• 検索結果がありません。

第 5 章 p - ドリフト層を有する SiCGT のオン電圧劣化特性

6.3 ショックレー型積層欠陥を有する n 型ドリフト層を持つ 4H-SiC pin ダイ

6.3.1 順方向の電流-電圧特性

図6. 2に、ショックレー型積層欠陥を有するn型のドリフト層を持つ4H-SiC pinダイオ

ードの順方向電流密度100A/cm2における順方向電圧の温度依存性に対するシミュレーショ ン結果を示す。ショックレー型積層欠陥を含まない(L/W=0%)4H-SiC pinダイオードの場合、

drift layer (DL)

contact layer (CL)

substrate (SUB)

carrier injection layer (CIL)

buffer layer (BL) stacking fault

L

W

Po si ti o n [ m m] 0

n-type PND

p-type PND

Contact Layer(CL) 0.5 1×1019 p+ n+

Carrier Injection Layer (CIL) 2 1×1018 p+ n+

Drift Layer (DL) 120 2×1014 n- p

-Buffer Layer (BL) 5 5×1018 n+ p+

Substrate (SUB) 5 5×1018 n+ p+

Thickness Type [mm]

Doping Density [cm-3]

93

200℃までは順方向電圧が減少し、200℃を超えると、順方向電圧は増加する。4H-SiC pinダ

イオードの順方向電圧は、ビルトイン電圧とドリフト層の抵抗によって決まる5。さらに、

4H-SiC pinダイオードのドリフト層の抵抗は、キャリア寿命とキャリア移動度によって決ま

6。キャリア寿命が増加すると、拡散長が長くなるため、ドリフト層中に注入されたキャ リアの量が増加し、抵抗が下がる。また、キャリア移動度が大きくなると、ドリフト層中 のキャリアの速度が速くなり、抵抗が下がる。温度が上昇すると、トラップからの熱放出 が進み、キャリア寿命は長くなる7。一方、キャリア移動度は、格子散乱の増加により、低 下する8。このように、キャリア寿命とキャリア移動度は、温度に対して、定性的に逆の依 存性を示す。また、4H-SiC pinダイオードのビルトイン電圧は、温度が上昇すると、4H-SiC のバンドギャップが狭くなる9ことから、減少する傾向がある。以上のことより、200℃まで の領域では、バンドギャップが狭くなること、および、キャリア寿命が長くなることが支 配的となり、順方向電圧は減少する。一方、200℃を超えると、キャリア移動度の低下によ る効果が支配的となり、順方向電圧は増加したと考えられる。

図6. 2 シミュレーションにより得られたショックレー型積層欠陥を有するn型のドリフト

層を持つ4H-SiC pinダイオードの順方向電流密度100A/cm2における順方向電圧の温度依存

性(L:ショックレー型積層欠陥の長さ、W:4H-SiC pinダイオードの幅)

次に、図 6. 2 における順方向電圧の温度依存性について述べる。室温近傍では、ショッ

クレー型積層欠陥が長くなる(L/Wが大きくなる)につれて順方向電圧も大きくなる。同じ温 度で比較した順方向電圧のL/W依存性は、150℃までは大きく変わらないが、150℃~250℃

において急激に減少し、250℃以上ではかなり小さくなり、400℃以上でほとんど等しくな った。

0 200 400 600

4 5 6 7 8 9

Temperature [oC]

VF [V]

L/W = 0 % L/W = 50 %

L/W = 90 %

94 (a)

(b)

図 6. 3 シミュレーションにより得られた(a)室温および(b)400℃でのショックレー型積層欠

陥(L/W =50%)を有する n 型のドリフト層を持つ 4H-SiC pin ダイオードの順方向電流密度

100A/cm2における通電状態の電流密度分布

200 A/cm2 100 A/cm2 0 A/cm2

200 A/cm2 100 A/cm2 0 A/cm2

95

図 6. 3 に(a)室温および(b)400℃において、4H-SiC pin ダイオードに順方向電流密度

100A/cm2 の電流を通電した時に得られた電流密度分布を示す。室温では、ショックレー型

積層欠陥を避けるように流れている電流が、400℃ではショックレー型積層欠陥の領域も含 めたデバイス全面でほぼ均一に電流が流れている。このように、デバイスの動作温度を上 げることにより、L/W 依存性が小さくなり、デバイスシミュレーションにおいて TEDREC 現象を再現できた。