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サイアロン蛍光体を用いた LED ランプ

3.NIMS の現状

3.6  サイアロン蛍光体を用いた LED ランプ

 青色 LED 素子と黄色

α

サイアロン蛍光体とを用いると、

暖かみのある電球色 LED を実現できる16)。色度は CIE1931  色度図上で青色 LED 素子の色度座標と黄色

α

サイアロン蛍 光体の色度座標とを結ぶ線上を変化する。YAG:Ce 蛍光体を 用いた従来タイプは色温度の高い青白い光を放つものが多 いが、

α

サイアロン蛍光体を用いた白色 LED は色温度が低 い電球色の範囲(2600 〜 3100K)で黒体輻射軌跡と交差 する17)。開発品の色度座標は(0.441,0.415)、相関色温度 3010K であり、JIS 規格の電球色の範囲である。作動電流 20mA における電力視感効率は 55 lm/W と白熱電球の 4 倍 の値であり、電球色の LED としては高効率である。 

 照明には色温度が低い電球色から色温度が高い昼光色ま で、用途により様々な色の光が求められる。そこで、開発し た赤、黄、緑の 3 種類の蛍光体を混合し、昼光色・昼白色・

白色・温白色・電球色の SMD 型 LED を試作した。平均演色 評価数 Ra は、84 から 90 と従来の LED より高い値であり、

相関色温度が低い方が演色性が良い傾向にある。また、従来 品が苦手としていた赤色の評価指数 R9 や、一般照明用とし て重要な R15 も高い。電力視感効率は 26 から 35 lm/W で あり、相関色温度が高い方が効率が高い。最近では、サイア ロン蛍光体の他に 500nm の青緑色を発光する BaSi2O2N2:Eu 蛍光体を添加して、4 種の蛍光体で発色チューニングした LED ランプでは、Ra98 を達成した18)

4.まとめ

 蛍光体は、発光を担う微量の金属元素から機能を引き出す 元素戦略を配慮した材料である。ホスト結晶の格子は金属 イオンを取り囲むことによりイオンを化学的に安定化させた り、結晶場や配位環境を整えることにより発光色や発光強度 を制御する働きをする。

 従来の蛍光体は酸化物や硫化物結晶をホストとしていた が、NIMS では、窒化物や酸窒化物結晶をホストとした蛍光 体の研究を進めており、黄色

α

サイアロン蛍光体、緑色

β

イアロン蛍光体、赤色カズン蛍光体、JEM 青色蛍光体を開 発した。これらの蛍光体はいずれも耐久性に優れており、白 色 LED 用途に適している。

引用文献

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1.はじめに

 半導体は、熱や光、磁場・電圧・電流など外場の変化に対 応し、その物性が変化することが特徴となっている。この特 徴は、本質的にはバンド構造に由来している。すなわち、価 電子帯の状態密度が完全に電子で詰まった充満帯となってお り、伝導帯の間にバンドギャップが外場に対する物性変化に 密接な関係がある。代表的な半導体であるシリコンは、約 1.1  eV のバンドギャップを有しているが、このエネルギーギャッ プでは、室温付近で熱的に励起する電子はほとんど存在しな いため、絶縁体と考えて差し支えない。従って、半導体は、

半導体不純物(ドーパント)を添加し(ドーピング)、キャ リアの密度を上げることで、実用に供されている。すなわち、

シリコンに代表される半導体材料研究の歴史は、ドーピング 技術開発のそれであったと言っても過言ではない。

 シリコンは単元素半導体であるものの、ドーピングは単純 ではなく、添加に伴った欠陥の生成等に関して多くの研究が なされている。さらに複雑な結晶構造・バンド構造を持つ化 合物半導体を対象とした素子開発がなされているのは、これ らの化合物半導体が、高い電子移動度を利用した素子、ある いは直接遷移型の半導性を利用した半導体レーザー素子等、

シリコンでは実現できない応用展開が可能であることに因っ ている。GaN はその典型である。GaN は、シリコンや GaAs と異なり六方晶系であり、その製造も極めて困難であるにも かかわらず、その研究が多く取り上げられているのは、光学 応用に不可欠な青色発光素子として利用できることによって いる。また、最近では、ZnO の研究も盛んになってきている。

この理由としては、Kawai 等のグループによる、p- 型酸化亜 鉛の報告1)、Kawasaki 等のグループによる青色発光ダイオー ドの成功にもあるが2)、資源が問題視されている ITO の代 替材料としても、ZnO が有望視されていることも大きな理 由の一つと考えられる3,4)。本稿では、これら化合物半導体 を中心に、ドーピング要素の最適化について概観し、その研 究方向について述べたい。 

2.国内外の研究動向

 半導体を対象とした場合、ドーピングの意味はバンド ギャップ内に不純物準位を形成し、半導体の伝導性をコント ロールする事にある。シリコンの場合、図1に示したような 不純物が様々な準位を形成する5)。実用上、大事なのは浅い 準位を形成する不純物で、n- 型半導体の場合 P や As

が、p-型半導体の場合 B が重要な添加物元素となる。一方、他の 不純物は実用的には重用でないものの、伝導性に大きな影響 を与えるため、シリコンにおいては詳細な研究がなされてい る。また、結晶成長の観点からは、シリコンは高純度化への 飽くなき挑戦であったといえる。その結果、軽元素を除けば 15N の純度を持つ材料提供が可能となっている。酸素や水 素のような軽元素についても、回路の微細化に伴ってその影 響が顕著となり、これらの元素が関連した欠陥の生成等の研 究が多くなされるようになってきた。

 ドーピング手法としては、基板となる半導体はあらかじめ 原料に混入させる方法が有効であるが、p-n 接合を形成する 都合上、異なった種類の不純物を拡散、乃至はイオン注入法 により添加される。プロセス制御の観点から、シリコン半導 体では、ほとんどの場合、イオン注入法が採用されている。

イオン注入法は、高エネルギーを持った荷電粒子であるイオ ンを基板に照射することから、エネルギー開放に伴った欠陥 の生成が問題となる。そのため、この欠陥の生成と回復に関 する研究が、多く報告されている6-10)

 半導体が重金属に汚染されると、結晶欠陥の発生や電気的 な特性に影響を及ぼす。図1に見るように重金属は深い準位 を形成する傾向にあるが、それらの準位に電子や正孔が一旦 捕獲されると放出されにくい。このため、p-n 接合中に深い 準位の不純物が存在すると、小数キャリアの注入効率を下げ ると言った弊害が生じる。一方、高速動作が必要なデバイス では、却ってその準位を利用することがなされている。この 為、かようなマイナーな不純物の制御も必要となってくる。

かような不純物制御の一つにゲッタリング技術が知られてい る。これは、重金属不純物が歪みが生じている部分に偏析し やすいことを利用した技術であり、ガラス層のゲッタリング 効果を利用して p-n 接合特性を向上させた報告以来11)、多 くの試みがなされている12-14)

 イオン注入法やゲッタリング技術は、不純物制御法として、

5)格子制御によるドーピング要素の最適化

① 半導体材料

羽田 肇 

センサ材料センター、物質・材料研究機構

図 1 Impurity levels in Si (unit: eV)

化合物半導体分野においても広く応用されている15-21)。イ オン注入技術では、シリコン半導体同様、所望の電気的な特 性を得るために利用されることは勿論であるが18)、化合物 半導体では光学応用の観点から、イオン注入法の多く研究さ れていることが特徴である。その好例としてバンドギャップ チューニングが挙げられる。これは、図2に見るように、異 元素を注入することでレーザー発振する量子井戸層の組成・

欠陥構造を変化させることで、発光波長を調整する方法であ る。最近では、単電子デバイス・光学デバイス応用の観点、

希薄磁性半導体の基礎的知見を得る必要性から、ナノ粒子の 物性に関する研究が多くなされている22)。イオン注入法は 容易にナノ粒子を物質中に分散させることが可能であり、特 に化合物半導体で多くの報告がなされている23, 24)。  化合物半導体の場合、一つの特性を得るのに非常に複雑な ヘテロな構造が必要となる。かような素子の典型例である GaN LED デバイスの概念図を、図3に、示した。この素子 では、発光効率を高めるため単純な p-n 接合ではなく多重量 子井戸構造(MQW)を形成する必要がある。MQW のよう な急峻なドーピングが必要な場合、イオン注入法では不可能 であり、MBE や MOCVD 法を駆使したデバイス形成時に必 要なドーピングを施す事がなされている25-28)

 薄膜合成時に添加物を導入する方法は nm オーダーの急峻 図 2  Photoluminescence peak wavelength shift vs. ion dose in the 

InAs/InP systems21).

図 3 Schematic drawing of GaN LED device. 

性が保たれるため、バンド構造を急峻に変化させる変調ドー ピング・超格子形成が可能である29)。この手法を用いるこ とで、図4に示したように、界面の伝導体のバンド構造を制 御し、低いエネルギー準位中に二次元電子ガスを発生させ、

高移動度を有するデバイスを作製する事がなされている。す なわち、格子制御したドーピングを施すことで、本来的な性 質とは全く異なった材料を創成することができる。本手法は、

薄膜プロセスにより超格子を得る事が必要であるが、ホモロ ガス相を利用することで、この超格子を得る試みもなされて いる。30,31)

3.NIMS の現状

 NIMS においても多くの研究グループが半導体関連の研究 を推進しており、その大半が本章に関連している。半導体 分野における最も重要なドーピング技術であるイオン注入手 法についても、量子ビームセンター、光材料センター、な らびにセンサ材料センターにおける主要な研究課題の一つと なっている。量子ビームセンターでは、高濃度の原子をイ オン注入法により基板に導入することで、基板中にナノ粒子 を形成・固定化し、新規な光学的特性を示す新しい材料創成 を目指している32,33)。半導体プロセスにおいて、イオン注 入法は、本来、均一な添加を目指していることから、添加量 の最適化を図るような作業には多大な時間を要する。光学材 料センターはこの難点を克服すべく、コンビナトリアルイオ ン注入装置を開発している。本装置は、イオンビームの不均 一走査(X方向)と可動マスキングを組み合わせることで、

数桁に渡る制御された不均一ドーピングが可能となってい

34,  35)。本装置を用いることで、迅速な dose が決定でき

る。図 5 は、 化合物半導体の一種である酸化亜鉛中に Cu イ オンを注入した際に生ずる発光挙動の変化を評価したもの で、かような最適化が一度の実験で行うことが可能となって いるS4)。センサ材料センターでは、この手法を半導体化学 センサに適用し、添加物の量・状態の最適化を計る研究を行っ

図 4 A potential step in the G conduction edge modulated by  space charge in Ga-Al-As system.