第 6 章 セネガル水産業発展の方向性
6.5 有効で現実的な養殖開発
セネガル政府は水産開発政策書簡において、養殖開発を水産セクターにおける 3 つの開 発目標のひとつと位置づけ、阻害要因の分析を通して、民間投資を呼び込む環境づくりや 生産インフラの整備など、養殖開発への取り組みを正面から取り上げている。
養殖開発の阻害要因としてあげられているのは、①養殖関連法規がないこと、②養殖開
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発への優遇政策がないこと、③養殖を行うための融資制度がないこと、④養殖インフラを 建設するためのコスト高(セネガル川沿いの土地1ヘクタールあたり800万FCFAという割 高さ)、⑤これまで政府が主導する養殖開発を管轄する官庁がたびたび変更されてきたこと、
⑥民間や草の根レベルで養殖開発を進める組織や関係者に知識や技術が十分でなかったこ と、などである。
これらの阻害要因を分析したうえで、水産開発政策書簡では、2013 年までの達成目標と して、養殖分野で2万人の就業人口を吸収し、海面漁獲量の 10%にあたる4万トンを養殖 で生産するとしている。そのための方策として、民間の養殖業者の投資環境を改善するた めの優遇政策や法規制の見直しを行う。また、養殖に関する情報システムの構築を通して 養殖開発を奨励するとともに、養殖開発のための基金を創設し、民間業者が融資制度へア クセスしやすくすることなどをあげている。
さらに養殖現場では、政府が主導して全国に種苗センターや養殖センターが建設されつ つある。聞き取りによれば、政府はリシャトール(Richard Toll)、ファティック(Fatick)、
セディウ(Sedhiou)の3カ所に種苗センターを開設し、ムバーヌ(Mbane)、モマール・サ ラー(Momar Sarr)、ムボディエーヌ(Mbodiene)、クタンゴ(Koutango)、サボヤ(Saboya)、
ジガンショール(Ziguinchor)などに小規模な養殖センターを開設しているという(図 25)。
主要対象魚種はティラピアであり、施設によってはナマズの種も対象とされている模様で ある。
図 25 セネガル国内の養殖施設の分布
上述した種苗センターのひとつであるファティックの施設を訪問した。この施設は国立
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養殖庁(ANA)が2012年にFAOの資金援助を受けて開設した。保有設備は8m x 12mの地 堀池3面、2m x 4mのコンクリートタンク7面、直径2mの円形タンク10面、3m x 6mの FRP 製簡易タンク 2 面である。この施設でティラピアの種苗生産が行われている。訪問時 には、体長25~30cmの親魚320尾が2つの地堀池に飼われており、生後3カ月の若魚750 尾がもうひとつの地堀池に飼われていたほか、生後1週間、2週間、1カ月、2カ月の稚魚
~幼魚が他のタンクに分けて飼育されていた。
以上のように養殖開発に対する政府の方針は明確になり、現場レベルにおいても、着実 に養殖関連の施設を開設し、養殖開発に対する環境が整備されようとしている。その一方 で、合理的でないと思われる養殖開発の在り方も散見される。たとえば、訪問したファテ ィックの種苗生産センターで用いられている餌はオランダで生産され、フランスの会社が 販売した輸入ペレットである。ふ化直後の稚魚に対して稚魚用に開発された配合餌料を与 えるのはやむを得ないとしても、ティラピア若魚の養殖用餌料に高価な輸入ペレットを与 えていては、将来の民間資本による営利目的の養殖事業で利益をあげることは難しいだろ う。将来の民間導入による養殖開発を視野に入れて、技術のひとつひとつ(例えば餌の種 類)を点検していく必要がある。
カヤールでは、浜近くの陸上タンクでティラピア養殖が行われていた。ドナー支援のプ ロジェクトであり、養殖の可能性を村人に示すことが目的とのことだった。しかし、魚が 豊富なカヤールの漁村でどれほどの養殖ニーズがあるのかは疑問である。カヤールの漁村 にティラピア養殖のための陸上タンクを建設するのであれば、たとえば漁期になると大量 に漁獲されるイワシ類などの小型浮魚を用いて、ティラピア用の餌料を開発するならば、
その存在理由を理解することができる。具体的には、カヤールで漁獲される安価な小型浮 魚を原料として開発した餌料を、陸上タンクで飼育するティラピアに与え、餌料効果を計 測することで、餌料開発を進めるのである。そのように陸上タンクでのティラピア養殖を 活用すれば、将来の養殖開発の一端に貢献できる結果を生み出すことができる。
現在試行錯誤で進められつつある現場レベルでの養殖開発を、2023年までに2万人の就 業人口で 4 万トンを生産する産業に育てるという目標実現のため、合理的かつ無駄のない アクションを有機的に結びつけ、成果をあげる技術と人材育成が求められている。
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