100 0
1 2 3 4 5 6 7
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130 140 150 160 170 180 190 200
0 1 2 3 4 5 6 7
0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000 1100 1200 1300 1400 1500
図
3.3.7
は過去の修理履歴を想定して計算したもので,1200年後の変形のうち,斗組では4.9/5.9=83%,垂木では 2.6/3.6=72%がクリープによるものである。解体のたびに垂木のクリープ
変形は回復するが,荷重がかかると数年で変形が進むことになる。また,斗のクリープは回復し ないといわれている。図
3.3.7
は1200
年前の新材について1500
年間の変形を予測したものであ る。平成の解体では,古材では,荷重載荷後300
年間の変形の増加として,図の1200
年から1500
年の変化として,斗組では5.94
から6.01
と,垂木では3.63
から3.77
とわずかである。一方新し い材では,0
年から300
年の変化に対応するので,斗組では1.0
から5.5
と,垂木では1.0
から3.0
ときわめて大きく増加する。したがって,新材と古材を併用する場合は,クリープ性状の差異に 十分に注意して,組み合わせを考えることが重要となる8。図
3.3.6 100
年間のクリープ変形の予測図
3.3.7 1500
年間のクリープ変形の予測100年間の変形の様子
荷重をなくしてからの100年間当初を
1
とした変形の大きさ当初を
1
とした変形の大きさ 斗のめりこみ垂木のたわみ
100年で当初の5.2倍
100年で当初の2.6倍
当初の変形を1
とする100年経た後で荷重をなくし
た場合の変形の回復具合5.23
2.63
101
30 54
86 96 98 93
84 72
58
34
15 28
48 60
70 68 65 60
52
32
0 20 40 60 80 100 120
0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1
τ=Q/ t L (kN/m
2)
γ(rad)
2P 1P 文化庁第
4
章 土壁系耐力要素木造軸組材や土壁などの伝統的構法に用いられる部材は,鉄筋や鉄骨のような塑性靭性は期待 できない。架構として優れた変形性能を示すのは,仕口特性によるものである。めり込みや滑り を含む強い材料・幾何学非線形挙動を呈する仕口接合部についての明快な数理モデルはまだ確立 されておらず,実験検証が主体的に展開されている1-3。しかしながら,膨大な実験データを示さ れても,実務設計の役に立つものでもない。実験に含まれるバラツキや影響を与える各種パラメ ータの意味を解明するには,挙動を説明できる数理モデル,定式化の整備が望まれる。
本章では,多くの伝統的構法による木造建築の抵抗力として支配的な土壁系要素について,既 往の実験データに基づいて設計式を作成するための復元力の定式化すなわち解析的表現を行う。
4.1
全面壁伝統構法検討委員会4-6の土壁
WG
による全面壁の実験データは1P(壁長さ 91cm)壁と 2P(壁長
さ
182cm)壁について平均せん断応力度の形で提供されている。 PΔ
の影響や柱の耐力を除いた壁体だけの耐力は表
4.1.1
のようにまとめられている。参考に表4.1.2
に示す文化庁の壁データと併せて図
4.1.1
に示す。文化庁7の復元力と実験
WG
結果復元力は定性的定量的に良好に対応していると見ることがで きる。詳細設計で用いる壁の復元力は図4.1.1
の実験データに基づくこととする。表
4.1.1
全面壁の実験データ表
4.1.2
文化庁による全面壁の復元力0 1/480 1/240 1/120 1/90 1/60 1/45 1/30 1/20 1/15 1/10 γ 0.0 0.0021 0.0042 0.0083 0.0111 0.0167 0.0222 0.0333 0.05 0.0667 0.10 Q/tL
(kN/m
2)
1P 0 15 28 48 60 70 68 65 60 52 32
2P 0 30 54 86 96 98 93 84 72 58 34
変形角
- - 1/250 1/120 1/60 1/15
rad 0 0.004 0.008 0.017 0.0667
τ kN/m
20 40 60 80 50
図
4.1.1
全面壁実験データと文化庁復元力との比較102
ここで
1P
と2P
の差はアスペクト比によるものと考えることができる。図4.1.2
のように,壁長さを
L,壁高さを H,壁厚さを t
で表す。アスペクト比はH/L
となる。壁頂部にせん断力Q
が作用する時,壁脚部では
M=QH
のモーメントが生じるが,この転倒モーメントの大半は周辺の柱 で負担されると考えて,壁体に働くモーメントはM=βQH
であるとする。壁体の曲げによる引張り応力は,アスペクト比を
λ=H/L
と書けば,𝜎
𝑡= 𝑀
𝑍
𝑝= 𝛽𝑄𝐻 1 4 𝑡𝐿
2= 𝑄
𝑡𝐿 4𝛽𝐻
𝐿 = 4𝛽𝜏 𝐻
𝐿 = 4𝛽𝜆𝜏 (4.1.1)
ここで,耐力として破断を対象とするため断面係数は塑性断面係数を用いている。
引張り応力とせん断応力の重ね合わせによる降伏条件として,ミーゼスの降伏条件を用いると,
𝜎
𝑚= �𝜎
𝑡2+ 3𝜏
2= �(4𝛽𝜆𝜏)
2+ 3𝜏
2= �3𝜏
2�1 + 16
3 (𝛽𝜆)
2� (4.1.2)
𝑄
𝑡𝐿 = 𝜏 = 𝜎
𝑚√3
1
� 1 + 16 3 ( 𝛽𝜆)
2= 𝜏
𝑚11
� 1 + 16 3 ( 𝛽𝜆)
2したがって,せん断のみで決まる耐力
𝜏
𝑚1= 𝜎
𝑚⁄ √3
に対してモーメント負担を考慮すれば,その 低減率を𝐹
𝑅1= 1
� 1 + 16 3 ( 𝛽𝜆)
2(4.1.3)
と書くことができる。すなわち
Q/tL/F
R1がλ
に関わらず一定となることを意味している。図4.1.3
にβ
をパラメータとしたF
R1を示す。曲げの負担率が大きいほど壁耐力が大きく低減される。以上をまとめて,全面壁の耐力
τ
1として次のようにまとめることができる。ここで下指標1
は全 面壁であることを表す。図
4.1.2
壁体に作用するせん断力とモーメント壁高さ
H
壁長さ
L
壁厚さt
せん断力Q
壁が負担する モーメント
M=βQH
103 0.20
0.40 0.60 0.80 1.00
0 1 2 3
F
R1λ=H/L
0 20 40 60 80 100 120 140
0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1
τ/F
R1(kN/m
2)
γ (rad)
2P 1P 平均𝜏
1=𝐹
𝑅1𝜏
𝑚1(4.1.4)
ところで,図
4.1.1
の1P( λ =273/91=3.0)と 2P( λ =273/182=1.5)壁データについて β
を変化させて 適合度合いを調べると、図4.1.4
のようにβ =0.181
の場合の両者の平均値とそれぞれの偏差の自乗 和が最小となる。すなわち𝐹
𝑅1(𝛽 = 0.181) = 1
√1 + 0.175𝜆
2(4.1.5)
表
4.1.3
に示すこの平均データ(=τ
m1)にアスペクト比から(4.1.5)式で計算される F
R1( β =0.181)
を乗じることで、任意のアスペクト比の壁データを図4.1.5
および表4.1.4
のように作成すること ができる。ここで,(4.1.3)式あるいは(4.1.5)式から明らかなように F
R1≦1である。すなわち,曲げ の影響が無視できる最大耐力がF
R1=1
に対応していることになるので,表4.1.3
は全面壁の限界の 耐力の平均データ(=τ
m1)を与えていると考えられる。
したがってτ
m1は全面壁の基本耐力である。この基本データについて比較的大きな応答変形と考えられる
1/20
変形時の耐力は最大耐力に比べて
91/114=0.8
に低減している。PΔ
の影響は除かれているので,これは壁耐力の劣化を示している。表
4.1.2
に示される文化庁の壁復元力7ではこの比は60/80=0.75
となって低減の度合いが少し大きくなっている。
さらに,変形域
1/20
までを対象にすれば全面壁の基本耐力は,図4.1.6
のようにバイリニアで 比較的良好に模擬できる。すなわち0 ≤ 𝛾 ≤ 1
90
:𝜏
𝑚1=10260𝛾 1
90 ≤ 𝛾 ≤ 1
20
:𝜏
𝑚1=− 601𝛾 + 121 (4.1.6)
変形角
0 1/480 1/240 1/120 1/90 1/60 1/45 1/30 1/20 1/15 1/10 τ
m1(kN/m
2) 0 30 54 89 105 114 109 102 91 76 46
図
4.1.4 F
R1で基準化された壁復元力図
4.1.3 F
R1β=0.1 β=0.181 β=0.2
0.3 0.4 0.5 0.6 1.0
表
4.1.3
全面壁の基本耐力τ
m1(kN/m
2)
104 0
20 40 60 80 100 120
0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1
τ=Q/ t L (kN/m
2)
γ(rad)
λ=0.5 λ=1.0 λ=1.5 λ=2.0 λ=3.0114
91
61
0 20 40 60 80 100 120
0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1
τ
m1(kN/m
2)
γ(rad)
基本耐力 バイリニアβ
がアスペクト比に関係しないで一定であるとすれば,このようにβ
=0.181が1P,2P
の実験 データを統一的に説明できるが,曲げモーメント負担率は壁アスペクト比や壁内の間柱,貫,小 舞などの仕様・本数に依存すべきであると考えるのが妥当であろう。1P,2Pという限られた実験 データから広範囲な議論を展開することは適当ではないが,統一的な扱いができることを優先し て,ひとまずこのような定式化とする。今後の試験データの追加検証により上記の理論はさらに 再検討されることになる。表
4.1.4
いろいろなアスペクト比の壁の復元力Q/tL(kN/m
2)
図
4.1.5
いろいろなアスペクト比の壁復元力アスペ クト比