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している一方で,ポーラスIrは市販IrO2よりマイクロ孔が少ないが,約10~70 nmの孔 を多く有することがわかった.また,XPS 分析,および XRD 測定の結果から,ポーラス Irは表面に酸素の吸着がみられたものの,おもに金属Irで構成されていることに対し,市 販IrO2は主にIr酸化物で構成されていることが確認できた.これらの触媒の電気化学特性 を評価した結果,ポーラスIrは市販IrO2より低い初期OER活性を示したが,電気化学的 酸化還元処理によって表面活性化に成功し,市販IrO2と同等のOER 活性を発現できるこ とが確認できた.
次に,より OER 活性が高いポーラスIrをアノードに用いて水電解セルの作製と性能評 価をおこなった.その結果,市販IrO2をアノードに用いた水電解セルに比べ,高いI-V性 能を示し,過電圧分離より活性化過電圧が低減できていることがわかった.これに関して,
市販IrO2ではナノ粒子の緻密化が起こる一方で,ポーラスIrではポーラス構造が保持され,
高比表面積を保持できたことに起因すると考察した.そこで,FIB-SEMを用いてアノード 触媒断面層を観察した結果,初期段階からポーラスIrは市販IrO2より若干厚く,またI-V 性能評価後に市販IrO2アノードが薄膜化したことに対して,ポーラスIrアノードは膜厚を 保持できていることがわかった.つまり,機械的な締結圧に対して,ポーラス構造を有す るポーラスIrはより強い耐性を持つことがわかった.また,ガス発生に伴うアノードの膨 張に対しても,高い耐性を示すことがわかった.
また,二つ目の課題解決として,具体的には,再生可能エネルギーを電力源とした場合 に起こる特有の性能劣化過程について検討するため,実際の太陽光や風力の電位変動を想 定したプロトコルを作成し,市販IrO2を用いた溶液系ハーフセルにおいて耐久性試験をお こなった.
1周期20秒として,通常運転時に起こる電位変動,OCVからの変動も含めた電位変動,
起動停止による電位変動の 3 つの条件を模擬した耐久性試験をおこなった結果,高電位上 限を一定にする中で,0 VRHEを含む低電位への掃引が含まれない場合,OER活性が大きく 低下し,性能低下は不可逆なもので,電極触媒劣化によることが示唆された.そこで,IrO2
がさらに酸化すると,IrO2(OH)を経由して,溶解性の高いIr(OH)3やIr2O3などの不安定な
Ir(III)複合物が形成されることに着目し,電解液中への Ir 溶解を検証するため,耐久性試
験後の電解液に対してICP分析をおこなった.その結果,OER活性が激しく低下した条件 下で,もっとも高いIr溶解が確認でき,触媒劣化の一つの要因となることがわかった.一 方,Irの溶解だけではOER活性低下は定量的に説明できないことから,ガス発生に伴う物 理的な電極劣化も示唆された.
さらに,市販IrO2が最も劣化した再生可能エネルギー電位変動模擬条件を用い,本研究 で作製したポーラスIrをアノードとした水電解セルに対して耐久性試験をおこなった.市 販IrO2からなるMEAでは,濃度過電圧と活性化過電圧の増加が影響した性能低下が観察 された一方で,ポーラスIrからなるMEAは性能を維持できることを確認した.そこで,
FIB-SEM を用いてアノード触媒断面層を観察した結果,耐久性試験後に市販 IrO2アノー
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ドはガス発生に伴う膨張剥離や層の不均一化が起こった一方で,ポーラスIrアノードはポ ーラス構造を保持できていることがわかった.つまり,ポーラス構造の導入によって高い 高電位耐久性を示すことがわかった.
以上をまとめると,本研究ではこれまでに報告例のなかった,より簡便なソフトテンプ レート法を用いて,水電解アノード触媒として高活性かつ高耐久なポーラスIr触媒の合成 に初めて成功した.また,多くの電極触媒が,水電解セルとしての評価にまで至らない中 で,ポーラスIrを用いて水電解セル化を可能とし,これまでの性能を超える水電解セルの 開発に成功した.
今後の展望として,さらなる触媒性能,および耐久性の改善方法を提案する.一つ目と して,さらなる高活性化を目指してポーラス構造の最適化を提案する.本研究では,出発 材 料 の界 面活 性剤 として Pluronic® F-127 を用 い たが ,そ の他 の界面 活 性剤 とし て
Pluronic® P123 を用いた合成によりポーラス構造が変化 することを確認している.
Pluronic® P123を用いて合成したポーラスIrのSEM像,および窒素吸着測定から得られ
た吸脱着等温線と細孔径分布を Fig. 9.1,9.2 に示す.Pluronic® P123 を用いた場合,
Pluronic® F-127を用いたポーラスIrよりも,よりブロードな細孔径分布を有していること
が確認できた.今後,細孔径分布と性能,および耐久性の相関性の詳細な検討をおこなう ことで,ポーラス構造の最適化が可能であると考えられる.
また,二つ目としては,再生可能エネルギー電位変動に対する耐久性の向上を提案する.
高電位下での運転におけるIr溶解が性能低下の一要因であることが明らかになったが,低 電位への電位掃引により,Irイオンの還元をおこなうことで,Ir 溶解を抑制できることが わかっている.したがって,Fig. 9.3の電極触媒劣化抑制プロトコル概略図に示すように,
高電位サイクル範囲内で変動する電位に対して意図的な低電位電位への掃引,例えばシャ ットダウンプロセスを挿入することで,Ir 溶解に対する耐久性を向上できると考えられる ため,このような運転プロトコルを提案することで,高耐久化が可能であると考えられる.
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Figure 9.1 Pluronic® P123を用いて合成したポーラスIrのSEM像
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Figure 9.2 Pluronic® P123を用いて合成したポーラスIr,およびPluronic® F-127を用い て合成したポーラスIrの (a)吸脱着等温線と (b)吸着側をもとに解析したBJH細孔径分布 (黒)Pluronic® F-127使用 (赤)Pluronic® P123使用
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Figure 9.3 高耐久化に向けたIr溶解抑制水電解セル運転プロトコル概略図