第 4 章 4H-SiC pin ダイオードの順方向電圧劣化特性
4.5 順方向の電流 - 電圧特性と逆回復特性における劣化現象の相関関係の考
4.5.4 モンテカルロ手法を用いたショックレー型積層欠陥の振る舞いの考察
rとg、および、rとP’/Pの関係を求める。ショックレー型積層欠陥同士の重なりを無視
すると、gは、
(4. 23)
の関係が成り立つ。ここで、lSFおよびaSFは、それぞれ、ショックレー型積層欠陥1個あた りの周囲長および面積である。8 度オフ基板上に 60m のドリフト層を形成した場合、
g=127.6cm-1となる。しかし、実際のデバイスでは、ショックレー型積層欠陥の重なりを無
視することはできない。このことは、P’/P を求めることも難しくしている。そこで、モン テカルロ手法を用いて、rに対するgおよびP’/Pの関係を求める。まず、ショックレー型積 層欠陥は、ドリフト層中に存在する基底面転位を起点して発生し、その形状は直角三角形 の形状をしていると仮定する11。ドリフト層中に乱数により、基底面転位を発生させ、その 後、基底面転位をショックレー型積層欠陥に拡張させる。乱数の発生には、Mersenne Twister 法12を用いた。図4. 15にドリフト層厚み60m、基底面転位密度200cm-2、デバイスサイズ
2.3mm×2.3mmとした時の典型的な結果を示す。
rより、gを求める。[図4.16]
rより、P’/Pを求める。[図4.17]
逆回復特性から、0と1を求める。
順方向特性の劣化現象(VF)を測定する。
とをグラフにプロットする。[(4.20)式]
1/bulkとsSFを求める。[(4.21)式]
VFからrを求める。[(4.22)式]
63 (a)
(b)
図4. 15 モンテカルロ手法を用いて求めた典型的なドリフト層中の(a) 基底面転位分布と(b)
ショックレー型積層欠陥分布: 次に手順を示す。①デバイス領域にメッシュを割り当てる。
②各メッシュ領域を基板-エピタキシャル層界面とし、基底面転位密度に基づき、界面にお ける基底面転位(点)の有無を計算する。③界面における基底面転位(点)が存在するメッシュ から、ドリフト層厚みとオフ角、オフ方向に基づき、(a)のように、ドリフト層中の基底面 転位(線:赤の実線で示す)を計算する。④ドリフト層中の基底面転位(線)から、(b)のように、
ショックレー型積層欠陥(緑の三角形示す)を計算する。
0 1 2
1 2
[mm]
[mm]
0 1 2
1 2
[mm]
[mm]
64
図4. 16 モンテカルロ手法により求めたr=ASF/Aとg =LSF/ASFの相関(ASF:デバイス中のショ ックレー型積層欠陥が占める面積、A:デバイスの有効面積、LSF:ショックレー型積層欠陥周 囲長の合計): 赤線は、データから求めたスプライン曲線である。
図4. 17 モンテカルロ手法により求めたr=ASF/AとP’/Pの相関(ASF:デバイス中のショックレ ー型積層欠陥が占める面積、A:デバイスの有効面積、P’:ショックレー型積層欠陥が存在す るメサ部の長さを除いたメサ周辺部での再結合が発生している実効的なメサ周囲長、P:メサ 周辺長): 赤線は、データから求めたスプライン曲線である。
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
50 100 150
r g [cm-1 ]
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
0.2 0.4 0.6 0.8 1
r
P'/P
65
この時のドリフト層中に伝搬した基底面転位は11個で、r、g、P’/Pは、それぞれ、0.239、
108、0.941 である。基底面転位は、ドリフト層中にエピタキシャル層と基板の界面から表
面に向かって入り、ここでは、左から右方向に入るとした。そして、この基底面転位がシ ョックレー型積層欠陥として、上方向、もしくは、下方向に拡張するとした。
図4. 16にモンテカルロ手法を用いて求めたrとgの相関を示す。条件は、基板のオフ角
を8度、ドリフト層厚み60m、デバイスサイズ2.3mm×2.3mmとした。r → 0では、g = LSF/ASF = lSF/aSF = 127.6となり、rの増大と共に、gは減少する。rが増大することは、ショ ックレー型積層欠陥が増えることを示し、この時通電エリアが縮小し、通電領域の周辺長 でもあるLSFが減少し、gも減少する。r が1に近づき、ショックレー型積層欠陥がデバイ ス中のほとんどの領域を占有すると、LSFは0に近づき、gは0になる。
図4. 17に同様にモンテカルロ手法を用いて求めたrとP’/Pの関係を示す。rの増大に伴
い、P’/P は減少する。これは、ショックレー型積層欠陥が増えると、メサ周辺部にショッ クレー型積層欠陥が存在しやすくなり、実効的なメサ周囲長であるP’/Pが減少するためで ある。
図4. 18 との関係: とは(4. 20)式より求めた値である。