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第 4 章 日本の水産セクター協力の検証

4.2 資源管理サブセクター協力の検証

4.2.2 零細漁業・資源管理

51 検証

水産局漁業管理部漁場管理課のMamadou Thiam氏に、ITAM-DEME号による資源環境調 査の結果が、セネガル政府による資源管理計画策定や漁業規制にどのように寄与している のかを確認したところ、「資源環境調査の結果は水産局による水産政策の施策づくりに直接 役立てられている」という回答を得た。「例えば、2006年に零細漁船にライセンスシステム が導入されたのは、ITAF-DEME号による水産資源調査の結果をふまえてのものだった」と いう。

また、CRODTのMassal Fall所長によれば、過去の2年間において、同氏は定期的に漁業・

海洋経済省に呼ばれ、水産資源調査の結果について報告している。それは、漁業・海洋経 済省内での施策づくりを目的とする水産資源の現状把握のためであるとのことだった。

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一方ジフェールでは、COGEPASの支援でCLPAが組織され、刺網漁具の10%削減やシン ビウムの放流など、水産資源の管理活動が実施された。また、当地の主要漁業であるイカ かご漁で用いられる産卵床を天然材から人工材に転換する取り組みが行われた。しかし

COGEPASが終了したのち、CLPAの資源管理活動は停滞した模様である。2016年になり、

EUの セネガル持続的漁業管理プロジェクト(ADUPES)がはじまり、当地のCLPAは再編 される。再編されたCLPAのもとで資源管理委員会、紛争解決委員会、財政委員会、渉外委 員会が組織され、啓発活動、参加型監視、天候急変を知らせる旗の設置、活動資金の創出 活動、企業訪問、水産物の品質改善、CLPAの運営管理環境の整備などの取り組みが進めら れている。

このように日本の支援により設立されたロンプールとジフェールでは、継続してCLPAの 活動を実施してきたロンプールと一旦活動が停滞し、他ドナーの働きかけで再編されたジ フェールの違いはあるものの、CLPAによる資源管理とその関連活動が実施され、それぞれ の地域で水産資源共同管理の定着を促してきた。

(2) 全国レベルでの共同管理体制の強化

現在、漁業・海洋経済省に承認されたCLPAは、北はサンルイから南はジガンショールま で、セネガル全国に37団体ある。日本は、CLPAを活動主体とする水産資源管理活動の在 り方を提案し、その定着を支援してきた。

CLPA に所属する漁業者がイニシアチブをとって水産資源管理活動を策定するために、

COGEPASでは関連漁業者組織(コレージュ)に会議やビデオ上映を通じた啓発活動や技術

研修会を介して働きかけ、参加型研究による科学的データを漁業者に還元して、活動の理 解を深めた。CLPAで意思決定された資源管理活動は、CLPA内の資源管理委員会(モニタ リングユニット)が活動を主導するよう支援した。こうした決定事項は、水産局の県支局 や周辺のCLPAと情報共有された。

セネガルでの主要対象資源のひとつが広域を移動する浮魚資源であり、その資源管理や 漁業管理の活動主体となるCLPAの役割を考えれば、ロンプールのCLPAで議論されるよう なCLPA間ネットワークの動きは当然の帰結であろう。USAIDが実施する持続的漁業のた めの共同管理プロジェクト(COMFISH)の支援で、2017年6月15日にCLPAの全国連合 体と位置づけられる全国CLPAネットワーク総局(Bureau Executif National des reseaux des CLPA)が組織された。この組織は漁民リーダー間の情報交換や資源管理の取り組みを共有 し、CLPA活動相互のネットワークを構築することを目的とする。資源管理活動の広域展開 を視野に入れて議論していた COGEPAS の全国ネットワーク化構想 25が実現したものと位 置づけることができる。

このように日本のこの分野での協力は、CLPA傘下の各委員会を活動主体とする資源管理 活動やCLPAのネットワーク化構想を含むモデルを提示し、セネガルにおける水産資源共同 管理の在り方を提案し、その定着を促してきたと言える。

25 COGEPAS最終報告書、p.168.

53 (3) CLPA活動にかかる資金調達の制度化

CLPAが自発的に活動するには資金源が必要だが、設立当初は、ファイナンシャルスキー ムに関する法整備が追いついていなかった。2006年3月15日付け・経済財務省/漁業・海 洋経済省の共同省令 No.001808 で、零細漁業ライセンス料(以下、ライセンス料)の 60%

を、当該漁船を管轄するCLPAに活動資金として手当てすることが定められた。しかし現実 的には、いったん国庫に納められたライセンス料がCLPAに支給されることはなかった。

2011年4月11日付け経済財務省/漁業・海洋経済省の共同省令No.003733で、ライセン ス料のうち、CLPAへ支給される分は、県知事が代表となる管轄県の管理委員会で管理する ことが定められた。また、基金の財源はライセンス料の 60%だけでなく、仲買人証申請料

の30%や漁業・海洋経済省からの交付金、ドナーやNGOからの支援金、零細漁業に関わる

各種免許料の一部を原資とすることがうたわれた。

経済財務省/漁業・海洋経済省の共同省令によって、CLPAが活動するための資金面での 制度は整えられつつあるものの、ライセンス料の60%などはその後も国庫にとどまり、CLPA が使える状態にはならなかった。全国のCLPAメンバーは、機会があるたびにその現状を訴 えた。資金不足のためCLPAの活動が進まない現状から、漁業・海洋経済省は全国のCLPA に対して、一律に325万FCFAを配布した。

全国のCLPAでは、活動と予算計画を作成し、県知事や水産支局長、漁業者、卸売業者な どからなるCLPA執行委員会に提出して、活動計画が認められれば、銀行からその予算を受 け取ることができる。たとえば日本の支援で設立されたロンプールのCLPAでは、これまで にメンバーの能力強化、視察、監視活動、会議出席のための交通費など、9つの活動に125 万FCFAを支出した。今後は残る200万FCFAを使って、水産加工品の品質・衛生状態改善 のため加工女性と小売商のダカール視察や、複数回の参加型監視活動を計画している。

このように、CLPA活動の資金面での制度化は、日本の支援で設立された CLPAを含め、

円滑な運用にまで至っていないものの、少しずつ前進している状況にある。

検証

COGEPASの最終報告書によれば、カヤールの県水産局長は指導力があり、カヤール水産

センターという拠点があるため、いつでも必要なときに資源管理の会議を開くことができ る。昔から移動漁民とのあいだで漁業紛争を繰り返してきた当地の漁業者は、もともと資 源管理意識が高い。資源管理の会議は頻繁に開催され、その議事録が作成されてきた。CLPA カヤールが率先して岩礁帯での延縄漁業を禁止する省令案を作成するなど、活発な活動を 展開している。日本の支援で開設されたカヤール水産センターがその活動を支えている。

ロンプールのCLPAでは既述のように、この地で水揚げする漁業者を対象に固定刺網と流 し網の統数制限に取り組むことで漁獲努力量を制限したり、刺網の目合長を制限したりす ることで幼魚の漁獲制限を実施している。現在彼らは、こうした資源管理活動をより容易 にするため、新たな海洋保護区(Aires Marines Protegees: AMP)の設定が必要だと考えてい

仮説⑪

日本が整備した水産物流通拠点が資源管理活動の拠点として一定の役割を担ってい る。

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る。こうした活動が可能になってきたのは、COGEPASの活動の一環としてCLPAがこの地 で組織化されたこと、この地にロンプール水産センターという水産物の流通拠点ができて 定着漁船が増え、漁民の管理がしやすくなったことと、その活動拠点ができたという点を あげることができる。

ミシラ漁業センターで、漁民の資源管理活動におけるセンターの役割を確認したところ、

現在のセンター長より、「同センターの役割は漁業者の能力開発である」との返答が得られ た。漁業者の能力には大きく分けて、漁家経営を改善するための漁業技術や経営能力と、

資源管理活動を含むより広範な持続的生産のための能力の 2 つが含まれていると思われる が、同センターでは前者の能力向上を重視していると判断される。漁民の資源管理活動に 対するセンターの役割は、漁業者や加工女性グループが資源管理活動の話し合いを行うと きに、センターの会議室を提供するという形で支援するというものである。これは、この2 カ所の水産センターでは、漁業者や加工女性など受益者組織がセンターを管理・運営して いるのに対し、ミシラ漁業センターは、水産局からの派遣職員が管理・運営している。こ の管理・運営形態の違いが、資源管理活動へのいくらかのスタンスの違いを反映している と言えるかもしれない。

このように日本が整備した水産物流通拠点のなかでも、資源管理活動へのスタンスにい くらかの違いは認められるものの、水産物流通拠点であるがゆえに資源管理活動の拠点と もなり得るこれらのセンターは、地域の資源管理活動に対して一定の役割を果たしている。

検証

(1) マダコの広域資源管理

マダコはセネガルの輸出水産物のなかでも、最大の外貨獲得源のひとつになっている。

しかし、漁獲量が減りサイズが小型化してきた。そこで、漁業者主導のマダコの資源管理

(休漁期の設定)が、日本の実施した開発調査のパイロット事業として2004年にニャニン 村で始まった。マダコの休漁期設定で成功した漁民は、それに加えて産卵用タコ壷の設置 を試行した。

2006 年の調査では海底に設置したタコ壷の 50%にマダコの卵が付着し、75%の壷にマダ コが入っていたことを確認した。その成功により、2005 年からポワントサレーン村とンバ リン村でもマダコの資源管理を開始した。ンブール県の他の漁村との連携を図りながら、

合同で資源を管理する広域資源管理の機運が高まった。

2009年からはじまったCOGEPASでは、9漁村からなるCLPAシンディアの資源管理活動

(休漁期設定と産卵用タコ壷の設置)にCLPAジョアールとCLPAンブールが段階的に参加 することで、マダコの広域資源管理を進めた。

2017年現在、北部シンディア、南部シンディア、ンブール、ジョアールの4地域のCLPA 仮説⑫ 各資源管理活動(①タコ壷・人工枝等によるイカの人工産卵床、稚貝放流、人 工魚礁沈設、禁漁区・海洋保護区をはじめとした資源再生産促進活動、および②漁法制 限、最小漁獲体長・網漁具目合いの設定等のテクニカルコントロールアプローチをはじ めとした漁業管理)の具体的技術を紹介し、セネガルにおける普及に貢献した。