第 6 章 Ir 系触媒を用いた MEA 評価
6.7 本章のまとめ
本章では,ポーラスIr,および市販IrO2をアノードとして用いたMEA作製し,性能を 評価した.
I-V性能を比較した結果,ポーラスIrを用いた場合には市販IrO2を用いた場合に比べ,
高い水電解性能を示し,デバイス化におけるポーラス構造の優位性を示すことがわかった.
高い性能に寄与した詳細な因子を検討するため,インピーダンス測定,およびI-V曲線の過 電圧分離解析をおこなった結果,両触媒とも同等のオーミック抵抗,および濃度過電圧を 示したことに対し,ポーラスIrは市販 IrO2より低い活性化過電圧を示した.したがって,
ポーラス構造保持によって,市販IrO2より大きな活性比表面積が保持され,活性化過電圧 が低減し,高い水電解性能を発現したと考察した.
さらに,アノード層構造評価をおこなうために,FIB-SEM手法を用いてMEAのアノー ド断面を観察した.I-V性能評価後,またバイポーラプレートへの接触の有無でアノード厚 さが変化することがわかった.I-V性能評価前,およびI-V性能評価後のバイポーラプレー ト接触部,バイポーラプレート非接触部の各MEAにおけるアノード厚さを比較検討した結 果,I-V性能評価前の初期段階では,ポーラスIrを用いたアノードは市販IrO2よりやや厚 いことがわかった.I-V 性能評価後には,バイポーラプレート接触部において,市販 IrO2
を用いたアノードはナノ粒子構造の緻密化によって薄膜化された一方で,ポーラスIrを用 いたアノードではポーラス構造を有することにより,I-V性能評価前と同等の膜厚を維持で
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きることがわかった.バイポーラプレート非接触部においては,ガス発生により,両触媒 アノードにおいて膜厚の増加を確認したが,特にポーラスIrにおいて1.5倍以上に増加し た.ガス発生によるアノードの膨張は,アノード層内で剥離が起こり,導電パスの破断が 懸念されるが,ポーラスIrを用いた場合には,そのポーラス構造の効果で,アノード層の 膨張に対しても高い耐久性を示す可能性が示唆された.つまり,粉末触媒では同等のOER 活性を示したポーラス Ir,および市販 IrO2ではあったが,水電解デバイス化した際には,
期待していたポーラス構造効果が発現し,ポーラスIrの優位性が確認できた.
また,Table 6.2にまとめたとおり,本研究におけるポーラスIrからなる水電解セルは,
PEM形水電解セルの現状と比較しても,IRフリー電圧1.43 V@電流密度1 A cm-2と,高い 水電解性能を有し,さらにカーボン酸化劣化や,Cl-残留,危険性の高い合成法等の欠点を 有さず,容易な手法で合成できる触媒であることから,水電解アノード触媒としてポーラ スIrが優位性を有することを示すことができた.
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