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A県における未受診妊婦支援の施策に関する基礎調査( 1 )

ドキュメント内 保健科学研究_第3号 (ページ 35-45)

調査の概要

三 崎 直 子

*1

 高 梨 一 彦

*2

(2012 年 9 月 28 日受付,2012 年 12 月 18 日受理)

要旨:A県の妊婦健康診査を未受診のまま分娩に至る妊婦の実態把握と課題・対策を明らかに するために,平成18年度から平成20年12月までの妊産婦を対象に40市町村と37出産施設で二つ の調査を実施した。調査期間は平成20年12月から平成21年 1 月であった。飛び込み分娩は87件 であった。出産後妊娠届出は75名で,30歳代(46.7%),20歳代(30.7%),10歳代(12.0%)の順 に多かった。74.6%が経産婦であった。未入籍者は60%で10歳代は全員が未入籍者であった。妊 娠判定は73.4%が未受診であり,約70%が医療機関で分娩し,30%はそれ以外であった。正期産 は約80%,早産は14.7%で,母体合併症は16%,低体重児は14.7%であった。約半数に妊娠中に育 児,経済的,精神的支援者がいた。10歳代の未受診妊婦,経済的な問題,未受診・飛び込み分 娩のリピーターについて考察がなされた。

キーワード:未受診妊婦,リスク,妊娠,調査

*1弘前大学大学院保健学研究科健康支援科学領域 健康増進科学分野

 〒036‑8564 弘前市本町66‑1  E‑mail:[email protected]‑u.ac.jp

*2和洋女子大学人間・社会学系心理学・教育学研究室

Ⅰ はじめに

 次世代を担う子どもたちの育成については,国が諸 種の施策を実施しており,少子化の現在,ますます重 要な課題になってきている。子どもたちをどう生み育 てるかは,日本の将来にかかわる非常に大きな問題で ある。

 その施策の始まりとも言える妊婦健康診査は,母子 保健法に謳われているように妊婦管理の一貫として位 置づけがされている1)。さらに2007年の厚労省通知で その内容の充実が推奨されている。妊娠出産を巡って はこのような施策がなされてきているにもかかわら ず,妊娠管理の問題は依然として残っている。その一 つは未受診妊婦および飛び込み分娩である2)。この問 題は出発点としての妊婦管理の徹底と社会的な対応が 求められると思われるが,その存在は少ないながらも 母子保健にかかわる者にとって対策の急がれる課題と なっている3,4)

 未受診妊婦および飛び込み分娩についてA県では平 成20年度の国の調査から,約0.2%が出産後に妊娠の届

出と母子健康手帳の交付を受けていることが分かって いる5)。全国平均が0.3%であるから,平均よりもやや 低いとは言え,この0.2%は妊婦健康診査を受診しない ということを意味しており,そのことによって流産・

早産の可能性,産科合併症の発生,低出生体重児の出 産などの妊婦や胎児・新生児に多くのリスクをもたら すことにつながっていく。

 筆者らは,目的としてこれらの問題に関しての対策 を考えるためにA県において「未受診妊婦」ならびに

「飛び込み分娩」についての実態調査を自治体と共同 で行うこととし,その結果を今回まとめた。本研究で はその全体像とその背景ならびに実施計画について概 要を述べる。なお,「未受診妊婦」とは,医療機関に おける妊婦健康診査を一度も受診していないもの,又 は,妊娠判定のため一度受診後,その後定期的な健康 管理を受けずに分娩に至った産婦のことであり,「飛 び込み分娩」とは「分娩予約をしないまま,陣痛発来 等の分娩開始後に分娩目的で来院し,直ちに分娩に 至った産婦,あるいは分娩後に搬送されてきた母児で,

定期的な妊婦管理を受けていないもの。」と定義する。

Ⅱ 背景について

1  A 県の妊娠と出産に関わる現状について

 A県の妊娠11週以内の妊娠届出率は,平成18年度 79.8%( 全 国 は70.1%), 平 成19年 度82.4%( 全 国 は 72.1%),平成20年度82.3%であり,早期の妊娠届出が 8 割を超え,全国平均より高い状況である。一方,妊 娠28週以降の妊娠届出率は,平成18年度,平成19年度 が1.0%,平成20年度が0.9%であり,全国平均(平成18 年度は0.8%,平成19年度は0.7%)よりわずかに高い。

出 生 数 は 年 々 減 少 し て お り, 平 成20年 の 出 生 数 は 10,187人であり,母の年齢階級別出生数では,25〜34 歳までの出生が65.4%を占める。なお,20歳未満は1.6%

である。

 平成20年 2 月 1 日時点のA県健康保健部医療薬務課 の調査結果によると,「分娩」を取り扱っている医療 機関は34施設,その内訳は公立病院が11施設,民間病 院が 2 施設,診療所が21施設となっている。また,医 療と保健が連携を図り,妊婦に対し一貫した支援を行 うことを目的として,「妊婦連絡票等」を作成,運営 している。「妊婦連絡票等」は,妊婦連絡票及び要訪 問指導妊産婦連絡票等から成り,妊婦の情報及び妊婦 に対し実施した支援情報について情報共有できるシス テムである。平成20年度妊婦連絡票集計結果では,妊 娠届出数9,709件のうち,9,531件(98.2%)の妊婦連絡 票が作成,提出されている。

 A県内市町村における妊婦健康診査公費負担の実施 状況については,平成18年度までは,全市町村におい て 2 回の公費負担を実施された。平成19年度は,体制 の整った市町村から公費負担回数を増やし, 2 回〜14 回,平成20年度は, 5 回〜14回と,市町村によって異 なる回数の公費負担支援を行った。平成21年度は,39 市町村が,国が望ましいとしている14回の公費負担が 行われており, 1 村が回数無制限で公費負担支援を 行っている。

2 調査対象および調査内容,調査方法

(1)調査名

 ①「出産後に妊娠届出をした産婦の状況及び未受診 妊婦対策に関する調査」(以下「市町村調査」と する。)および,②「飛び込み分娩の状況及び未 受診妊婦対策に関する調査」(以下「医療機関調査」

とする。)である。

(2)調査対象

 ①A県内の40市町村

 ②A県内で分娩を取り扱っている37の出産施設(14

病院,21診療所, 2 助産所)に調査を依頼した。

(3)調査期間および調査方法

 ①市町村対象の調査では,市町村保健師(又は保健 所保健師)が,面接,訪問,家庭訪問記録等から 把握した内容を回収,集計した。②産科医療機関 及び助産所対象の調査では,医師,看護職員,事 務職が診療記録等から把握した内容を回収,集計 した。調査期間は平成20年12月〜平成21年 1 月で ある。調査は,平成18年度から平成20年度(平成 20年度は平成20年 4 月から12月まで)の実績に関 して半構造式質問紙を対象に郵送し,記載後に返 送してもらった(別添資料参照)。

(4)調査内容  ①市町村調査

 平成18年度から平成20年度(平成20年12月まで)

において,出産後に妊娠届出をした産婦の状況及 び児の状況に関して,そのあり・なしとその人数,

年齢,国籍,妊娠届出時での職業,妊娠回数,出 産回数,そのうち出産後に妊娠届出をした既往,

妊娠の受け止め(本人及び家族等の気持ちや,妊 娠について知っていたかなどの情報),妊娠判定 診断の有無,健康保険加入状況,入籍の有無,同 居者の有無,妊娠期間中の支援・相談者,医療機 関受診手段,分娩状況,分娩場所,母体合併症の 有無,在胎週数,出生体重,新生児異常の有無,

主な養育者(児の引き取り状況),母の状況,児 の状況,関係機関との連携,出産後の妊娠届出と なった理由,に関して選択肢法および自由記載法 を併用して回答してもらった。加えて,出産後の 妊娠届出対策や未受診妊婦対策についての意見に 関して,医療機関に対する要望,行政が果たすべ き役割,県民及び妊婦に対する周知方法に関する 意見の3つの事項について意見を自由記載しても らった。

 ②医療機関調査

 病床数,平成18年度から平成20年度(平成20年 12月まで)において,分娩取り扱い数,飛び込み 分娩の受入数といったフェースシート。

 飛び込み分娩ありと回答した施設について,年 齢,妊娠回数,出産回数,そのうち,飛び込み分 娩の既往,健康保険加入状況,医療機関受診手段,

分娩状況,分娩経過時期,分娩場所,母体合併症 の有無,分娩費用支払い状況,在胎週数,出生体 重,新生児異常の有無,施設内外管理の有無, 1 か月健康診査受診の有無,関係機関との連携,飛 び込み分娩の理由について選択肢法および自由記

載法を併用して回答してもらった。

 加えて,飛び込み分娩対策や未受診妊婦対策に ついての意見に関して,医療機関が果たすべき役 割,行政に対する要望,県民及び妊婦に対する周 知方法に関する意見の 3 つの事項について意見を 自由記載してもらった。

3 回収結果

 市町村調査の回収率は100%であった。医療機関調 査の回収率は83.8%(31医療機関)であった。19床以

下の施設が 6 か所13件,20床以上の施設が22か所75件 取扱っていた。特に500床以上の施設は 9 か所51件で,

全体の58.6%を占めていた。飛び込み分娩は,31医療 機関から87症例が得られた。

 年度別の対象数について市町村調査は,平成18年度,

11市町村33症例,平成19年度12市町村25症例,平成20 年度( 9 か月間分)13市町村17症例であった。医療機 関調査では,平成18年度 8 施設29症例,平成19年度10 施設30症例,平成20年度( 9 か月間分)10か所28症例 であった。

表1 全体数と10歳代群,自宅分娩の比較1(市町村調査)

全体数(n=75) 10歳代群(n=9) 自宅分娩群(n=17)

人 % 人 % 人 %

年 齢 10歳代(16歳以上) 9 12.0  9 100 3 17.6

20歳代 23 30.7  1 5.9

30歳代 35 46.7  8 47.1

40歳代 8 10.6  5 29.4

妊娠回数 0 妊 14 18.7  6 66.7 1 5.9

1 妊 6 8.0  1 11.1 0 0

2 妊 14 18.7  0 0 2 11.8

3 妊 17 22.7  1 11.1 5 29.4

4 妊以上 14 18.7  0 0 6 35.3

不明 10 13.2  1 11.1 3 17.6

出産回数 0 産 18 24.0  9 100 3 17.7

1 産 11 14.7  0 0 0 0

2 産 16 21.3  0 0 4 23.5

3 産 19 25.3  0 0 4 23.5

4 産以上 10 13.3  0 0 6 35.3

不明 1 1.4  0 0 0 0

出産後の妊娠届出の既往 0 回 50 66.7 9 100 12 70.6

1 回 10 13.3 4 23.5

2 回 3 4 0 0

3 回 0 0 0 0

4 回 2 2.7 0 0

不明 10 13.3 1 5.9

妊娠の受容

(複数回答;人数比)

本人が受容 56 74.7  5 55.6 

家族が受容 31 41.3  7 77.8 

パートナーが受容 35 46.7  3 33.3 

不明 12 16.0  1 11.1 

就 業 無職・家事専業 37 49.4  3 33.3 9 52.9

アルバイト・パート職 ・ その他 25 33.3  4 44.5 6 35.3

常勤職 7 9.3  0 0 1 5.9

高校生・学生 3 4.0  2 22.2 0 0

不明 3 4.0  0 0 1 5.9

健康保険加入 加入あり 59 78.7  8 88.9 15 88.2

加入なし 8 10.7  0 0 1 5.9

生活保護受給 5 6.6  0 0 0 0

不明 3 4.0  1 11.1 1 5.9

入 籍 未入籍 45 60.0  6 66.7 12 70.6

入籍あり 22 29.3  0 0 0 0

妊娠届出後入籍予定 8 10.7  3 33.3 0 0

不明 0 0  0 0 5 29.4

同 居 あり 68 90.7  9 100 16 94.1

なし 7 9.3  0 0 1 5.9

ドキュメント内 保健科学研究_第3号 (ページ 35-45)