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電子銃輝度評価への適用と結果

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 115-119)

第Ⅴ章 円形孔を用いた電子ビームの干渉性評価手法の開発

4. 電子銃輝度評価への適用と結果

電子銃の重要な性能指標のひとつである輝度は、単位面積当たり単位立体角当 たりの電流密度の極限である軸上輝度で定義されている。TEM においては、一般的 に、光軸に沿った有限な面積𝛥𝑆、立体角𝛥𝛺および電流量𝛥𝐼によって定義される平均輝 度が用いられている[20]。平均輝度𝐵̅̅̅0は、

𝐵0

̅̅̅ = 𝛥𝐼

𝛥𝑆𝛥𝛺 (5.10)

によって示されており、単位は、A/m2∙ srが良く用いられている。以後、断らない限 り平均輝度𝐵̅̅̅0を単に輝度と言うことにする。輝度は、光源の見込み角(電子ビームの 開き角)2𝛽、試料面上の電流密度を𝑖とすると、

𝐵0

̅̅̅ = 𝑖

𝜋𝛽2 (5.11)

と書き換えられる[20]。よって、開き角と試料面上の電流密度を計測することができ れば、輝度を算出することができる。そこで、円形孔を用いて計測した開き角を用い て、輝度評価に適用した。

実験は下記の手順で行った。最初に、1/2000 mmグレーティングレプリカを用 いて LRZ 試料位置における倍率を評価する。次に、円形孔を用いた開き角評価を行 い、開き角とコンデンサレンズの電流を決定する。Cond.1 レンズ電流を固定したま ま、先の倍率を確認したレンズ条件(LRZレンズ電流および結像レンズ電流)を設定

し、その状態のままでファラデーカップを用いて電子ビームの電流密度を測定した。

得られた電流密度とファラデーカップ面上の倍率を用いて、試料面上電流密度に換算 した。円形孔はローレンツ試料位置に配置し、LRZレンズでアンダーフォーカスに調 整した。輝度計測に使用した円形孔は実測直径20.9 μm、32.9 μm、62.9 μmとした。

原理的には更に大きな円形孔を用いることも可能であるが、開き角が小さくなるに従 いファラデーカップで検出するビーム電流が減少する。そのため、微小電流の検出や 低倍率光学系の構築などを検討する必要があり、測定が難しくなるため注意を要する。

図5-13に、Cond. 1レンズ電流と輝度を示す。横軸はCond. 1レンズ電流であ り、縦軸が算出された輝度である。グラフ中のプロットには、円形孔直径から求めた 開き角と試料面上に換算した電子ビームの電流密度を示している。トータルエミッシ ョンは、13~15 μAであり、ほぼ一定であることから、トータルエミッションの増減 による補正は行っていない。これらから算出された輝度は、3.0~3.6×1014 A/m2・srで あった。電流密度を測定するファラデーカップの直径は、電子ビームの照射領域直径

の 1/100~1/200 となるため、本実験では中心部分の僅かな領域から得られた電流密

度を用いて輝度を算出している。従って、得られた輝度計測の結果は、軸上輝度に近 い値であると考えている。

加速電圧が1.2 MVの超高圧電子顕微鏡に対して輝度を実測したのは本研究が 初めてである。一方、類似の輝度計測結果としては、1 MV ホログラフィー電子顕微 鏡において、1.8×1014 A/m2・sr の値が報告されている[21]。本研究で得られた輝度の

値はその1.7~2倍程度であるから、1.2 MVホログラフィー電子顕微鏡は高い輝度を

有していると考えられる。この結果は、1.2 MV ホログラフィー電子顕微鏡が、高輝 度・高干渉性を必要とする電子線ホログラフィーの実験に対して極めて有効であるこ とを示している。

図5-13 Cond. 1レンズ電流と輝度

5. まとめ

電子線ホログラフィーを用いた精緻な電磁場観察を実施するためには、電磁場 計測の感度等に関係してくる電子ビームの干渉性や輝度を十分に掌握しておくことが 重要である。このような装置性能の評価なくして、物質材料の微弱な電磁場を解析す ることはできない。本研究では、1.2 MV ホログラフィー電子顕微鏡の電子ビームの 進行方向にばらつきを生じさせる偏向ノイズの評価と最小化を図ると共に、円形孔か ら発生するフレネル縞観察による開き角評価手法を開発した。

電子ビームを用いて形成した Lissajous図形を解析することで、電子ビームに 含まれる偏向ノイズの周波数と方向および振幅を把握した。実験室内の蛍光灯から発 生する浮遊電場が偏向ノイズの原因のひとつであったことから、コンデンサの並列接 続と浮遊電場シールドを設置した。また、イオンポンプなどの真空機器から生じた偏 向ノイズも確認されたが、同様に調査・対策を施した。その結果、偏向ノイズの影響 を対策前の状態と比較し、30%程度に低減できた。

た開き角評価手法を開発し、1.2 MV ホログラフィー電子顕微鏡に適用した結果、開

き角が8.0×10-9 radに達していることを確認し、磁性材料を原子レベルの分解能で観

察した際の偏向角を想定して設定した10-8 radオーダーを達成することができた。

更に、円形孔を用いた開き角評価手法を電子銃輝度の評価に応用した結果、電 子銃輝度は3.0~3.6×1014 A/m2・sr であることを確認した。過去に行われた類似の輝 度計測結果と比較すると、本研究で得られた輝度の値はその1.7~2倍程度である。従 って、1.2 MV ホログラフィー電子顕微鏡が、電子線ホログラフィーにおいて大きな アドバンテージである高い輝度を有していることを示すことができた。

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