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2010年9月22日

ドキュメント内 質の高い大学教育推進プログラム (ページ 172-175)

大阪大学バンコク教育研究センターを訪問後、Japan Foundation Bangkok Center にてGlocol Bangkok Office Seminar Series 2010に参加。Dr. Prasert ThingcharoenのタイにおけるHIVおよびの歴史と現状に関する講演、武 田直和RCC-ERI特任教授による「パンデミック・インフルエンザ」

の講演、そして現地のNGOである「SWING」によるセックスワーカ ーに対する民間レベルでの取り組みに関する講演を聴いた。この研修シリ ーズの初日でタイにおけるHIVやその他感染症に関する知識の再確認と その現実を目の当たりにすることができ、非常に有益な時間であったとい えよう。

2010年9月22日

Wat Prabat Nampuに赴き、職員の方の説明を受けながら、寺院敷地内の様々 な施設を見学した。

この寺院には、性交渉、薬物の注射器の使いまわし、母子感染など様々な 理由でHIVに感染し、AIDSを発症した患者が生活している。人数は約130 名である。

入所方法は、患者が直接寺院に訪れる、もしくは電話し、その時に空きが

寺院内には数十人の患者が一同にケアをうける建物もあれば、小さな一戸 建てになっており単身もしくは夫婦、家族で入居できる建物もある。家賃 や食費、水道代などはかからない。

写真;一人暮らし向けの一戸建て

左;疾患が進行し、免疫力が低下し た患者が数十人入所している建物、

入る者はマスクと手指消毒をする

この寺院に医師はおらず、専門看護師、看護師助手、比較的状態が安定し ている患者、ボランティア達約50名で患者たちをケアしている。要する にこの寺院はAIDS治療を行う場ではなく、改善を目指す場であり、AIDSに より仕事を失った患者、一人では生活しづらい患者が入所する場である。

症状がまだ出ていない感染者や症状が軽い患者には、自宅で改善できるよ う助言を行い、末期の患者をできるだけ多く受け入れられるようにしてい る。

寺院という宗教、スピリチュアルな分野に深く結びついた場ではあるが、

ここで行われている医療行為は抗ウイルス薬の服薬管理や消毒ジェルを用 いた清拭など、科学的根拠に基づいた行為のみであり、その効果が確かで はないクロレラやハーブの服用などは患者の自由意思による。

また、問い合わせをしてきたが受け入れられない患者や自宅に帰ることに なった患者へは症状の現状維持や改善をするための知識を与える健康教育 も行っており、保健所的な役割も果たしているが、自宅に赴いてまで様子 を探ることはないようで、患者の意思にかかっている。

この寺院に入所することの利点として、まず生活に困らないという点が考

えられる。生活の場が提供され、食事にも困らない。HIV/AIDSに感染・罹

患して仕事を失い、もしくは差別される立場となってしまい一人で生活し

ていくことが身体的のみならず、社会的にも困難になってしまった患者に

に向けて行動することができるという利点は大きいと考えられる。

またこの寺院の大きな特徴の一つに「遺体展示」という部分がある。現在 は展示されている患者の氏名や職業、死亡原因などは伏せられているが、

以前はこのいれらの情報も公開されており、見ている者の恐怖心をあおり、

HIVに感染しないよう気をつけさせる、といった意味合いをもっていたよう であるが、現在は社会的反対も受け、そのような側面はない。

左・上;遺体展示

このようにこういった寺院がAIDS患者を受け入れる、運営費用は寄付によ り賄われている、ということは、タイに暮らす人々の仏教の信仰心に支え られている部分が多いように感じられる。タイでは実に国民の9割以上が 仏教徒である。我が国のように、国民の大半が熱心に一つの宗教を信仰し、

僧侶や神父、牧師といった聖職者の教えを絶対的に聞き入れる、という習

わしがあまりない国でも同様に寺院で患者を受け入れる、ということが機

能するとは考えにくいと言えるのではないだろうか。

写真;敷地内の様子、仏教と深く結

びついた施設である

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