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第 6 章 Ir 系触媒を用いた MEA 評価

6.5 アノード構造評価

電気化学評価以外にも,アノード層の構造評価として FIB-SEM[3]を用いて,作製した MEAのアノード断面を加工,観察した.この時,アノード0.1 mg cm-2のIr系触媒では断 面観察が難しかったため,十分なアノード厚さを確保する目的でアノード 0.5 mg cm-2の MEAを用いておこなった.具体的には,2.5.5項に示したとおり,荒加工時で9.4 nA,仕 上げ加工時で0.4 nAの電流値で加工し,その断面のSEM観察をおこなった.

市販 IrO2をアノードとして作製した MEAについて,I-V 性能評価後のアノード側を上 面から観察したSEM像をFig. 6.4に示している.また,シングルセル組み立て時のイメー

ジ図をFig. 6.5に示す.Figure 6.4に示されるように,バイポーラプレートの流路形状に対

応した痕がアノード表面に観察された.また,アノード表面上には,バイポーラプレート との接触または非接触部(流路部分)の二つの領域が確認でき,触媒部分にはTiメッシュ 痕(ファイバー痕)がみられた.このTiメッシュ痕は,Fig. 6.6に示すアノード集電体と して用いたPt被膜Ti焼結体の形状と一致していることが確認できた.Figure 6.5に示す ように,バイポーラプレート接触部では締結圧による圧縮が起こり,非接触部ではガス形 成による膨張が起こった[4]と考えられる.同様のアノード表面構造がポーラスIrを用いた MEAにおいても観察された.

I-V性能評価前の市販IrO2,およびポーラスIrを用いたMEAアノード断面をFig. 6.7 に,また,IV性能評価後のバイポーラプレート接触部における各触媒のMEAアノード断

面をFig. 6.8に示している.また,I-V性能評価後のバイポーラプレート非接触部における

各触媒のMEAアノード断面をFig. 6.9に示している.さらに,アノード層厚変化について

Table 6.1にまとめている.

I-V性能評価前のMEAアノードの膜厚は,市販IrO2よりポーラスIrがわずかながら厚 いことが確認できた.一方,I-V 性能評価後のバイポーラプレート接触部では,市販 IrO2

の膜厚が減少したことに対して,ポーラスIrは膜厚を保持していることが確認できた.こ れは,Fig. 6.10のアノード膜厚変化のイメージ図に示すように,セル組み立てに伴う締結 圧によって,市販IrO2はナノ粒子の緻密化[5]が起こり薄膜化した一方で,ポーラスIrはそ のポーラス構造を保持したことによってセル組立て前後で同等の膜厚を保持したと考えら れる.

また,I-V性能評価後のバイポーラプレート非接触部では,市販IrO2,ポーラスIrとも に膜厚が増加していることが確認できた.膜厚の増加はガス発生によって起こったと考え られるが,とくにポーラスIrにおいて膜厚の増加傾向が大きかった.この膨張により,ア ノード層内で剥離が起こり,導電パスの破断が懸念される[6]が,ポーラス Ir を用いた場合 には,1.5 倍以上にアノード厚さが増加しても,活性化過電圧は市販 IrO2より低いことを 顧慮すると,そのような導電パス破断は起こっていないことがわかった.つまり,ポーラ ス構造は,ガス発生によるアノード層の膨張に対しても,高い耐久性を示す可能性が示唆 された.

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Figure 6.4 I-V性能評価後の市販IrO2をアノードとして作製したMEAのアノード側を上

面から観察したSEM像

Figure 6.5 水電解シングルセル組み立て概略図

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Figure 6.6 アノード集電体として用いたPt被膜Ti焼結体のSEM像

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Figure 6.7 (a)市販IrO2,および (b)ポーラスIrをアノードとして作製したMEAのI-V性

能評価前のアノード断面SEM像

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Figure 6.8 (a)市販IrO2,および (b)ポーラスIrをアノードとして作製したMEAのI-V性

能評価後のアノード断面SEM像(バイポーラプレート接触部分)

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Figure 6.9 (a)市販IrO2,および (b)ポーラスIrをアノードとして作製したMEAのI-V性

能評価後のアノード断面SEM像(バイポーラプレート非接触部分)

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Figure 6.10 バイポーラプレート接触部におけるI-V性能評価前後の各アノード層の

構造イメージ図

Table 6.1 各MEAのアノード層厚変化

MEA with commercial IrO2 anode MEA with porous Ir anode

Fresh 2.15 µm 2.33 µm

After I-V (attached) 1.47 µm 2.27 µm

After I-V (unattached) 2.55 µm 3.59 µm