第2章 労働及び雇用の選択肢
2.1 一般/競争的雇用
多くの国々で適切に比較できるデータが欠如しており、一般化を難しくして いる。しかしながら、利用可能な情報から、現在の状況に関していくつかの暫 定的な結論に達するのは可能である。
一般の労働力のなかで、障害者の労働参加率は、他の労働者のものよりもか なり低く、そのうえ失業率も高い傾向を示している。
2003年のEUのデータでは、労働年齢期の就業率は、障害のない人が64.2%で あるのに対して障害者は40%である。(EC 2005年、この数字は調査結果にもと
7 自営業はすべてのカテゴリーの下で存在しうるので、ここでは別のカテゴリーとしては扱わない。
づいており、行政からのデータではない。)欧州委員会によると、障害者の非活 動率は障害がない人の2倍と高く、LSHPD(Long Standing Health Problem or Disability:長期間の健康問題あるいは障害)の障害定義からみた統合のレベル は低く、教育・職業訓練の水準も比較的低いことを示している。EUのデータ収 集で使用されている基本質問では、6ヵ月以上を経過したか6ヵ月以上となる ことが予想できるLSHPDがあるかどうかを問うている。2002年EU全体の労働年 齢期間(16-64歳)の人口のうち約16%が、LSHPDがある人たちとみている。
しかし、この数字の中で障害がある人と健康問題をかかえる人の区別はできな い。
この高い非活動率の理由は、国によって多様である。(年金・手当などの)給 付の罠(一旦公的給付を受けると、それから抜け出ることが難しいこと)や就 職時点で給付を失うことが、働く意欲を大きく後退させている。また、他の理 由として、使用者が高価な職場環境調整あるいは一度配置された人を「解雇す ること」の困難さを恐れて、障害のある従業員を採用すること躊躇することに あるかもしれない。
オーストラリアでは、障害のある男性の労働参加率は、1998年に約60%であ った。他方、障害をもたない人の同じ比率は90%であった。同じ比率を女性に ついてみると、それぞれ46%、71%であった。障害のある男性の失業率は14%、
障害をもたない男性の失業率は8%であった。同じ比率を女性についてみると、
それぞれ9%、8%であった。
カナダでは、2001年に障害者が一般の労働市場に占める比率は6.5%であった が、連邦政府の従業員はたった2.4%であった。障害者はあらゆる産業部門で少 なかった。輸送部門の1.8%から銀行部門2.3%、通信部門2.4%、「その他」部 門2.9%まであった(国立障害マネジメント・研究所(National Institute of Disability Management and Research 年報 2001年 4頁)。
フランスでは、1996年の障害のある労働者の失業率は、経済活動人口全体の 失業率よりも3倍高かった。この10年間で、全体の失業率は23%増加したが、
障害のある失業者は194%増加した。失業している障害のある労働者は、失業期 間が2倍も長いという傾向がみられる。
ドイツでは、1997年の重度障害者の労働市場への参加率は37%(西部地域)で あった。他方、非障害者について同じ比率をみると男性は80%、女性は63%で あった。2003年の失業率は、非障害者が10.4%であったのに対して、障害者は
16.6%であった(ILO 2004年a)。
ハンガリーでは、2002年に労働年齢期で「長期間の健康問題」をかかえてい る人口656,000人のうち、労働市場にいたのは10,000人の失業者を含め95,000 人未満であった(同上)。
スウェーデンでは、2002年の労働力率は、人口全体の77%に対して障害者は 68%であった。「労働能力に障害」がある人の労働力率は57%であった。就業率 は非障害者の77%に対して、障害者は約65%であった。労働能力に障害がある 人のうち、53%が就業していた。失業率は、人口全体の3.9%に対して障害者は 4.6%であった(労働能力に障害がある人の失業率は5.8%であった)(同上)。
英国では、2003年に障害者が労働年齢期人口の19%を占めていたが、雇用者 全体に占める比率をみるとたったの12%である。労働年齢期の障害者数の推計 値680万人のうち、2003年春に就業している人は49%であった。これに対して、
非障害者の就業率は75%であった(同上)。
障害者の就業率は、ノルウェーでは2006年に45%以下であった。これに対し て非障害者の就業率は83%であった。スイスの障害がある労働者の失業率は、
障害がない労働者の失業率よりも非常に高い。しかし、52%の就業率は他の
OECD諸国と比べ相対的に高い(OECD 2006年)。
一般に、労働市場のなかで障害者は、他の人々よりも低い教育レベルである。
また、障害者はパートタイムに近い仕事につく傾向がある。失業率は障害の種 類によっても多様で、精神障害をもつ人々で最も高い。英国では、労働年齢期 の精神障害者の75%が失業していると推計している。スイスでは全体の40%が 障害手当を利用するが(同上 21頁)、その利用の1つの重要な理由が精神疾患 で、この傾向は他の国でも明らかであった(Gabriel and Liimatainen 2000年)。
入手可能な情報を検討したところ、障害者の低い就業率は以下の理由による。
教育・訓練レベルの低さ
非熟練労働の需要の減少
大企業と公務部門の従業員の減少
事故や保険コストに対する懸念
障害があると登録することに対する嫌気
仕事の機会に関する情報不足
障害者のニーズと能力に対する使用者の認識不足
「給付の罠」
福祉給付を失うことへの恐怖
就職の失敗経験による落胆および/あるいは内面化した否定的イメージ
不十分な技術的・人的支援
2.1.1 より積極的な労働市場政策
多くの国は、障害者の失業の増大と低い労働市場への参加率について、社会 扶助コストの増加と関連づけて懸念している。特定の施策の細部については次 章で述べるが、新しい政策動向の全般的目的は、以下に述べることを通して労 働市場政策をより活性化することにあることを強調している。
福祉への依存を防ぎ、思いとどまらせる施策
障害者の雇用及び訓練のメインストリーム化
教育、訓練、仕事のイニシアティブに参加するインセンティブ
使用者をより大きく関与させること
雇用支援サービスの改善
差別禁止法制のより効果的な履行
既存の雇用率制度のより厳格な実施
現在のところ、消極的施策(所得移転)は、積極的な労働市場施策よりも公共 資源のかなり多くの割合を使っている。バランスを変化させる余地は大きいと みえるものの、多くの国では全般的な景気下降に伴う比較的高い失業率もあっ て、効果的にこれらのいくつかの政策を実施することを難しくしている。