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障害のある女性

ドキュメント内 Microsoft Word - (ページ 49-52)

第1章 障害者の労働の権利:国際的な法的文書と

1.30 障害のある女性

すべての人権は普遍的であり、それゆえ障害のある女性及び男性をも無条件 に対象としている。すべての者は生まれながらにして平等であり、生命、福祉、

教育、労働、自立生活、社会全般への積極的な参加について同一の権利を有す る。障害のある女性又は男性に対するいかなる直接差別又は間接差別も、彼女 又は彼の権利に対する侵害である。

障害のある女性は差別をいっそう被りやすい。それは、(a)女性であるからで あり、(b)障害をもっているからである。さらに、障害のある多くの女性はその 貧しさゆえに差別を受けている。障害のある女性の被っているこの二重ないし 三重の差別はしばしば無視され、あるいは見過ごされる。それは、障害者がと きにジェンダーのない人間であるかのように扱われるからである。このような 差別は、差別の程度・影響に関する情報がほとんど入手できないゆえに無視さ れることが多い。かかる状況は改善されているようには思われない。たとえば、

1993年に当時の国連差別防止少数者保護小委員会の特別報告者は、「障害のあ る女性をめぐる特有の問題に関する文献資料が事実上まったく存在しないこ と」(Despouy 1993年 20頁)に落胆の色を隠さなかった。1993年12月に採択さ れた障害者の機会均等化に関する国連基準規則は、ジェンダー、人種、年齢等 のいかんを問わず、すべての障害者に関心を払っているが、ジェンダーの側面 に直接言及している部分はほとんどない。これは国連社会開発委員会の特別報 告者が遺憾に思った事実である(国連 2002年 20頁)。

条約を批准した国家とそうでない国家の双方における、ILOの第159号条約と 第168号勧告の適用状況に関する第1次一般調査(first General Survey)の報告

(1998年)は、障害のある男性と障害のある女性との間の機会と待遇の平等に ついて、次のように簡潔に述べている。

「障害者は平等のための闘いにおいて多くの障壁に直面している。障害のあ る男性も女性も差別を被っているが、障害のある女性は、ジェンダー及び障 害を理由とする差別によって二重の不利益を被っている。障害のある男性に 比べて障害のある女性は貧しかったり、極貧であったり、読み書きができな かったり、あるいは職業技能を身につけていなかったりしがちであり、彼女 たちの大部分が失業している。障害のある女性はリハビリテーション・サー ビスを受ける機会がより少なく、家族や地域の支援を受けられそうになく、

障害のために社会的にいっそう孤立してしまう。この状況は劇的であり、

1981年のILO事務局長の言葉によれば、障害のある貧しい女性はすべての人 権を奪われることがあまりにも多いのである。」(ILO 第2章 セクションI 第114パラグラフ;ILO 1981年も参照のこと)

女性差別撤廃条約の締約国には、その定期報告の中に障害のある女性に関す る情報を含めることが要請されていた。2001年に行われた調査の対象とされた 諸報告の中には、障害のある女性が経験している二重の差別について一貫性を もって取りまとめた報告がほとんどなかった(Quinn and Degener 2002年)。

2006年に採択された障害者の権利条約は、障害のある女性に特有な状況を認 識している。この条約の締約国は「障害のある女性や少女が複合的な差別を受 けていることを認めるものとし、これに関しては、障害のある女性や少女がす べての人権と基本的自由を完全かつ平等に享有することを確保するための措置 をとる」ことを約束している。締約国はまた、「女性に対してこの条約に定める 人権及び基本的自由の行使と享有を保障することを目的として、女性の完全な 発展、地位の向上及びエンパワーメントを確保するためのすべての適切な措置 をとる」(第6条)ことを約束している。

1.30.1 障害のある女性にとっての雇用障壁

障害者が、開かれた労働市場に参入することは一般に難しいが、ジェンダー の視点から見ると、障害のある男性は障害のある女性の2倍に近い職を得ている ようである。たとえば米国が行った研究によると、障害のある女性は24%が労 働力である一方、障害のある男性は約42%が労働力である。加えて、障害のあ る男性の30%以上がフルタイムで労働しているのに対して、障害のある女性の 場合は12%がフルタイムである。フルタイムで働いている女性の収入は、フル タイム労働の障害のある男性のそれの56%である(Bowe 1984年)。ガーナでは 障害のある女性のほんの3%が労働力であり(1996年)、インドでは0.3%(1991

年)、フィリピンでは19%(1992年)である。働いている障害のある女性の大部 分はインフォーマル・セクターでの労働に従事している(Messell 1997年)。障 害のある女性が働く際に、彼女らは、不平等な採用・昇進の基準、訓練・再訓 練への不平等なアクセス、融資その他の生産的資源への不平等なアクセス、同 一労働に対する不平等な賃金、そして職業上の隔離・差別待遇を経験すること が多い。また、彼女らが経済的な意思決定に参加することはほとんどない(ILO 1996年)。

世界の一般的な傾向として、障害のある男性と比べて障害のある女性は職業 訓練を受けられず、リハビリテーション計画へのアクセスはままならず、平等 に訓練を受ける機会も少なく、リハビリテーションがうまくいった場合でも、

パートタイムかあるいはそれよりも悪い結果―失業―となりがちである。一般 市民やリハビリテーションカウンセラーの間では、障害のある女性は受動的で、

依存的であり、雇用につながる仕事に就く能力がないか、あるいはそれに関心 がない、との見方が依然として根強く残っている。諸研究が示すところによれ ば、富める国においてでさえ、補足的所得保障、障害保険、労災補償、職業リ ハビリテーションのような、障害者を支援することを目的とする主要な計画は、

労働市場への参加との関係のゆえに、女性には不利な内容となっている。女性 は男性よりも給付額が少ないのみならず、その給付水準も低い。さらに、障害 のある女性のニーズがより大きくなっているにもかかわらず、彼女らが公的な 所得支援計画から受けられる給付は、障害のある男性よりも少ない(Mudrick 1988年)。

第159号条約と第168号勧告に関する一般調査の報告において条約・勧告適用 専門家委員会が述べるところによれば、大部分の国において、機会均等の原則 が、教育・訓練・雇用の分野で、人種、皮膚の色、性、言語その他のいかなる 理由(障害など)による区別もなく適用されていることを政府報告は示してい る。しかし、支援を必要としている弱い立場にある集団たる障害のある女性に 重点が置かれないままに、障害者に対する特別なイニシアティブがとられてい るのが一般的な傾向である。その結果、法的枠組みはジェンダーに中立的であ るために、障害のある女性に対する差別は記録されることなく容易に生じ得る のである。

訓練と雇用における障害のある女性に対する差別と闘うために、ILOはいく つかの措置を講じた。それらはいくつもの基準、決議、政策声明に反映されて いる。女性労働者に関する最も新しいILO決議(1991年)は、障害のある女性 を含む女性労働者に対するILOの関心を再確認したものである。ILOの第159号

条約は、障害のある男性と女性の労働者の機会均等と均等待遇は尊重されなけ ればならないと定めている。この条約は、障害のある女性が社会の主流と経済 の主流において完全に参加し、統合することを妨げる障壁を取り除く戦略の中 で用いることができる(ILO 1998年 35-36頁)。

障害のある女性の置かれた特有の状況に対する取り組みは依然として不十分 である。この問題との関連において、欧州委員会のために行われた、障害者の 雇用政策に関する研究は、「一般にジェンダーの視点は障害政策の中に十分に 統合されておらず、障害者の雇用政策が男性と女性に及ぼすさまざまな影響に 関しては、入手できる情報はほとんどない」(EC 2000年)と結論づけた。

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