75
図
3.2.15
大斗ダボ木板モデルの全体包絡線図
3.2.13
大斗ダボ木板モデルの全体変形N=26
トン(255kN)西側 東側
841
寸法
mm
HT1 HT2
SD1(裏側SD2)
76
載荷プログラムの第1ステージでは±0.5/1000~±3.3/1000 rad の水平載荷を行なうが,このス テージではいずれの鉛直荷重レベルに於いても,変形角±2.0/1000 rad まではほぼ水平荷重-変形 角関係は弾性的な挙動を示し,この変形角を越えるあたりから徐々に剛性が低下し始めている。
ここで第
1
ステージでの変形角+1.0/1000 rad 時の剛性を初期剛性として求めると,鉛直荷重26t(255kN)
時の初期剛性は 17t(167kN) 時のそれの約 1.5 倍となる。鉛直荷重 17t(167kN) 時の 水平荷重-変形角関係,第2
ステージ(変形角±7.5/1000 rad まで)と第3
ステージ(変形角±20/1000 rad まで)の性状に隔たりが生じているのは,第 2
ステージに終了後に,鉛直荷重26t(255kN)の第 3
ステージを経験しているためで,その際の残留変形と部分的に生じた潰れ等のために第
2
ステージの結果との間に不連続的な差異が生じている。鉛直荷重
26t(255kN),17t(167kN)の場合ともに,変形角
±10/1000 rad 付近で大斗尻に浮き上がりが観測された。但し,これは肉眼で認識できる程度の浮き上がりであるため,微視的にはもっと 早い段階で浮き上がりが生じている可能性がある。鉛直荷重 26t(255kN) の場合,正側加力におい て変形角
13.9/1000 rad
で最大耐力 4.23t(41.5kN)に達し,負側加力においては変形角 10.3/1000 rad時の
3.94t(38.6kN)が最大耐力であった。なお,最大耐力以降の耐力低下は緩やかである。鉛直荷
重 17t(167kN) の場合は最大耐力に至っていないが,グラフの傾きからほぼ最大耐力に近い状況に あると考えられる。
水平荷重-変形角関係は,いずれの鉛直荷重レベルに於いても変形角が 10/1000 rad まではや や紡錘形に近い安定したループを描いているが,
10/1000 rad
以降は剛体浮き上がり変形に特有の S字型ループ曲線の傾向を示すようになる。また,同一変形に於ける繰り返し載荷による耐力低 下は少なかった。鉛直荷重26t(255kN)の場合,変形角±10/1000 rad
を終了して±15/1000 rad のサ イクルに入り,初めて-15/1000 rad に向かう途中,最大経験振幅の- 10/1000 rad を越えた時に西側 の巻斗がズンという音と共に滑り,一時的に荷重が低下した。この時の滑り量は枠肘木との間で1.14 mm,通し肘木との間で 0.26 mm
であった。包絡線は概ねバイリニア型である。水平変形角レベル,鉛直荷重レベルに関わらず
2
回目のサイクルの耐力低下は少なく,鉛直荷重
26t(255kN)
の場合でデータの94%, 17t(167kN)の場合でもデータの 94%が低下率 10%以下であ
った。特に最大耐力以降も繰り返し載荷による耐力低下が少ないことに注目したい。剛性につい ても,ピーク点の荷重に対する割線剛性とすればその低下は同様に少ないことになる。
図
3.2.16
~3.2.18 に水平荷重と方斗,巻斗及び大斗の回転角(水平軸に対する回転角)との関係を,鉛直荷重が
26t(255kN)と 17t(167kN)の各々の場合について示す。方斗の回転角の変動幅は鉛
直荷重26t(255kN)時で最大 4/1000 rad,鉛直荷重 17t(167kN)で最大 3.5/1000 rad
程度である。巻 斗は鉛直荷重が作用した時点で 10/1000 rad を越える回転角を生じている。この原因は枠肘木の 曲げ変形である。水平載荷により巻斗の回転角は変動するが,同一振幅内での変動は鉛直荷重17t(167kN)の場合の方が少ない。同図中の鉛直荷重 17t(167kN)
時の東側巻斗では3
つのステージがはっきり区別できるほど変動が少ない。大斗の回転変形は試験体全体の水平変形に近い性状を 有している。但し,大斗の回転変形の大きさは試験体全体の変形角よりも小さい。
77
変形角 ±10/1000 rad を越えたあたりで大斗尻にわずかな浮き上がりが観測され,この後試験 体は最大耐力に至った。写真
3.2.9~3.2.11
に変形角±20/1000 rad 時の大斗尻の浮き上がり状況を 示す。20/1000 rad 時の浮き上がり量は最大で4mm
程度である。本実験結果のうち,水平載荷実 験(大斗固定)に於ける最大水平荷重(変形角±1/1000 rad 時)に対応する部材の回転角を調べたと ころ,大斗固定の場合に対して,鉛直荷重が26t(255kN)と 17t(167kN)の場合ともに大斗では約 3
倍,方斗では約1
倍の回転量を示していた。しかし巻斗では減少し,約0.9
倍の回転量であった。図
3.2.16
大斗ダボ木板モデルの方斗回転変形回転角(1/1000rad) 回転角(1/1000rad) 水平力P(トン)
-5 -4 -3 -2 -1 0 1 -5 -4 -3 -2 -1 0 1
回転角 R=(VH2-VH1)/434
回転角は反時計回りの 方向を正とする
西側 東側
VH2 VH1
鉛直荷重N P
434mm
計測区間の実寸法5
4 3 2 1 0 -1 -2 -3 -4 -5
図
3.2.17
大斗ダボ木板モデルの巻斗回転変形西側巻斗回転角 RW
=(VMW2-VMW1)/285
回転角は反時計回りの 方向を正とする
西側 東側
VMW2
鉛直荷重N
P P
285mm
計測区間の実寸法
VMW1 VME2 VME1
290mm
東側巻斗回転角 RE=(VME2-VME1)/290 西側巻斗
回転角(1/1000rad) 水平力P(トン)
回転角(1/1000rad)
5
0
-5
西側巻斗
5
0
-5
-10
-20 0
東側巻斗
東側巻斗
-10
-20 0
N=26
トン時(255kN)
N=26
トン時(255kN)
N=26
トン時(255kN)
N=17
トン時(167kN) (49kN)
(-49kN)
(49kN)
(49kN)
(-49kN) (-49kN)
N=17
トン時(167kN)
N=17
トン時(167kN)
78
図
3.2.19 ~3.2.20
に水平荷重と斗および肘木の滑りとの関係を示す。大斗の滑りについては,鉛直荷重
17t(167kN)時のグラフが 2
つに分れているが,右の部分は鉛直荷重26t(255kN)の第 3
ステージの後に行なった結果である。いずれの鉛直荷重においても,繰り返し水平載荷を受けながら 徐々に西側に滑っていく様子が示されている。その滑り量は最終的に 0.8 mm ほどになっている。
通し肘木の滑りについては,下の斗に対して加力方向と逆向きに滑っている結果となっている。
これは見かけの現象であり,実際は水平載荷によって斗が回転することで現われた結果である。
図
3.2.18
大斗ダボ木板モデルの大斗回転変形回転角
(1/1000rad)
回転角(1/1000rad)
水平力
P(トン)
写真
3.2.9
大斗尻の浮上り(北面・東側)N=26
トン(255kN)R=+20/1000
写真
3.2.10
大斗尻の浮上り(西面)N=26
トン(255kN)R=-20/1000
写真
3.2.11
大斗尻の浮上り(東面)N=17
トン(167kN)R=+20/1000
回転角
R=(VD1-VD2)/556
回転角は反時計回りの方向を正とする
西側 東側
VD1 VD2
鉛直荷重
N
P P
556mm
計測区間の実寸法5
4 3 2 1 0 -1 -2 -3 -4
-5 -20 -10 0 10 20 -20 -10 0 10 20
N=26
トン時(255kN)
N=17
トン時(167kN) (49kN)
(-49kN)
79
図
3.2.21~3.2.22
に鉛直荷重が26t(255kN),17t(167kN)の場合の各ピーク時の水平方向の変形モ
ードをそれぞれ示す。水平変形量は,通し肘木中央及び枠肘木中央の
2
つの高さ位置で求めてい る。これらの図から試験体の水平変形は特定の部分に集中することなく,ほぼ均等に変形してい ることがわかる。等価粘性減衰定数
heq
は,構造物が吸収するエネルギーを評価する尺度として用いられ,その 値が大きいほど履歴によるエネルギー吸収量が大きいと判断される。図3.2.23~3.2.24
にそれぞれ 鉛直荷重が26t(255kN),17t(167kN)
の場合の各サイクル定常ループ(同一振幅に於ける2回目のサ イクル時)に於ける等価粘性減衰定数heq
を示す。両者を比べると,鉛直荷重レベルの違いによるheq
の差は少ないと言える。全体的な傾向としては,heq は変位振幅が小さい領域では大きく(変 形角±0.5/1000 rad 時に15%前後)
,±7.5/1000 rad あたりまで減少が続く。これを越えるとheq
は 増加を始め,±20/1000 radでは再び15%前後になる。
図
3.2.19
大斗ダボ木板モデルの大斗の滑り変形滑り変形(mm)