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テーブルクロスの色と食習慣が甘味・塩味の感じ方に及ぼす影響

ドキュメント内 保健科学研究_第3号 (ページ 111-122)

一 色 相 佳

*1

 本 多 真知子

*2

 北 嶋   結

*3♯

横 田 ひろみ

*4

 柴 田 早 紀

*5

 山 野 智恵美

*6

工 藤 せい子

*4

(2012 年 9 月 28 日受付,2012 年 12 月 17 日受理)

要旨:色彩は生理・心理的面に影響を与えることが知られており,色彩環境は食事のおいしさ への影響があるといわれているが,色彩と食習慣が及ぼす甘味・塩味の感じ方を論じている先 行研究は少ない。そこで,本研究では,食習慣を聴取し,テーブルクロス色による甘味・塩味 の感じ方の違いを知ることを目的とした。第 1 段階に,女子学生に 4 色(アイボリー・赤・青・

黒)のテーブルクロスを用いて実験を行った。女性は月経周期による味覚感度に変動が生じた 可能性もあり,男性を対象者として実験を行う必要があった。そこで,第 2 段階では,男子学 生に,同様の条件で行った結果,甘味では,高明度低彩度なアイボリーで濃く感じていた。甘味・

塩味の感じ方は,味の好みや食習慣等から影響を受けていた。この結果から,カロリー制限者 に対し,高明度低彩度なアイボリーやベージュを効果的に用いることが示唆された。

キーワード:甘味,塩味の感じ方,影響,色の違い,食習慣

*1北海道大学病院 

〒060‑0814 北海道札幌市北区14条西5丁目

*2狭山病院

*3弘前大学大学院保健学研究科健康支援科学領域 老年保健学分野

*4弘前大学大学院保健学研究科健康支援科学領域 障害保健学分野

*5弘前保健所

*6立川相互病院

♯ corresponding author

Ⅰ はじめに

 近年の生活習慣の変化に伴い,糖尿病や心疾患,腎 疾患をはじめとする生活習慣病は増加している。生活 習慣病と共に生活している患者は,自身が日常生活の 中で自己管理能力を高めてゆくことが求められる。自 己管理能力の中でも重要なこととして,食習慣を改善 していく能力が必要となる。特に,糖尿病や心疾患,

腎疾患などの慢性疾患患者では,食事制限が必要とな り,中でもカロリーや塩味の制限は味付けに影響する ため,食に対する不満足感を抱えたままの生活を余儀 なくされている。患者にとっては味付けに大きく影響 する甘味と塩味を制限されることは,苦痛をともない,

食事をつくる家族にとっても難題となっている。そこ で,甘味・塩味の制限を必要とされる患者に対し,負 担をかけず,少しでも満足感を得ることのできる食空 間を提案し,食生活を改善する機会を提供する方法の 一つとして,色彩の効果を利用することができるので

はないかと考えた。

 色彩は生理的・心理的な面に影響を及ぼすことが知 られている1)。また,色彩の他に,色相(色どり),

明度(色の明るさ),彩度(色のあざやかさ)があり,

それらが総合されたものが心理的に影響する2)とい われている。また,野村1)は,人はおいしさを五感 で判断しているが,中でも視覚からの影響は非常に高 いと述べている。よって,色彩や色相,明度を効果的 に利用し,視覚的な影響を利用することで,甘味・塩 味の感じ方を変化させることにつながるのではないか と考えた。色彩と食事の関係をみている先行研究は,

供食用トレイの色を効果的に使用することで,喫食者 の気分を変えることが可能であること3)や,高明度 低彩度な色のテーブルクロスを使用することで甘味が 強調されて感じられる4)と報告されている。また,

塩味からイメージする色については,白に近い無彩色 であること5)が報告されている。さらに,冨田ら4)は,

特に食空間では,テーブルクロスの色が料理を引き立

てる等おいしさと深く関わっており,色彩を効果的に 使用することで喫食者の気分を変えることが可能であ ると述べている。しかし,色が甘味・塩味の双方の感 じ方に及ぼす影響について論じている先行研究は少な く,その根拠は乏しいのが現状である。

 人間の食事は生活活動のひとつであり,その社会の 文化や経済,生活上の楽しみにもつながる6)と言わ れているように,人間にとっての食事は,単に生命活 動の維持だけではなく,文化的背景においても重要で あるということを忘れてはいけない。よって,色彩の 効果を利用することにより,甘味・塩味の感じ方に与 える影響を明らかにすることは,糖尿病患者や腎疾患・

心疾患などで,カロリー・塩味制限を余儀なくされる 患者にとって,少しでも満足の得られるような食事環 境を提供することにつながると考える。また,同じ食 事内容でも,色彩や色相,明度,彩度を変更すること と,食習慣の違いにより,甘味・塩味の感じ方が異な る事が明らかとなれば,患者にとって,快適に糖分・

塩分制限を受け入れることにつながるものと考えた。

さらには,カロリー・塩味制限患者に対する栄養指導 に関する方法にも重要な示唆をもたらすことができる のではいかと考えた。

Ⅱ 研究目的

 本研究の目的は,食習慣を把握し,色の異なるテー ブルクロスを用いることによって,甘味・塩味の味覚 にどのような影響を及ぼすのかということを明らかに し,カロリー・塩味制限患者の食事指導に役立てるた めの示唆を得ることである。

Ⅲ 方  法 1.予備実験

(1)対象者

 対象者は健康な女子学生12名で,BMI は20.1±2.1 であった。

(2)条件

 環境は,調整可能な実験室を使用し,室温24± 2 ℃,

湿度50〜60%で実施した。照度は照明がテーブルクロ スの色の見え方に影響を与えないよう,ルクス計(株 式会社ヤガミ製,246型)を使用し,400〜600lx7)と 一定とした。

 甘味は,紅茶(大塚食品,シンビーノ ジャワティ ストレート レッド)を使用し,温度は10℃に準備し た。糖分濃度は,ガムシロップ(味の素ゼネラルフー ヅ株式会社,マリーム スイート・シリーズ ガムシ ロップ)を使用し,ポケット糖度計(株式会社アタゴ

製,APAL-J)により3.0%,5.0%,7.0%に調整した。

 塩味は,味噌汁(マルコメ株式会社,即席みそ汁 生 みそタイプ)を使用し,温度は60℃に準備した。塩分 濃度はデジタル塩分濃度計(株式会社エイシン製,

EB-158P)を使用し0.7%,1.0%,1.3%に調整した8)。  糖分及び塩分濃度は先行研究4,5)において使用され たものを参考とした。

 実験開始時間は,血糖値が味覚に影響する可能性を 考慮し,先行研究4,5)を参考に食後 2 時間以降とした。

実験時間は約 1 時間で,9:00〜10:30,10:40〜12:10,

14:00〜15:30,15:40〜17:10のいずれかの時間帯とし た。

(3)手順(図 1 )

 同一者に対し,日にちを変えて実施した。個人の日 常生活における甘味・塩味の嗜好や食習慣,色の好み の調査4)に回答してもらい,その後,体組成計で体 組成を測定した。

 病棟で一般的に使われているオーバーテーブル(40

×120cm)にテーブルクロスを掛けたものを準備した。

テーブルクロスの色(明度/彩度)は,アイボリー

(8.7/1.7), 赤(3.0/6.0), 青(3.4/5.1), 黒(1.3/0.2)

を用い,同一者に対して 4 色を使用した。

 テーブルクロス 1 色につき異なる 3 濃度の紅茶(糖 分濃度3.0%,5.0%,7.0%)100ml をランダムに提供し,

味の感じ方について「 1 :うすい〜 5 :濃い」の範囲 の中で評価してもらった。前に飲んだ紅茶により後の 味覚が影響を受けないよう,紅茶を飲む度に水を飲む よう指示した。合わせて,テーブルクロスを変える際,

前後の色彩で影響を受けないように同室内で場所を変 えて 3 分間9)の休憩を入れた。

 後日,同様に味噌汁(塩分濃度0.7%,1.0%,1.3%)

100ml で実施した。オーバーテーブルにはテーブルク ロスを掛け,実際の食事を表現したフードモデルを置 いた。被験者間で各テーブルクロスの色における 3 濃 度の紅茶または味噌汁を出す順番は固定し,テーブル クロスを掛ける順番のみを変化させた。

(4)分析方法:SPSS17.0 を使用し,反復測定による 分散分析, 2 元配置(対応のある因子と対応のない因 子)の分散分析と多重比較を行った。有意水準は

<0.05とした。味の感じ方の値は平均値±標準偏差

(M±SD)で記した。

(5)結果

 糖分濃度では,テーブルクロスの色と甘味の感じ方 に有意差はなかった。濃度3.0%における甘味の感じ 方は,アイボリー2.21±0.23,赤2.25±0.13,青2.25±

0.23,黒2.29±0.23であった。濃度5.0%において,ア

イボリー3.38±0.30,赤3.71±0.20,青3.38±0.20,黒3.13

±0.32であった。濃度7.0%においては,アイボリー4.38

±0.19,赤4.58±0.16,青4.46±0.20,黒4.50±0.19であっ た。

 塩分濃度では,濃度0.7%での塩味の感じ方(図 2 ) は,アイボリー1.92±0.23,赤1.79±0.23,青2.21±0.19,

黒2.67±0.20で あ り, 黒 よ り も 赤 が 有 意 に 低 か っ た

( <0.05)。濃度1.0%では,テーブルクロスの色の変 化により有意差はなく,アイボリー3.00±0.31,赤3.29

±0.22,青3.25±0.24,黒3.50±0.35であった。濃度1.3%

においても,テーブルクロス色の変化により有意差は なく,アイボリー4.00±0.22,赤4.08±0.25,青4.54±

0.18,黒4.33±0.21であった。

 塩味に関する 1 週間の食事,意識・嗜好の因子を群 分けすると,減塩をしているかどうかによる群間比較 では,塩味の感じ方とテーブルクロスの色による差は 見られなかった。また,塩辛いものをほとんど食べな い群と週 1 回以上食べる群の比較でも,テーブルクロ スの色による差はみられなかった。その他の因子によ る群間比較では有意差はなかった。

 テーブルクロスの色と,甘味・塩味の感じ方では,

塩分濃度0.7%を除いて有意差はみられなかった。予 備実験の対象者は女子学生のみであった。岡野ら10)は,

甘味の味覚感度は卵胞期および黄体期が月経期および 䐟䜸䞊䝞䞊䝔䞊䝤䝹䛻䝔䞊䝤䝹䜽䝻䝇䜢䝉䝑䝖

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図1 実験プロトコール

0.00 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00

䜰䜲䝪䝸䞊 ㉥ 㟷 㯮

*

図2 テーブルクロスの色と塩分濃度0.7%による塩味感受性の変化    多重比較 *: <0.05

ドキュメント内 保健科学研究_第3号 (ページ 111-122)