断D.I.を下押しする大きな要因のひ とつにもなっている。
2 .中小企業を取り巻く3つの経営資
イナス( 人手不足 超)に転じて以降、一 貫してマイナス水準で推移しており、全体と して 人手不足 という回答が多い状況に なっていた。
しかし、この人手不足感は06年末をピー クに緩和基調に転じ、08年10-12月期の人手 過不足判断D.I.は△1.0と、かろうじてマイナ スの水準( 人手不足 超)にとどまったも のの、直近09年1-3月期には8.7と、一転して プラス( 人手過剰 超)に転じている。そ の水準をみても、人手過剰感は過去最高の水 準となっており、ここにきて中小企業の雇用 情勢が急速に悪化していることがわかる。
また、 人手過剰 と回答する企業が増え
るにつれて、当然ながら「経営上の問題点」
を「人手不足」と回答する企業の割合も低下 基調をたどっている。直近では3.2%と過去 最低の水準まで減少しており、中小企業の人 材獲得意欲が急速に減退している様子がみて とれる。
ロ.製造業で急速に高まる人手過剰感 人手過不足判断D.I.について、製造業・非 製造業別の状況をみると(図表8)、09年1-3 月期は製造業が前期比16.6ポイント上昇して 20.7と人手過剰感を急速に高めた。また、前 期まで若干の人手不足(△2.3)で推移して いた非製造業においても2.3と人手過剰に転 図表7 信用金庫取引先企業の人手過不足判断D.I.等の推移
(備考)1.信金中金総合研究所「全国中小企業景気動向調査」等より作成 2.シャドー部分は内閣府発表の景気後退期
40 30 20 10 0
△10
△20
△30
△40
△50
△60 0 10 20 30
バブル崩壊(90 年)
育児休業法制定(91 年)
エンゼルプラン制定(94 年)
製造業派遣の解禁(04 年)
製造業派遣期間が 最長 1 年→3 年へ(07 年)
米住宅バブル 崩壊(07 年)
リーマン破綻 (08 年)
アジア通貨危機(97 年)
41.9
1.3
90 92 94 96 98 00 02 04 06
8.7 8.9
9.5 08
6.1 4.4
4.1
11.6
55.3 56.6
(年)
人手過不足判断 D.I.
業況判断 D.I.
(Ⅰ)
90 92
27.3
7.0 3.9
8.3
3.2
94 96 98 00 02 04 06 08
(Ⅱ) ( Ⅲ ) ( Ⅳ )
山一證券など破綻(97 年)
IT バブル崩壊(00 年)
米同時多発テロ(01 年)
パートタイム
労働法制定(93 年) 男女共同参画社会 基本法制定(99 年)
(D.I.)
人手不足
人手不足 経営上の問題点を
「人手不足」と回答した企業の割合
(%)
じており、雇用の受け皿とされてきた非製造 業でも厳しさを増している状況である。
また、これまで比較的パラレルに推移して き た 製 造 業 と 非 製 造 業 の 人 手 過 不 足 判 断 D.I.が、現局面では乖離幅を急速に拡大して いる点は特筆される。とりわけ、輸出主力型 の製造業に限ってみれば、前期比22.4ポイン ト上昇の45.7と、人手過剰感を急速に強めて おり、今後の動向を注視する必要がある。
ハ.全国的に 人手過剰 に転じる方向へ 人手過不足判断D.I.について地域別の状況 をみると(図表9)、地域ごとにD.I.の水準に
バラつきはあるものの、06年末頃から一様に 人手不足 から 人手過剰 となる方向への 転換が加速している傾向にある。直近09年1-3 月期の実績値では、前期08年10-12月期に 人 手過剰 に転じた関東と東海に加えて、大半 の地域で 人手過剰 に転じており、唯一南 九州で△0.6と、かろうじて 人手不足 に留 まっている状況である。とりわけ、関東、東 海ではそれぞれ、前期比14.3ポイントプラスの 17.2、前期比14.5ポイントプラスの16.9と、人 手過剰感を急速に高めている。ちなみに、来 期見通し(09年4-6月期)は、南九州を加えた 全地域で 人手過剰 に転じる見通しである。
図表8 業種別の人手過不足判断D.I.の推移(02年1-3月期〜09年1-3月期)
(備考)信金中金総合研究所「全国中小企業景気動向調査」より作成 25
20 15 10 5 0
△5
△10
△15
02/3 03/3 04/3 05/3 06/3 07/3 08/3
20.7 19.0
2.3 3.5 過剰
不足
● 09 年 4-6 月期見通し
● 09 年 1-3 月期実績 製造業
非製造業
12.1 (Ⅳ)
09/3
(D.I.)
図表9 地域別の人手過不足判断D.I.の推移(02年4-6月期〜09年1-3月期)
(備考)信金中金総合研究所「全国中小企業景気動向調査」より作成 25
20 15 10 5 0
△5
△10
△15
△20
北海道 東北
関東
(D.I.)
首都圏 北陸
東海
近畿
● 09 年 4-6 月期見通し
● 09 年 1-3 月期実績
▲ 06 年 10-12 月期実績
中国
九州北部 四国
南九州 過剰
不足
ニ .従業員規模の大きい企業ほど人手過剰感 が台頭
人手過不足判断D.I.について、従業員規模別 の状況をみると(図表10)、規模の大きい企業 ほど人手過剰感が急速に高まっている。09年1-3 月期実績では、これまで 人手不足 超で推移 してきた1〜99人(1〜19人、20〜49人、50〜99 人)の企業でも一転して 人手過剰 超に転じ たほか、すでに 人手過剰 超に転じていた100
〜299人の企業でも前期比18.1ポイントプラスの 36.2と、人手過剰感をさらに急速に高めている。
(2 )減退する中小企業の設備投資意欲と在 庫過剰感の高まり(モノ)
イ.設備投資実施企業割合はバブル崩壊後最低 一方、設備投資実施企業割合(注)3の推移を みると(図表11)、業況判断D.I.の推移にお おむね連動しており、景況感の回復期には中
(注)3 .設備投資実施企業割合(%)=設備投資を実施すると回答した企業の割合
図表10 従業員規模別の人手過不足判断D.I.の推移
(02年4-6月期〜09年1-3月期)
(備考)信金中金総合研究所「全国中小企業景気動向調査」より作成 40
30 20 10 0
△10
△20
1〜19人
20〜49人 過剰
不足
50〜99人
100〜299人
● 09年4-6月期見通し
● 09年1-3月実績
(D.I.)
(備考)信金中金総合研究所「全国中小企業景気動向調査」より作成
図表11 信用金庫取引先企業の設備投資実施企業割合等の推移(90年4-6月期〜09年1-3月期)
40 30 20 10 0
△10
△20
△30
△40
△50
△60 30 20 10
090
バブル崩壊(90年) アジア通貨危機(97年)
山一證券など破綻(97年)
ITバブル崩壊(00年)
米同時多発テロ(01年)
米住宅バブル 崩壊(07年)
リーマン破綻 (08年)
業況判断 D.I.
(Ⅰ)
(D.I.)
(%)
(Ⅱ) (Ⅲ) (Ⅳ)
92 26.6
15.5
22.2 実績
14.5 見込 13.0
94 96 98 00 02 04 06 08
90 92 94 96 98 00 02 04 06 08
(年)
設備投資実施企業割合
小企業の設備投資意欲が高まる一方で、悪化 基調に転じると設備投資意欲も弱まるという 動きが繰り返されてきた。
2000年代前半の景気回復局面においては、
業況が改善する動きに合わせて、中小企業の 設備投資意欲も緩やかな上昇基調にあった。
しかし、その後、設備投資実施企業割合は業 況判断D.I.が06年10-12月にバブル崩壊後の ピークを迎えたのに2四半期先行して、06年 4-6月期をピークに低下基調に転じており、
08年10-12月期には16.8%と、バブル崩壊後 の 最 低 水 準 を 記 録、09年1-3月 期 実 績 で は 14.5%とバブル崩壊以降の最低水準をさらに 更新した。中小企業がここへきて設備投資姿 勢を慎重化している背景には、景況感の急速 な悪化を受けた大手製造業の生産調整の影響 等があるとみられる。
ロ.製造業で設備過剰に転じる
設 備 過 不 足 判 断D.I.(注)4の 動 向 を み る と
(図表12)、02年10-12月期以降、製造業の設 備の状況は 設備不足 超で推移してきた が、06年10-12月期実績値△10.3をピークに 設備の不足感は急速に後退しており、09年 1-3月期の実績値では6.4と、およそ6年ぶり に 設備過剰 超に転じている。
なお、製造業の設備投資の実施内容の内訳 をみると(図表13)、最近では「事務機器」
や「車両」への投資ウエイトが低下傾向にあ る一方で、「機械更改」への投資ウエイトが 緩やかな上昇傾向にあることが確認できる。
ハ.不動産業で在庫過剰感が急速に強まる 在庫過不足判断D.I.(注)5の業種別の推移を みると、不動産業において在庫過剰感を急速 に強める動きが特に顕著であった(図表14)。
不動産業の在庫過不足判断D.I.は、物件不足 が経営上の主要な問題となっていた2006年 4-6月期をピークに急速に在庫不足感を弱め る動きに転じており、直近09年1-3月期実績
(注)4 .設備過不足判断D.I.=「設備過剰」と回答した企業の割合−「設備不足」と回答した企業の割合 5.在庫過不足判断D.I.=「在庫過剰」と回答した企業の割合−「在庫不足」と回答した企業の割合
図表12 製造業の設備過不足判断D.I.の推移
(00年7-9月期〜09年1-3月期)
(備考 )信金中金総合研究所「全国中小企業景気動向調査」
より作成 10
5
0
△5
△10
△15
製造業 2.6
(D.I.)
10.3
(Ⅳ)
(Ⅲ)
00/9 01/9 02/9 03/9 04/9
● 09 年 4−6 月期見通し
● 09 年 1−3 月期実績
05/9 06/9 07/9 08/9 6.4
5.3
0.3 0.8 全業種
過剰
不足
図表13 製造業の設備投資実施内容別の推移
(02年4-6月期〜09年1-3月期)
(備考 )信金中金総合研究所「全国中小企業景気動向調査」
より作成 40
30
20
10
機械更改
09 年 4-6 月期見通し 09 年 1-3 月期実績
事務機器 車両
19.6 14.9
16.7 17.3 41.0
44.0
(%)
で は プ ラ ス の7.6( 在 庫 過 剰 超 ) と な っ た。本調査における不動産業は、「建売業・
土地売買業」がおよそ5割を占めている。こ うした業種における在庫過剰は資金繰りの悪 化に直結するケースも少なくないことから、
今後の経営悪化の深刻化が懸念される。
ニ.製造業の前期比残業時間は大幅に減少 企業の生産活動の状況等を反映する指標の ひとつである残業時間判断D.I.(注)6の推移を みると(図表15)、とりわけ製造業で急速に 残業時間が減少している様子がうかがえる。
製造業の残業時間判断D.I.は直近09年1-3月 期実績で△39.5と、急速に低下しており、昨 今の輸出型製造業に代表される大企業の減産 等の影響を受け、中小製造業も減産を余儀な くされているとみられる。
(3 )資金繰りは厳しく、過去最悪に迫る勢 い(カネ)
イ.業況悪化に伴い資金繰り判断D.I.も弱含み 現在の景気後退局面においては、とりわけ 中小企業の資金繰り状況が問題視されること が多い。資金繰り判断D.I.も、これまで示し てきた他の指標と同様、業況判断D.I.とほぼ 連動しており、直近の推移をみると、03年 中 頃 か ら の 業 況 判 断D.I.の 緩 や か な 改 善 に 伴って資金繰り判断D.I.も改善を続け、06年 4-6月期には△12.0と、マイナス水準ではあ るもののバブル崩壊後の最高水準を記録した
(図表16)。しかし、07年度に入ってからは 原油価格高騰の影響等を背景とした中小企業 の業況悪化に伴い資金繰り判断D.I.も弱含ん でいる。直近09年1-3月期では△32.2まで落 ち込み、過去最悪を記録した02年1-3月期の 水準(△33.7)に迫る勢いとなっている。た だし、他の指標のように過去最悪水準には至
(注)6 .残業時間判断D.I.=「残業時間増加」と回答した企業の割合−「残業時間減少」と回答した企業の割合
図表14 不動産業の在庫過不足判断D.I.の推移
(00年7-9月期〜09年1-3月期)
(備考 )信金中金総合研究所「全国中小企業景気動向調査」
より作成 10
5
0
△5
△10
5.5 5.5
(D.I.)
8.7
7.6 8.0
過剰
不足
● 09 年 1-3 月期実績
全業種
不動産業
00/9 01/9 02/9 03/9 04/9 05/9 06/9 07/9 08/9
(Ⅳ)
(Ⅲ)
図表15 製造業の残業時間判断D.I.の推移
(00年7-9月期〜09年1-3月期)
(備考 )信金中金総合研究所「全国中小企業景気動向調査」
より作成 10
0
△10
△20
△30
△40
減少
00/9 01/9
(Ⅲ) (Ⅳ)
製造業 全業種
02/9 24.6
6.1
(D.I.)
23.0 24.5
34.3
39.5 03/9
● 09年4−6月期見通し
● 09年1−3月期実績
04/9 05/9 06/9 07/9 08/9 増加