3.酸化物系熱電材料
3.2 強誘電体フォトニック結晶
既に 2.3 で述べたように、強誘電体単結晶を母体として分 極反転制御を基盤とした微細加工からフォトニック結晶を作 製する研究は、NIMS が先導してきたとも言える。それは分 極反転に適する材料の開発が NIMS のオリジナルとなってい ることで、国内外に試料を提供してきたことからもわかる。
分極反転に適した材料の製造販売を目的としたベンチャー が、NIMS の職員を中心に設立され、国内外に開発した単結 晶が供給されている。
3.3 NIMS の現状
NIMS においても微粒子のフォトニック結晶として非接触 型と接触型のコロイド結晶の両者を研究している。しかし、
図2 自立的シート状に作製されたコロイド結晶膜。色は、粒子の 周期構造に起因する光回折によるもの。
そのアプローチは他所にないユニークなものである。まず、
非接触型については、前駆体として作製の容易な多結晶状態 を作製しておき、それを、動的な流動発生で、短時間(秒オー ダー)で単結晶的に再配列15)させるものである。この方式 で、平方センチメーターのオーダーの大面積で単結晶的な特 性に優れた膜状コロイド結晶を作製している。このコロイド 結晶膜は親水性高分子ゲルで固定化され、自立可能なシート 状材料としている(図2参照)。
一方、接触型のコロイド結晶については、単一の構造色を 有する、疎水性の弾性ゲル固定のシート材の合成に成功16)
している。このシート材は溶媒を含まない乾燥した環境で使 用が可能である。いずれの材料も、柔軟であり格子定数の変 化や応力による格子変形によりストップバンド波長(ブラッ グ反射波長)を自由に変えることができる。
強誘電体フォトニック結晶に関しては、その加工技術開発 が進んでいる。強誘電体単結晶の表面にフォトニック結晶 構造を形成するには、2 つの方法がある。一つは、SPM な どで結晶表面に分極パターンを形成し、分極方位に依存した エッチング特性を利用して表面形状を作る方法がある(図3 参照)。
もう一つは、集束イオンビームで直接表面を加工する方法 であり、最近では、パイオニア総合研究所と共同で開発して いる(図4参照)。どちらにおいてもその加工精度の向上を 目指している。
4.今後の研究動向
微粒子のフォトニック結晶においては、完全バンドギャッ プの実現を目指す流れが、これまで同様に、最も研究人口を 集めるものであるであろう。一方、部分バンドギャップやバ ンドギャップ以外の周波数帯(透過帯)での異常な光学特性 を利用する研究も進むであろう。最近の材料開発の進展によ り、現実材料を対象とした具体的な特性研究が可能になって きている。また、構造色を利用したセンサーや色材応用は、
元素や化合物自体の発色によらず着色する方法として、適用 対象に実用的価値の高いものが設定できれば、産業利用が比 較的早く実現するのではないだろうか。
強誘電体フォトニック結晶に関する研究では、更にフォト ニック結晶構造の加工精度を上げることと、加工領域を大面 積化することが求められる。強誘電体という様々な機能を有 するマトリックスに外部力を作用させるなら、従来の基盤に ない可変特性とフォトニック結晶構造が組み合わさった、コ ンパクトで集積された新しい光機能素子の開発が期待でき る。
5.まとめ
フォトニック結晶は、光学特性の設計・制御が、人為的に 操作可能な格子定数や構造という、材質(つまり元素構成)
以外の幾何学的因子で大きく左右しうる。もちろん、上で述 べた粒子や強誘電体の材質が全く無関係であるわけではない が、特定の都合のよい材質の範囲で、広範な特性を生み出し うる点が、元素戦略上の大きな意義をもつと言えよう。この ような観点は、恐らく、これまでにあまり認識されて来なかっ た。新機能の追求だけではなく、従来機能の代替という観点 からの研究展開がありうるであろう。
引用文献
1) K. Ohtaka: Phys. Rev. B 19 (1979) 5057.
2) E. Yablonovitch: Phys. Rev. Lett. 58 (1987) 2059.
3) S. John: Phys. Rev. Lett. 58 (1987) 2486.
4) 迫田和彰 : フォトニック結晶入門、森北出版 (2004)
5) 日本化学会編 : コロイド科学Ⅰ、東京化学同人 (1995)
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8) Y. Xia, B. Gates, Y. Yin, Y. Lu: Adv. Mater. 12 (2000)
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9) S. Asher, J. Holtz, J. Weissman, G. Pan: MRS Bull. 23 (10)
(1998) 44.
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図3 ドットアレイ型強誘電体分極パターンを化学エッチングする ことにより得られるニオブ酸リチウム表面周期構造
図4 集束イオンビーム法(FIB)でニオブ酸リチウム単結晶表面に 形成したフォトニック結晶構造と導波路(パイオニア総合研 究所と共同開発)
11) K. Kitamura, Y. Furukawa, K. Niwa, V. Gopalan, and T. E.
Mitchell, Appl. Phys. Lett.73, (1998) 3073.
12) Y. Iwayama, J. Yamanaka et al.: Langmuir 19 (2003)
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Funct. Mater. 15 (2005) 25.
16) H. Fudouzi, T. Sawada: Langmuir 22 (2006) 1365.
経済産業省の希少元素代替プロジェクトの研究課題として東 北大学が中核研究機関となる「希土類磁石向けディスプロシ ウム使用量低減技術開発」が採択されている。また文部科学 省元素戦略プロジェクトにおいても次次世代の高性能磁石を 目指し日立金属が中核研究機関となって進める「低希土類元 素組成高性能異方性ナノコンポジット磁石の開発」が採択さ れた。本稿では何故、今、永久磁石材料の開発研究が必要な のか、さらにに何故 Dy 削減が必要なのか、そのためにはど のような研究が必要かを論説する。
1.はじめに
永久磁石材料の最も大きな用途は産業用モータである。
我が国でモータに使用されている電力量は全電力使用量の 53% と推定されており、高性能磁石の開発によりモータの 消費電力を1%改善するだけでその電力消費量の節減効果は 小規模の原子力発電プラント1基分に相当すると言われてい る1)。これは磁石材料の特性改善のインパクトの一例である。
また京都議定書の発効により各自動車メーカーは車体の軽量 化による燃費向上と二酸化炭素排出低減を目指している。ま た現在の自動車一台で 25 - 30 個のモータが使われており、
永久磁石を高性能化すると自動車の軽量化へのインパクトも 大きい。さらに対環境用自動車の動向としてはハイブリッド カー、将来は電気自動車に移行していくと予測されるが、そ のためには 200℃の温度域で使用できるモータ用の永久磁 石が必用であるが、Nd2Fe14B 系焼結磁石の耐熱性は不十分 で、後述するように現状では Nd を Dy で置換することにより、
かろうじて 200℃の温度域で使用できる磁石としている。
磁石特性は図1に示されるように減磁曲線の磁束密度
B
と保磁力H
の積B
•H
の最大の値、(BH
)maxで表される。従っ て、優れた特性の磁石材料を創製するためには磁束密度の高い材料で高い保磁力を実現しなければならない。磁束密度は 磁性材料に特有の値であるが、保磁力は微細構造によって大 きく変化する。(
BH
)maxを高めるためには磁化容易軸を一方 向に配向させることが必要である。工業的に用いられている 磁石材料には焼結磁石とボンド磁石に大別されるが、前者は 磁場中プレスにより Nd2Fe14B 磁石化合物の 5μm 程度の結
晶粒の結晶磁化容易軸(c- 軸)を一方向に配向させた異方 性磁石であり、磁石材料中、最高の特性が得られる。後者は Nd2Fe14B などの磁石化合物相のナノ結晶がランダムに配向 した原料粉を液体急冷による作製し、それを樹脂によって固 めた磁石で磁気的に等方性の磁石であり、特性は焼結磁石の 半分程度であるが、安価な磁石として工業的に広く使われて いる。永久磁石材料の特性として広く使われている最大エネル ギー積の年次変化が図2に示されている3)。磁石材料のエネ ルギー積は歴史的にはぼほ 20 年ごとに新たな材料が見いだ され、そのたびに大きく上昇してきたと言われているが、こ の 10 年間エネルギー積の上昇速度が飽和に達しつつある。
現在、高性能磁石として市場を席巻している Nd-Fe-B 系磁石 はいまから 20 年以上前に佐川らにより発明されたが4)、そ れ以降 Nd2Fe14B 化合物を超える磁石材料は見いだされてい ない。量産されている Nd-Fe-B 系焼結磁石のエネルギー積
(BH)maxは 1990 年頃 320 kJ/m3 (41 MGOe)程度であった が、焼結プロセスの改良により実験室レベルでは 440 kJ/m3
(55MGOe)を超えるエネルギー積が実現されている5)。こ の値は Nd2Fe14B 相の飽和磁化 Isから Is2/4
μ
0で見積もられ る(BH)maxの理論限界 512 kJ/m3 (64 MGOe)に肉薄する 値であり、Nd-Fe-B 系焼結磁石が如何に完成度の高い工業材 料であるかが理解できる。多くの産業分野で磁石材料の高特 性化が求められている現在、このような停滞状態にブレーク スルーをもたらし、磁石材料の特性をさらに向上させること3)ナノ組織制御による磁気特性制御
① 省希土類磁石材料 〜Dyフリー磁石の開発を目指して〜
宝野 和博
磁性材料センター、物質・材料研究機構図1 磁化曲線と最大エネルギー積
図2 永久磁石のエネルギー積の年次変化1)