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電位サイクル耐久性試験

第 7 章 再生可能エネルギーの電位変動を模擬したアノード触媒の耐久性評価

7.3 電位サイクル耐久性試験

Table 7.1に示す各電位サイクルプロトコルにおける電位サイクル耐久性試験をおこない,

試験前後のCV,およびLSV を取得し,比較した.電位サイクルプロトコル(I)~(III)にお いて得られた結果についてFig. 7.2, 7.3に示す.条件(I)において,耐久性試験前後でCV波 形が大きく変化し,初期状態では観察されなかったIr(III)/Ir(IV)に由来するレドックスピー

[2, 3]が顕著に現れた.OER活性に関しては,ほぼ失活する結果となった.条件(II)に関し

ては,若干のCV波形の変化がみられたとともに,OER活性が初期の半分程度にまで低下 した.また,条件(III)では,CV波形の変化,およびOER活性の低下は確認されなかった.

電位掃引範囲の違いによって OER 活性が低下することが明らかになったことを受け,

OER 活性低下に寄与する因子を詳細に検討するため,次に電位サイクル(II’),(III’)を用い

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た耐久性試験をおこなった.(I)~(III)の 3 つの条件のなかで,条件(I)はもっとも電位範囲 が短く,高電位領域をもっとも遅い掃引速度で走査されることから,高電位に置かれる時 間が性能劣化に寄与した可能性があることを考慮して,前述したとおり,条件(II),(III)に おいて掃引速度を条件(I)に合わせた条件が(II’),(III’)により示されている.

電位サイクル(II’),(III’)の耐久性試験前後で得られた CV,および LSVを Fig. 7.4, 7.5 に示す.条件(II’)では,CV波形の変化とOER活性の大きな低下がみられた一方で,条件(III’) では,CV波形の変化はほとんどみられず,OER活性の低下に関しても,条件(II’)より緩和 される結果が得られた.したがって,(I),(II’),(III’)の比較から,掃引速度が同等,つまり 高電位に置かれる時間が同様の場合であっても,電位サイクルの範囲の違いがOER活性低 下に影響することがわかった.つまり,単なる高電位の印加時間とOER活性低下の間には 相関性がみられないことがわかった.

ここで,水電解システムの起動停止に相当する条件(III)についてさらに検討した.今回の 電位サイクル試験では,0 VRHEでの保持を含まないため,実際のシャットダウン時を模擬 して,クロノアンペロメトリー法を用いて,0 VRHE,12 h保持における耐久性試験をおこ なった.得られた0 VRHE,12 h保持前後のCV,およびLSVの結果をFig. 7.6に示す.耐 久性試験前後でCV波形,およびOER活性に変化はみられなかった.0 VRHEでは酸化Ir がIrに変化することで,CV波形の変化やOER活性の低下が考えられたが,今回の実験か らはそのような結果は得られなかった.おそらく,全体がIrO2からなる電極触媒に対して,

表面が還元されただけでは,酸化電位に掃引された際にすぐに表面酸化され,結果として OER活性が保持できたのではないかと考えている.

さらに,OER活性低下について詳細に検討するため,最も性能が低下した条件(I)と,ほ とんど変化がみられなかった(III’)において,耐久性試験後の電極を5 min空気暴露し,そ の前後のCVとLSVを比較した.その結果をFig. 7.7, 7.8に示す.条件(III’)では,空気暴 露後,CV波形にほとんど変化はないものの,OER活性は初期状態まで回復した.つまり,

耐久性試験後に観察された活性低下は,電極表面に発生した酸素泡が活性点を覆ったこと による一時的な低下[4]であったと考えられる.したがって,条件(III’)でみられた活性低下は 可逆的であり,電極触媒の劣化ではないと言える.

一方,条件(I)では,CV 波形に関しては,初期状態まで回復したことに対し,OER活性 は酸素泡の除去により若干回復することは確認できたものの,初期状態からの明らかな低 下が確認できた.したがって,条件(I)における性能低下は不可逆な劣化であると考えられ る.

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Figure 7.2 電位サイクル((I)~(III))耐久性試験前後のCV

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Figure 7.3 電位サイクル((I)~(III))耐久性試験前後のLSV

0.1 M HClO4中,窒素飽和雰囲気下,1600 rpm,IR補正で測定

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Figure 7.4 電位サイクル((II’),(III’))耐久性試験前後のCV

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Figure 7.5 電位サイクル((II’),(III’))耐久性試験前後のLSV

0.1 M HClO4中,窒素飽和雰囲気下,1600 rpm,IR補正で測定

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Figure 7.6 0 VRHE印加耐久性試験前後のCVおよびLSV

LSVは0.1 M HClO4中,窒素飽和雰囲気下,1600 rpm,IR補正で測定

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Figure 7.7 電位サイクル((I),(III’))耐久性試験後の電極における空気暴露前後のCV

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Figure 7.8 電位サイクル((I),(III’))耐久性試験後の電極における空気暴露前後のLSV

0.1 M HClO4中,窒素飽和雰囲気下,1600 rpm,IR補正で測定