第 9 章 非上場株式評価方式の課題
第 1 節 非上場株式評価の分類
評価通達では、上場株式および気配相場等のある株式(登録銘柄および店頭管理銘柄、
公開途上にある株式ならびに国税局長の指定する株式)を厳格に定義し、これら以外の株 式をすべて「取引相場のない株式」と定義付けている(評基通168)。
時価の定義によれば、財産の取得者によって時価が異なるということはあり得ない。し かし、実際には、評価通達自体が、財産の取得者によって時価が異なる場合を認めている。
たとえば、非上場株式については、評価会社を大会社、中会社および小会社に区分し1)(評 基通178)、それぞれの評価会社に応じて、当該株式の時価を類似業種比準方式もしくは純 資産価額方式またはそれらの方式の折衷方式によって評価することとしている(評基通 179)。
非上場株式は、上場株式等のように取引価格(市場価格)が明らかになっていないので、
仮に取引事例がみられる場合でも、その取引価格を客観的交換価値すなわち相続税評価額 として株式の評価に採用することには問題がある。よって、非上場株式を会社の規模等に
1) 大会社とは、従業員数が100人以上の会社、または、総資産価額が一定額以上で従業員数が一定数 以下でない会社、または年間取引金額が一定額以上の会社(評基通178)、中会社とは、従業員数が 100人未満の会社で、純資産価額が一定額以上であるか、または年間取引金額が一定の範囲に達して いる会社(同178)、小会社とは、従業員数が100人未満の会社で、総資産価額が一定額未満である か、または従業員数が一定数以下であり、かつ年間取引金額が一定金額未満の会社(同178)をいう。
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関係なく同一の方法によって評価することは適当でないので、それぞれの会社の規模等の 実態に即した評価を行うこととしている2)。
具体的に、非上場株式の評価体系の概要を示すと、【図表9−1】のとおりである。
純資産価額方式(類似業種比準方式と 純資産価額方式との併用方式の選択ができる 純資産価額方式(「S1+S2」方式の選択が できる)
評 価 方 式 一
般 の 評 価 会 社 の 株 式
類似業種比準方式と純資産価額方式との 中会社 併用方式
純資産価額方式(類似業種比準方式と純資産 価額方式との併用方式の選択ができる)
小会社
大会社 類似業種比準方式(類似業種比準方式と 純資産価額方式の選択ができる)
清算分配見込額の複利原価による評価方式 純資産価額方式
特 例 的 評 価 方 式
配当還元方式 特
定 の 評 価 会 社 の 株 式
会社の規模区分 評 価 方 式
原 則 的 評 価 方 式
清算中の会社
特定の評価会社の区分 取
引 相 場 の な い 株 式
(出所)谷口裕之〔編著〕〔2013〕『財産評価基本通達逐条解説』556頁参照、筆者加工。
【 図 表 9 − 1 】 取 引 相 場 の な い 株 式 の 評 価 体 系 図 ( 概 要 )
特 例 的 評 価 方 式
配当還元方式
株式保有特定会社 比準要素数1の会社
土地保有特定会社 開業後3年未満の会社等 開業前又は休業中の会社
評価通達では、発行会社の規模に応じて、それに相応する評価方式を採用している。す なわち、①上場会社に匹敵するような大会社の株式は、上場会社の株式評価との均衡を図 ることが合理的であるので、原則として、類似業種比準方式により評価する。ただし、納 税義務者の選択により、1 株当たりの純資産価額によって評価することができる(評基通 179(1))②個人企業とそれほど変わるところがない小会社の株式は、個人企業者の財産評 価との均衡を図ることが合理的であるので、原則として、純資産価額方式により評価する。
ただし、納税義務者の選択により、類似業種比準方式と純資産価額方式とを併用する方式 によることもできるとしている(評基通 179(3))。③大会社と小会社との中間にある中会
2) 谷口裕之〔2013〕553−554頁。
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社の株式については、大会社と小会社の評価方式の併用方式によって評価する。ただし、
納税義務者の選択により、類似業種比準価額を純資産価額方式によって計算することがで きる(評基通179(2))。
株主の中には、事業経営への影響度の少ない同族株主の一部および従業員株主(以下「同 族株主以外の株主等」という)が存在している。これら同族株主以外の株主等が取得した 株式(いわゆる少数株主の株式)については、実質的には、単に配当を期待するだけであ り、評価手続きの簡便性を考慮して、特例的評価方式である配当還元方式により評価する こととしている(評基通188−2)。
既述したように、平成2年の改正により、株式保有特定会社および土地保有特定会社に ついて、特別の評価方法が定められ(評基通189、189−2、189−3)、さらに、開業前ま たは休業中の会社については純資産価額方式のみによる評価を行うこと(評基通189−4)、 清算中の会社については分配見込額の複利現価の額による評価を行うことが定められた
(同189−5)。
また、株主の態様に応じた株式の評価方式の区分は、【図表9−2】のとおりである。
【図表9−2】株主の態様による区分 株主の態様による区分
評価方式 会社区分 株 主 区 分
同族株主のいる会社
同族株主
中心的な同族株主がいない場合
原則的評価方式 中心的な同
族株主がい る場合
中心的な同族株主 取得者持株5%以上
取得後持株5%未満(役員を除く)
配当還元方式 同族株主以外の株主
会社の場合
同族株主のいない
持株割合の合計が15%未満のグループに属する株主 持株割合の合
計が15%以上 のグループに 属する株主
中心的な 株主がい る場合
取得後持株5%未満(役員を除く)
取得後持株5%以上
原則的評価方式 中心的な株主がいない場合
株主の態様に応じた株式の評価方式は、同族株主のいる会社の場合は、同族株主が取得
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した株式については、一般的に原則的評価方式を適用し、同族株主以外の株主が取得した 株式および同族株主であっても中心的同族株主がいる場合に、中心的な同族株主・役員以 外で株式取得後 5%未満である者が取得した株式については、特例的評価方式である配当 還元方式が適用されている(評基通188、188−2)。さらに、評価通達においては、【図表
9−2】のとおり複雑な評価方式が規定されている3)。
このように、評価通達では、本来、評価基準となる取引価額が存在しない「非上場株式」
の時価について、所定の評価方式によって評価し得ることとしている。よって、実務上は、
評価通達によらないことが相当と認められるような特別の事情がある場合を除き4)、評価 通達による評価が原則とされている。