高窒素添加のオーステナイト系ステンレス鋼は、高強度、
高耐食性、非磁性で高靭性の特長を兼ね備えた大変有望な素 材であるが、解決すべき課題も多い。そのひとつは加工性・
成形性の確保であろう。今後、この素材が広く使用されるよ うになるためには、用途に応じた最適成分設計、組織制御、
不純物制御等が系統的に進められることが期待される。今後、
高窒素ステンレス鋼の利用が期待される分野としては、抗 ニッケルアレルギー材料を目指した生体・医療関連分野、あ るいは高強度・高耐食特性を要求される精密機械分野や金型
図3 HNS の状態図
図2 加圧 ESR の原理図
1.はじめに
真空紫外 200nm 以下のレーザー光源は、医療、半導体プ ロセス、加工などの領域で広くニーズがあり、特に ArF エ キシマレーザーの波長 193nm は半導体微細加工、眼科医療、
光情報記録、などの分野で利用されている。しかし ArF エ キシマレーザーは腐食性の強い毒性ガスを用いており、毒性 ガスの消費もさることながら、ガス交換、チャンバー交換な どで、最大数千万円/台レベルのメンテナンス費用がかかっ ている。また地震や火事など災害時の安全性を考えると極力 毒性ガスの使用は避けたい。
物質・材料研究機構では、これまで固体材料を用いたレー ザー波長変換デバイスの研究を行ってきており、高効率波長 変換材料およびデバイスの知見を多く有している。特に周期 反転構造を利用した擬似位相整合波長変換デバイスに関して は第一線を走っている1)。これらの知見を生かして環境に安 全な単結晶 SiO2(水晶)を用いた波長変換デバイスを提案 している2)。
2.世界の研究動向
波長 193nm レーザーの全固体化の努力が行われている が、ホウ化物系材料のレーザー損傷があり実用レベルの光源 は得られていない。これに対し MIT では 193nm レーザー に向けて BaMgF4を使用した波長変換デバイスを試作してい る3)。しかし波長変換定数が小さいことや分極反転の品質な どの問題で波長変換結果が得られないままプロジェクトが終 了している。
3.国内の研究動向
3.1 国内の研究動向
波長 193nm のレーザー光源をめざして5段階の複数ルー トをとる波長変換システムがニコン社で構築されている。通 信帯の半導体レーザを光源として8倍高調波を発生させて 193 nm 光を得ている4)。波長 1547 nm の光を基本波(角 振動数ω)とし高速変調器でパルス化してエルビウム添加 ファイバで増幅する。これを以下の5段階の非線形波長変換 で8倍高調波(角振動数 8 ω)まで変換し 193 nm の光を 得る)。
ω+ω→2ω、ω+2ω→3ω、2ω+2ω→4ω、3ω+4ω→
7ω、7ω+ω→8ω
しかしシステムが大がかりでコストが高く、広く応用され
るにはいたっていない。
3.2 NIMS の現状
NIMS では周期反転構造をもつ擬似位相整合波長変換デバ イスを、水晶にて実現するアプローチがとられている。水晶 波長変換デバイスは基板内に微細な周期ツインを必要とする が、このデバイスを用いれば直線上の3段階波長変換でシス テムが構築でき格段に小型軽量化できる(図1)5)。これら 3種の波長変換デバイスは一枚の水晶基板の上に集積化する こともでき、光源としてきわめて安定性の高いシステムが構 築できる。
着想から実現までの道のりは我々がツイン作製用の応力印 加装置の開発を行いながら歩んできた独自の歴史であり、現
在世界的にみてもこのツイン制御技術を有する研究機関は他 にない。実現すれば世界で初めての全固体真空紫外直線レー ザー光源となる。NIMS では水晶の極性反転構造の短周期 化を進めており、現在周期 18μm の周期ツインで紫外波長 266nm が得られている6)。水晶は 193nm の半導体リソグ ラフィ用の光学材料として用いられており、長期信頼性が確 保されているためデバイス作製技術が確立されれば 193nm 光源の本命に成りうる。今後短周期化を進めて、短波長光源 としての可能性を試していく。
4.今後の研究動向
2m 級の大型レーザー光源が、ノートパソコンほどの小型 光源に生まれ変われば、装置への組み込みも格段に容易にな り、モバイルな真空紫外光源に成りうる。SiO2は地球上に 潤沢にある安全な資源であり、コスト面で有利で省電力な小 型光源は、長寿高齢化社会の在宅治療に対するニーズにマッ チする。
5.まとめ
有毒元素を用いない新しい真空紫外レーザーをめざして、
波長変換材料として安全な水晶をとりあげ、周期ツインによ る波長変換デバイスを紹介した。紫外領域において高い耐久 性を有するために、紫外領域の設計可能な波長変換デバイス
5)毒性ガスを使用しない環境に安全な固体レーザー
栗村 直
光材料センター、物質・材料研究機構図1 水晶波長変換による 193 nm レーザー
として今後の展開に期待がもてる。
引用文献
1) 宮澤信太郎 , 栗村直監修 : 分極反転デバイスの基礎と応 用 , オプトロニクス社 ISBN4-902312-11-5.
2) M. Harada, K. Muramatsu, Y. Iwasaki, S. Kurimura, and T.
Taira: J. of Material Research, 19 (2004) 969.
3) S. C. Buchter, T. Y. Fan, V. Liberman, J. J. Zayhowski, M.
Rothschild, E. J. Mason, A. Cassanho, H. P. Jenssen, and J.
H. Burnett: Opt. Lett., 26 (2001) 1693.
4) H. Kawai, A. Tokuhisa, M. Doi, S. Miwa, H. Matsuura, H.
Kitano, S. Owa: Conference on Lasers and Electro-Optics
(2003)CTuT4.
5) 栗村直、山田毅、原田昌樹:光アライアンス , 17 (2006)
27.
6) M. Adachi, S. Kurimura, K. Hayashi: Conference on Lasers and Electro-Optics (2007)JTuA99.
1.はじめに
WC-Co に代表される超硬合金は、硬さと破壊靭性に優れ ることから、各種切削工具や耐摩耗性が要求される様々な用 途に用いられている。近年、世界的な需要増加と産出国の国 家的資源戦略により、WC の原料価格は高騰しており、「希 少金属代替材料開発プロジェクト」(経済産業省実施事業)
でも超硬工具向けタングステンを対象とした研究課題が2件 採択された。
他方、産業界では工具以外にも製鉄、製紙、印刷などの製 造設備の各種ロールや摺動部品の表面に超硬合金のコーティ ングが大量に使用されている。また、硬質クロムメッキの 代替コーティング技術も求められている。NIMS では新しい コーティングプロセスとそれに適合した原材料の開発を並行 して行うことによって、超硬コーティングの特性の飛躍的 な向上と焼結超硬合金の一部代替を目指した研究を進めてい る。