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窒素吸着測定による比表面積と細孔径分布の測定

第 2 章 実験方法

2.2 Pt 系触媒とキャラクタリゼーション

2.2.5 材料解析方法

2.2.5.1 窒素吸着測定による比表面積と細孔径分布の測定

触媒における電気化学性能は,単位質量あたりの表面積が大きい方が良い.したがって,

小さな細孔から形成されるポーラス構造を有する場合,有効表面積が大きく高い触媒性能 が期待できる.また,電気化学プロセスに関わる反応物,生成物等の物質輸送には一定量 の異なるサイズの細孔が存在することが望ましい[1].そこで,窒素吸着法により,本研究で 用いた電極触媒の比表面積、細孔分布を測定した.

窒素吸着測定では,粉体粒子の表面に吸着占有面積が既知のガス分子を吸着させ,その 量から試料の比表面積を求めることが可能である.ガス吸着法による表面積測定,および 細孔分布測定は主に物理吸着に対応しておこなわれる.ある圧力 p において固体表面に吸 着する気体分子(吸着質)のガス吸着量v と相対圧p/p0との関係,すなわち吸着等温線と,

ガス分子の吸着過程をFig. 2.2に示す.ここで,pは吸着ガス分子数=脱着ガス分子数とな った吸着平衡状態時の圧力を,p0は容器内の気体が液体になる量と液体が気体になる量が 一定となった状態,つまり気液平衡時の圧力である飽和蒸気圧を示す.

比表面積の測定においては Langmuir の局在性単分子吸着理論[2]をもとにして吸着過程 を動力学的に解析できるBET(Brunauer emmett teller)理論[3]が適用されている.BET 理 論によって以下の式(2.1)が導かれる.

𝑝

{𝑣(𝑝0− 𝑝)}= 1

𝑣𝑚𝑐+ (𝑐 − 1) 𝑣𝑚𝑐 × 𝑝

𝑝0

(2.1)

ここで, vm:単分子層吸着量(Fig. 2.2の単分子層吸着のガス量)

c:吸着分子の凝縮係数

p/p0 と p/{v(p0-p)}をプロットすることにより,式(2.1)から直線が得られる.この直

線の勾配,および切片からvmとcを求めることができる.vmを求めることができれば,分 子の占有面積やアボガドロ定数から比表面積を計算することができる[4]

また,ガス分子の凝縮から細孔分布を測定する手法として,吸着質が脱離するときの相 対圧と吸着量の関係である脱着等温線から細孔径を求めるBJH (Barret joyner halenda)

[5]がある.BJH法は,Fig. 2.3に示すようなシリンダー型の細孔を仮定した細孔構造解析

手法である.各相対圧におけるシリンダー型細孔の半径(ケルビン半径,rk)は,Kelvin

式(式2.2)によって算出される.

31 ln (𝑝

𝑝0

) = −2𝛾𝑉𝑚 𝑅𝑇 × 1

𝑟𝑘

(2.2)

ここで,γ:表面張力 Vm:モル体積 rk:ケルビン半径

本研究では,窒素吸着測定前の前処理として,各触媒に含まれる水分や溶媒を気化させ る目的で,200oCで2時間の乾燥をおこなった.BELSORP-mini II-VS(BEL Japan)を 用い,液体窒素雰囲気(-196oC)にて,窒素ガスをサンプル管内に流し,サンプル表面へ 窒素ガスを吸着させて吸脱着等温線を得た.得られた吸脱着等温線から,BET 法によって 比表面積を算出した.さらに,吸脱着等温線の吸着側に対してBJH法を適用し,細孔径分 布を求めた.

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Figure 2.2 試料表面へのガス吸着プロセス

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Figure 2.3 BJH法を適用するシリンダー型細孔の概略図