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双子に対する母親のとらえ方と授乳との関わり

ドキュメント内 保健科学研究_第3号 (ページ 45-53)

三 崎 直 子

*1

 高 梨 一 彦

*2

 山 内 瑶 子

*3

高間木 静 香

*4

(2012 年 9 月 28 日受付,2012 年 12 月 18 日受理)

要旨:一般的に双子の母乳育児,母児との生活リズムや疲労に関する困難が指摘されている。

そこで本研究は,第 1 子と第 2 子のとらえ方と授乳との関わりを探ることを目的とした。H大 学医学部附属病院で双子を出産した母親53名に対し,平成18年 1 月〜 3 月に郵送質問調査を実 施し,その結果を統計分析した。64%が同じ時間帯に授乳していたが,同時授乳は9.4%であった。

母親は,双子との生活リズムがつかず育児に手がかかった場合に疲労を感じ,乳汁分泌が良好 であることによって母乳育児に満足し,このことについて第 2 子にやや関連が見られた。その 一方で,出生時の双子間の体重差が10%以上の場合,第 1 子との関係が良好で,同じ時間帯に 授乳した児を叱ることが少なかった。双子での授乳に差が生じたことで子どものとらえ方が変 化し,授乳を上手くできた子どもに対して母親は育てやすさを感じるのではないかと推察され る。

キーワード:双子,授乳,母親,育児,とらえ方

*1弘前大学大学院保健学研究科健康支援科学領域 健康増進科学分野

〒036‑8564 弘前市本町66‑1 E‑mail:[email protected]‑u.ac.jp

*2和洋女子大学人間・社会学系心理学・教育学研究室

*3弘前大学大学院保健学研究科健康支援科学領域 障害保健学分野

*4弘前大学大学院保健学研究科健康支援科学領域 老年保健学分野

Ⅰ 緒  言

 昨今では不妊治療の増加により,多胎児の妊娠,出 産が増加している。双子を持つ母親は,妊娠から出産,

育児におけるリスクの高さから,退院後の育児に不安 や問題を抱えることが多い。特に母乳育児,母児との 生活リズム,疲労に関する困難,負担感,時間的拘束 は,単胎児の約 2 倍と報告されている1)。中でも双子 の育児上の問題をもっている母親の約 9 割が授乳に問 題を感じていると報告されている2)

 双子の授乳方法の中で母児との生活リズムがつきや すく,負担感が少ない「同時授乳」が推進されている。

しかし,出生時体重等の身体的な差,乳汁分泌の状況,

母親の疲労,育児協力者の有無等,双子の育児を左右 する要件が種々存在する中での育児であることを考え ると,双子の授乳が全くふたり同じ授乳量で同じ時間 に授乳とはいかず,それらについて双子に差が生じる ことは否めない。また我々の経験から,双子を育児中 の母親や経産婦から,「この子は良く飲んでくれるの ですごく育てやすい」,「あまり泣かなくて静かなので

育てやすい」というように「育てやすい」という言葉 を聞く機会が多かった。

 そこで本研究は,授乳と母親の双子のそれぞれに対 する「育てやすさ・育てにくさ」との関連に焦点を当 てた。母親は双子の授乳によって,スムーズに授乳が できた方の子どもに「育てやすい」,うまくできなかっ た方の子どもに「育てにくい」というとらえ方をする のかどうかを探ることで,母親の子どもに対するとら え方と授乳との関連を明らかにする。

Ⅱ 研究方法

 調査期間は平成18年 1 月〜 3 月である。平成 7 〜17 年にH大学医学部附属病院で双子を出産した母親53名 を対象に,郵送による質問調査を実施した。質問紙配 布は予め電話にて調査を依頼し郵送許可を得られた対 象に112部郵送し,回収数は53部,回収率は47.3%で あった。有効回答数は53部で100%であった。

 本研究での「とらえ方」は,具体的な授乳の方法(児 の状態と母親の状態を含む),母親の児に対する情緒 的な価値付け,そして育てる上での関わり方の基本と

なる育児方針を含むとした。すなわち「とらえ方」が 良ければ「育てやすい」と母親はとらえるものとした。

 質問紙の形式は半構造型を含み,母親と双子(第 1 子,第 2 子とする)の属性(母親と子どもの年齢,初 経産別,性別等),育児について「育児方針」と双子 に対する母親の「接し方」,「とらえ方」,「授乳」につ いて問うものである。

 「育児方針」は,「①ふたりを同じように育ててきた」,

「②それぞれの個性に応じて別々に育ててきた」,「③ きょうだいとしての意識を重視してきた」の 3 項目か ら選択してもらった。双子に対する母親の「接し方」

と「とらえ方」での「接し方」は,母親が実際に双子 に対してわけへだてなく接してきたかどうかについて の質問である。「とらえ方」については,調査時点で 母親が双子の第 1 子と第 2 子をどのようにとらえてい るかについて「①子どもをほめるより叱ることの方が 多い」,「②子どもの欠点がどうしても目についてしま う」,「③子どもが日頃何を考えているのかだいたいわ かっている」,「④子どもと話をするのが好きである」,

「⑤子どもに早く大人になって欲しい反面,私から離 れていくのが寂しい」,「⑥子どもの成長に必要なもの は早めに与えてきた」の 6 項目について,「はい」,「ど ちらともいえない」,「いいえ」から選択してもらった。

 「授乳」は「(1)授乳方法」,「(2)授乳時の双子の状態」,

「(3)授乳期の母親自身の状態」の 3 項目とした。「(1)

授乳方法」は双子に対して具体的にどのように授乳を したかについて項目からの選択と自由記載から「①双 子に同じ時間帯に授乳」,「②双子に別々の時間帯に授 乳」,「不明」に分類した。「(2)授乳時の双子の状態」

については,第 1 子と第 2 子の「①乳頭への吸いつき が良くよく飲んでくれて満足であった」,「②あまりぐ ずることなく手がかからなかった」とした。「(3)授乳 期の母親自身の状態」は授乳期間中の「母親の状態」

として「①疲労を感じることが多かった」,「②楽しく 満足感がありそれほどイライラしなかった」について,

「乳房の状態」として「①乳頭に傷や乳腺炎などのト ラブルが多かった」,「②乳房緊満が不十分で乳汁分泌 が不良であった」について,「母子の生活」として「① 母親と双子との生活のリズムがつき大変ではなかっ た」,「②母親と双子のうちのひとりとの生活のリズム がつきやすかった」とした。

 実際の「接し方」,「授乳」の「(2)授乳時の双子の 状態」,「(3)授乳期の母親自身の状態」について,「非 常にそう思う」5 点,「ややそう思う」4 点,「どちらで もない」3 点,「あまりそう思わない」2 点,「全くそう 思わない」1 点の 5 段階評価とした。

 分析は SPSS  14.0J  for  Windows を用いた。基礎集 計,相関係数,クロス集計そして第 1 子と第 2 子の比 較には類似度を求めた。有意水準を 5 %とした。

 本研究は,H大学医学部の倫理委員会の承認を得た。

対象者に対して,質問紙郵送依頼の電話をし,郵送し た紙面にて研究目的,研究体制,調査方法,問題が生 じた場合の対処法,プライバシーの保護,参加同意と 参加撤回の自由,クレームの自由について十分説明し,

口頭で了承を得て同意書への署名を得た。

Ⅲ 結  果 1 属性

 母親の年齢は36.6(±5.25)歳であった。初産の母親 は35名(66.0%),経産が18名(34.0%)であった。23 名(43.4%)が就業しており,27名(50.9%)が就業 しておらず, 3 名(5.7%)が無回答であった。核家 族が23名(43.4%),複合家族が27名(50.9%)で, 3 名(5.7%)は無回答であった。48名(90.6%)が健康 であると認識していた。

 双子の年齢は4.5(±3.1)歳で,第 1 子と第 2 子とも 男児が20名(37.7%)で,第 1 子と第 2 子とも女児が 15名(28.3%),男児と女児の双子が18名(34.0%)で あった。出生児体重について情報を得られた50名の平 均出生時体重は,第 1 子が2.31(±0.36)kg,第 2 子 は2.17(±0.42)kg であった。第 1 子と第 2 子の出生 時体重差について10%以上が28名(52.8%),10%未 満が22名(41.5%),不明 3 名(5.7%)であった。出 生から帰宅までの期間は,第 1 子は2.31 (±0.36)月,

第 2 子は2.17(±0.42)月であった。

 母親が育児の協力および相談を最もする人は,夫24 名(45.3%),実母12名(22.6%),義母10名(18.8%),

実の両親 1 名(1.9%),祖母 2 名(3.8%),実の姉 1 名(1.9%), そ の 他 2 名(3.8%), な し 1 名(1.9%)

であった。育児の協力者,核家族かどうか,初産・経 産かどうかの違いについては,統計的に有意ではな かった。

2 「育児方針」,「接し方」および「とらえ方」

 「育児方針は」「①ふたりを同じように育ててきた」

が41名(77.3%),「②それぞれの個性に応じて別々に 育ててきた」が11名(20.8%),「③きょうだいとして の意識を重視してきた」が 1 名(1.9%)であった。

 母親が実際に双子に対してわけへだてなく接してき たかの「接し方」は,「非常にそう思う」19名(35.9%),

「ややそう思う」28名(52.8%),「どちらでもない」4 名(7.6%),「そう思わない」2 名(3.7%)で,「非常

にそう思う」と「ややそう思う」を合わせて47名(88.7%)

がふたりにわけへだてなく接してきたと回答してい た。「育児方針」と 「接し方」 に相関関係はなかったが,

約 8 割の母親が双子を同じようにわけへだてなく育て ていた。

 「とらえ方」は(図 1 )は, 6 項目について第 1 子 と第 2 子の類似度を求めて比較した。「①子どもをほ めることより叱ることの方が多い」(類似度0.875),「② 子どもの欠点がどうしても目についてしまう」(類似 度0.852),「③子どもが日頃何を考えているのかだい たいわかっている」(類似度0.825),「④子どもと話を するのが好きである」(類似度0.852),「⑤子どもに早 く大人になって欲しい反面,私からはなれていくのが 寂しい」(類似度0.981),「⑥子どもの成長に必要なも のを早めに与えてきた」(類似度0.980)の結果を得た。

いずれの項目において,第 1 子と第 2 子に有意な差は なかった。

3 「授乳」に関する母親と双子の状態

 「(1)授乳方法」は,「①双子に同じ時間帯に授乳」34 名(64.2%),「②双子に別々の時間帯に授乳」16名

(30.2%),不明 3 名(5.6%)であった。完全母乳はわ ずかに 5 名(9.4%)で,「①双子に同じ時間帯に授乳」

に含まれた。

 「(2)授乳時の双子の状態」(表 1 )の「①乳頭への 吸いつきが良くよく飲んでくれて満足であった」は,

「非常にそう思う」と「ややそう思う」が多く,第 1 子は27名(51.0%)で,第 2 子が31名(58.5%)で,「そ う思う」は第 2 子がやや多かった。第 1 子と第 2 子の 相関は r=0.744 であった。「②あまりぐずることなく 手がかからなかった」では,第 1 子と第 2 子とも「や やそう思う」が多く,第 1 子と第 2 子の相関は r=0.594 であった。

 「(3)授乳期の母親自身の状態」で,「母親の状態」(表 2 )の「①疲労を感じることが多かった」の平均得点 は3.53(±1.19),「②楽しく満足感がありそれほどイ ライラしなかった」の平均得点が2.91(±1.23)であっ た。「乳房の状態」の「①乳頭に傷や乳腺炎などのト ラブルが多かった」の平均得点は2.02(±1.28),「②乳 房緊満が不十分で乳汁分泌が不良であった」の平均得 点が3.40(±1.56)であった。「母子の生活」の「①母 親と双子との生活のリズムがつき大変ではなかった」

15.1 13.2

30.2 24.5

60.4 62.3

35.9 39.6

24.5 24.5

33.9 35.8

0% 20% 40% 60% 80% 100%

➨1Ꮚ(n=53)

➨2Ꮚ(n=53)

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0.87

0.852 㢮ఝᗘ

67.9 71.7

75.5 73.6

49.1 47.2

30 2

32.1 28.3

24.5 26.4

37.7 39.6

52 8

13.2 13.2

17 0

➨1Ꮚ(n=53)

➨2Ꮚ(n=53)

➨1Ꮚ(n=53)

➨2Ꮚ(n=53)

➨1Ꮚ(n=53)

➨2Ꮚ(n=53)

➨1Ꮚ(n=53)

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0.825

0.852

0.981

30.2 32.1

52.8 50.9

17.0 17.0

➨1Ꮚ(n=53)

➨2Ꮚ(n=53)

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0.980

図1 母親による双子の「とらえ方」

ドキュメント内 保健科学研究_第3号 (ページ 45-53)