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円形孔から発生するフレネル縞を用いた開き角評価手法

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 104-109)

第Ⅴ章 円形孔を用いた電子ビームの干渉性評価手法の開発

3. 円形孔を用いた開き角評価手法の開発

3.2 円形孔から発生するフレネル縞を用いた開き角評価手法

ここで、試料から最も遠くに観察されるフレネル縞までの距離、すなわち可干 渉距離𝐿を式(5.2)と式(5.5)を用いて表すと、

𝐿 = √ 𝜆2

4𝑚𝛽2(𝑚 −5 8) = 𝜆

2𝛽√1 − 5

8𝑚 (5.6)

となる。このとき、𝑚が十分に多ければ、平方根の内部は~1と考えられるので(𝑚 = 20のとき、0.98)、

𝐿 ≈ 𝜆

2𝛽 (5.7) と近似することができる。よって、

𝛽 = 𝜆

2𝐿 (5.8)

という関係が得られる。従って、フレネル縞が 20 本以上観察できるような観察条件

(𝑚 ≥ 20本)において、𝐿を高精度に求めることができれば、式(5.8)を用いて、電子 ビームの開き角を評価することが可能である。

広範囲にわたってフレネル縞を観察するためには、低倍率観察光学系を構築す

る必要がある。しかしながら、このような観察条件では大きな歪像収差が重畳する。

更に、試料がない空間を観察することになることから、倍率を校正することが困難と なる。そこで本研究では、歪像収差が重畳した電子顕微鏡像においても𝐿を高精度に求 めるため、円形孔から発生するフレネル縞を用いた評価手法を開発した。手法の詳細 は次節に記す。

ョンや、そのコントラストを相対的に比較することによる干渉性評価などが報告され ている[17]。本研究では、歪像収差が含まれる電子顕微鏡像においても可干渉距離 L を精度良く計測するため、直径が既知である円形孔を用いた計測手法の開発を試みた。

図5-7 に円形孔から発生するフレネル縞の模式図を示す。図5-5(a)と同様に、開き角 2𝛽で円形孔に電子ビームを照射すると、円形孔のエッジから散乱波が発生する。事前 に計測した直径2𝑟𝑐の円形孔の孔中心に至るまでフレネル縞を観察することができれ ば、可干渉距離𝐿は、円形孔の半径𝑟𝑐と同等以上であると考えることができる。この場 合、記録媒体の解像限界よりも広い間隔のフレネル縞が 20 本以上得られるようにデ フォーカス量を設定できれば式(5.8)が成り立つので、円形孔の半径と電子ビームの波 長から開き角を求めることができる。もし、フレネル縞が孔中心では観察できずに途 中で消失していた場合には、歪像収差が含まれている可能性があることから、フレネ ル縞観察領域距離を測定することは困難である。そのため、円形孔を用いたフレネル 縞観察では、孔中心までフレネル縞が観察できるか否かを判断することによって開き 角を求めることになる。

図5-7 円形孔から発生するフレネル縞の模式図

開発した円形孔から発生するフレネル縞を用いた開き角評価手法の有効性を確 認するため、開き角を小さくするための照射光学系を探索すると共に、1.2 MV ホロ グラフィー電子顕微鏡を用いて開き角を実測・評価した。図5-8に、円形孔を照射す る光学系を示す。コンデンサレンズ直上に形成された光源の像の直径を2𝑟𝑣、コンデン サレンズまでの距離を𝑎とする。コンデンサレンズから試料面までの距離を𝐷、コンデ ンサレンズからビームスポットまでの距離を𝑏、スポットから試料面までの距離を𝑑、

コンデンサレンズで形成されるスポット径を2𝑟𝑠とする。開き角は 2𝛽 = 2 𝑟𝑠⁄𝑑であり、

また𝑟𝑣= (𝑏 𝑎⁄ )𝑟𝑠であるから、以下の関係を得る。

𝛽 =𝑟𝑣 𝑎(𝐷

𝑑− 1) (5.9)

ただし、開き角は収束角を越えることはないため、𝛽 ≤ (𝑎 𝐷⁄ )𝛼𝑣 (𝛼𝑣は、光源の像の 収束角)が最大値となる[18]。開き角に対する照射光学系の収差や偏向ノイズの寄与 は小さいので無視している。式(5.9)より、開き角を小さくする条件は、① 𝑎を大きく する、② 𝑑を大きくするためコンデンサレンズ電流を増やす、③ 𝑏 ≪ 𝑑 ≈ 𝐷とするた め試料位置から遠いレンズを使用する、ということであると考えられる。

図5-8 円形孔を照射する光学系

そこで、開き角の調整に、Cond.1レンズ、またはCond. 2 レンズを単体で使

用した。図5-9にコンデンサレンズの機械的配置を示す。円形孔を配置したLRZ試料 位置から各レンズまでの距離は、Cond.1レンズ;416 mm、Cond. 2レンズ;206 mm である。Cond. 2 レンズは、Cond. 1 レンズよりも光源の像から遠くに配置されてい

るため、Cond. 2レンズを使用することで、式(5.9)の𝑎を大きくすることができる。一

が、𝐷を大きくすることができるため、試料面から遠くの位置にビームスポットを配 置することができる。従って、Cond. 2 レンズ使用時よりも小さな開き角が得られる と考えられる。よって、Cond.1レンズと Cond. 2レンズを使用した時の開き角をそ れぞれ計測することで、比較評価を行った。

図5-9 コンデンサレンズの配置図

フレネル縞観察の実験条件を以下に示す。加速電圧は1,200 kV、トータルエミ ッションは約15 μAとした。デフォーカス量の調整にはLRZ レンズを使用し、十分 なデフォーカス量を確保するためアンダーフォーカスで調整している。記録媒体は

Gatan社製K2カメラであり、そのPixelサイズは5 μm×5 μmである。記録時間は1

秒~10秒とした。円形孔の中心部およびフレネル縞本数を確認するため、円形孔全体 が確認できるような観察倍率(100倍~1000倍)に調整した。

実験で使用した円形孔は、銅薄膜(厚さ30 μm)に集束イオンビーム加工装置

(Focused ion beam system: FIB)を用いて製作した。コンデンサレンズ電流と開き 角の関係を得るため、複数の円形孔を用いており、それらの直径は、20.9、32.9、62.9、

83.8、104.0、124.5、および154.5 μmであった。円形孔の直径が大きくなるに従い、

大きなデフィーカス量を与えて観察するため、円形孔のエッジ形状が影響して、得ら れる観察像に歪みが生じる。そこで、最も大きな円形孔については、モリブデン薄膜 に作製した直径191.0 μmの孔にオスミウムコートを施した。オスミウムコートは、

プラズマ CVD 法を用いて成膜されている。プラズマ CVD 法はスパッタリングより も小さな粒子が得られることから、近年ではチャージアップ防止のため、対物絞りな どにも施されている[19]。図5-10に直径191.0 μmのモリブデン製円形孔の走査電子 顕微鏡像を示す。

図5-10 直径191.0 μmのモリブデン製円形孔の走査電子顕微鏡像

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