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商用周波数および kHz オーダーリップルの低減

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 52-56)

第Ⅲ章 超高圧電子顕微鏡の加速電圧安定性向上に関する技術開発

2. 加速電圧の安定化

2.3 商用周波数および kHz オーダーリップルの低減

2.3.1 商用周波数のリップル

一般的な定電圧電源は、商用周波数の交流電圧を整流することで定電圧(直流

電圧)を得ている。一般的にはフィルター回路などにより電圧変動(リップル)の低減 を図っているが、高安定度が求められる基準電源などでは商用周波数の影響を除くた め二次電池を用いた定電圧電源などを用いることも多い。電子顕微鏡の加速電圧にお いても商用周波数変動の影響を確認することが多々あるが、加速電圧発生電源を二次 電池で稼働させることは困難であることから、その影響を完全に除去することは難し い。そこで、逆位相電圧を導入することによって、商用周波数成分のリップル補正を 試みた。

図3-3に、商用周波数リップルを補正するための逆位相電源を導入したフィー

ドバック制御回路のブロック図を示す。加速電圧発生タンク内の C-W 回路のセンタ ーに商用周波数とは逆位相の電源を接続することで、加速電圧発生回路は逆位相電源 を介して接地する。この構成のもとで、商用周波数の波形を基にした逆位相電源出力 の位相と波高値を調整することで、加速電圧に重畳している商用周波数リップルの補 正を行った。

2.3.2 kHzオーダーのリップル

加速電圧発生回路である加速電圧発生タンク内の C-W 回路は、その両端に数 kHz(駆動周波数と呼ばれている)の交流電圧を導入することによって、直流電圧を 得る。そのため、加速電圧に駆動周波数の交流電圧が残存することが多々ある。1 MV ホログラフィー電子顕微鏡においては、電子銃制御タンク内に設置されているフィル ター回路(フィルター抵抗器およびフィルターコンデンサ)が設置されており、高周 波数成分のリップルを除去している。また、フィルター回路は、その抵抗器とコンデ ンサ容量によって100 Hz程度の周波数リップルに対してもフィルター効果を発揮す る。

フィルター回路のフィルター効果は、フィルター抵抗器とフィルターコンデン サによって決定される。入力電圧Vinとフィルター回路を通過した出力電圧 Voutの関 係は、

𝑉𝑜𝑢𝑡 = ( 1

2𝜋𝑓𝐶𝑓∙ 𝑅𝑓+ 1) ∙ 𝑉𝑖𝑛 (3.1)

となる(図3-4(a))。ここで、fはリップル周波数、Cf はフィルターコンデンサの静電 容量、Rf はフィルター抵抗器の抵抗値である。式(3.1)から、リップルが高周波数にな るに従いフィルター効果が高く、また、CfRf を大きくすれば低周波数リップルに 対してもフィルター効果が期待できるようになる。

ところが、実際のフィルター回路では、その設置場所周辺の電位環境がフィル ター効果に影響を及ぼす可能性がある。とりわけ、フィルター抵抗は加速電圧電位に 囲まれるような配置になっていることから、抵抗器と加速電圧電位間の浮遊容量(Cs) を考慮する必要がある。図 3-4(b)に、浮遊容量を考慮したフィルター回路のブロック 図を示す。フィルター抵抗器の周辺が出力電圧電位に囲まれる配置のときには入力電 圧𝑉𝑖𝑛と出力電圧𝑉𝑜𝑢𝑡の間に浮遊容量𝐶𝑠が生じており、その容量は部品配置によって変

化すると考えられる。このとき、式(3.1)の𝑅𝑓は(𝑅𝑓/(2𝜋𝑓𝐶𝑠𝑅𝑓+ 1))と書き換えられる ことになり、𝐶𝑠や𝑅𝑓によってフィルター効果が変化する。そこで、比較的容易に入手・

交換が可能なフィルター抵抗器の抵抗値を変えて、リップル電圧を実測・比較し、kHz オーダーのリップル抑制に対する有効性を検証した。具体的には、8 MΩ および 16 MΩのフィルター抵抗器を実装して比較した。

図3-4(a) フィルター回路のブロック図、(b) 浮遊容量を考慮した場合

2.3.3 浮遊電場・磁場

一般的に、定電圧源は商用周波数を整流することで直流定電圧を発生させてい る。加速電圧電源においても、レファレンス電圧源や誤差増幅器などの機器用に定電 圧源を用いていることから、商用周波数の電源ラインが多数存在する。交流電圧周辺 には浮遊電場・磁場が生じていることが知られており、これらの影響がフィードバッ ク信号に重畳すると、加速電圧に商用周波数のリップルを生じさせる信号になる。そ

こで、加速電圧電源内の商用周波数電源ラインを見直すと共に、フィードバック制御 信号ラインの浮遊電場・磁場のシールドを設置した。

図3-5に、設置した浮遊電場シールドの一例として、加速電圧電源内のケーブ ルシールドを示す。既に稼働中の装置においても比較的設置が容易であるジッパータ イプのケーブルシールドを導入した。電子銃制御タンク内の基準抵抗器から加速電圧 電源内のフィードバック制御回路までのケーブルや電源に用いられる交流電圧ケーブ ルに取り付けた。また、移動できる計測機器は、加速電圧電源から離れた位置に再配 置した。

図3-5 加速電圧電源内に設置したケーブルシールド

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