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行動課題

ドキュメント内 Microsoft Word - (ページ 110-143)

第4章 主要論点と行動課題

4.3 行動課題

障害者の権利条約は、障害に基づく差別と闘い、かつ障害者のインクルージ ョンを積極的に促進するための中心的な行動課題を再設定することに役立つ。

障害者の権利条約に定められた義務のカタログは包括的ではあるが、網羅的 ではない(OHCHR 2007年)。行動課題に含まれるべき他の関連事項もある。

たとえば、障害者の労働と雇用の問題について労使団体が果たす助言的役割、

特定の開発問題、障害者との関連で人権文書を一層効果的に活用する方法など である。

4.3.1 国連障害者の権利条約とその選択議定書の発効

国連障害者の権利条約は、2007年3月30日に国家と地域統合機関による署名 に開放された。この条約が拘束力を持つためには、これを署名した国家によっ て批准されなければならず、署名した地域統合機関によって正式に確認されな ければならない。この条約はまた、これに署名していない国家と地域統合機関 による加入に開放されている。条約が発効するためには、少なくとも20の批准 又は加入が必要である。この責任を負うのは主として国家である。第1の優先 事項はこの目的を達成することである。

障害者の権利条約が発効するには、国内的、国際的に継続的な過程を要する。

すなわち、国家は条約に署名し、これを批准することによって、自国の管轄下 にある障害者に対し、障害に基づくいかなる差別もなく、すべての人権と基本

的自由の完全な実現を確保し、促進することを約束するのである。

障害者の権利条約の選択議定書についても同様の過程が要求される。ただし、

選択議定書は10の批准又は加入があれば発効し、これは障害者の権利条約が発 効していることを条件とする。

4.3.2 啓発措置

この条約をすべての関係者に認識させられるときに初めて実際の進歩が達成 されるであろう。その結果、だれもが障害者の権利条約に関連する権利と責任 を知り、理解するようになるのである。この条約の締約国は、社会全体の意識 を高めるための即時的、効果的かつ適切な措置をとることを約束する。このた めに締約国が講ずる措置には、特に次のことを目指す効果的な啓発活動を開始 し、維持することが含まれる。すなわち、障害者の技能、功績、能力に対する 認識と、職場や労働市場への障害者の貢献に対する認識とを促進することであ る。国家以外の組織(国内的・国際的な障害者団体や人権機関を含む)はこの 過程で重要な役割を果たす。

4.3.3 障害者の代表団体の役割

障害者の権利条約を実施する法律や政策の策定、実施、監視に際して、また 障害者の関連事項(意識向上を含む)にかかる他の意思決定過程において、締 約国には、障害者の代表団体を通じて、障害者と緊密に協議し、障害者を積極 的に関与させることが求められる。

国内の障害者の代表団体は、障害者の権利条約の実施過程において主要な役 割を果たす。条約の実施過程は条約の策定過程よりも多くの点でいっそう複雑 であることを念頭に置いて、障害者団体は次のことを確実なものとする必要が ある。まず、各国政府が障害者団体と緊密に協議し、障害者団体を積極的に関 与させることである。また、障害者団体が広い範囲にわたる政策や計画の事案

(労働と雇用に関連するものを含む)について有意義に協議を行い、関与する ために必要な技能、知識、専門性を有すること―あるいはそれらを身につける 立場にあること―である。

4.3.4 実施の枠組み

締約国は、次の義務に対して、早期に注意を払う必要があろう。まず、障害 者の権利条約の実施にかかる事項をあつかう一つ以上の担当部局(focal points)

を政府内に指定する義務である。また、異なる部門(労働と雇用に関連する部 門を含む)と異なる段階において本条約の実施を容易にするために、政府内に 調整の仕組みを設置したり、指定したりすることについて十分に考慮する義務 である。

締約国には、障害者の権利条約の実施を促進し、保護し、監視するための枠 組み(一つ以上の独立した仕組みを含む)を設けることも求められている。労 働と雇用の問題にかかるこのような仕組みの責任は明確に定められるべきであ る。市民社会、特に障害者とその代表団体は、条約の実施を監視する過程に完 全に関与し、参加しなければならない。

4.3.5 立法措置その他の措置

締約国には、障害者の権利条約において認められている権利を実施するため に、適切な立法措置、行政措置その他の措置をとることが要請される。また締 約国には、障害に基づく差別を生ぜしめる措置を変更し、廃止することも要請 される。このため締約国は、とりわけ、次のような措置をとらなければならな い。

 あらゆる形態の雇用にかかるすべての事項(募集・採用・雇用の条件、雇 用の継続、昇進、安全で健康的な労働条件を含む)について、障害に基づ く差別を禁止しなければならない。

 公正で良好な労働条件(平等の機会、同一価値労働同一報酬を含む)、安 全で健康的な労働条件(ハラスメントからの保護を含む)、苦情処理手続 についての障害者の権利を平等に保護しなければならない。

 障害者が、職業上の権利と労働組合の権利を平等に行使できることを確保 しなければならない。

 障害者が、一般公衆向けの技術・職業指導計画、職業紹介サービス、継続 的な職業訓練サービスを効果的に利用できるようにしなければならない。

 労働市場における障害者の雇用の機会と昇進を促進しなければならない。

また、障害者が職業を求め、これに就き、これを継続し、これに復帰する 際の支援を促進しなければならない。

 自営の機会、起業家精神、協同組合の組織・起業を促進しなければならな い。

 公的部門において障害者を雇用しなければならない。

 適切な政策と措置を講ずることにより、民間部門における障害者の雇用を 促進しなければならない。このような政策と措置には、積極的改善措置

(affirmative action)、奨励措置その他の措置を含むことができる。

 職場で障害者に合理的配慮が行われることを確保しなければならない。

 障害者が開かれた労働市場において職業経験を得ることを促進しなけれ ばならない。

 障害者の職業リハビリテーション、職業維持、職場復帰計画を促進しなけ ればならない。

多くの国々は、雇用についての障害者の権利を保護するために差別禁止法を すでに有している。差別禁止法の執行とその効果は、障害者の雇用環境を改善 するという点では一部で疑問視されてきた。障害者の権利条約の下で、この問 題についての責任を果たすため、締約国は現行法を批判的に検討する必要があ り、適当な場合にはこれを改正する必要がある。

4.3.6 障害問題の主流化

ときに「主流化」(mainstreaming)という言葉は、特定の省庁から労働市場全 般の訓練に責任を有する省庁へ、障害者の職業訓練にかかる政府の責任を移行 させるような、一つの措置についてだけ用いられてきた。主流化が要請するの は、完全なソーシャル・インクルージョンと社会参加という目的に則して、す べての政策と計画の策定においてのみならず、政策と計画を実施する過程と構 造においても、障害問題が積極的に考慮されることである。このことを締約国 に義務づけているのが、障害者の権利条約4条1項である。さまざまな部門に おいて障害を主流化する際の良い実践(good practice)を考証し、このような 情報を広く普及させる努力が共同して行われるべきである。

4.3.7 障害者権利委員会

障害者の権利条約に定める監視の過程における一つの必要不可欠な部分は、

障害者権利委員会である。この委員会は、締約国による報告を検討し、これに 応答し、国連総会と経済社会理事会に報告するという重要な役割を果たす。委

員会は、この条約が効力を生じたときは12人の専門家で構成される。さらに60 ヵ国による批准又は加入の後は、委員の数は最大で18人とすることができる。

委員は締約国が選出する。委員がどのように代表され、どのような性格を有す るか、ということは条約に詳しく定められており、障害者その他の関係主体は それらを慎重に検討すべきである。行動課題という視点から指摘すべきは、最 初の選挙が条約発効時から遅くとも6ヵ月以内に行われることである。

専門機関その他の国連機関には、その権限の範囲内で、障害者権利委員会に よる条約の実施状況の検討に関与する資格が与えられている。これは重要な規 定であり、本条約の効果的な実施を促進し、国際協力を奨励する際に大きな価 値をもち得る。委員会は、これらの諸機関に対して、専門的助言の提供と報告 書の提出とを要請することができる。委員会はまた、適当な場合には、人権諸 条約が設けた他の関係諸機関と協議することになる。

4.3.8 資源の問題

国連人権高等弁務官は、障害者の権利条約の実施に関連して資源(resources)

の問題を強調した。

「この条約は、『合理的配慮』の義務を認める規定を含めることにより、ま た経済的・社会的・文化的権利の『漸進的実現』を認める規定を含めること により、多くの国々が直面する資源の不足を認めている。『合理的配慮』と

『漸進的実現』は、人権条約の効果的な実施をめぐる現実世界の課題を認め る実用的な仕掛け(practical devices)である。重要なのは、障害者の権利の 享有を確保する負担が無限ではないことを受け入れることにより、そのよう な仕掛けが国家、使用者その他の義務主体に過重な負担を課すことを避けて いることである。したがって、さまざまな発展段階にある諸国家やさまざま な経済環境に置かれた諸国家は、さまざまな段階の支援や保護を障害者に提 供できるかもしれないし、あるいは人権条約上の義務に違反することなく障 害者が直面する特定の障壁を完全に除去するために、いっそう多くの時間を かけることを要すると主張できるかもしれない。」

「しかしながら『合理的配慮』と『漸進的実現』の概念は、人権条約上の義 務から重要な中身を奪うものではない。実際、この条約において認められて いる義務の多くは即時的な効果を有する。障害者の権利の尊重と保護を堅実 に前進させることは他日に延ばすことはできないのであり、また、合理的配 慮の提供あるいは権利の漸進的実現は、いかなる資源の制約があるにせよ、

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