第 4 章 4H-SiC pin ダイオードの順方向電圧劣化特性
4.3 順方向電圧劣化の各種依存性
4.3.3 順方向電圧劣化に対する面方位依存性
次にVFの基板の結晶面方位依存性を調べるために、(0001)Si面8゚オフ基板と(112-0)面基 板上に、厚さ45m、ドナー密度3~5×1014cm-3のn-層を形成し、4H-SiC pinダイオードを作 製した。基板には、Type Aのウェハメーカーの供給する基板を用いた。4H-SiC pinダイオー ドのp型領域の直径は、2.6mmである。
それぞれの結晶面の4H-SiC pinダイオードのVFを比較した結果を図4. 8に示す。(112-0) 面のVFは、(0001)Si 面より、小さくなった。これは、ショックレー型積層欠陥が(112-0)面 内で拡がり、(112
-0)面基板を用いた4H-SiC pinダイオードの場合、電流方向に対しショック
レー型積層欠陥が平行に入り、キャリア寿命キラーとして顕著には働かないためと考えら れる。しかし、この(112-0)面基板を用いた場合、ショックレー型積層欠陥を介した大きな逆 方向漏れ電流が流れる5ため、実用化には向かない。
図4. 9 VFの面方位依存性(n:サンプル数、通電ストレス試験条件:順方向電流密度100A/cm2、
1時間): Type A(●)とType B(○)は異なるウェハメーカーから供給されたものを示す。実線お よび点線は、それぞれの条件での平均値を結んだ線である。
他の面方位についても調べるため、(0001)Si面8゚オフ基板と(0001-)C面8゚オフ基板のオ フ方向がそれぞれ<112-0>と<11-00>の合計 4 種類の基板を用いた。それぞれの基板上に、厚 さ45m、ドナー密度3~5×1014cm-3のn-層を形成し、4H-SiC pinダイオードを作製した。
4H-SiC pinダイオードのp型領域の直径は、2.6mmである。本研究では、Type AとType B
の異なるウェハメーカーの供給する基板を用いた。4H-SiC pinダイオードのp型領域の直径 0.01
0.1 1 10 100
Type B Type A
VF [V]
(0001) Si-face
(0001) Si-face (0001)
C-face
(0001) C-face n=81
_
_ _
_
_ _
<1120>
off
<1100>
off
<1120>
off
<1100>
off
55
は、2.6mmである。図4. 9にVFの面方位依存性を示す。VF の平均値は、(0001-)C面の方 が(0001)Si面よりも小さく、約1/2になった。この傾向は、オフ方向に関係なく、また、基 板メーカーを変えても同じ結果になった。これは、(0001-)C面オフ基板上に形成したドリフ ト層中の基底面転位やショックレー型積層欠陥が少ないことを示している。X線トポグラフ ィを用いて基底面転位密度を測定すると、(0001
-
)C面の方(約20個/cm2)が、(0001)Si面(約200 個/cm2)より約1/10 と少なくなっており6、この結果と一致する。また、オフ方向に関して、
<112
-0>オフ方向の基板を用いた方が<11-00>方向の基板を用いた時より、VFの平均値が小さ くなった。以上の結果より、<112-0>方向に8゚オフした(0001-)C面基板上に作製した4H-SiC pinダイオードで、VFの平均値が最も小さくなった。Type Aの基板を用いた方が、Type B の基板を用いた時より、VFが小さくなっているが、これは、基板中の基底面転位の数が
Type Aの方が少なくなっているためと考えられる。
4.4 {0001}4H-SiC pin ダイオードの順方向の電流 - 電圧特性と逆回復特性の劣化
現象
4.4.1 {0001}4H-SiC pinダイオードの順方向電圧劣化
パワーエレクトロニクス機器の効率を見積もるには、デバイスの定常損失を示す静特性 とスイッチング損失を示す動特性を評価しなければならない。まず、作製した 4H-SiC pin ダイオードの静特性を示す順方向の電流-電圧特性を評価した。図4. 10に典型的な通電スト レス試験前後における(0001-)C面4H-SiC pinダイオードと(0001)Si面4H-SiC pinダイオード の順方向の電流密度-電圧特性を示す。(0001
-
)C面4H-SiC pinダイオードも(0001)Si面4H-SiC pin ダイオードも通電ストレス試験前の順方向電流密度 100A/cm2での順方向電圧は、5.5V 程度となった。次に通電ストレス試験を実施し、順方向電圧劣化現象を評価した。 (0001
-
)C 面4H-SiC pinダイオードの順方向電流密度100A/cm2でのVFは0.35Vとなったが、(0001)Si 面4H-SiC pinダイオードの値(2.72V)に比べると約1/8である。
4.4.2 {0001}4H-SiC pinダイオードの逆回復特性劣化
次に、4H-SiC pinダイオードの重要な動特性である逆回復特性を測定した。図4. 11と表
4. 1に典型的な通電ストレス試験前後における(0001-)C面4H-SiC pinダイオードと(0001)Si
面4H-SiC pinダイオードの逆回復特性示す。逆回復特性は、4H-SiC pinダイオードの順方向
に5.18Aの電流を通電したのち、150A/sで電流を減少させ、逆方向電圧200Vを印加して、
測定した。(0001-)C面4H-SiC pinダイオードの逆回復時間(trr)、および、逆回復電流ピーク 値(IRP)は、それぞれ、46.2ns、2.52Aとなり、(0001)Si面4H-SiC pinダイオード(trr=51.7ns、
IRP=3.55A)と比べて小さくなった。メサ型 4H-SiC pin ダイオードの少数キャリア寿命p と
4H-SiC pinダイオードの逆回復時間trrには、
56 (a)
(b) 図4. 10 (a) (0001
-
)C面4H-SiC pinダイオードと(b) (0001)Si面4H-SiC pinダイオードにおける 通電ストレス試験前後の典型的な順方向の電流密度-電圧特性(通電ストレス試験条件:順方 向電流密度100A/cm2、1時間、青実線:通電ストレス試験前、赤点線:通電ストレス試験後)
0 5
2 4
Forward Voltage [V]
Fo rwa rd Cu rr e n t [A]
before stress test after stress test
0 5
2 4
Forward Voltage [V]
For w a rd C u rr e n t [A]
before stress test
after stress test
57 (a)
(b) 図4. 11 (a) (0001
-
)C面4H-SiC pinダイオードと(b) (0001)Si面4H-SiC pinダイオードにおける 通電ストレス試験前後の典型的な逆回復特性(IF=5.18A、di/dt=150A/s、VR=200V、通電スト レス試験条件:順方向電流密度100A/cm2、1時間、青実線:通電ストレス試験前、赤点線:通電 ストレス試験後)
-50 0 50 100
0 5
Time [ns]
C u rr e n t [A ]
before stress test after stress test
-50 0 50 100
0 5
Time [ns]
C u rr e n t [A ]
before stress test
after stress test
58
表4. 1 作製した4H-SiC pinダイオードの典型的な逆回復特性の相違(通電ストレス試験条
件:順方向電流密度100A/cm2、1時間)
また、図4. 11に示すように、通電ストレス試験前後において、(0001-)C面4H-SiC pinダ
イオードの逆回復特性はほとんど変化しなかったのに対して、(0001)Si面4H-SiC pinダイオ ードは大きく変化した。
、 (4. 14)
という関係7がある。ここで、IFは順方向電流、IRPは逆回復電流ピーク値である。これよ り求めた(0001-)C面4H-SiC pinダイオードの逆回復電荷(QRR)、少数キャリア寿命(p)は43.6ns であり、(0001)Si面4H-SiC pinダイオードのp(50.1ns)と比較して、36%低減できた。このよ うに(0001-)C面4H-SiC pinダイオードは優れた逆回復特性を示す。
図4. 12 pとVFの関係(通電ストレス試験条件:順方向電流密度100A/cm2、1時間): 実線は、
4.5.2 節以降で述べる方法で求めた計算結果である。具体的には次のとおりである。まず、
(4. 20)式の第二式からを求める。次に、(4. 21)式から、と4.5.5節で求めたsSFとbulkを用 いてを求める。そして、(4. 20)式の第一式より、1を求め、pを求めた。
trr IRP Qrr p trr IRP Qrr p (000-1) C-face 0.35 V 46.2 ns 2.52 A 58.3 nC 45.0 ns 46.5 ns 2.43 A 56.5 nC 43.6 ns (0001) Si-face 2.72 V 51.7 ns 3.55 A 91.7 nC 70.8 ns 47.5 ns 2.74 A 64.9 nC 50.1 ns
ストレス試験前 ストレス試験後
Vf
0 2 4 6 8 10 12
10 20 30 40
V
F[V]
p[ n s ]
Experiment
Calculation
59