• 検索結果がありません。

第 5 章 日本の水産セクター協力の経済的効果

5.2 日本の協力の水産セクター開発へのインパクト

-68

69

- 10年後の1991年には、非動力ピログ1隻の生産額は 120.7×(1+0.067)10 = 230.9(万FCFA)となり、

1991年の非動力ピログ数3,921を乗じた230.9×3,921 = 905,208 つまり90.5億FCFAが1991年の非動力ピログ全体の生産額となる。

- 1991年の零細漁業全体の生産額は280.1億FCFA、動力ピログ数は全体の64.0%にあ

たる6,522隻であるから、1991年の動力ピログ1隻あたりの生産額は、

(280.1-90.5)÷6,522= 290.7(万FCFA)となる。

- ここで、動力ピログの年平均伸び率をrとすると、1981年の一隻あたりの生産額120.7

万FCFAが10年後の1991年に290.7万FCFAになったということであるから、

120.7×(1+r)10 = 290.7 r = 0.0919 つまり9.2%となる。

- 1981年からの1年間で、動力ピログと非動力ピログ1隻あたりの生産額の差は、

120.7×(9.2%-7.8%) = 1.69万FCFAとなり、仮に日本が供与した船外機1,019台がすべ

て稼働していると仮定すると、これら船外機がもたらした年あたりの生産額の増分は、

1.69×1,019 = 1,722万FCFA(約340万円)と試算される

これらの試算はすべて、間接的なデータによる類推に基づくもので、採用するパラメー ターや前提の違いによって計算結果は大きく変わってくる可能性があるが、こうしておお よその経済的インパクトの規模を把握する一助になった。

水産局のデータによれば、1980年段階での動力ピログの数が4,614隻で、動力化率が54%

であるから、ここでは試算を単純化するために供与された船外機が1980年においてもすべ て稼働していたと仮定すると、動力ピログの 22%、ピログ全体では 12%が日本の支援を受 けたものということになる。よって、1981年当時の零細漁業生産額110.0億FCFAの1~2 割程度である年間10~20億FCFAほどが日本の支援で動力化されたピログによってもたら されたと考えることができる。ただし、このうちピログ動力化による生産性向上の寄与分 がどの程度かは、脚注 31 で述べたように、日本がピログ動力化の支援を開始した1976 年 以降の数年間はその効果がすぐに現れるどころか、さまざまな要因で逆に漁業生産が低迷 したこと、また、比較対象としてほとんど動力化が進んでいなかった1970年代半ば以前の データが入手不可であるため、上記のように類推による限定的な試算となった。

現地の関係者へのインタビューでは、日本の過去の協力の中で、このピログ動力化が最 も成果やインパクトの面で分かりやすいという意見が多かった。また、供与したこれらの 資機材が適切に利用、維持管理されるよう支援し、零細漁業の生産性を高めるために派遣 された専門家の存在も、船外機の供与を中心とした一体的な漁業生産財整備の取り組みの ひとつとして、経済的インパクトを高めるために貢献したのは言うまでもない。

5.2.2 バリューチェーン開発サブセクター(インフラ整備ほか)

1980 年代に入り、協力の中心が船外機をはじめとした資機材の供与から、水産物流通を 促進するための各地での魚市場や水産センターなどのインフラ整備に移行していった。船

70

外機の供与は、セネガル全国に広く浅く受益したが、インフラ整備は、建設された地域に 密度の濃いインパクトを与えることが期待される反面、周辺地域への波及効果がどの程度 見込めるかが、援助効果を測るうえでのひとつのポイントとなる。

「4.1.2 水揚げ・加工拠点整備」や「4.1.5 バリューチェーン開発サブセクター協力の 検証結果」で触れたように、日本は建設した 3 カ所の漁業/水産センターのうち、ミシラ については、整備された水揚げ施設もない寒村からセネガル中部の零細漁業の拠点のひと つとして発展するに至ったが、プラスのインパクトを示すデータは入手できなかった。ま た、2003年の国別事業評価では、1998年以降、水産資源の減少が原因でミシラ村の漁獲量 が減少しており、特に水産センターは所有漁船の維持管理能力不足でその落ち込みが激し いことが指摘される36など、ミシラの零細漁業振興プログラムによる、直接的な経済面での インパクトを評価することは難しい。ただし、少なくともミシラでの取り組みはセネガル 中部における鮮魚の流通改善に貢献したことは事実であり、例えばダカールやカオラック の魚市場における鮮魚流通に多少なりとも間接的なインパクトを与えたという点で、具体 的な定量評価は難しいものの、これらの魚市場がセネガルの水産セクターにもたらしたイ ンパクトの一部として含めて考えることもできるであろう。

カヤール水産センターは、2016年のカヤール全体の水揚げ金額166.2億FCFAの56.5%に

あたる93.9億FCFA(約19億円)が年間の取扱額と考えられる。4.1.2のカヤールの項で述

べたように、カヤールのあるティエス州全体で漁獲量の減少傾向が続くなかで、カヤール はその減少のペースが州全体に比べて緩やかで、データが得られた 2005年から 2016 年の 水揚げ量の年平均伸び率はティエス州全体が-2.8%であるのに対して、カヤールでは-1.9%で ある。これはカヤール水産センターが扱う底魚を中心に輸出向けの割合が拡大するなど、

付加価値の高い漁業が実現していることが一因と考えられる。この 2 つの伸び率の差であ

る 0.9%がカヤールの競争力に基づくプレミアムと仮定すると、カヤール水産センターの年

間取扱額93.9億FCFAの0.9%にあたる8,450万FCFA(約1,690万円)は少なくとも同水産

センターがもたらした追加的なインパクトとみなすことができる。

ロンプール水産センターは、図 15 に示すとおり、ルーガ州全体の水揚げ高の 66%、9.9 億FCFAを取り扱っている。同センター建設直後の2007年にロンプールに水揚げされた漁

獲量は1,277トンで、これが最新データ37のある2014年には2,803トンへと倍以上に増えて

いる。この7年間の年平均の漁獲量の伸び率は11.9%で、同センター建設前の2004年には

いったん1,724トンを記録し、その後2007年までは減少していたこと、漁獲量の伸びと金

額の伸びとは必ずしも一致しないことを考慮しても、同センターによってロンプールの水 揚げが大きく拡大したのは間違いない。仮に同センターの開設に起因する水揚げ高の毎年 の伸びを、控えめに見積もって、この漁獲量の年平均伸び率 11.9%の 3 分の 1 程度である

4%とすると、2007年38から2014年までの水揚げ高の伸びは、累計で2.5億FCFA(0.5億円)

となり、これが追加的なインパクトと推計される。また、セネガル政府がロンプール水産

36 外務省「セネガル国別事業評価調査」報告書(2003年)pp.II-17,18.

37 ロンプールの統計データは1年のうち数カ月分しかなく、しかも毎年連続したデータがないなど、断片 的なものしか入手できなかったため、経済的インパクトの算出にあたっても、根拠の多くを類推に頼ら ざるを得なかった。

38 9.9億×(1-0.04)7 = 7.4億(2007年の水揚げ高推計)9.9-7.4=2.5(億FCFA)

71

センターの成果を認め、製氷機の更新や新たな水産センターの建設に乗り出していること は、すぐには数値的なインパクトとして示すことはできないが、日本の協力がもたらした 波及効果と考えることができる。

上記の漁業/水産センターに加え、「4.1.3 流通・販売拠点整備」で説明した、ダカール、

カオラックの 2 つの魚市場が整備され、日本の水産協力が流通改善に貢献してきた。この 両市場でセネガル全体の鮮魚流通量の3 分の1 を取り扱っており、金額ベースでのデータ は入手できなかったが、便宜的に金額も同じ割合と仮定すると、2015年の全国生産額1,540

億FCFA(表 12参照)に対して、ダカール、カオラックの2つの魚市場でおよそ年間510

億FCFA(102億円)の取り扱いがある計算になる。この2つの魚市場は、その規模だけで

なく、品質検査体制(ダカール)や状態のよい冷凍機器(カオラック)などを備え、セネ ガル中部の水産物流通の広域拠点として、その重要性は高い。1989年に開設、1997年に拡 張を終えたダカールに続き、2003 年にカオラックの整備が行われた。両市場ともにフル操 業となった2004年から2015年までの漁業生産額は1,026億FCFAから1,540億FCFAへと、

約510億FCFA(102億円)増加し、年平均で3.8%の伸びを示している。その3分の1が上

記2市場によるものとすれば、2004年から2015年までの11年間で170億FCFA(34億円)

程度の生産額増加39のある一定部分について、何らかのインパクトを与えた可能性がある。

これは、付加価値額などでみた、水産バリューチェーン全体における魚市場が果たす役割 の度合いに左右されると考えられるが、今回の調査ではその判断材料となるデータは入手 できなかった。仮に全体の10%の貢献度でも17億FCFA(3.4億円)のインパクトを与えた ことになり、セネガルの水産物流通に対する影響力は小さくないことがうかがえる。

バリューチェーン開発に関するその他の取り組みに関して、カキ養殖隊員の活動による 経済的インパクトについては、有意な差が認められるような定量データは確認できなかっ た。上記の水産インフラに比べ、投入や受益対象が小さいことが主な理由と考えられる。

5.2.3 資源管理サブセクター

漁獲量が増加する一方、水産資源の枯渇が懸念されるようになり、日本の協力も1990年 代以降は資源管理や付加価値向上の取り組みにシフトしていった。現在、漁獲量は頭打ち の状態にあるため、5.2.1や5.2.2で示したような、単純に生産額の増加などで経済的なイン パクトを評価することはできない。このような資源管理プロジェクトやプログラムによる 目標や直接的な効果は漁獲量の削減など、むしろ経済的インパクトとは逆の方向性を示す 可能性が高いため、「4.2.3 資源管理サブセクター協力の検証結果」に記載した開発効果を 評価していくべき性格のものである。

5.2.4 その他サブセクター

漁村振興サブセクターに関しては、支援規模が小さく、漁村振興というその目的から、

経済インパクトを直接的に評価するのは難しい。

水産政策サブセクターの活動は、経済的なインパクトがより高まるように水産セクター の取り組み全体を方向付けるという点では重要な役割を果たすものの、それ自体がインパ

39 同時期のインフレ率が平均年1.1% World Economic Outlook, IMF, 20174月のデータをもとに算出)

であることを加味すると、実質の増加分は110FCFA(22億円)前後となる。